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「震災だからこそ」最賃大幅引き上げを最賃空洞化を狙う大資本の策動を許すな
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【宮城】七月二六日、厚労省中央最低賃金審議会小委員会は「引き上げ額の目安」を示した。「六円決着」とマスメディアは報じた。しかし六円(「全国加重平均」)という数字に何の意味があるのか。表が示すように、圧倒的多数の地域は「一円」でしかなかったのだ。
「目安」は被
災地切り捨て
一円以外は次の九都道府県。北海道一三円、埼玉五円、千葉四円、東京一六円、神奈川一八円、愛知四円、大阪四円、兵庫二円、広島六円。生活保護費との逆転解消をめざしたため、と報道されている。
ところが「生活保護費との逆転」は九都道府県あった。厚労省の新データによれば、北海道三一円、神奈川二三円、東京一六円、埼玉九円、宮城八円、大阪七円、広島六円、兵庫三円、京都一円。つまり逆転解消をめざしたと言うものの、今回の引き上げ額で辛うじて逆転解消に達した地域は、東京、広島、京都の三地域にすぎないのだ。被災県である宮城にいたっては一円、逆転額八円には遠く及ばなかった。ちなみに京都も一円である。
被災三県も、青森から群馬までも、一律「一円」だ。「特区」が流行語になっているが、おかしなことに最賃に「特区」はないということなのだろう。事実上の被災地切り捨てと言わなければならない。
一円以上とされた地域が相対的に経済の落ち込みが軽微である地域であることも明らかだ。結果として、最賃の地域間格差は一層ひどくなった。
「震災だから仕方がない」、マスメディアの紙面では暗黙の内にこの空気が垂れ流されている。上記小委員会では大資本で構成される経営側が、中小経営に犠牲を押しつけながら自らの取り分はがっちりと確保していることを棚に上げ、厚かましくも中小経営を守るためと称して、震災を最大限に利用して引き上げに徹底抵抗した。しかしこの大資本の傲慢さ、社会的無責任をマスメディアが批判することはない。
大資本依存の構
造を突き崩そう
しかし本来、「震災だからこそ」最賃引き上げは決定的に重要だ、と方向は逆転されなければならなかった。とりわけ被災地において、復旧・復興の核心はいのちの復興、くらしの復興だ。そこにおける、くらしを支えるに足る雇用の確保、したがって生計を保障できる最賃の決定的な位置は、今さらくり返すまでもない。
一年前、中央審議会では労使の緊迫した対立が続いていた。最低賃金の引き上げは、非正規雇用労働者にとって切実な要求である。この最賃水準では貧困を脱却できない。政治はどうするのかが問われた。
自民党政権末期にも修正や調整がなされた。まして新しい政権は「貧困と格差」に対して、自民党政権末期以上に重きを置くのは当然であり、制度・政策的転換にも挑戦することが迫られていた。
そのような期待が「最賃引き上げ」に寄せられた。「脱・構造改革」の主張が展開され、マスメディアも報道を重ねた。二〇一〇年六月には、「できるだけ早期に全国最低八〇〇円以上、二〇年までに全国平均一〇〇〇円」をめざす、との政労使合意が交わされた。その上での昨年引き上げ額は不十分だったとはいえ、ともかくその過程全体は政権交代による成果と言えた。
一年後の今、政府・与党の最賃への関心は極度に低下している。マスメディアの扱いも同様だ。大震災を経て、経営側は今年度の最賃抑制のみならず「政労使合意」そのものを「なし」にしようとしている。
また、厚労省の生活保護基準部会は生活保護費の給付削減をねらい「最低賃金より高い生活保護費」という逆転した議論を復活させようとしている。
「震災だから仕方がない」論はその意味で、その底に根の深い攻撃を隠している。それを徹底的に跳ね返さなければならない。そしてわれわれもまた、その論理をまさに深いところから逆転させなければならない。実際「三・一一」は、これまで続いてきた社会・経済の大資本依存構造の持続不可能性を突き付け、それを根本から、人びとの必要という観点から立て直すことを求めている。
