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    かけはし2011.10.24号

強力な成長を追い風とする
段階からの前進はあるのか

ブラジル

新しい運動が始まっている

ダン・ラボッツ

 BRICSの有力な国として、現在の世界的金融不安に対しても発言力を高めているブラジルで労働者が闘いを強めている。強力な成長力が労働者に自信を与えている側面があり、世界の抵抗の性格とは少し異なるところもある。メキシコの社会運動研究者の報告を以下に紹介する。(「かけはし」編集部)

全土、全部門にストライキの波


 ブラジルの労働者――重工業、サービス業、公共部門、農業部門――は、この数十年で見られなかったような一連のストライキと大衆的抗議行動に参加している。新しい労働者の闘いの高揚を駆り立てているのは、この国の経済の強さ、社会における労働組合の強力な立場、そしてインフレの昂進である。二〇〇七年と二〇〇八年に、ブラジルの経済は五%の成長を達成した。そして二〇〇九年の危機の中でブラジル経済は〇・二%成長にまで縮小したが、昨年にブラジル経済は再び一〇%の成長を遂げた。ブラジルで生まれ、公共保健の専門家でブラジル人移民社会の活動家でもあるエドワルド・シケリアは「ブラジルの労働者は職を失うことを恐れていない。したがってかれらはストライキを恐れないのだ」と語っている。
 そこでかれらはストライキを行った。九月初め以来、銀行労働者、郵便労働者、GM工場の自動車部品労働者を含む金属労働者のストライキが行われた。こうしたストライキの幾つかは現在も続いている。約五%にのぼるインフレの中で、多くの労働者は物価上昇に追いつくために闘っている。労働者は賃金の大幅引き上げを要求している。金属労働者は九・五%以上、銀行労働者は一二・八%の賃上げを望んでいる。郵便労働者は、ブラジル議会が可決した改革案に反対してストライキを行っている。その改革案はブラジル郵便・電報公社(ECT)に民間部門とのパートナーシップを形成する権限をふくむより大きな権限を与えるものだ。
 製造業、サービス業、公共部門におけるストライキに加えて、きわめて強力な農業労働者運動も存在している。九月は「マルチャス・ダス・マルガリダス」(ヒナギクの行進)で始まった。おそろいの麦わら帽と紫色の服をまとった七万人の農村女性労働者が、首都ブラジリアを行進した。マラニョン州(ブラジル北部の州)アフォンソ・クーニョの農村女性労働者マリア・ルイサ・ドスサントスは、女性たちは「女性の権利、平等な賃金、土地なし農民への土地分配」を求めている、と説明した。

強力な労組に戦闘性の新しい波


 ブラジルの石油産業で働いているアメリカ人役員が今月の「石油・ガス・フィナンシャル・ジャーナル」誌に投稿し、ブラジルの労働法と「強力」な労組の「柔軟性のなさ」について彼の同僚たちに警告した。「ブラジルの労働組合の強さについて述べることは、概して過小評価されている」と彼は書いた。「ブラジルにおいて労働者は自動的に、労働者が働く地域、職種によって規定された労組に『加入』する。法律によれば労働者は組合費(年間につき一日分の給与)を支払わなければならない。ブラジルには約一万八〇〇〇の労働組合があり、いずれもそれぞれの部門に深く根付き、保障された組合費をかれらの活動、巨大な政治的影響力のための資金にしている」。
 ブラジル労働者の強さに対する米国の石油会社役員のショックは、労働運動の大変な複雑さについて単純化しすぎる傾向がある。ブラジルには幾つかの労働組合連合体があり、それぞれに少し異なった政治的立場を取っている。あるものは左派的であり、あるものは中道左派的であり、またあるものは中道派ないし穏健派である。
 こうした連合体はある時はお互いに競争しある時は協力するのだが、シケリアによれば、最近では以前に比べて競争するよりは協力するようになっている。地域の労組と労働者も協力を深めており、同じ労組や同じ連合体に属していない場合でも、労働者の一グループが別のグループを支援する同情ストライキを行っている。
 ストライキと労働運動内の沸騰状態は、シケイラによれば労組執行部の新しい戦闘的中間層の台頭をもたらした。故国から帰ったばかりのシケイラは、一九八〇年代以後、こうした労組の戦闘性の新しい波を見たことがなかった、と語っている。

政府への圧力を超えて進むのか


 現在のブラジルの労働運動は、一九六五年から八五年までこの国を支配した軍事独裁に対する闘いの中で誕生した。サンパウロ郊外「ABC」工業地帯の金属労働者が主導して、労働者たちは最初に産業別労働組合を創設し、続いて新しい労組連合組織(CUT 中央統一労働組合)をつくり、ともに「土地なき者たちの運動(MST)」を建設し、それから労働者党(PT)を作り上げた。こうした闘いはルイス・イニャシオ・ダシルバ(ルラ)を二〇〇二年に大統領当選、二〇〇六年の再選に導いた。ルラ――よく知られている名でこう呼ぼう――は、前任者の新自由主義政策を継続したが、違ったことはブラジルの最貧困層の利益となる貧困解消プログラムを進めたことである。
 ルラ政権の第一期は労働者にとっては混乱した祝福だった。PTの指導者と活動家は、政権内の重要な政治的ポジションを占めた。CUTはこの国の歴史の中で、以前のどの時期にもなかったような影響力を持つにいたったが、それはあくまで影響力だけであり権力ではなかった。そして労組連合体の中で、変革のために労組と労働者を組織して闘うのではなく変革をルラに依存しようとする傾向は、労働運動を弱めてしまった。「土地なき者たちの運動」(MST)は闘いを継続し、この国で実質的に唯一の真のラディカルな社会運動になった。
 こうした不幸な展開にもかかわらず、グローバルな商品ブーム、経済成長、そして見積もりで一四〇〇万の新規雇用が創出されたことにより、ルラの第二期において労働運動が復活した。ストライキが拡大し、労働組合は他の社会運動とともに連合組織を作り出し、新しい指導者が前面に登場し、労組は政府に圧力をかけるために政治的綱領を採択した。
 ルラが自ら後継者に選んだディルマ・ルセフが大統領に選出されたことで労働運動、社会運動、そして社会一般に一種の不安が作り出された。広範でかつ見苦しい連合を基礎に政権の座についた彼女は、この国を社会主義に向かって進めることを約束しなかったし、新自由主義経済制度を解体することさえ約束しなかった。彼女がルラ・ブランドの新自由主義プラス貧困層への社会プログラムを続けるか否かについて推測がなされてきたが、労働組合は彼女が行動するのを待ってはいない。ブラジルの隅から隅まで、広範な産業の労働者たちが動き始めている。
 これまでのところ、新しい戦闘性は新しいラディカリズムを伴ってはいない。全般的に言って、労働組合は政府に反対していない。労組はルセフ大統領、PT、政府に対して労働運動と貧困層への約束を履行するよう圧力をかけている。政府が世界経済危機の展開を前にして約束の履行をする意思をもたないか、できないことが明らかになった時、なにが起きるかはまだこれからのことである。
▼(ダン・ラボッツはメキシコの労働組合、社会運動、政治について幾つかの著書を書いている。彼は全米電機労組(UE)とFAT(Authentic Labor Front)のオンライン出版物である「Mexican Labor News and Analysis」の編集者。
(「インターナショナルビューポイント」二〇一一年一〇月号)

 


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