CO2 排出企業と南ア政府の
開発政策に挑む社会運動
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寄稿
気候変動による干ばつと飢餓生態系の危機に立ち向かおう
福島康真(在ケープタウン) |
一一月末から一二月初めにかけて南アフリカ共和国のダーバンで第一七回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP17)が開催される。しかし京都議定書第一約束期間終了後の枠組みがどうなるのか、行方は不透明のままだ。他方ホスト国の南アでは原発をふくむ大規模な開発路線が推し進められている。南アの社会運動は抗議行動を計画している。南ア在住の福島康真さんに書いて頂いた。(本紙編集部)
ポスト京都議定書の行方は 気候変動に関する国際会議COP17(第一七回国連気候変動枠組条約締結国会議)が一一月二八日から一二月九日にかけて、南アフリカのインド洋側の都市ダーバンで開催される。
気候変動は気温上昇による農業や漁業への影響にとどまらず、様々な自然災害が頻発するなど、あらゆるものに直接的な影響を与える。
気温を産業革命以前の二度上昇に抑えるために様々な試みが行われているが、その多くは炭素取引にみられるように、気候を「商品」として取り扱い、国際金融機関や多くの企業がそれに群がる構造が作られている。
ダーバンCOP17での「交渉者」たちは、第一約束期間が終わる二〇一二年以降の、いわゆるポスト京都議定書について駆け引きが行われることになるだろう。新たな枠組みを作るのか、もしくは来年ブラジルで行われる予定のリオ+20に先送りするのか。すでにボン、ジャカルタ、パナマなどで交渉が行われてきたが、先行きは全く不透明だ。
COP17の議長を務める南アフリカのマイテ・ンコアナ―マシャバネ国際関係大臣は一〇月二一日、ダーバンでは京都プロトコルの第二約束期間を実現するための方法を見つけ、多角的ルールに基づいた新しいシステムを作るために合意しなければならないと述べたが、同時に、会議は簡単にはいかないだろうが、成功を実現するための政治的な意思が存在していることを期待していると述べ、ダーバンで何らかの結論を出すことは難しいことを吐露した。
この会議を主催する南アフリカ政府は、気候変動問題をどのように考え、どのように取り組んでいるのか、そして南アフリカの市民社会、とりわけ社会運動は、COP17に向けてどのような準備をしているのだろうか。
南アでの気候変動の影響
南アフリカ政府は気候変動問題に取り組む必要性について、次のように述べている。
現在のままであれば、南アフリカの海岸地域の気温は二〇五〇年までに一〜二度上昇し、二一〇〇年までに三〜四度上昇する。内陸部は二〇五〇年までに三〜四度上昇し、二一〇〇年までに六〜七度上昇する。その結果、降雨量が減少して水の蒸発量が増加するので、河川の水量が減り、水の利用形態が大きく変わる。内陸部の草原地帯や乾燥地帯にある貴重な植物、固有種を多く含む南部のケープ周辺の植物生態系が影響を受け絶滅の危機にさらされる。
水が減少するために乾燥地帯にある小規模農家が影響を受け、トウモロコシや果物、穀物の生産が減少する。灌木の繁殖によって放牧地が減少し、植林地では火災が頻繁に起き、外来種が増えるために水がさらに減少する。
海水面が上昇するので、漁民は大きな影響を受けることになる。
すでに干ばつや洪水などが多発しており、気温の上昇により貧困地区や人口密集地でコレラなどの病気が発生しており、二〇〇〇年から二〇〇九年にかけて、控えめに見積もっても毎年一〇億ランド(約一〇〇億円)の損害が発生しているとしている。
政府発行のグリーンペーパー
南アフリカ政府は昨年一一月、気候変動対応全国グリーンペーパーを発表した。それによると、気候変動は持続可能な開発に対する最大の脅威であり、失敗すれば南アの開発目標の達成が困難になるだけでなく、MDGs(ミレニアム開発目標)に向けた取り組みも無に帰すことになる。そのために、エネルギー集中型経済から気候に優しい経済、グリーン経済・社会に転換することが必要だとしている。グリーン・テクノロジーとその産業が発展すれば雇用も増え、再生可能エネルギー産業と関連産業だけでも二年間で二万、一〇年間で三〇万の雇用創出が期待できるとし、炭素取引とカーボンオフセットなどの市場に基づく政策を行っていくとしている。
しかしその思いとは逆に、ヨーロッパ排出取引スキームは炭素価格の乱高下と取引所内部での詐欺行為やハッキングのために崩壊状態にあり、シカゴの炭素市場も閉鎖されている。
また資金調達の一つとしてCDM(クリーン開発メカニズム)を行うとしているが、南アフリカにおけるCDMの実績は炭素一トン当たりわずか一四ユーロで、これで十分な資金を得ることは非現実的である。
二酸化炭素排出する大企業
忘れてならないのは、電力会社ESKOMと石炭液化企業SASOLである。
半官半民の電力会社であるESKOMは二〇一〇年四月、世界銀行から三七億五〇〇〇万ドルの融資を受け、世界でも最大の規模を持つクシレ石炭火力発電所とメデュピ石炭火力発電所を建設することになった。世銀の融資のほとんどが発電所建設のために使われ、その結果、二酸化炭素排出量は年間二五〇〇〜三〇〇〇万トンとなり、世界一一五カ国の排出量を合計したものよりも大きくなる。
