国家管理の強化・企業による個人情報商品化はゴメンだ
|
共通番号制度
のねらいとは
政府・与党社会保障改革検討本部(本部長・菅直人首相)は、六月三〇日、 民衆一人ひとりに個人番号「マイナンバー」を付け、所得など個人情報を一元管理し、税金徴収や社会保障給付などに利用するという「共通番号制度」導入にむけた「社会保障・税番号大綱」を決定した。
消費税増税とセットの共通番号制度の導入は、民衆に対する税金・社会保険の取り立てを強化し、入金額によって社会保障サービスや給付の格差を拡大させていく新自由主義政策の強化である。関連法案を今秋の臨時国会に提出する。二〇一四年六月には個人に番号を振り、一五年一月以降の運用開始を強行しようとねらっている。
共通番号制度は、税務署や自治体などが別々に把握している所得や納税、社会保障サービスなどの状況を一つの番号で管理し、年金、医療、介護保険、生活保護、労働保険、税務の六分野で活用する。将来的にはより幅広い分野での利用を目論んでいる。
民衆監視・管理のためにIC(登録証)カード(氏名、生年月日、性別、住所を記載し、ICチップに番号を記録する)を持たせ、住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)の住民票コードを利用し、健康保険証、年金手帳、介護保険証など一元化し各種の社会保障サービスが受けられるというふれこみだ。
「経済的弱者」
の生存権否定
ICカードによる身分証明書機能や個人情報の統合的なデータベース化は、従来の政権にとって重要な「任務」であった。つまり、住民登録・戸籍・収入・税・健康保険・医療・福祉給付・介護保険・年金・免許・旅券・犯歴などの個人情報を掴みきるシステム構築は国家権力の統治力を貫徹していくための重要な装置となるからだ。
だから日本経済団体連合会は、国家権力機構の強化のためにストレートに迫っていた。消費税増税を前提にした「社会保障と税の共通番号制度について」を提言(二〇一〇年二月一八日)し、「税・社会保障制度の透明性・信頼性向上、給付付税額控除などの新たな政策展開、電子行政推進、ICT社会(情報通信技術)の基盤として日本経団連としても長らく実現を求めてきたところであり、政府の取組みを高く評価する」と応援してきた。
プログラムの骨格は、@社会保障・税の共通番号としての機能に加え、本人の了解の下で省庁自治体間のデータ連携を可能とし、国民の利便性向上や行政の抜本的な効率化に資する、電子行政全般の共通基盤として検討A民間での活用を前提とした発展性を持った制度とする。これにより、新たなサービスの創出などを図る。B住基ネットや住民票コードなど、既存のネットワークや番号制度を活用する。Cプライバシーや情報セキュリティーに万般の配慮を行う。運用やアクセスの状況を監視する第三者機関についても検討を進めるというものだった。「省庁自治体間のデータ連携」には、当然、警察庁等も組み込まれており、治安弾圧体制強化にむけてデータを利用することは間違いない。
財界らの要求を受けて菅政権は、大綱で当面、六分野で活用するとした。だが経団連が求めている到達地平は、「民間での活用」であり、営利主義のために個人情報を多いに使おうとすることだ。
こんな財界と一体化して国の情報管理と民間の利用がセットになったら人権侵害は甚大だ。すでに民間レベルの個人情報流出事故は限りなく続出している。個人情報データを民間業者はおおいに利用し、個人情報の商品化が拡大している。各省庁・行政において公務員の守秘義務があっても、個人情報漏洩事件・秘密データ漏洩、犯罪歴・病歴の漏洩など数多く発生している。要するに現段階の「技術水準」では個人情報流出事故は、阻止できないことを証明しているのだ。
