事実調べ、全証拠の開示を求め
石川さんに再審で無罪判決を
|
【東京東部】七月八日、東京都江東区で部落解放江東共闘会議が主催した「狭山江東地区集会」が開催され、会場いっぱいの六〇人が参加した。この集会は一九九四年一二月に石川一雄さんが仮出獄した翌々年の九六年七月から、石川一雄さんと連れ合いの早智子さんを招いて毎年この時期に開かれてきた。国家権力による犯罪であり、部落差別を利用した国家による部落差別である狭山事件を糾弾し、石川さんの無罪をかちとり部落差別をなくすことを目指して開かれてきた集会は今年で一六回目となる。
裁判長が検察官
に証拠開示を勧告
二〇〇六年五月二三日に行われた第三次再審請求および筆跡鑑定、法医学者による鑑定書などの新証拠提出、事実調べ再審を求める一〇〇万人署名提出などの圧力により、〇七年に前任者から交代した門野博裁判長は、弁護団、検察、裁判所の三者協議をこれまで六回開催し、検察官に対して証拠開示を勧告し、数的にも限定され恣意的に選択されたものではあるが幾つかの重要証拠が開示されてきた。石川さんと弁護団は全ての証拠開示だけでなく、これまで一度も行われてこなかった事実調べ、そしてそれに基づいた再審、そして無罪判決を求めている。
再審に向けて
大きな動きを
集会は東交一〇号線乗務支部の古谷野幸夫さんによる主催者代表あいさつから始まり、続けて六月一九日にテレビ朝日系列「サンデーフロントライン」で放映された約三〇分の狭山事件検証番組を鑑賞した。この番組は犯人取り逃がしの失態隠しのために当初から見込み捜査、別件逮捕によるえん罪の可能性が極めて高いことを、石川さんをはじめ関係者への取材やさまざまな証拠事例を通じて非常にわかりやすく紹介した内容である。
つぎに江東共闘執行委員の真田さんから集会基調が提案され、続けて「第三次再審請求の現状と展望」と題して狭山再審弁護団の河村健夫弁護士が講演した。
「証拠開示をめぐって協議が行われている。取調官はすべての証拠を裁判所に提出するわけではなく、有罪立証に役に立つ証拠だけを裁判所に出す。裁判員裁判などが扱う重大事件の場合は全証拠の一〇%ほどしか出されない。狭山事件のようなえん罪をめぐるケースでは、取調官のロッカーに眠っている証拠は宝の山。どうやってこの証拠を少しでも多く引き出させるかが重要。この間、いくつかのえん罪事件でも新たに開示された証拠を通じて無罪をかちとってきた。しかしこれはあくまで日本に限ったことであり他の先進国では証拠はすべてオープンにしたうえで審理するということが当たり前になっている。日本の法務検察は他の先進国から大きく遅れている」。
「〇九年一二月一六日の門野裁判長による証拠開示勧告によって弁護団が要求していた八項目のうち、五項目三六点の証拠が検察から開示された。そのなかに六三年五月二三日、つまり石川さんが逮捕された当日に狭山警察署長宛に書いた「上申書」がある。この「上申書」は、真犯人が脅迫状(五月一日付)を書いた期日と極めて近く、また比較検討に必要なまとまった文字数があることから重要な証拠である。弁護団はこれについて筆跡鑑定を行い、石川さんの筆跡と脅迫状の筆跡が異なるという論理面でも非常にレベルの高い筆跡鑑定書を証拠として提出した」。
「また一般的に有罪判決を書く際に裁判官が重要視するのが『秘密の暴露』である。犯人しか供述できない情報に基づく捜査で証拠や確証を得た場合のことを言う。今回開示された証拠のなかに九本の取り調べ録音テープがある。検察側は丁寧にテープ起こしをして出してきた。『これだけの自白をしているのだから犯人なんです』というアピールのつもりかもしれないが、このテープは『自白』させられた後の取調べ記録。自白にもとづいて鞄が発見されたとする『秘密の暴露』による有罪判決の認定が誤っていたということを今後明らかにする作業にも取り掛かる」。
