NPA(フランス反資本主義新党)訪問団の緊急現地報告
開発モデルの枠外に置かれた地域、青年と失業者、月五〇ユーロで働くすべての男女の闘い
「これは革命の炎なのだ」
ワシム・アズレグ
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オリヴィエ・ブザンスノーを含むNPA訪問団が一月二五日、二六日の二日間、チュニス(チュニジアの首都)を訪れ、進行するチュニジア革命の息吹きに触れてきた。以下に紹介するのは、その緊急現地報告である。
全国の雰囲気
のバロメーター
町の中心に位置する、チュニスの中央大通りである、ハビブ・ブルギバ・アヴィニューは、国の東部(カルタゴ、シーディブーサイード、ラ・グレット)に向かう鉄道の駅と居住区(旧市街)とを結ぶ歩道である。この通りは、その歩道の幅や赤い大理石の敷石からパリのシャンゼリゼ通りにたとえられる。通りに沿って、何軒ものブティック、レストラン、カフェ、ホテル、商業センターや行政施設が並んでいる。伝統的に、家族やカップルや友人同士が出かけるのはここなのである。状況を診断し、チュニスの人々の雰囲気を感じるためには、この「アヴィニュー」は、チュニジアの人々がこう呼ぶのが好きなのだが、首都の、そして間接的には全国の、雰囲気を示すバロメーターである。それは旧政権のショーウィンドーである。
民衆は社会の活
動を引き受ける
むしろ、この「アヴィニュー」は旧政権のショーウィンドー「であった」ということだろう。なぜなら、たとえ建物は今なおそこにあっても、「アヴィニュー」はもはやかつてと同じではないからである。いたる所で男も女も集まって、一日中、政治について論議している。「政府は変わっていない。ガヌーチとRCD(立憲民主連合)がまだ残っているのだから、ここでやめるわけにはいかない」とある男が叫ぶ。その男に向かって、別の男が応える。「国は再び機能し始めなければならない。さもないと、経済危機が来るだろう。臨時政府を機能させるようにしなければならないし、選挙が選択の機会となるだろう」。
ホーキを手にし道路に並んだ一群の男女が街頭や歩道を掃除している。「われわれは、革命が混乱ではないことを示すためにここにやって来た。われわれは、人々が皆んな、関心をもち、自分たちで社会の活動を引き受けることができるということを明らかにしたいのだ」と。ホーキをもった集団が鉄条網の前を通っていき、兵士たちが内務省の茶色のいかめしい建物を取り囲んでいる。このような事態があるために、ある男性はこう語った。「旧政権がまだ残っているかぎり、民衆は掃除をやめないだろう」と。
表現の自由を
勝ち取った
「アヴィニュー」を活気づけている沸騰した雰囲気は明白である。この雰囲気はチュニスでも郊外でも同じだ。
チュニスの空港に到着してすぐに、何かが変わったということが感じられる。「オマワリ」や税関職員は、もはや白紙委任を持ってすべての人を見下す尊大で粗暴な人間ではない。税関を通る時、誰からも問いただされることはない。税関職員はそこにいるが、旅行の目的を尋問しには来ない。チュニジアに来たことのない人は、チュニジアの民衆が実現したこの巨大な変化が分からないだろう。
空港のカフェに座りながら、チュニジア人民が、最も重要な闘いの一つ、すなわち、表現の自由を勝ち取る闘い、に勝利したのだということを、われわれはただちに感じ取ることができた。空港の中では、われわれの周りにいるすべての人々の話題は政治である。人々は、政府について、革命について、トラベルシ(チュニジア出身のサッカー選手)について、ベンアリについて、軍について、与党「立憲民主連合」について語っている。