大綱は、共通番号導入で「所得把握の精度を向上」することによって「きめ細やかな社会保障給付」や「公平かつ公正な税制と社会保障を確立する」「国民の利便性が向上し国民の権利がより確実に守られる」などと言っている。
だが、その本音はもっと違うところにある。消費税増税によって低所得者ほど負担が重くなる「逆進性」の緩和として「給付つき税額控除」を掲げ、現金給付を行うためにも所得が正確に分かることが必要だと強調する。だが「給付つき税額控除」は、申告・申請が必要であり、自動的に諸事情によって申告できない人は対象外となってしまうのだ。「経済的弱者」の生存権否定だ。
「自己負担額」
軽減はウソだ
これだけではない。大綱は、共通番号制度導入の「有効性」として「総合合算制度」(仮称)をでっち上げた。「社会保障の各制度単位ではなく家計全体をトータルに捉えて医療・介護・保育・障害に関する自己負担の合計額に上限を設定」することが「低所得者対策」なのだとアプローチする。あたかも「自己負担額」が軽減するというトリックだ。各財界団体が提言してきたようにそのねらいは、社会保障費・各種行政サービス費用などの自己負担の増額にあり、とくに年金支給開始年齢引き上げと年金支給額削減だ。あくまでも財界の意向に忠実に応えていくという姿勢に貫かれている。「低所得者対策」だと主張するならば、その「上限」額はいくらなのか。現在の収奪額と比較して、どれだけ減額するというのだ。なぜ明記することをしない!「上限額」を言ってしまっては墓穴を掘ってしまうからだろう。前提にある政府・財界の社会保障費削減政策を撤回せず、「低所得者対策」などとよくも言えたものだ。
さらに大綱は、東日本大震災についても取り上げ、災害時に共通番号によって家を失った被災者の本人確認や、避難に支援がいる要介護者の把握などができるなどと「有効性」を押し出している。
そのキャンペーンとして経済同友会の長谷川閑史代表幹事は、奥山恵美子仙台市長と会談(七月一六日)し、奥山が被災後の行政サービス後退状況を受けて「国民番号制度の導入がぜひ必要だ」と述べ、長谷川が「国民IDの必要性を再認識させられた」と披露するほどだ。関西経済同友会も政府の「社会保障・税一体改革成案」に対して@医療費の自己負担割合引き上げA年金支給開始年齢引き上げB年金支給額削減などを提言し、消費税増税とともに「社会保障・税に関する共通番号制度」の早期導入を主張している。
不正利用増大
と人権の軽視
このように政府・財界がスクラムを組み「共通番号制度」導入の「有効性」を大きくコマーシャルしている。しかし、大綱は、不正アクセス、番号の不正利用、個人情報流出、プライバシーの侵害事件が次々と発生している現実を無視することができず、防止策について取り上げざるをえなかった。
大綱は、導入に対する「懸念」として@国家管理への懸念―個人情報の国家の一元管理の民衆の根深い不安・不信A個人情報の追跡・突合に対する懸念―本人が意図しない形の個人像が構築されたり、特定の個人が選別されて差別的に取り扱われたりするのではないかといった懸念B財産その他の被害への懸念―他人の番号を盗用する「成りすまし」などの不正の横行などを並べた。
そのうえで個人情報保護の措置として@目的外利用などに罰則強化A第三者機関を設置し行政や医療機関を監督するB自分の情報へのアクセス記録を本人が確認できる仕組み、医療分野の病歴などの個人情報保護のための特別法をつくると提示した。
さらにだめ押し的に大綱は、「番号制度を導入するには、同時にこのような個人情報の仕組みを整備することが不可欠かつ肝要であることを認識し、整備に向けて真摯に取り組まなければならない」と「決意表明」している。だが大綱が、こんな「異常」な「決意表明」をするならば、なぜ「共通番号制度」導入をそんなに急がなければならないのだ。
要するに大綱を貫徹することの「動揺」を明らかにすることによって、共通番号制導入の限界・懸念・危険性があるが強行突破するしかないという「ふざけた」結論なのである。人権軽視の不完全な大綱は撤回しかない。
