| 有期研 有期雇用の規制強化を提言 かけはし2010.9.20号 |
規制緩和一辺倒
への反撃の中で
八月二十四日、厚労省の「有期労働契約研究会」(以下有期研、座長は鎌田耕一東洋大学教授)は、有期雇用労働者(期間工や契約社員など、期限に定めのある労働契約で働く労働者)の労働契約について、法規制見直しを求める最終報告書案をまとめた。報道の多くは、入り口規制を含む規制強化の方向と報じている。
方向は確かにその通りだ。具体的には、締結事由の規制、更新回数や利用可能期間に係るルール、雇い止め法理(解雇権濫用法理の類推適用の法理)の明確化、均衡待遇及び正社員への転換、その他が、規制の見直しとして検討すべき課題に挙げられている。しかし、均等待遇ではなくあくまで均衡待遇であること、後述する団結権、団交権の問題が不問であること、また締結事由の規制にかなり消極的なコメントが多く加えられていることなど、問題も少なくない。いずれにしろ課題は、残された問題を埋めつつこの報告を実のある規制へと現実化できるか否か、労働者民衆の運動に投げかけられる。
さて、有期研は二〇〇九年二月に発足した。前年秋のすさまじい派遣切り、それに対する十二月四日の、「派遣法の抜本改正をめざす共同行動」日比谷集会の反撃、またその成果を引き継いだ日比谷年越し派遣村を通した、有無を言わさない迫力をもった社会総体に対する問題提起、これらによって、八〇年代中盤以降長く続き、特に小泉―竹中「構造改革」路線が拍車をかけた規制緩和一辺倒の厚労省労働行政は、重大な圧力に直面することになった。貧困と格差の広がりは事実の問題だった。その中心に差別的かつ劣悪な非正規雇用の問題があることは、誰にもくっきり見えるものとなった。そして当事者が立ち上がり始めていた。何らかの政策転換模索は不可避だった。そこにはおそらく、同年九月までには確実だった解散総選挙、そしてそこでの政権交代の現実性を見すえた、エリート官僚の自己保身も働いていたはずだ。いずれにしろ労働の規制緩和路線にはブレーキがかかった。安倍政権発足を機に大々的に打ち出された「労働のビッグバン」(労働契約の全面的な自由化・個人化)の大合唱は、少なくとも表面からは姿を消した。そして規制強化という選択肢がおずおずと瀬踏みされ始める。有期研発足はまさにその一つだった(ほかには言うまでもなく、派遣法改正をめぐる激しい綱引きがあった)。
その事情の一端は、今回の報告書案の「1.現状と課題」中の、「平成20年末以降、雇用情勢が急激に悪化する過程で、いわゆる『非正規切り』など有期契約労働者の雇用不安が大きな問題となった。…雇い止めに係る紛争も増加している」という記述などに現れている。そして報告書案は、有期雇用労働者の現状にも一定程度具体的に踏み込んで触れつつ、結論として「このような雇用の不安定さ、待遇の低さ等に不安、不満を有し、これらの点について正社員との格差が顕著な有期労働者の課題に対して政策的に対応することが、今、求められている。…今後は、契約の締結から終了に至るまでを視野に入れて、いかにして有期労働契約の不合理・不適正な利用がなされないようにするかの視点が重要となってこよう。すなわち、有期契約労働者の雇用の安定、公正な待遇等を確保するため、有期労働契約の不合理・不適正な利用を防止するとの視点を持ちつつ、有期労働契約法制の整備を含め、有期雇用契約労働をめぐるルールや雇用・労働条件の在り方を検討し、方向性を示すことが必要」としている。
重み増す労働
者民衆の闘い
このような規制強化への動きはもちろん、確立された、と言えるものではない。それは、派遣法改正をめぐる二〇〇九年から現在までの経過にはっきり示されている。日本経団連を中心とする経営側はむろんのこと、それらと気脈を通ずる厚労省官僚、いわゆる有識者、メディア、さらに連合内や民主党内の一部までも巻き込んだ猛烈な抵抗が、派遣法改正案を大きく後退させ、規制という点で極めて不十分な改正案をも、いまだ成立に至らせない状況を生んでいる。加えて現菅政権(本稿執筆時点)は、いわゆる「成長戦略」に規制緩和を組み込み、労働の規制強化という課題に不透明な要素を新たに持ち込んだ。そして忍び寄る新たな経済危機を背景に、恥知らずにも雇用創出を大義名分とした、文字通り詐欺でしかない規制緩和要求が改めて持ち出されてくるかもしれない。資本の中では、労働契約を労働者個人への業務委託請負へと偽装し、雇用責任から逃れようとする動きも広がっている。牛丼の「すき屋」を経営する一部上場のゼンショウは、店で働く労働者を公然と個人請負の「個人事業主!」と主張し、超過勤務賃金の支払いをめぐる裁判では支払いを認める和解に応じながら、今もって首都圏青年ユニオンとの団交を拒否している。
