もどる

    かけはし2011.2.21号

「基地は不要だ」の声を届けよう

沖縄戦裁判支援連絡会が学習会

伊波洋一さんが「沖縄戦と米軍基地」を語る



 【大阪】沖縄戦裁判支援連絡会の学習会が二月四日、エルおおさかで開かれ、一三〇人が参加した。代表世話人の岩高澄さんは開会のあいさつの中で、「大阪高裁で勝訴したあと裁判は最高裁に行ってから二年三カ月がたったが音沙汰はない。でも私たちは沖縄戦の学習を重ねて行き、今の沖縄について何が問題で、何ができるのかを考えていきたい」と述べた。 続いて、沖縄県宜野湾市で生まれ育った伊波洋一さん(元宜野湾市長)が「沖縄戦と米軍基地」と題して講演をした(別掲)。
 最後に、小牧事務局長が、「最高裁の対応が遅れているのは、主任裁判官が死亡し交替したことがひとつの理由だが、やはり教科書検定問題が大きな問題であるため、判決の時期を選んでいるのではないか。上告を棄却し早期判決を出すように四〇万の署名を提出した。」との報告があった。
(T・T)
伊波洋一さんの講演から
海兵隊が沖縄に残る
必要など存在しない
 県知事選では負けたが、沖縄は普天間基地の県内移設に反対するという世論を形として作り出すことができた。負けたことによる多くの皆さんの無念を晴らすべく、四年後を視野に捲土重来の気持ちを持って頑張っていきたい。

中国脅威論を
押しつけるため
 二〇〇三年に宜野湾市長になる前は、県会議員をしていた。その前は市の職員で市職労の委員長、地区労の事務局長、県全体の事務局長を歴任し、基地を抱える市町村の問題に取り組んできた。
 沖縄戦裁判で真実を明らかにすることは重要だ。高校の教科書から「集団自決」の記事がなくなることに怒った県民が、〇七年の沖縄県民大会に一一万六〇〇〇人も集まった。この教科書問題はまだ決着していない。その意味で沖縄戦裁判が持つ意味はきわめて大きい。
 今日、その事実を隠蔽しようとする勢力が大きくなっている。なぜ彼らはそうするのか。それは、過去の日本軍がつくりだした悲惨な歴史を消し、次の戦争へのステップとして必要だからだ。沖縄を舞台にして新しい戦争の準備が行われているのではないか、という疑念を持っている。
 『沖縄ノート』(大江健三郎著)にあらためて目を通した。ノートには一九六八年から七〇年の沖縄の状況が書いてある。その頃は主席公選運動、反基地・ベトナム反戦運動、全軍労のストライキ、四軍司令部に向けてのデモが繰り返された時期で、私は普天間高校の生徒会として闘いに参加した。
 現在政府は、米軍再編の名の下に、事実を隠しながら沖縄に基地を新たに作ろうとしている。それは、民主党政権に変わっても同じだ。マスコミは本当のことを語らない。本来ならば在日米軍基地に適用されるべき法律が適用されていない。
 辺野古に予定されている基地は、普天間基地を移設するためではなく、全く別の目的のために作られようとしている。米軍のあらゆる資料を見る限り、沖縄に海兵隊が残る価値すら見いだせない。海兵隊はグアムに移ることになっている。日本政府は海兵隊は沖縄に必要だと言っている一方、グアム移転に七〇〇〇億円もの血税を出すことを約束した。なのに、それについて説明はしない。
 評論家は海兵隊が本土に移ったら、余分に二、三時間かかってしまう等というが、普天間の海兵隊は沖縄には半年ぐらいしかいない。残りはフィリピン・韓国・オーストラリア・タイ・など西太平洋の国との安全保障条約を担保するための大きな共同訓練に行っている。沖縄に帰ったときは休んでいる。評論家の言うのはデタラメだ。昨日終わったヤマサクラという図上演習は沖縄列島を戦場にする演習だった。対中国の軍事的緊張をつくることが米国の役割で、日本に中国脅威論をしっかり植え付けるためだ。そのことで、日本が中国海軍を警戒する流れをつくっていこうとしている。