コスト負担は
消費税増税で
大綱の大きな問題は、新たなシステム開発には膨大なカネがかかることははっきりしているが、その金額を明記せず、その財源についても無視していることだ。「社会保障と税の共通番号制度に関する検討会」(一〇年六月)段階では、導入コストは最大六千百億円程度と試算し、利用範囲の拡大によっては最低二千億円以上膨らむとしていた。現在の財政破綻状況のなかでこんな巨額な費用を作ることはできない。開発費と維持費は消費税増税を前提にしていることは間違いない。
プライバシー保護を強化すると言うならば「自己の個人情報をコントロールする権利」と「個人情報の開示請求権」、「違法な情報利用の中止請求権」、「不服申し立て制度」などの確立を優先し、法制化しなければならない。自己コントロール権とプライバシー権の防衛に比重をおき、情報公開され、公正な「第三者機関」が必要だ。だが大綱は、人権防衛の観点からの個人情報法改正の内容など具体的に提示しないように不誠実の姿勢に貫かれている。だから不正アクセス阻止のためのセキュリティーシステム、その態勢が未確立のまま強行突破する。
共通番号導入反対!消費税増税阻止!不当なシステム開発費支出を許してはならない。 (遠山裕樹)
よびかけ
国家による「慰霊・追悼」を許すな8・15反「靖国」行動
お話:加納実紀代さん「原爆・原発・天皇制」
天皇アキヒトは、東日本大震災にあたってマスメディアを通して「ビデオメッセージ」を流し、関東の避難所を皮切りに、東北三県の被災地
をまわって、被災者の「慰問」と死者の「鎮魂」をお こなってみせた。
その姿に「感激」する地元の人たちの映像も繰り返し流された。
天皇の行為は、それが天皇の行為である限り、批判や疑問の声など始めから存在しないかのように扱われる。ただただ、ありがたく気高い「無私」の行為として賛美されるだけだ。しかし、天皇のこうした行為は、現実の政治のひどさを隠蔽し、抽象的で漠とした「日本」なるものの共同性に、被災者をふたたび包摂・回収していく行為にしかなりえない。そのことによって、人びとの具体的な悲しみや怒りは心の深い部分に押し込められ、大文字の「日本」は無傷のままで回復されるのだ。そしてそれは、歴史上そうであったように、「復興」の掛け声のもとで現実に進行する、被災者の切り捨て=「棄民」という現実を、覆い隠す役割をはたすだろう。
この意味で、8月15日を中心として行われる天皇の「慰霊・追悼」と今回の一連の天皇の行為はつながっているといわねばならない。
「全国戦没者追悼式」において発せられる天皇の「おことば」は、一貫して「かつての戦争」の死者に思いを馳せ、彼らの「尊い犠牲」によって、現在の日本の「繁栄」が築かれたのだというロジックで貫かれている。3・11以後、原発事故はいまだに進行中であり、それを収束させるためだけでも、さらに多くの人びとの生命を、危険に晒さざる
を得ない。そもそも原発自体が「犠牲」を要求せざるを得ないシステムなのだ。こうした、新たに生み出される「尊い犠牲者」をも、震災後の「復興」のための礎として、天皇は顕彰することになるのだろうか?
われわれは、3・11以後の現実において、あらためて登場している天皇制を撃ち、国家による、あらゆる死に対する意味づけを核とした、8・15の「追悼空間」=全国戦没者追悼式と靖国思想──新しい国立の無宗教の追悼施設、あるいは千鳥ケ淵拡充という方向性も含めて──の解体に向けた行動に、今年も取り組んでいきたい。多くの方々の参加を強く訴える。
?日時:8月15日(月)開場:12時45分・午後1時開始、デモ出発:3時30分(予定)
?場所:在日韓国YMCA9階ホール(JR水道橋駅下車)
?主催:国家による「慰霊・追悼」を許すな!8・15反「靖国」行動
|