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    かけはし2011.8.29号

資本攻勢に対する労働者の反撃を

米欧の「国家破産」と円高恐慌

いっそう深まる資本主義の危機団結した闘いが展望を切り開く

崖っ淵に立つ
アメリカ帝国

 「自分の国が破産しようとしているのを傍観している支配階級など歴史上存在したのだろうか。しかも必要に迫られてではなく、政治的非主流派のイデオロギー的目的に奉仕するという理由で。そんなことは信じがたいように見えるが、それは実際に八月二日に姿をぼんやりと現した現実である。そしてそれはほかでもない世界のスーパーパワーであるアメリカ合衆国で起きていることなのだ」。
 「米国の債務上限引き上げの立法化は、通常その必要性がよく理解されているお決まりの手続きだ。共和党の立場は、右翼の露骨極まる予算削減の目的のためにこの措置を人質にとるものである。いまガスバーナーを振りかざして社会保障、高齢者医療保障、医療補助などのすべての社会政策を焼き払い、そしてカネ持ちには手をつけないことを共和党指導部は要求している。これは取り引きのためのポーズなのか。それとも共和党指導部は、資本の真の要求よりもティーパーティーに配慮しているのか」。
 これは米国のラディカル社会主義組織「ソリダリティー」の機関誌「アゲンスト・ザ・カレント(流れに抗して)」の論説の冒頭部分である。「われなき後に洪水よ来たれ」とうそぶく資本の習性は、まさに「洪水」のさなかに自らの政治的利害をゴリ押しするものとして現れる。
 米国債のデフォルト(債務不履行)の危機は、期限の八月二日に債務上限切り上げ法案が可決されたことで、ギリギリのところで回避されることになった。同法案は債務上限を二・一兆ドル幅引き上げるとともに、今後一〇年で財政赤字を二・四兆ドル削減するというもの。しかしこれは「当面の破綻回避」とさえ言えるものではない。
 米国の国家破産の危機は、大手格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が八月五日に米長期国債の格付けを再上位のトリプルAから史上初めてワンランク切り下げたことでいっそうのショックを与えることになった(トリプルAにとどまっている主要国はイギリス、ドイツ。フランス、カナダ)。

社会的支出の
さらなる削減


 一四・六兆ドルという空前の巨額にのぼった米国の債務は、ブッシュ前政権が発動したアフガニスタン・イラク侵略戦争の泥沼化による戦費の垂れ流しに加えて、二〇〇八年のリーマンショックが引き金となった金融恐慌の勃発の中で、巨額の財政出動によって金融機関を救済したことによるものである。「対テロ」戦争戦略と金融投機に主導された新自由主義グローバリゼーションの破綻の表現である、アメリカ帝国主義の没落は、まさに今日の資本主義システムの崩壊的危機を示すものにほかならない。
 アメリカの支配階級は、戦争のための支出と金融機関の救済がもたらした財政破綻を、公共サービスのリストラと公務員削減、そして新自由主義政策を通じて膨れ上がった貧困層への社会保障支出切り捨てによって切り抜けようとしている。そして貧困層への社会支出を「怠け者のためのムダ遣い」として攻撃する極右のアメリカ至上主義者「ティーパーティー」運動が、野党共和党内部で影響力を広げている。
 資本は、債務危機を最大限に利用して社会的保護政策・公共サービスのいっそうの解体、規制緩和への圧力を行使している。
 デフォルトの危機に追いつめられたオバマ政権は、赤字削減の圧力の中でいっそうの社会支出切り下げを強制されるだろう。失業率の高止まり、貧困の拡大、アメリカ経済のいっそうの低迷は、「アメリカ帝国」の世界的覇権の衰退をさらに促進している。それはアフガニスタンやイラクからの軍事的撤退を促す圧力ともなっている。そしてそれは確実に二〇一二年の大統領選挙でのオバマ再選の展望にとって重大な打撃になることは間違いない。