一〇日前には、こうした話題を口にする前に、たとえそれが当たり障りのないような話し方であっても、誰かが聞いていないかを確かめるために自分の周りを見回していたのだった。今日では、すべての人が誰とでも話をしている。二人の人が議論をしていても、すぐに別の人が話に加わってくる。誰も話すことに許可を求めることはない。なぜなら、現在の状況は集団的なものだからである。すべての人が、各自の社会的、政治的地位を重視せず、年齢や性別を考慮することなく、自分の意見を表明しているのだ。
到着してからほどなくして、われわれはカスバに向かった。そこは、政府官庁の所在地である。闘っているさまざまな地域のキャラバン隊が、首相官邸の前にテントを建てて、泊まっているのがここである。「民衆は政府を倒すことを望んでいる」、「立憲民主連合、ガヌーチを一掃せよ」、「何人たりともわれわれの革命を横領することはできないだろう」。
小学校の教員であり、労働組合員であるベシールは、一年前に自分の学校でストライキを組織して、労働組合のナショナルセンターから除名された。このベシールが好んで言っているように、「これは革命の炎なのだ」。この革命が民衆のものであり、輸出指向開発モデルの枠外におかれたすべての地域の革命であり、学校を卒業した青年と失業者の革命、月五〇ユーロで働くすべての男女の革命、である。
カスバでは、その雰囲気は急進的であり、CPR(共和国会議)のマルズーキが、PCOT(チュニジア労働者共産党)のハマ・ハマミやそこで即興の説教をしている若いイスラム教徒と同様に、招待されている。LGO(労働者左翼同盟)のスポークスパーソンのジャレル・ゾグハミがわれわれに、ここでは、いかなる人であろうと、青年を代表して教訓を垂れたり、語ったりすることはできないのであって、若者たちはそこにいて、現場で自らの名声を勝ち取ったのである、と説明してくれた。
広場を一巡りしている間、われわれはいたる所で、討論の輪ができているのを見た。われわれの同志、オリヴィエ・ブザンスノーは何人かの人々に声をかけられた。チュニジア革命への支援に感謝する人々もいたし、チュニジアでの事態について語ってほしいと頼み、彼といっしょに写真におさまって、彼のサインを求める人もいた。
オリヴィエ・ブザンスノーとPTPD (チュニジア愛国民主党)のスポークスパーソンのムハメド・ジュムール、アルジェリアPST(アルジェリア社会主義労働者党)のスポークスパーソンのシャウキ・サラ、LGO(労働者左翼同盟)のジャレル・ゾグハミ、通行人との間で討論が始まった。討論は、チュニジアの社会問題と体制の資本主義モデルをめぐって展開された。それは、現地住民居住区の中心の古いカフェ・シャワシンヌで続けられた。
至る所で爆発が
起こっている
その日、それから少し後に、われわれは市電に乗った。年配のある婦人がわれわれに、いきなり率直にこう言った。「至る所で爆発が起こっている。エジプトでも、そして、イスラエルでさえも、政権を取り替えるためのデモが起こっている」。庶民が住むチュニス郊外の一番外れにあるカフェでも事態は同じだった。若いウエイトレスが前掛けの下からPCOT(チュニジア労働者共産党)のビラを取り出して、今日は政治のことしか語っていない、これから仕事が終わるのを待って、夜はカスバで過ごし、革命に合流するのだ、と説明してくれた。
左翼組織、労組
活動家と討論
現地に飛んだNPA訪問団は、LGO(労働者左翼同盟)に招かれたのであった。労働者左翼同盟は、トロツキストグループOCR(現在は存在しない)の元メンバーによって最近、結成された。われわれは、アルジェリア社会主義労働者党のシャウキとともに、労働者左翼同盟の中心メンバーたちと一晩を費やして、討論を行った。それは胸躍るものであり、われわれは、民衆の権力、反革命、制憲議会、反動勢力といかに対抗すべきか、労働組合の官僚体制などの問題について討論した。チュニジアの同志たちはわれわれの意見を尋ねたが、現実の中で遭遇する具体的諸問題に直面する中でわれわれの革命的理論は発掘される必要があるのであって、とりわけ、チュニジアの人々が抱いていてわれわれに語りかけているものに耳を傾ける必要があるのだ。
