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    かけはし2011.7.25号

休止原発再稼働に余地などない

東電福島原発は未だ緊急事態だ

汚染状況と事故情報を完全公開し被曝防護体制構築に真しに取り組め

脱原発も事故収
束も「希望」?

 七月一三日に「朝日新聞」は社説紙面を拡大し、高リスク炉から順次、廃炉へ∞核燃料サイクルは撤退∞風・光・熱―大きく育てよう∞分散型へ送電網の分離を≠ニ、「原発ゼロ社会」の提言を行った。これも追い風に利用するかのように、菅首相は翌一四日に「脱原発依存」を目指す考えを会見で表明したが、すぐさま個人の意見≠ニして格下げをした。震災発生直前に閣議決定された「再生可能エネルギー促進法案」のが延長国会に上程され、成立を支持する層からの応援はあるものの支持率は回復しない。延長された今国会の会期は八月三一日まで。民主党の次期代表選出馬が噂されている幹部たちは、菅直人と比較するといずれも「原発依存」だ。再生エネルギー法案は、脱原発運動と地球温暖化を防止する市民らが求め続け、政権交代によってようやく実現に近づいた成果であり、成立させねばならない。
 菅首相と細野原発事故担当相は七月一六日、福島県郡山市内で福島第一原発周辺十二市町村の首長らと会談した。東京電力が五月一七日に作成した「事故の収束に向けた道筋」(六月一七日に一部修正)に関し、細野担当相は七月一七日に三カ月の期限となるステップ1は「ほぼ達成できた」と報告、首相は「多くの皆さんが故郷に帰れるようにステップ2を前倒しさせたい」と語ったという。それぞれの主な目標は、ステップ1が原子炉と燃料プールを「安定的に冷却できている」、ステップ2が「冷温停止状態とする」だ。これまで東京電力に作成させてきた工程表≠ステップ2から政府が統合し、七月一九日に発表するという。

事故情報は今
も統制管理下

 いまだ原子力災害対策特別措置法(原災法)にもとづく原子力緊急事態宣言体制下にある。国は首相を本部長とする原子力災害対策本部を設置し、「緊急事態応急対策実施区域において指定行政機関の長、指定地方行政機関の長、地方公共団体の長その他の執行機関、指定公共機関、指定地方公共機関及び原子力事業者の原子力防災組織が防災計画又は原子力事業者防災業務計画に基づいて実施する緊急事態応急対策の総合調整」にあたっている。原災法が定める緊急事態応急対策は、避難の勧告又は指示、放射線量の測定その他原子力災害に関する情報の収集、被災者の救難や救助、犯罪の予防や交通の規制、居住者等の被ばく放射線量の測定、放射性物質による汚染の除去など。三・一一以降の政府や電力会社の発表は、原災法にもとづく関係当局間での調整後の情報であり、一般市民向けではないのである。
 原子力緊急事態が解除されるのは、福島第一原発1〜3号機の冷温停止後とされ、現段階の工程表≠フステップ2では、冷温停止には三〜六カ月の期間を要する。原子力緊急事態解除宣言は次の首相が行う可能性が大きい。解除宣言後の政府や東京電力、関係当局の発表も、福島第一原発を運転し事故を発生させた当事者によるものとなるであろう。

チェルノブイリ
以下の被曝基準


 三月一二日までに半径二〇キロ圏内の避難指示を出し、四月二一日に同区域を警戒区域に指定した。四月二二日、半径二〇から三〇キロ圏内の屋内退避を解除し、いわき市の一部などを除外して計画的避難区域を設定、三〇キロ圏外の飯館村などを緊急時避難準備区域に設定した。六月一六日には、ホットスポットを特定避難推奨地点に設定している。これら避難区域は、事故発生から累積線量で年間二〇ミリシーベルトを超えるおそれのある地域としている。
 四月一九日、文科省は福島県内の教育機関に対し「一六時間の屋内(木造)、八時間の屋外活動の生活パターンを想定すると、年間二〇ミリシーベルトに到達する空間線量率は、屋外で毎時三・八マイクロシーベルト、屋内(木造)で毎時一・五二マイクロシーベルトである」とし、子どもたちに年間二〇ミリシーベルトまでの被曝を受容させてもよいという考え方を示した。
 年間二〇ミリシーベルトを私たちはどういうレベルとして考えるのか。
 一九九一年にウクライナでは、「最も影響を受けやすい人々、つまり一九八六年に生まれた子どもたちに対するチェルノブイリ事故による被曝量を、どのような環境のもとでも(自然放射線による被曝を除いて)年間一ミリシーベルト以下に、言い換えれば一生の被曝量を七〇ミリシーベルト以下に抑える」という基本概念として、法律「チェルノブイリ原発事故被災者の定義と社会的保護について」を制定、放射能汚染ゾーンを次のように定義している(『チェルノブイリ事故による放射能災害―国際共同研究報告』今中哲二編/技術と人間)。
 避難ゾーン:一九八六年に住民が避難した地域。
 移住義務ゾーン:年間被曝量五ミリシーベルト以上。
 移住権利ゾーン:年間被曝量一ミリシーベルト以上。
 放射能管理強化ゾーン:年間被曝量〇・五ミリシーベルト以上。
 公衆の年間被曝線量を一ミリシーベルト以下に抑えようという国際基準に沿ったものだ。ベラルーシも同様のゾーン区分を行っている。