また、世界最大の鉱業会社BHビリトンと、ダイヤモンド会社のデビアス社などを傘下に持つアングロ・アメリカン社が、アパルトヘイト時代末期に四〇年にわたる特別価格協定を結んでいたことが昨年明らかになったが、これらの企業が一般家庭の八分の一という世界一安い電気料金で企業活動を行っている一方で、この大規模石炭火力発電所建設のために二〇〇八年以降、電気料金は毎年三〇%ずつ値上げされており、そのために貧困層の多くが電気を止められている。
SASOLはアパルトヘイト時代に行われた対南ア石油輸出禁止措置に対抗して作られ、現在は民営化された石炭液化企業で、三五ドルかけて生成した石炭液化オイル一バレルを一〇〇ドル以上で販売しており、二酸化炭素を排出することで利益を上げている。SASOLは南ア北部に世界最大級のセクンダ・コンビナートを持っているだけでなく、新たに石油精製工場と大規模石油パイプラインの建設を計画しており、世銀の融資を狙っている。この二酸化炭素排出の元凶とも言える企業が、COP17南ア公式交渉団の一員として交渉に参加し、排出量削減について議論しようとしている。
エネルギーの23%を原発で 南ア政府は今年三月一六日、二〇一〇年統合資源計画を承認した。電気供給を拡大し、かつ二酸化炭素排出を削減するために、二〇一〇〜二〇三〇年にかけてガス、原子力、バイオマス、風力・太陽・水力発電などの再生可能エネルギーを増やしていくという計画だが、その中で二〇三五年までに原子力発電能力を毎時一〇〇万キロワットにまで増やし、全エネルギーの二三%を原子力発電でまかなうとしている。この承認は日本の福島第一原発の事故発生直後に行われたために、南アの政府・財界・労働界・市民社会の代表で構成されるラウンドテーブルのNEDLAC(全国経済発展労働協議会)の参加団体ですら、強い反発を示すことになった。
そしてCOP17開催を一カ月後に控えた一〇月一七日、南ア政府はグリーンペーパーでの議論を元にした気候変動対応全国白書を発表したが、その内容は全く不十分なものでしかなかった。専門家たちは、白書にはESKOM
やSASOLなどの巨大プロジェクトを含めた最新の排出量が反映されておらず、排出量を減らさなければならない今後二五年間で、温室効果ガスが二〇%上昇することをベンチマークとしているとして、あきれかえった。さらに不思議なことに、白書は原子力について一言も触れておらず、まるでだまされたかのようである。
心地よい言葉を吐きながら、それと逆行するプロジェクトを推進する南アフリカ政府は、一一月末には最も厳しい交渉の舵取りをしなければならない。
ダーバンというところ
COP17が行われるダーバンはアフリカ大陸最大の港を擁した、インド洋に面した南アフリカ第三の都市だ。一九世紀にケープを離れて新天地を求めたオランダ系の人々によって作られたナタール共和国は、イギリスによって占領されてイギリスの植民地となった。一九世紀後半に始まったサトウキビ・プランテーションでの労働力としてインドから労働者を雇い入れたために、現在もインド系の住民が多い。北部には強大な軍事国家ズールー王国があったがイギリスとの戦争で敗北し、イギリスの支配下に置かれた。
また若きマハトマ・ガンジーが二〇世紀初頭のアパルトヘイト下で、その非暴力運動の理論と活動を作り上げた場所でもある。
二〇〇〇年には国際エイズ会議が、二〇〇一年には国連人種差別撤廃国際会議が開かれた。人種差別撤廃国際会議では、アフリカ諸国が北の政府に対して植民地支配は奴隷貿易に対する歴史的な賠償を求めたが、これに反発したアメリカとイスラエルは会期中に会議から離脱した。その一週間後に、ニューヨークの世界貿易ビルなどへのハイジャック機の突入事件が起きた。
南ア社会運動の持続的挑戦
ダーバンにあるクワズールー・ナタール大学の市民社会センター(CCS)は、南アフリカの社会運動の拠点の一つで、COP17の開催に際して、国際・国内諸団体と協力しながら市民社会の側からの取り組みを組織している。
市民社会センターを中心に組織されたクライメート・ジャスティス・ダーバングループは二〇〇四年から活動を開始し、二〇〇五年に世銀が融資したCDMであるアフリカ最大のゴミ埋め立て地に対する反対運動を行った。二〇〇九年にはダーバン南部の巨大石炭火力発電所建設に史上最大規模の融資を行った世銀に対する抗議行動を行った。
南アフリカのアースリンク・アフリカをはじめ、NGOや労働組合などの諸団体とともにクライメート・ジャスティス・ナウ・南アフリカを結成し、COP17の会期中に行われる様々な取り組みの中心を担っている。
会期中には、ダーバン市内にあるダーバン技術大学に民衆スペースが作られ、様々なワークショップなどが行われる。また、一二月三日にはCOP17の会場の横を通り抜ける大規模なデモが企画されている。
東アフリカ、南部アフリカからダーバンに向けて現在、キャラバンが行われており、また国内では一〇月下旬にケープタウンを出発したクライメート・トレインがジョハネスバーグを経由してダーバンに向かっており、到着する一二月三日には、このデモに合流することになっている。
一一月末から二週間、世界が注目するダーバンで、南アフリカの社会運動は、二酸化炭素を排出する企業と、それを支え開発を継続するための資金を得ようとする政府に対して抗議の声を上げていく。 (一一月五日)
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