翌日の二六日の日中には、全国本部が同じ建物の中にある、PTT(郵便、電話、電信、コールセンター)、小中学校の教員の組合、医療の労働組合と会談した。別れる前に、PTTの労働組合は、フランスの郵便集配労働者としてのオリヴィエ・ブザンスノーに自分たちの職場総会の開会を宣言してほしいと要請した。職場総会の会場にはブザンスノーに対する拍手喝采が待ち受けていた。彼は、郵便部門の労働組合運動とこの部門の諸問題についての質問を受けた。
二時間の討論の後、われわれは大急ぎで、チュニジアの演劇人のモハメド・ジュバリとゼイネブ・ファラトが主催する文化的スペース、エル・テアトロに向かった。われわれは、満員の会場で、芸術家、知識人、人権活動家、若者と会った。人々はわれわれに、革命、階級闘争、現代社会における若者や文化の地位について語ってくれ、非宗教性(宗教と国家/教育との分離)の問題が提起された。若者たちは、全世界の青年との国際会議を組織したいとの希望を表明した。
会場の雰囲気は緊張感があり、テレビや新聞などの報道陣がそこにやって来た。それから、二時間後、労働者左翼同盟とアルジェリア社会主義労働者党の同志たちとともに、NPA(フランス反資本主義新党)の結成の動機を説明し、闘うチュニジアとマグレブの民衆とのNPAの連帯を表明するために、訪問団の記者会見が「アヴィニュー」で開かれた。
チュニスの中心街を離れ、最後にカスバに向かう前に、チュニスの街頭でわれわれは、コメディアンやかつての政治犯の人々と会った。ファエム・ブカドゥースは、油田地帯の有名なジャーナリストで数日前に釈放されたばかりであった。多くの人々が、オリヴィエ・ブザンスノーに集会や会合に参加して欲しいと要請し、彼に対して、ベンアリを一貫して支援してきたサルコジや社会党的左翼に対して圧力をかけなければならない、と語った。
活発な活動をす
るフェミニスト
一五時に、われわれは、旧政権ならびに女性に対するその政権の政策に対して一五年以上にわたって闘ってきた、チュニジアの二つのフェミニスト団体、ATEDとAFTURDの地区支部に立ち寄った。会場はあらゆる年齢から成るフェミニストの活動家で一杯であった。女性たちは、週末に計画された平等を求める女性の行進について、運動の中での女性の地位、カスバでの女性の地位、イスラム教について語ってくれた。討論は活発で、参加者は政府に対する自分たちの手厳しい批判を明らかにした。
飛行機に乗る前に、UGTT(チュニジア労働総同盟)がいくつかの政党と共同で開催した会合を終えたハマ・ハマミと討論した。チュニジア労働者共産党のこのスポークパーソンは、われわれに対して、これらの組織が「一月一四日戦線」の名において「革命防衛会議」の結成を要求することにしたことを明らかにしてくれた。この会議は、政府と憲法制定議会を形成する責任を自ら引き受けようとするものである。現時点では、これはほとんど実現可能な提案であったし、大いに考えられる提案でもあった。残念ながら、その翌日、UGTTの執行委員会書記が、まったく別の決定を下し、新政府にすべてを白紙委任してしまった。
この報告を書いている時点で、たとえ政府がまだ存続していたとしても、われわれが見聞してきたことにもとづいて考えると、誰であってもこの革命を、一貫して街頭に登場し続けてきたこれらの若者たちから、これらの民衆から、労働組合や団体の活動家から、奪い取ることはできない。来るべき時期に、それは革命の息吹となるだろう。『トゥテタヌー』(NPA機関紙、八八号、二〇一一年二月三日)
チュニジア
社会の活動を管理する地域評議会結成宣言
前体制の完全な解体要求と
進行する人民の自主的組織化
チュニジアでは、物事を決定するのはますます街頭になっている。そして、まさにこの街頭は、ベンアリ体制のうわべだけの塗替えを拒否しているのだ。いたるところから、前体制とその党=国家の完全な解体の要求が提示されている。夜間外出禁止令をものともせず、デモ隊が全国からやってきて、自分たちが退陣を要求している政府庁舎の窓の下で野営している。革命に参加しているチュニジアの人々に発言してもらうことにする。