円高不況で追い
詰められる日本


 米国債のデフォルト危機は、欧州諸国にも深刻な影響をもたらした。八月八日に開催された主要七カ国(G7)財務省・中央銀行総裁会議は、金融市場の世界的不安定化の拡大に対して協調して「必要なあらゆる手段を取る」声明を発した。とりわけアイルランド、ギリシャの債務危機がユーロ圏第三、第四の経済規模を持つイタリア、スペインに波及し、両国の国債売却・金利高騰の動きが強まった。欧州金融安定化基金(EFSF)を通じたユーロ圏諸国国債の買い支えもいまだ機能しておらず、ユーロの脆弱性が各国の債務危機を通じて明らかになっている。
 米国のデフォルト危機を引き金にして、世界的な通貨不安と株安が進行している。日本はドル売り・ユーロ売りの中で円買いが進み、ついに八月一九日には一ドル=七五円台という最高値を記録した。円高の流れは米国・欧州経済のさらなる低落ともあいまって当面持続するだろうと予測されている。円高の圧力は、輸出による経済成長の復活に展望を見出してきた製造業を直撃している。株式市場では電機・自動車など大手製造業の株価の急速な暴落が進行した。
 「ホンダは一円の円高が進むと年間の営業利益が一五〇億円目減りする。今年度の想定為替レートは一ドル=八〇円。今のままでは年六〇〇億円が吹き飛ぶ計算だ」「自動車や電機など輸出企業の多くは想定為替レートが八〇円台前半。一九八五年のプラザ合意以来、日本企業は為替変動リスクを減らし、一定の円高水準でも利益を出せる体質を作った。だが〇七年以降の円高は『想定外』に速く、長い」(朝日新聞、八月二一日)。
 金融政策当局にとって「円安」に転じる一つの方途は金利を下げることである。しかし日本の金利はすでに年率にして〇・一%であり、これ以上の利下げは事実上効果がない。こうしてすでに広範に進んでいる製造業の生産拠点の海外移転にさらに拍車がかかることになる。製造業「空洞化」が決定的に進行することになる。
 日本の公的債務は政府・地方合わせて九〇〇兆円に達し、額の面から言えば米国より少ないとはいえ、対GDP比ではほぼ二倍と先進資本主義国中最悪である。長期国債の格付けではアメリカよりもさらにワンランク下の「ダブルAマイナス」なのだ。
 一九九〇年代初頭のバブル崩壊以後の「失われた一〇年」からの回復もなしえないまま二〇〇八年の金融恐慌の直撃を受け、その上に「三・一一」の東日本大震災と福島原発惨事によって、日本資本主義の構造的危機はさらに深刻化の度合いを増している。米国と欧州における債務危機、それと連動した最悪の「財政赤字国家」日本における「円高恐慌」はそれに追い打ちをかけようとしている。
 もはや帝国主義諸国は、政策的調整・協力のポーズで危機に立ち向かおうとすることもできない。

資本の「復興」
構想拒否する


 二〇〇八年のリーマンショックは、金融投機に主導された新自由主義的グローバル化の破綻を多くの人びとに明らかにした。新自由主義が強制した市場開放・自由貿易・民営化・規制緩和は「底辺の競争」への力学を解き放った。地域社会・農漁村の解体が一挙に進行した。二〇〇八年〜〇九年の「年越し派遣村」は低賃金・非正規労働の過酷な現実を社会問題化させた。
 この危機の中で各国の資本家政府の多くは、莫大な財政資金投入で大資本・金融機関を救済しつつ、あからさまな新自由主義政策に対して一定の「修正」のポーズや、国家的規制の強化を政策課題に掲げようとした。
 しかし新自由主義の攻勢はまったくやむことはなかった。日本でも派遣労働法の抜本改正の要求は資本・官僚の激しい抵抗にでくわした。アメリカでも欧州諸国でも債務危機の拡大は資本の生き残りをかけた労働者の大量解雇・賃下げ・労働条件切り下げの攻撃に直結した。そこにはまさに資本のむき出しの利害が貫かれている。
 東日本大震災、福島第一原発事故に直撃された日本においても、新たなレベルで深まった資本主義の危機の中で、原発災害や震災からの「復旧・復興」のための構想において、資本の側は新自由主義的プランを実行に移そうとしている。彼らは原発開発を手放そうとしないし、原発輸出をさらに進めようとしている。「復興構想」においても「漁業特区」を通じた大資本の参入、TPPへの参加、道州制の導入などを通じた大資本のための新たな地域社会再編を正面から主張している。
 「復興」のための財源作りを名目として大衆増税や社会政策の切り捨てが準備されている。菅政権に替わる政権がどのようなものであろうと、新政権の下で資本攻勢が強化されるだろうことは間違いない。米国や欧州でそうであるように、社会的危機が排外主義的極右潮流の浸透の基盤となることは共通である。
 だからこそ資本主義の危機の深まりの中で新しい階級闘争の隊伍を準備することが不可欠なのである。それは震災復興・脱原発社会をめざす闘いの中でも具体的に問われている。
 (八月二三日 河村 恵)


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