最賃闘争は地域に舞台を移した。地域最賃の審議が始まっている。被災地を先頭に、くらしと社会の立て直しを要求として真っ直ぐ突き出し、大資本にその負担を求める最賃闘争を追求しよう。その立場に立って宮城全労協は七月二三日、宮城地方最低賃金審議会に対して意見書を提出した。 (八木)
資料
宮城地方最低賃金
審議会への意見書
(2011年7月23日)
2011年度の審議にあたり、宮城全労協は宮城地方最低賃金審査会に対して以下の意見を述べます。
1.最低賃金を全国一律で時給1,000円以上とすること。
2.「生活保護水準との逆転」を解消すること。
3.雇用戦略対話等の経緯を踏まえ、政府と大企業に最賃引き上げの対策を求めること。
4.全審議を公開すること。審議のあり方を中小零細企業労働者、非正規雇用労働者の声を十分に反映させるものとすること。
大震災からの「復旧・復興」はあまりにも遅く不十分であり、地震・津波・原発事故の被災地では怒りと絶望が渦巻いています。「自殺・孤独死・関連死」により、連日、多くの人々の命が奪われています。このような現実に踏まえて審議がなされ、被災地と被災民衆が希望を見出しうる最低賃金の大幅な引き上げを答申されるよう要請し、意見とします。
以上の意見に関連して、その理由を述べます。
(1)大震災による生活困窮を救うためにも、最低賃金の引き上げが必要です。
(2)「生活保護水準との逆転」はさらに拡大しています。
(3)貧困化が進んでおり、政労使合意の流れを逆転させてはなりません。
(4)政府と大企業に、制度的・政策的な最賃引き上げ対策を求めます。
(1)大震災による生活困窮を救うためにも、最低賃金の引き上げが必要です。
経営者側からは改定目安審議にあたって「(大震災による深刻な影響が拡がるなかで)経営の立て直しと雇用の維持に全力で取り組んでいる」ことに配慮を求める意見が出されています(6月16日、全国37経営者協会の要望)。
これが大震災を理由とした最低賃金の抑制を意味するなら、私たちは認めることはできません。
大震災により宮城県でも被災地をはじめ各地で解雇、離職が相次いでいます。多数の労働者や漁業従事者たちなどが、緊急雇用対策による低賃金の臨時採用でかろうじて生活費をつないでいます。また厳しい雇用情勢の中で再就職できたとしても、非正規雇用が中心です。低すぎる最低賃金水準が重くのしかかり、大震災によって被災地の賃金をさらに押し下げる構造にあります。
避難所生活を余儀なくされている人々、破壊された自宅に住み続ける人々、介護等に心身ともに疲労困憊の日々を送っている人々。仮設住宅に入ることができても、明日の展望がもてない人々。「健康で文化的な最低限度の生活」はどこにあるというのでしょうか。
今年度の最賃引き上げが、とくに被災地に対して果たす役割はきわめて大きなものがあります。被災地を「励ます」意味においても、今年度最賃審議が特別な位置にあることを十分に認識され、大幅引き上げの実現に向けて審議を尽くすことを強く要請します。
また大震災は、最低賃金が全国一律の制度であるべきことの意味を示しています。被災県の最低賃金引き上げが大震災のゆえに困難とされることは、被災地の民衆生活に対する二重の打撃となるからです。とくに被災地での審議においては「全国一律」の立場が強調されるべきです。
(2)「生活保護水準との逆転」はさらに拡大しています。
厚生労働省は7月13日、最新データにもとづき、最低賃金が生活保護費を下回る地域は昨年改定時の5から9都道府県に増えたと発表しました。
最低賃金が貧困化の進行に追いついていない実態が、ここでも示されています。「逆転」の即時解消が必要です。
(逆転の差額は、北海道31円、神奈川23円、東京16円、埼玉9円、宮城8円、大阪7円、広島6円、兵庫3円、京都1円。)
日本弁護士連合会は厚生労働大臣と中央最低賃金審議会長に提出した意見書で、「全国各地域における地域別最低賃金金額が、人たるに値する生活を保障するのにふさわしい水準まで大幅に引き上げられるべきであり、生活保護基準の切下げによって『生活保護に係る施策との整合性』が図られるようなことがあってはならない」と指摘し、さらに「整合性」への配慮にあたっての具体的な提案も行っています(6月16日「最低賃金制度の運用に関する意見書」)。これらの意見を取り入れるべきです。
