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傷だらけ原発を動かす「維持基準」反対!      かけはし2002.11.18号より

「欠陥原発動かし2法案」を廃案に

暴走審議で11月20日にも委員会採決か

 十一月五日、「欠陥原発動かし二法案」が閣議決定された。「原子力安全規制の確立を求める議員の会」や「原子力安全規制問題国会プロジェクト」などによると、十二日に衆議院本会議に上程、十五日に衆議院経済産業委員会で審議入りし、十九日の参考人招致を経て、早ければ二十日にも委員会採決されるという、ハイスピード・暴走審議が政府与党によって目論まれている。停止した原子炉の大半は検査も着手されておらず、原因究明も行われないうちに審議入りするという暴挙を許してはならない。
 東京電力をはじめとする電力会社の一連の不正に対し、福島第一原発一号機の格納容器機密データ改ざん以外には、これまで国は法的な処罰を全くできなかった。東電は、はじめから処罰されないことを承知で、反省のポーズとして社長をはじめとした辞任を行った。国の対応を待っていては「信頼の回復」により時間がかかると判断したのだろう。
 一方で国は、経産大臣らの減給という反省のポーズで電力会社に応えた。また、小泉首相が不動のダブルチェック機関と考えている内閣府所管の原子力安全委員会は、内閣総理大臣名で経産大臣宛ての、歴史上はじめての「勧告」を行った。すべて「原子力村」の内側に向かったこれらのポーズでは現地住民をはじめ、自治体や全国の市民の怒りがおさまるものではなかった。
 中部電力の原発すべてが停止し、東京電力では十七基の原発のうち九基が停止し、さらに二月の冬の需要ピークまでに四基が定期点検のため停止する。脱原発が可能なことをだれもが認識してしまわぬうちに、国と原子力・保安院は「国民の信頼回復及び再発防止を図る」ことをたてまえとしつつ、〇四年を目途に導入を準備していた「維持基準」制度の導入のため、関連法の改悪に踏み切った。
 「欠陥原発動かし二法案」とは、三条からなる「電気事業法及び核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案」(以下、改悪法案)と、十三条からなる「独立行政法人原子力安全基盤機構法案」を指す。
 保安院による「改悪法案」の第一条では、電気事業法に次の内容を付与するものだ。@定期自主検査の法定化A記録保存の義務化B経産大臣による報告徴収の権限の明確化C原子力安全委員会への年一回の報告の経産大臣への義務付けD罰則の強化など。
 「罰則強化」が法の権限を強化し、いかにも不正の抑止になるように見せかけているが、電力会社が払うとされる「三億円以下」の罰金は、すべて電力消費者が払った代金から拠出されることは言うまでもない。また、第二条は原子炉等規制法を電気事業法の前記の内容と整合性を待たせるための条文となっている。
 「改悪法案」の第三条は、「設備の健全性評価の義務化」の条文で、いわゆる「維持基準」導入体制を法定化するものである。電気事業法第五十五条(定期安全管理検査)の第三項として、次のような条文案が挿入される。
 「一定の期間が経過した後に第三十九条第一項の経済産業省令で定める技術基準に適合しなくなるおそれがある部分があると認めるときは、当該部分が同項の経済産業省令で定める技術基準に適合しなくなると見込まれる時期その他の経済産業省令で定める事項について、経済産業省令で定めるところにより、評価を行い、その結果を記録し、これを保存しなければならない。」
 国会の審議も経ず、原発推進の役人らによって経済産業省令という「技術基準」が作られる。省令という推進派のさじ加減ひとつで、重大な損傷も「技術基準に適合」してしまう。
 南直哉東電前社長が招致された九月三日の原子力委員会で、木元教子委員は「アメリカの技術基準であれば、建設時の基準、新しい発電所の設置基準、発電所が稼働している時に安全にかかわらないレベルの摩耗や傷であれば問題ないという維持基準があると聞いている。事業者としても、傷があるからすぐに取り替えるというのは大変なことだと思う。……中略……運転中の維持基準というものが諸外国であるのであれば、なぜ日本にないのか。事業者が維持基準のようなものを作ってください、と原子力安全・保安院に言っていた」と発言、南前社長も「いわゆる維持基準のようなものがあれば、大分プレッシャーが違って、つまらない未報告や虚偽の記録をしなくてもよかったのではないかと思います」と発言している。
 一方、「原子力安全基盤機構」とは、これまでも原子力事業所の定期点検の事業委託や自主検査の審査を行ってきた三法人が合併するものであり、電力会社の不正と「隣合わせ」の業務を行ってきた。これらは今回の不正調査では一切の調査を受けていない。
 しかも「独立行政法人」という名で「独立」を強調しながら、主務官庁は原発推進の経済産業省であり、主務大臣は経済産業大臣である。原発推進派から全く「独立」してはいないのである。核燃料サイクル受け入れと推進に全力を上げてきた青森県木村知事でさえ、「原子力規制機関の経済省からの独立」を強く要求する、としている。原子力安全・保安院と同様に、経産省の官僚や電力会社、原発メーカー社員が多数入って業務を行うことになるだろう。
 推進の原子力委員も事業者も、そして規制当局の保安院も、渾然一体となって「維持基準」の導入に向けて暴走している。「欠陥原発動かし二法案」の衆議院経済産業委員会通過を許さず、現地住民とともに廃案に追い込もう。
(11月10日、I&K)

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