「開示された証拠だけでなく、こちら側が要求していたにもかかわらず開示されなかったことについても追及する必要がある。殺害現場とされた雑木林での血痕反応検査の結果に関する捜査書類の開示を求めていたが、検察官からは『不見当』(見当たらない)という回答が返ってきた。存在しないならその理由説明を求めている。犯行現場での血痕反応という極めて初歩的な捜査がなぜ行われていないのかを明らかにさせなければならない」。
「いま取り調べの全面可視化を求める流れがある。過去の事件については証拠の全面的開示を求める必要がある。また証拠開示だけでなく、法医学者への尋問などの事実調べを実現させたい。この間いくつものえん罪事件が証拠開示をつうじた再審で無罪を勝ち取っている。これを追い風にしたい。しかし狭山事件の審理を担当する東京高裁第四刑事部では裁判長が短い期間で代わることが多い。なぜそうなっているのか不思議だが、いままた新たに小川正持担当裁判長に代わった。これまでのこちら側の主張をしっかりと読んでもらい再審、そして無罪へとつなげたい。証拠が開示されただけでは無罪になるかどうかはわからない。こちら側のしっかりとした論理も必要だ。『もう待てない』という声もあるが、今年から来年にかけて再審での大きな動きを作り出すために、もう少しだけ証拠開示や事実調べをきっちりと行い再審を実現したい」。
布川事件の桜
井さんが激励
若干の質疑が行われた後、石川一雄さん、早智子さんによるアピール。一雄さんは「今日も午前中、最高裁前でアピール、署名行動を行ってきた。証拠の全面開示もそうだが、裁判官にはなんとしても現場に足を運んでもらいたい。映像でも出てきたとおり、犯行が行われたとされる雑木林のすぐそばに何人もの人がいた。誰も物音や声など聞いていないと証言している。現場に行けば調書とのズレがわかるはずだ。テレビの影響なのか、今日の裁判所前では若い人がたくさん署名してくれた。とても嬉しい。一日もはやく無罪を勝ち取りたい」と訴えた。そして今回も自作の短歌を披露してくれた。
つづいて早智子さん。「高裁前での署名活動で、横浜事件の被告の方のお連れ合いが声をかけてくれた。『石川さんの無罪を信じてる』と。署名用紙もすぐになくなって欄外にまで名前を書いてもらった。無実の罪を晴らす風が吹いています。昨日・一昨日と群馬県の水上で行われた東日本研究集会に参加し、布川事件で証拠開示によって無罪を勝ち取った桜井さんとお話をした。桜井さんは『石川さんにもこのすがすがしい気持ちを味わってもらいたい』と激励してくれた。えん罪事件に対する世論の風が吹いています。なんとしても無罪を勝ち取りたい。そして夢だった夜間中学や海外旅行などを実現したい。無罪を勝ち取った後にも部落解放という大きなたたかいが待っています」。
つづいてふれあい江東ユニオンの前田かおるさんが「狭山差別裁判糾弾!事実調べ、全証拠開示実現!石川一雄さんの一日も早い再審無罪を勝ち取るための決議」を読み上げ、全体の拍手で確認をした。
最後に部落解放同盟江東支部の雨宮圀清さんが閉会のあいさつを行った。「この集会は九六年から続けられてきたが、当初から無罪を勝ち取って早くおしまいにしたい、と言ってきた。石川さんはまだまだ元気だが、再審無罪の実現を長引かせてはならない。今年中にも大きな動きを作り出していこう」。最後に雨宮さんの団結がんばろうで集会を終えた。 (H)
狭山再審を求める市民集会
足利・布川に続け! 全証拠の開示を求める強力な運動を
七月一二日、東京・御茶ノ水の総評会館で「狭山事件の再審を求める市民集会 『足利、布川につづけ!〜証拠開示、事実調べから再審へ!』」が行われ、会場を埋め尽くす四〇〇人が参加した。この日の集会は一九六三年に埼玉県狭山市で起こった女子高校生殺害事件(狭山事件)において、部落差別にもとづくでっち上げで犯人とされた石川一男さんの再審無実を勝ち取るために行われた。
二〇〇六年五月二三日、石川さんは東京高裁に第三次再審請求を申し立てた。裁判所、検察、弁護団の七回目の「三者協議」を前にして証拠開示、事実調べ、再審無実を勝ち取ろうという熱気がこの日の集会には感じられた。