革命を防衛し社会の活動を管理するための地区/地域評議会の結成宣言(抜粋)
シリアナ 二〇一一年一月六日
〔……〕われわれは、われわれのインティファーダを懐柔することを目的とするマヌーバーやわれわれの受難の血を利用しようとする試みと対決するために、闘いと大衆動員を続けるよう訴える。われわれは、正当性のない憲法と民衆を代表していない議会にもとづいてメバザ(国会議長)が臨時大統領に就任し、ガンヌーシ(ベンアリ前政権の首相)に対して臨時政府の組閣の任を委ねることを拒否する。
われわれは、虐殺者や腐敗分子との一切の連合を、革命に対する許しがたい打撃であり、度しがたい試みであると考えているのであって、このような試みをわが国の民衆は今後打破していくであろう。われわれは生きた自由な勢力が民衆の一翼として自分たちの立場を堅持し、自らの歴史的、政治的、モラル的責任を果たすように訴える。
そして、RCD(立憲民主党)に所属する腐敗した政府官吏の大部分が逃亡したために、シリアナ県で行政の空白が生じているという事態を受けて、裁判に関する報告を求める民衆の要求が出されているので、われわれは、民衆が次の人々を選挙で選ぶことを宣言する。
?革命を守り、(都市の)活動を管理するための地区評議会の選挙
?革命を守り、(県の)活動を管理するための地域評議会の選挙
これは、地区と地域のレベルで都市と県の活動を管理すると同時に、あらゆる思想信条のすべての人々の権利を保障する新憲法を起草し、代議制の普通選挙による新議会選出に至るまで全国レベルで他の地区と共闘するためのものである。任務と計画の決定は基本組織との協議にもとづいて選出された評議会のメンバーに委ねられる。
自由と尊厳の道を歩むわが国民衆の闘争万歳!
シーディブーアリの町の社会の活動を管理するための臨時地区評議会の結成宣言
わが国における新たな大統領選挙の開催をその任務とする新政府の組閣の任をモハメド・ガンヌーシに委ねるとする決定の結果、スース県のシーディブーアリの町における行政と管理に空白が生じている。この事態を受けて、町の「民衆広場」に結集した、シーディブーアリの町のわれわれ市民は、次のように宣言する。
?このような決定は、非民主主義的で、民衆によるものではなくて、わが国の国民が望むすべての権利を保障していない憲法にもとづくものである。われわれはこのような決定を却下する。
?われわれは、政府の中の象徴的人物やその取り巻きを通じて、与党の支配とわが国の政治生活を支配し、その支配を継続しようとする試みを拒否する。
?われわれは、民主的で民衆的な社会の新憲法がいかなる権力の独占もなしに権力の平和的移行を保障する道を切り開くまで、町の活動を管理するための臨時地区評議会を公に選出し、地域、全国と共闘して、わが国の市民的、経済的、文化的、政治的生活を回復するために活動する。そして、それが全国政党全体を代表するように気を配る。この評議会の機能は以下の通りである:
?街区を守るための安全委員会の結成
?日常的経済生活を再生させ、市民の日常生活の必需品を確保するための支援
?市民的施設(銀行、病院、役所、学校、宗教施設……)の再開の保障
?市の財産の確保
?結成された地区/地域の評議会との共闘
?今日、国軍がわが国を警備する唯一の制度である。そのかぎりにおいて、国軍と連絡を取り、連携を確保すること
われわれは以下の委員会にその任務を分担させることを決定した:
?宣伝および報道委員会
?国軍との連絡委員会
?街区防衛委員会
?市財産委員会
?意識向上/指導/文化委員会
『トゥテタヌー』(フランス反資本主義新党機関紙)、二〇一一年一月二七日
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