年1ミリシーベ
ルト未満必ず


 個人が放射線計測器を手に、あるいは住民の要求により多くの自治体が町の放射線計測を行い、ホームページで公表している。インターネット上で汚染状況のデータベース≠ェ出来上がりつつある。現在、注目を浴び、市民が利用し、週刊誌の多くが引用しているのが群馬大学の早川由紀夫さんの「火山ブログ」に掲載されている汚染地図だ。政府が作成し公表している汚染地図は福島県内までだが、岩手から関東まで広域をカバーしている。自治体等の計測データを地図に落とし、火山から吐き出される火山灰の分布の知見の応用から陸上に降雨などによって舞い降りた放射能の線量分布に加え、放射能雲が流れた時期とルートも推測して公開している。
 政府が作成し公表している汚染地図は、米軍と文科省が航空機により計測したデータがもとで、毎時一・〇マイクロシーベルト以上しか濃度はわからない。早川さんの地図は毎時〇・二五マイクロシーベルト以上の濃度分けをしている。線量が管理されている避難区域外の稲わらを飼料とした牛の肉からセシウムが検出され問題となっているが、政府の地図では汚染が判別できず、早川さんの地図では予測が可能となる。政府も、土壌の実測データなどを集めているはずだが、情報統制が逆効果となり、食品の汚染拡大を招いている。
 子どもたちを放射能から守るためのネットワークが広がっている。文科省の年間二〇ミリシーベルトは毎時三・八マイクロシーベルト、年間一ミリシーベルトならば毎時〇・一九マイクロシーベルトだ。全国で先駆けて官製ワーキングプアを規制するために「公契約条例」を制定した千葉県野田市は、保育所や幼稚園、小中学校などの測定で毎時〇・一九マイクロシーベルトを超えた場合は、敷地内の複数の場所で詳細に線量を測定し、〇・三マイクロシーベルトを超えた場所は立ち入り禁止とするなどの独自基準を設定した。

住民帰還には
慎重さが必要


 菅首相は、冷温停止すれば多くの人々が故郷に帰れると考えているようだ。年間二〇ミリシーベルトを超えるおそれがあるから同心円的に避難したが、これをはるかに下回る地域から避難した住民も多い。だが、原子力緊急事態解除宣言をすれば自動的に放射能が大地から消えるわけではない。非常事態を過ぎても、一ミリ以上二〇ミリ未満の地域であれば子どもと一緒に戻れと言っているのと同じではないか。再生エネルギー法案は支持するが、菅の発言は信用できない。
 京都大学原子炉実験所の小出裕章さんは、避難した住民に高汚染地域に戻れるという期待を持たせる残酷さより、汚染の現実を直視して高汚染地域を無人地帯とし、除染などで出る放射性廃棄物の保管場所にすることを著書などで提言している。
 『世界』八月号で七沢潔さんは、ソ連政府が始めて汚染地図を公開したのはチェルノブイリ事故から三年後であり、「自分たちが汚染地帯に放置されたことを知った人々はソ連政府への不信感を募らせ、ウクライナでは独立運動が加速していった」と、ポスト・チェルノブイリの状況が、三・一一後のいま、日本で蘇っていると指摘している。七沢さんはNHKのETV特集「ネットワークでつくる放射能汚染地図」の制作に参加し、番組放送は市民や自治体が自分の町の汚染を知りたいという動きを活発にさせるきっかけともなった。この番組の出演者の木村真三さんは福島事故による放射能汚染の調査・研究を禁じられたため、厚労省直轄研究機関に辞表を出し、調査を続けた。日本気象学会が会員の研究者らに、大気中に拡散する放射性物質の影響を予測した研究成果の公表を自粛するよう求める通知を出すなど、自由な研究が統制されている中、貴重な作業だ。

力合わせ休止原
発再稼働阻止へ


 九州電力玄海原発2・3号機の運転再開強行は阻止された。定期点検最終検査前の調整運転から本格運転に移行しようとしていた関西電力大飯1号機はトラブルのため運転を停止し、再開の方針は白紙になった。現在運転中の原発も来春までに定期点検のため停止する。現在停止中の原発の再稼働を阻止すれば、国内の全原発が稼働していないという状況が現実に近づいており、運動の新たな焦点となってきた。
 立地現地の原発建設反対運動は、もともと原発ゼロの地域に原発を建てるのだから、運転開始後も即時の運転停止を運動の基本としてきた。チェルノブイリ後、都市部に運動が広がり、一九八八年の脱原発法制定署名などの経験から、現地ではない運動では危険度の優先順位をつけるなど、即時停止から段階論的な主張に移り、具体的には原子力安全規制や政策転換の運動に力点が置かれるようになった。
 今年五月発表の「社民党脱原発アクションプログラム」では原発ゼロの目標が二〇二〇年であり、原発立地地域に原発絶対反対の党員を多くかかえる日本共産党は六月、志位委員長の記者会見で「五〜一〇年以内に原発ゼロのプログラムを」政府がつくるべきという提案を発表した。環境エネルギー政策研究所なども一定の期限を設けた原発ゼロプランを提案している。
 九月一九日の明治公園集会と一〇〇〇万人署名を当面の目標に「さようなら原発一〇〇〇万人アクション」が広く呼びかけられ、準備されている。この一〇〇〇万人署名は紙の署名であり、容易な数字ではない。脱原発への様々な意見をもつ人々と直接対面して集めなければ実現できない数字だ。お互いの違いを持ち寄り、脱原発を実現させよう!
(七月一八日 斉藤浩二)


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