労働規制をめぐる課題は、最低賃金問題も含めて(本紙前号参照)、今まさに激烈なつばぜり合いのさ中にある。この綱引きを左右するものが広範な労働者民衆の要求とそれを体現する行動にあることははっきりしている。そして党を二分するかのような民主党代表選は、いずれが勝つにしろ、今後の政治展開の不確実性を改めて示している。それはエリート官僚に、支配層中枢の利益を守るためにむしろ独断専行を可能とする余地を与えるかもしれない。しかしそれは同時に労働者民衆にとっても、政治を揺り動かす空間が生まれる可能性を示すものでもある。
そうであればなおのこと、労働者民衆の闘いは極めて重要なものとなる。労働の規制強化を求める共同した闘いを今こそ集中して突き出す必要がある。その闘いを中核に、生活破壊、社会の疲弊を覆すものとして、貧困と格差への反撃として、その紛れもない中心にある非正規雇用の規制強化を何としても確固とした流れとして固めなければならない。
派遣法改正か
ら有期規制へ
その第一の関門が派遣法改正案をできる限りの修正を追求しつつそれでも最後は成立させることにあること、それは今さら言うまでもないことだと思われる。間違っても、廃案に力を貸し規制緩和への逆転を狙う勢力に塩を送る愚に陥ることは避けなければならない。十月前後から始まると思われる臨時国会を、垣根を越えた共同を基に民衆の声で包囲する闘いを追求することがまず何より必要だ。われわれはそのような闘いを求めると同時に、その闘いを全力で押し上げなければならない。
今回の有期研報告を受けた有期規制見直しはそこに、規制の積み重ね、拡張として、重要な闘いの舞台を付け加える。そして派遣法改正を果たすことは、労働者民衆に、この労働の規制強化拡張に向けてさらに一歩踏み込む足掛かりを与えるはずだ。しかも派遣労働者の多くが派遣元との関係では有期契約であることを考えれば、有期規制は実際にも、派遣労働規制と連続的に重なり合っている。
有期規制の見直しそのものについて言えば、今秋から労政審で審議に入り来年度中に結論を出すとのスケジュールが報じられている。闘争はこの労政審段階から求められる。
日本弁護士連合会は、三月に発表された中間まとめに対して、すでに意見書を出している。内容的には、有期労働契約を「合理的理由がある場合に制限」する、いわゆる入り口規制の具体的提起、更新回数や利用可能期間の上限規制、均等待遇原則、権利性・実効性ある正社員への転換制度の実現などだ。
この意見書をも一つの検討素材としつつ、労働者民衆からの攻勢的な要求対置など、派遣法抜本改正要求積み上げの実績を参考とした大衆的な運動展開が必要となるだろう。そしてそこにおいては、特に、労働者の権利実現の武器として、団結権、団交権を実効的に保障させる規制を求めることが必要となる。有期雇用労働者はその多くが、雇い止めを暗黙の脅しに、団結権から事実上排除されているに等しい。そして有期研はこの重要な問題をまったく検討していない。あるいは、現在継続審議とされている派遣法改正案においても、団交応諾義務は今後の検討課題として外されている。こうして団結権、団交権の問題は、文字通り労働者が要求し闘いで押し込む以外にない課題として提起されている。有期規制の闘いはその意味でも、派遣法抜本改正の闘いを直接引き継ぐ闘いに他ならない。派遣法改正から有期規制へ、非正規労働の原則廃絶を視野に入れつつ、労働の規制強化を確実に広げ進めさせよう。
(神谷)
よびかけ
10・17羽田バスツアー事前学習会&11・3羽田空港見学バスツアー
羽田空港の拡張がもたらすもの
成田プロジェクト 成田バスツアーの会
10月21日、羽田空港にD滑走路が供用を開始されます。国際線ターミナルも営業を開始します。いままでは成田空港が国際線、羽田空港は国内線と使い分けすることになっていました。ところが、先ず国際線チャーター機が羽田空港から飛び立ち、東アジア便に枠が拡がり、10月からはついに区別はなくなります。
羽田空港は人口密集地にあります。D滑走路は船の航路を狭め、多摩川河口の流れを変えてしまうそうです。騒音、飛行危険、漁業被害、大気汚染、深夜便の増加等、心配なことばかりです。