開会あいさつを行った庭山英雄さん(狭山事件の再審を求める市民の会代表)は、「私の感触では再審への可能性が強い」と訴えた。特別アピールを俳優の入川保則さんが行った。入川さんは今年一月にがんのため「余命半年」と宣告された。入川さんは「余命四五日となったが、石川さんの無実を勝ち取るまで死なない」と力強く語った。
石川一雄さんは「今年中に決着をつけなければならない。無罪を勝ち取ってからが私の本当の人生だ」と述べ「猛暑の中耐えて闘う幾星霜、みんなの力で三次で決着」と思いを示す歌を披露した。連れ合いの早智子さんも「無実の花を咲かせよう」と語った。
国会議員から福島みずほさん(社民党)辻恵さん(民主党)があいさつした後、主任弁護人の中山武敏さん、弁護団事務局長の中北龍太郎さんが第三次再審に向けた現状について報告した。「ようやく再審に向けて動き出した。この動きを強めていく必要がある。五月に東京高裁刑事4部の裁判長が代わり、小川正持裁判長となったが新しい構成となった裁判官をこの流れに引き込んでいきたい」「いまスコップの指紋の検査結果報告書、万年筆の置き場所の図面の証拠開示、事件当日に『犯行現場』とされる雑木林の隣で農作業をしていたOさんの証人喚問を求めている」「四七年ぶりに証拠開示された石川さんの逮捕直後の上申書の筆跡と、犯人の脅迫状の筆跡との違いは一目瞭然だ」。
基調報告を行った部落解放同盟中央本部の松岡徹書記長は「すべての取り調べを可視化することと全証拠の開示を求める強力な運動が必要だ。全証拠の開示で無実を満天下に明らかにすることができる。さらに証拠開示を法制化する一〇〇万人署名運動を展開しよう」と方針提起した。
特別報告が布川事件で無罪を勝ち取った桜井昌司さん、同弁護団の佐藤米生さんから行われ、連帯あいさつを足利事件で再審無罪が確定した菅家利和さん、袴田事件再審請求人の袴田ひで子さん(袴田死刑囚のお姉さん)、袴田巌さんを救援する清水・静岡市民の会事務局長の山崎俊樹さんが行った。
最後に狭山事件の再審を求める市民の会事務局次長の布施哲也がまとめの発言、組坂繁之部落解放同盟委員長の音頭で、再審勝利への決意を打ち固めた。
(K)
【訂正】本紙6月20日号の5面上段の写真のエトキが「旧つくる会系の教科書内容を紹介する伊賀正浩さん」となっていますが、「竹林さん(教育合同)」に訂正し、おわびします。
パンフ紹介
発行:福島原発事故緊急会議・被曝労働問題プロジェクト
『被ばく労働自己防衛マニュアル』――あなたの命を「使い捨て」から守るために
福島第一原発事故は、原発で働く幾重もの下請労働者の生命と健康をむしばむ労働によってその運転が支えられていることを改めて明らかにした。国や電力会社は労働者被ばくへの責任を全く取ろうとしていない。それどころか、この深刻な被害を隠ぺいし、なかったものにしようとしている。多数の下請労働者は、肉体も精神もボロボロにされたまま切り捨てられることになる。
脱原発をめざすということは、こうした放射能まみれの被ばく労働をなくすこと、それを生み出す差別構造を解体していくことを意味する。しかしそのためには当面する原発事故の収束のために被ばくを強制される労働者が自ら労働の内容を知り、生命と健康を自ら守ることが必要である。
この「マニュアル」は放射能の基礎知識、労働者保護制度についての説明から始まり、「労働条件と現場環境の確認」、「仕事を始める前の注意」、「装備の確認・緊急時の備え」、「緊急事態が起きた時」、「労災と補償、損害賠償」など簡潔・分かりやすい説明で、原発労働にたずさわる人々にとって重要な助言をしている。
この「マニュアル」は福島現地や各地の寄せ場などで原発労働に動員される人びとに無料で配布されるが、「脱原発」を目指すすべての人びとにとっても必読だ。医療関係者などからも注文があり、東京新聞七月一四日付で詳しく紹介されたこともあって注目を集めている。 (K)
入手希望の方は
福島原発事故緊急会議
Email:
contact@2011shinsai.info
あるいは
ピープルズ・プラン研究所東京都文京区関口1―44―3 関口ビル
Tel 03-6424-5748
Fax 03-6424-5749
一冊 200円
|