| 韓国・チリ自由貿易協定(FTA)交渉の妥結 かけはし2002.11.25号より |
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押し寄せるグローバリゼーションの波と破壊される韓国農業 |
「いくら大統領選挙の局面だからと言って、候補らは農民票を意識して『農業は守るべきではないのか』式に中途半端な態度を示すべき時ではない。票が減るという声が聞かれるとしても、いまは自由貿易協定が不可避だという現実を公式に宣言すべきだ」。チェ・セギュン韓国労総経済研究院研究員は「国境を阻み、価格を支持する政策によって韓国農業が維持される時代は終わっている」として、こう語った。
チリの次はメキシコ、その次はどこ
国会の批准手続きが残っているとは言うものの、韓国・チリ自由貿易協定(FTA)をめぐる両国間の交渉が妥結した。農民諸団体の韓・チリFTA反対デモが続けられている中で、当局は農家への被害補填対策を用意するとして、怒った農民の心をなだめるのに汲々としている。だが農民デモの目的は韓・チリFTA阻止にのみあるのではない。むしろ韓・チリFTAをシグナルとして今後ゾロゾロ後を追う「新たなFTA」を封鎖するとの意図が強い。
国会批准も経なければならず、チリとの協定が、まだ発効していないだけに、次のFTAについて論議するには早い感がある。だが通商当局は、すでに次期FTA交渉のパートナーとしてのメキシコに目をつけている。本格的な交渉が始まったわけではないけれども韓・メキシコFTAについての国内での研究作業は、すでに終わった。農村経済研究院側は「農民たちの反発デモがおさまったなら、その時から本格的な韓・メキシコFTA交渉が始まるだろう」とほのめかした。韓国側の準備が完了するやいなや、メキシコ側も、すでに研究に着手したことが明らかになった。
メキシコはチリとは違って農業強国と呼ばれる国家ではない。けれどもメキシコが韓国に対して持っている関心もまた農産物だ。政府の言葉通り、チリがFTA交渉の経験に慣れるためのスパーリング・パートナーだったとするなら、メキシコは本格的なFTAのパートナーだと言えよう。
チリがブドウをはじめとする「果樹」強国だとすれば、メキシコは唐ガラシ、香料、ニンニク、ゴマなどの「栄養野菜」に強い。農村経済研究院側は「日本が先にメキシコとFTAを締結すれば、北米市場でわが国の輸出産業が大きな被害を見る。そうなれば、われわれとも締結してくれとメキシコにねだらなければならない状況になる」と心配した。
通商当局はシンガポール側ともFTA協議をしていることが明らかになった。シンガポールは農業が脆弱なだけに、国内の農民たちの反発を最小化しつつ簡単にFTAを締結できる、との判断からだ。シンガポールを踏み石としてFTAの雰囲気を広げた後、メキシコと本格的な交渉に乗り出すとの計算が横たわっている。
何回か両国間の業務協議が進められた韓・タイFTAおよび韓・ニュージーランドFTAの論議もまた、この間、迫ってきたけれども火種は依然として残っている。韓日間のFTA論議も輸出業界を中心に、一層研究が進行中だ。このように農民の抵抗を心配して開放の日程を明確に提示しなかっただけで、政府はさまざまな国々と水面下でFTAを推進している。
わが国とFTAを構成している諸国の関心事は何なのだろうか。FTA研究者たちは「農業部門を除外したまま韓国とFTAを締結する当事国は日本だけ」だと語る。日本は農業競争力が、わが国よりも脆弱なために農業部門を自由化の対象から除外したままFTAを結ぶことのできる唯一の国家だ、ということだ。それほどに韓国をFTAのパートナーとして選択している国家は、すべて韓国の農産物市場をねらっている。韓国の農産物市場は、国内で見ると「敏感」な領域だけれども、剰余農産物を売り込もうとする農産物輸出諸国にとっては「関心」ある領域というわけだ。
WTOより破壊力の強いFTA
韓国市場が魅力的な理由は価格競争力にある。コメ価格は収買価格基準で米国産の4・8倍、中国産に競べれば5・8倍も高い。リンゴやナシの価格も国際価格に比べて日本に次いで高い方だ。
このように韓国農産物が価格競争力を持てない原因は高い労賃・農地価格などの構造的要因が強い。したがって市場開放が迫ったからと言って、おいそれと生産価格を下げるのも難しい。低い価格競争力にもかかわらず、これまで韓国農業を辛うじてもちこたえさせたのは平均47%に達する高い関税のゆえだった。したがって無関税を指向するFTAは韓国農村にたいへんな試練であり、新たな衝撃だ。ウルグアイ・ラウンドに代表される世界貿易機構(WTO)体制と違って、開放が「本当に」始まったというシグナルでもある。
