| イラク駐留米戦闘部隊の撤兵 かけはし2010.9.13号 |
米戦略の破綻
は明らかだ!
八月二十四日、イラク駐留米軍は全戦闘部隊の撤退を発表した。オバマ大統領は八月三十一日の演説で「イラクの自由作戦」の任務完了を宣言した。イラク治安部隊に今後の国内治安対策の権限を移行し、残った約五万人の米軍はイラク治安機関の育成や、復興支援を行う米軍の警護にまわり、二〇一一年末に駐イラク米軍は完全撤退するのだという。
しかし二〇一一年以後にも米軍駐留が継続する可能性も残されている。今年三月のイラク国民議会選挙以後も新政権の連立協議は難航し、半年後の現在もいまだ政権の正式発足には至っていない。その間にも北部キルクークなどイラク全土で民族間の対立は激化しており、首都バグダッドなどでも爆弾テロが頻発している。米当局は、二〇一一年末の「完全撤退」期限以後も、「イラク政府の要請」という形をとって一万人規模の米軍が駐留する可能性を語っている。
イラクの戦争は終わってはいない。それはシオニスト・イスラエル国家と同盟して中東におけるアメリカ帝国主義の覇権的平和を安定化させようとした湾岸戦争以来の目論見を完全に破綻させ、「中東の永続的動乱」を深化させることになったのである。
あらためて戦争
犯罪を追及する
二〇〇一年「9・11」以後、米国のブッシュ政権はアフガニスタンへの「報復戦争」を開始する一方、イラク・フセイン政権への戦争計画をただちに発動させた。当時のラムズフェルド国防長官、ウルフォウィッツ国防副長官らのネオコンチームがイラクへの戦争発動を主張したのは「9・11」のわずか三日後の九月十四日のことだった(S・ハドリー前米国家安全保障問題大統領補佐官の証言)。
米ブッシュ政権は、アフガニスタンに侵略してタリバン政権を転覆させると同時にイラクのサダム・フセイン政権への戦争計画を準備した。その口実は、イラクの「大量破壊兵器の脅威」であり「アルカイダとサダム・フセイン政権の協力」であった。国連決議にもよらず、むしろ国連の査察団による調査継続の意向をも押し切って二〇〇三年三月二十日に開始した米英などによるイラク侵略戦争の口実は、今では全くの虚偽であったことはブッシュ前大統領すら認めている。それは決して米情報機関などによる「誤った情報」によるものではない。「大量破壊兵器」や「アルカイダとの結託」という口実は、イラク戦争のために目的意識的にねつ造されたものだったのである。
この戦争の結果はどうだったか。七年間におよぶ戦争で米兵の死者は四千四百人を上回った。殺害されたイラクの人々は少なく見積もっても十万人を超え、数百万人の人々が国内・国外難民としてその生活基盤を奪われた。ファルージャなどでの住民虐殺、アブグレイブ監獄での虐待に象徴される米軍・多国籍軍の行為は明白な「戦争犯罪」だった。米国の侵略戦争と占領がイラクにもたらした物的・人的損害ははかりしれないものであり、イラクの民族的・宗派的対立を修復不可能なまでに破壊した。イラク戦争は、動員された米兵の心身にも深刻な傷を負わせた。
オバマ政権は、アメリカ国内でも拡大したイラク反戦・撤兵の動きに支えられて政権の座についた。しかしオバマ大統領は八月三十一日の「戦闘作戦終了」演説においても、イラク戦争の誤りを認めるどころか、戦犯ブッシュの「国への愛」を称えるものだったのである。こうしてオバマの「戦闘部隊のイラクからの撤退演説」は、米国の戦争責任を完全に不問に付し、「イラクと中東に自由と民主主義を確立する」という公式の戦争目的を正当化するものでしかなかった。「ブッシュの戦争」に抗議して全世界で空前の高揚を見せた反戦運動は、あらためて米国の戦争責任を厳しく追及し続けなければならない。
日本の小泉政権は、米国のイラク戦争を全面的に支持した。インド洋でアフガン多国籍軍を支援し給油活動に従事していた海自の補給艦は、イラク爆撃に向かう米空母に給油した。
イラク占領の開始後、小泉首相は「大量破壊兵器が見つからなかったからといって、大量破壊兵器がなかったということにはならない。サダム・フセインがまだ発見できないからといって、フセインがいなかったということにならないのと同じ」などの詭弁を弄しつつ、米国の強い圧力を受け入れて「イラク特措法」を制定し、陸自・空自をイラクに派遣した。イラク特措法にもとづく空自の輸送作戦は多国籍軍の兵士・物資を輸送する軍事作戦の不可欠の一部であり、「戦闘活動ではない復興支援活動」という特措法の建前が全くのウソであり違憲であることが、名古屋高裁の空自イラク派兵違憲訴訟判決でも確定した。
日本政府のイラク戦争支援について検証する活動も始まっており、われわれはあらためてその責任を追及する必要がある。
10月ピース
ウィーク成功へ
オバマは「駐イラク米軍戦闘部隊撤退」演説において、「イラク戦争で一兆ドルをもつぎ込んだことで過去最大の赤字を招いた」ことを指摘し、「最も差し迫った課題は、経済を立て直し、職を失った何百万人もの米国人を仕事に復帰させることだ」として、経済再建に全力をあげると言明している。
しかし同時にオバマは、イラクから引き上げた米軍をアフガニスタンでの「対テロ戦争」に投入することを宣言した。すでにアフガニスタンには米軍が新たに三万人増派されて十万人となり、アフガニスタンの国土の三分の二を実効支配するタリバンの本拠・カンダハルへの総攻撃が始まろうとしている。
しかしアフガニスタンでの米国・多国籍軍の「対テロ戦争」は、イラク戦争以上に米軍にとって解決の見込みのない泥沼となるだろう。すでにアフガン戦争はパキスタンへと波及し、米軍の「無人飛行機」によるパキスタン爆撃によって多くの住民が殺戮されている。アフガニスタン、パキスタンを貫いて住民の反米軍感情は頂点に達している。アフガニスタンへの米軍の集中展開と軍事作戦は、腐敗し、統治能力を失ったアフガニスタンのカルザイ政権、そしてパキスタンのザルダリ政権と軍部への民衆の怒りをさらに昂進させている。
歴史上空前の規模に達したパキスタンの洪水被害に対する米軍の「救援」活動は、明らかにアフガニスタンでの「対テロ戦争」の一環であり、米国・パキスタン両政府の強い要請を受けた陸自ヘリ部隊の派兵もまたその一翼を担うものである。
米軍の「対テロ」戦争は、イラクでもアフガニスタンでも、多くの住民の生命を奪い、生活基盤を破壊し、無秩序と混乱を拡大してしまった。
二〇〇一年の「9・11」と同年十月七日のアフガン侵略の開始から九年。今こそ、米国が主導する「対テロ戦争」の破綻を見据え、アフガン戦争と占領を終わらせるために声を上げよう。今年十月、米国の反戦運動団体ユナイテッド・フォー・ピース・アンド・ジャスティス(UFPJ)などが平和のための国際共同行動を呼びかけている。
日本ではJUCON、ノーベース全国アクション、WORLD PEACE NOWによって10月「ピースウィーク」2010東京実行委員会が呼びかけられ、「武力で平和はつくれない――もう一つの日米関係へ」をテーマに集会・ピースパレードが呼びかけられている(10月17日午後1時、芝公園23号地)。「やめさせようアフガン戦争、なくそう普天間基地、つくらせない辺野古新基地」をスローガンにしたこの集会・パレードをともに成功させよう。 (K)
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