そんなに空港、航路の拡張は必要なことでしょうか? 私たちは成田空港のことを中心に考えてきましたが、羽田空港の歴史やいまの問題点を地元のメンバーに聞きたいと、航空セミナーの一つとして計画しました。つづいて、羽田空港見学バスツアーも行います。どうぞご参加ください。
10・17羽田バスツアー事前学習会
b事前学習会:10月17日(日)午後 2 時 開始
会場:文京シビックセンター4階会議室A(地下鉄後楽園・春日駅下車)参加費:500円
講師:大道寺毅さん(羽田空港を監視する会)
b11・3羽田空港見学バスツアー(コース:D滑走路展望台〜新国際線ターミナル〜京浜島公園〈騒音体験〉)
11 月 3 日(休日・水)午前10 時 30 分集合(東京駅丸ノ内・工事中の中央郵便局横)→羽田空港へ
案内人:羽田空港を監視する会の皆さん
※参加費:3000円 ▼昼食弁当各自持参 ★当日の連絡先:中里英章080―5375―7530
■11・3 羽田空港見学バスツアー申込書
以下を記入のうえFAXかメールを送ってください。
b申込み用FAX:03―3818―9312 メール:narita-pj@pen.co.jp
お名前:
年齢:
ご住所:〒
お電話番号:
メールアドレス:
b主催:成田プロジェクト 成田バスツアーの会
連絡先:〒113―0033 東京都文京区本郷3―13―3 三富ビル ペンの事務所気付 電 話 03―3818―1835 ファクス 03―3
818―9312
メール narita-pj@pen.co.jp
成田プロジェクト・ブログ http://www.www2.nikkanberita.com/naritapj/
コラム
キリンやゾウの「夢」のその次は?
自宅でキリンを飼っていることを自慢したくて友人を招き入れ、屋根を突き破ってさらに上まで首が伸びたキリンに餌を食べさせている。こんどは、狭い庭でゾウも飼うことになったようだ。
最近流されている「ロト6」のテレビCMの話である。
CM制作者は、ただ映像上の「おもしろさ」や「インパクト」をねらっただけかもしれない。あるいは、キリンやゾウに人びとの「夢」を重ね合わせたかったのかもしれない。そんな「シュール」な「メタファー」手法を使ってみたかったのかもしれない。いずれにせよ、ブラックユーモアをきかせようとしたわけではないだろう。
ロト6が当たって突然大金持ちになった彼が手をのばしたのは、なぜ生活や生産のために必要なものではなく、キリンとかゾウなのか、と私は考え込んでしまう。CMにいちいち目くじらを立てようというのではない。むしろ、このCMが、制作者の意図を超えて、いかにも現実離れした現実を見事に風刺しているように、私には思われてならないのだ。
そこに象徴的に描かれているのは、ここ二十年ほどの世界規模での資本主義の行き詰まりの特徴ではないだろうか。つまり、カネ(貨幣)が生産に投入され、それが「労働」を媒介にして「価値」を生み出し、一部は「労働」の生産・再生産に、一部は資本の再生産に投入されるという、資本の循環が大きく断ち切られていることである。
その間隙に入り込んできたのは、生産に投入されることのないカネそのものが、バーチャルな「市場」で売買される中で資産と負債を生み出す化け物のようなシステムである。しかも、金融資本によるこの化け物は、バーチャルな世界に閉じこもっているわけではない。国境を超えて移動しながら、時に国境の壁をも利用し、至上命令ならぬ「市場命令」を発して、現実に生きる人びとの生活をおそう。
近ごろの円高であれ、まだ記憶に新しい金融機関の破綻であれ、「市場命令」はひとつしかない。「カネ、くれ〜」「カネ、くれ〜」だ。そして、福祉や医療にまわったかもしれない国家財政を、この化け物は大口をあけて飲み込んでしまう。
いま社会の中堅にいる人たちは、この「新自由主義のグローバリゼーション」と呼ばれる価値観の中で育ってきた。CMをつくっているのも、そうした人たちであろう。
思えば、このごろ、将来への希望がもてない現実と反比例するかのように、「夢」という言葉がますます多用されるようになっている。使用価値と交換価値との断絶を極度に深めてしまったカネは、もはや使用価値を忘れてしまい、ロト6が当たっても、キリンやゾウを手に入れる「夢」くらいしかイメージできなくなっているのだろう。
次にロト6を当てた元新撰組局長は、ティラノサウルスでも飼うのだろうか。その前に、家や庭の改修、いやそれ以上に、多くの人びとの生活のことを考えなければならないはずである。 (岩)
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