一方、厚生労働省は5年に一度の生活保護水準の見直しを進めています(生活保護基準部会、4月19日初会合)。「1950年の生活保護創設以来初となる制度の抜本改革に踏み切る意向」「給付総額の削減を目指す」、「社会のセーフティネット水準全体を押し下げる可能性もある」と報道されています(4月20日、毎日新聞)。
最低賃金の抑制・引き下げをねらい「生活保護費が年金や最低賃金より高いのはおかしい」という逆転した論法が自民党政権時代に強まりましたが、これは厳しい批判にさらされました。改正最低賃金法(08年)による「生活保護に係る施策との整合性」も、労働者の「健康で文化的な最低限度の生活」が明記されています。それらを無視する議論を復活させることは認められません。
(3)貧困化が進んでおり、政労使合意の流れを逆転させてはなりません。
先にあげた経営者側の「要望」では、「ここ数年の最低賃金の大幅な引き上げによる中小・零細企業等の経営および雇用への影響を大変心配」している、「平成19年以降の改定はそれ以前とは大きく異なり、大幅な引き上げが続いて」いるなど、この間の最賃引き上げの経緯に反対の姿勢が示されています。
「要望」はさらに、「平成19年7月の第2回成長力底上げ推進円卓会議や昨年6月の雇用戦略会議での政労使の合意内容が、その後の目安審議や地域の審議に大きく影響を与えている」「昨年のような審議状況は、地域の実情に即した自主性ある最低賃金審議とはいえない状況である」と考えている、と述べています。
しかし、いわゆる「働く貧困層」の増大が社会的な問題となり、小泉政権下での際立った最賃抑制政策への批判が高まった経緯をあらためて確認すべきです。
「構造改革路線」によって疲弊した労働者の生活改善と、しいては地域経済社会の再構築のために、最低賃金の引き上げが必要だという認識が国民的な支持を得たからこそ「平成19年7月以降」の事態がもたらされたのでした。
厚生労働省が7月12日に公表した国民生活基礎調査によれば「相対的貧困率」(09年)は16・0%であり、前回調査の06年の数値より0・3ポイント上昇し、最悪となりました。17歳以下では1・5ポイントも上昇しています。
貧困化の進行には、最低賃金の全般的な低水準および「生活保護水準との逆転」すら解消されていないことが、大きく影響しています。まして大震災によって生活困窮が拡大しており、政労使合意にもとづく最賃引き上げの必要性はますます高まっています。
(4)政府と大企業に制度的・政策的な最賃引き上げ対策を求めます。
中小零細企業の多くが厳しい経営に直面していることは明らかです。そのことを理由に、最低賃金の引き上げが困難であるというならば、けっきょく犠牲は中小零細企業で働く労働者に一方的に押し付けられることになり、最賃法の趣旨そのものに反することとなります。
昨年12月の雇用戦略対話で確認された「雇用戦略・基本方針2011」では、地域最賃700円以下の地域で「最低賃金引き上げ支援対策費」の補助が盛り込まれています。政府と経営者団体はそれらの支援をさらに充実させるとともに、地域経済を支えているのは中小零細企業とその労働者であるとの観点から、制度的・政策的な対策を打ち出すべきです。
特に、いわゆる「官製ワーキング・プア」への対策として、公共工事・事業等での適正な労働条件を確保する「公契約条例」の全国的な制定に政府が取り組むべきです。
また大震災による「サプライチェーン」の破壊は大企業に深刻な影響を与えました。製品・部材の供給などが地域の中小零細企業によって支えられている現実を大企業は再認識し、中小零細企業との関係を見直すきっかけとすべきです。調達コストの切り下げに頼るなどの姿勢をあらため、地域の雇用と賃金に対する社会的責任を果たすよう、経営者団体と大企業に再検討を強く求めるべきです。
(2011年7月23日/宮城全労協)
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