米軍基地の出発点
となった沖縄戦
 沖縄戦では、渡嘉敷、座間味だけではなく、八重山や波照間などでも、軍の食糧を確保するため住民が西表に強制的に移住させられ、マラリアで多くの人が亡くなっている。ヤギ何百頭、豚何百頭が日本軍の食料として屠殺された。軍隊に乗っ取られた国の恐さを如実に示している。現在は、それを米軍がやっている。
 沖縄戦当時、日本軍基地は沖縄に六カ所あった。米軍はこれを接収し、新たに八カ所の基地を作った。そのひとつが普天間基地。戦後の冷戦に備えて作ったようだ。これらの基地は本土攻撃に使われた。戦後住民が捕虜収容所から帰った時は、自分の土地は金網で囲われて米軍基地になっていた。それで、米軍が指示した他の地でひしめき合って生活してきた。朝鮮戦争時に予備力として日本本土にあった海兵隊とその基地は住民との間にトラブルを起こしていた。
 六〇年安保改定を前にして、米軍は日本本土の中で別の移転先を探すが、日本政府の反対で実現せず、最終的に米国が施政権をもつ沖縄に移設され、一九五〇年代に銃剣とブルトーザーで土地が接収された。辺野古のキャンプ・シュワブだけが住民の合意で作られたとされているが、それとて、周りで暴力的な土地接収を見せつけられてのことだった。現在沖縄の米軍基地・施設用地の七五%は海兵隊が持っている。普天間基地の九〇%は個人の土地である。

基地に依存した
経済というウソ
 沖縄の経済は基地に依存していると思っている人が多い。先日、ドイツの日本大使が宜野湾市に来て、米軍再編で四万人削減されるドイツでは米軍基地が縮小されことに住民が反対しているが、沖縄ではどうして基地をなくす運動があるのか、基地がなくなったら生活できるのかと聞いた。
 沖縄ではカネは一時、土地は一生だ。以前は沖縄経済の基地依存度は三〇%を超えていたが、復帰後一五%になり、現在は四・五%だ。復帰前の米軍雇用が最高時で五万人、復帰後二万人、現在正雇用は八〇〇〇人だ。基地の中で一万人雇用が減り、外で二四、五万増えている。今日本の地方は廃れてきているが、沖縄は人口も毎年一万人ぐらいずつ増え、雇用も六〇〇〇人ずつ増えている。経済成長は一・五%だ。なぜかというと、基地が返還されたところに新しい都市ができ成長しているからだ。沖縄の米軍基地は一番いい土地にあるから、それが帰れば大きな成長が期待される。
 宜野湾市は一九八五年から基地の全面返還を要求してきている。〇六年に普天間飛行場跡地利用基本方針を策定した。現在、普天間基地は市域の二五%を占めながら雇用は二〇七人。市への基地交付金は年間約五億円。基地地主への地主地料は六四億円だ。これに対して、跡地利用計画では、大規模公園、商業・業務用地、沿道型商業地、低中高層住宅地、公共施設等の土地利用で、年間直接経済効果は四五二二億円、税収は五二〇億円、雇用創出も跡地整備事業累積で六万四三〇〇人、企業活動で三万二〇〇〇人と推計される。
 現在那覇空港は貨物便のハブ空港になっていて、日本で三番目のエリアを持っており、いろいろな企業が進出しようとしている。日本政府は、沖縄を安保で位置づけているが、米軍の軍事同盟より中国・ベトナム・フィリピンなどアジアとの通商の方がはるかにメリットがある。