WTO体制が韓国農業の全分野に「徐々に」衝撃を与えるとするなら、対外障壁をはなからなくしているFTAは被害が特定の農産物に集中するという点で、その様相が異なる。事実、WTO体制は発足以来、久しいにもかかわらず、関税引き下げの幅をめぐって多くの国々の間で攻防が繰り返されている。キム・チュンシル慶北大教授(農業経済学)は「WTOと違って開放に全面的にさらされるFTAは農業を犠牲とせざるをえないということを前提にして締結されるもので、わが農業にとってたいへんな悲劇」だと語った。
特にFTAは特定の農産物を超え、韓国農業全体に致命的打撃を与える。韓・チリFTAでコメ、リンゴ、ナシなど一部の敏感な品目は関税自由化の対象から除外されたものの、リンゴ、ナシと言えども被害を避けることはできない。これは00年に米国産オレンジが怒涛のように押しよせてきた後、代替消費品目である柑橘はもちろん、リンゴ、ナシなど他の果物の価格まで暴落した事例が、そのままに示している。
価格の安いチリ産ブドウの輸入によってブドウ価格が暴落すれば、没落したブドウ農家は他の作物栽培へと一挙に移動し、結局、その作物もまた過剰生産によって価格が暴落する公算が大きい。メキシコが農業強国でなくとも、実際にFTAを結べば状況が変わる可能性も高い。メキシコの大規模農業資本が、かんぬきのはずれた韓国の農産物市場をねらって、そのときから大々的な農産物生産に乗り出すだろうからだ。
輸出産業の激しいロビー活動と政府
FTAは経済的効果を超えて、極めて政治的な協定だ。韓国において農業が政治的対象だという点からしてもそうだが、FTAをめぐる民間輸出業界と農民たちの間の利害がハッキリと食い違っているからだ。ここでFTAに伴った産業別の利害関係を社会的に調節する問題が提起される。利益を配分し、損害を補償する政治的プロセスが伴ってくるのだ。
肝心なのは、FTAは両国間にあって利害得失を計算して協定を結ぶこともできるし、また結ばないこともできるという「選択」の問題だという点とからみあっているということだ。協定の対象国を農業強国かどうかを判断して政府が選ぶという点も、農家の被害をどんな形態であれ補填しなければならないという論理を裏付ける。
表面上、FTAに積極的に乗り出しているのは、わが政府だ。拡散する地域主義から孤立するなら韓国の損失は避けられない。けれども、その背後には「他の国はチリに無関税で輸出しているのに、われわれだけが関税をかけられ不利な競争を展開している」との論理を主張してきた工業産品輸出業界のし烈なロビーが働いている。工業産品の輸出のために、どのみち競争力のない農業は犠牲を甘受せよ、という形だ。この点でFTAをめぐる社会的葛藤の焦点は、わが社会において農産物と工業産品との関係をどう設定するのかをめぐる論争だと言えよう。
FTAに伴った農家の被害を補填する方法としては仮称「FTA構造調整特別法」の制定や「自由貿易協力基金」による助成が挙げられる。問題は財源をどう準備するのか、だ。
オ・ミョングン農村経済研究院研究委員は「FTAによって受恵を見る輸出業界が売り上げ額の数%ずつ拠出し、政府もマーチング・ファンドによって出資する方式によって基金を作ることができるだろう。特定のFTAのために農家の被害が出たことが判明したなら、この基金によって支援すればよい」と語った。だが受益者負担の原則を適用して輸出業界に利益金の中の一部を農村に支払えと要求することはできるのだろうか。農林部(省)は「輸出市場の拡大を図ろうというのがFTAなのに、現代自動車に韓・チリFTAによって稼いだ利益金を出せと言えるのか。農家の被害は、どのみち政府の一般予算から支援せざるをえない」と語った。
けれどもこれは再びサラリーマンから「利益は特定輸出業界が受けるのに、農家の被害補填のために、なぜわれわれが税金をまた出さなければならないのか」との反発を受けかねない。国会の批准を前にした韓・チリFTAが次第にこのような論争へと結びついている。(「ハンギョレ21」第433号、02年11月14日付、チョ・ゲワン記者)
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