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コラム                       かけはし2002.12.2号より

静岡空港建設予定地を訪れて


 十一月二十三日に、反空港全国集会が静岡市であり翌日、静岡空港予定地(榛原町・島田市)のバスツアーに参加した。この地域は原と呼ばれ、お茶・みかん畑や山林が続く。すぐ眼下を大井川が流れている。十キロも下れば駿河湾だ。そして、御前崎を回って太平洋岸に浜岡原発がある。
 空港予定地では山を削り、谷を埋める工事が進められていた。台地の見晴らし台に立つと眼下に、黄土色の土がむき出しになっていた。二千五百メートル滑走路のど真ん中に、地権者の山林は崩されることなく、大きく立ちはだかっている。山には立木トラストがあった。
 さらに、別の滑走路上にある地権者のお茶畑は見事に手入れされている。
 地権者の松本吉彦さんは「やぶきた茶という銘柄で売り出しているここのお茶は品質がとてもよい。昔、大井川の川底が隆起し、その砂利がまじった赤土がお茶の栽培にあっているからだ。景気が良いときには、七畝で八十万円ぐらいの売り上げがあった。いまでは、その半分近くに値段が下がってしまった。他の地権者も始めは反対していたが、倍の茶畑を補償としてもらえるということで、渋々買収に応じていった。お茶の木は苗から大切に育て、良いものができるに七年くらいかかる。ここの茶木は三十年にもなっている。霧が発生する良い気象条件があり、他に移転してもここのように良いものはできない。先祖代々受け継いできたもので、絶対に手放さない」と力強く語った。
 「九〇%以上の用地を買収し、工事は順調に進んでいる」と県は宣伝するが、ここに来てみると一〇%も工事は進んでいないし、本体工事の着工もいつになるやらである。県が買収できていない土地は一五%にも達している。面白かったのは、県が作った「輝く静岡の未来を拓く」という宣伝パンフである。@新幹線新駅を計画しているA「国内が、世界がグンと近づきます!」と書かれ、あたかも国際便が飛ぶかのように海外への時間を表した地図が付けられている。
 予定地は新幹線の静岡駅と掛川駅のちょうど真ん中当たりでトップ速度を出す地点にある。もし、こんな所に新駅を作ったら、鈍行列車になってしまうので、JR東海は絶対に作らないと明言している。さらに、飛行機は海外になんて飛ぶ便はなく、新千歳、沖縄そして九州の六つの空港に行けるだけであり、もちろん羽田や成田さえ行けないのだ。そして、人口三百七十八万人の静岡県で、年間二百十七万人が国内便を使ったと資料を掲載している。それがなんと七年前の一九九五年のバブル時期のデータを使っているのだ。
 空港予定地の見学を終わった後に、オオタカの森で、地権者が用意してくれた豚汁、煮込み、おでんなどをほうばりながらなごやかな交流会が開かれた。
 オオタカの森の奥に堂ヶ谷立木観音があった。仏師が立ち枯れた大きな木をそのまま使い、ひと夏かけて彫り上げたものだ。台地にしっかりと根を張っている木の上の観音を守り神様のように地権者は大切にしている。この観音は空港反対運動のシンボルだ。
 地権者の温かい心を感じ、豊かな里山を後にした。       (滝)

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