安全基準・環境
基準をも無視
 普天間基地では安全基準が無視されている。日米間の合意では安全を守ることになっているが、米軍機は日本の航空法の適用除外になっているため、どこを飛んでも違法ではない。米国内では米航空法に縛られているから、こんなことはありえない。
 一九七九年、カーター大統領の時、米軍も国内法を適用されることになり、翌年米国域外での活動にも適応され、環境保護の基準作りが命令された。冷戦が終わり米国内の基地が閉鎖されたとき、環境汚染が深刻であることが判明し、ドイツ・韓国・日本でもPCB汚染が問題となった。そこで米国では、環境保護を目的とした国防総省の環境基準指針文書が一九九六年に作成され、海外の米軍基地にも適用された。二〇〇〇年九月環境原則に関する日米共同発表がなされた。そこでは、日米の関連法令のうち、より厳しい基準を選択するとの基本的な考えの下で作成される日本環境管理基準に従って行われるとなっている。
 これ以降、米軍の環境対策の職員四、五人から六〇人に増員された。米軍の司令官たちは米国本国への忠誠からこれを守ろうとしている。日米地位協定にそれが規定されていなくても、守らないことは最終的に米国の国益に反することになると認識しているからだ。ところが日本政府はこれを米軍に無視させ続け、その事実を隠している。ここに大きな問題がある。七〇年代に日米合同委員会で、自治体が基地内の環境調査を要求したらこれを認めると合意されたが、日本政府は三〇年間これを隠し続けた。日本のマスコミは、合意がないかのような報道をしている。米軍は実際にはこれを守る気はなく、基準文書は連邦議会対策だというのである。 
 普天間基地の周辺には一二〇あまりの公共施設や学校などがあるが、その上をヘリが飛ぶ。米国ではこのようなことは許されない。復帰後でも飛行機の墜落事故は八七件に及ぶ。機種が老朽化している。米国では、普天間基地の航空写真を見て、誰がどうしてこんな場所に住宅建設の許可を出したのかとの問いが返ってくる。米連邦航空法・環境法では、騒音対策上からも基地周辺四・五キロメートルにわたってクリアゾーン(建物が何もない)を設けることになっているからだ。日本外務省に問い質すと、国防省に聞かずに国務省に聞いて、それはあくまでもアメリカの基地だからだとの回答が返ってくる。

グアム移転は
何のためか
 海兵隊はグアムに移転することになっている。しかし、辺野古になぜ基地が必要なのか明らかにはされていない。
 二〇〇五年一〇月の米軍再編ロードマップの中間報告では、海兵隊七〇〇〇人がグアムに移転し、一部が沖縄に残り海兵機動展開旅団として縮小されるとなっていたが、〇六年五月の最終報告では海兵隊八〇〇〇人と家族九〇〇〇人が部隊の一体性を維持してグアムに移り、日本は七〇〇〇億円を負担することが決まった。ここまでは報道されている。
 この直後、ハワイ司令部がアンダーセン空軍基地とアプラ軍港中心にグアム軍事統合計画書をつくった。私たちは、〇七年にグアムを訪れて副司令官や州政府から具体的に説明を受けた。〇八年九月海軍長官が一〇年九月連邦下院軍事委員長宛にグアム軍事活動計画報告書を提出した。〇九年の海兵隊総司令官の報告書でも述べられている。それによると、グアム常駐が海兵隊八五五二人、陸軍六三〇人、一時配備は海兵隊二〇〇〇人、海軍七二二二人、となっている。
 昨年NHK沖縄放送局が取材し放映したが、海兵隊司令部の高官が海兵隊はグアムに移転することに海兵隊の価値を見いだしていると言っていた。日本の米軍基地には制約があるので、他国の軍隊を招いて訓練することができないが、グアムならそれができるので、よりすぐれた訓練を行うことができると言っている。
 ところが、この報道は全国版では抑止力が必要というように改編されている。グアム移転と同時に、マリアナ諸島での複合訓練計画も並行して進んでいる。ところが日本政府は〇六年の時点のまま、一万八〇〇〇人の海兵隊中八〇〇〇人がグアムに移転したあと一万人が沖縄に残ると言っている。そのようなことはあり得ない。ゲーツ長官は海兵隊を二万人削減する計画だが、日本政府が沖縄に1万人残るというのなら、辺野古に基地ができる条件で一万人にしてもいいと米国はいっているのだ。
   
国民は日米同盟
深化を支持せず
沖縄は現在米軍の拠点となってるが、国民はそれでいいと思っているわけではない。昨年は安保五〇年だった。昨年一一月実施のNHK世論調査では、日米同盟の深化を支持している国民は一九%、アジア諸国と共同安保体制をつくることに賛成は五五%だった。米国は一国主義だ。日米同盟は米国の目的のための同盟だ。この状態は変えるべき時期にきている。民主党が寝返ったため、それを訴える政治勢力は国会では存在しないが、声を出していくことが求められている。四〇〇人の民主党議員の中には、今の状態がよいと思っている議員ばかりではない。彼らに国民の声を届けなくてはならない。
 (発言要旨、文責編集部)


もどる

Back