九月二十五日、「小泉首相の訪朝をどう見るか? 日朝国交正常化を求める緊急シンポジウム」が開かれた。このシンポジウムは、拉致事件の被害者八人の死亡という衝撃的な事実が明らかにされた九月十七日の小泉訪朝と日朝首脳会談、そして日朝国交正常化交渉の開始という歴史的事態を、日韓連帯運動はどのようにとらえて行動すべきなのかを探るために、日韓民衆連帯全国ネットワーク(日韓ネット)の主催で開かれた。
会場の東京・文京シビックセンターには百十人が集まり、大妻女子大学教授で元毎日新聞ソウル特派員の前田康博さん、「日韓分析」編集の北川広和さん、日韓ネット共同代表の渡辺健樹さんの報告を受け、会場全体で熱心な意見交換を行なった。
三人のパネリストの主張は
前田さんは、「革命による権力交替や敗戦などの場合を除いて、戦争や他民族支配などの国家犯罪を謝罪した前例はほとんどない」と述べて北朝鮮側の態度を評価した。その上で、「相互の歩み寄りがなければ国交回復はありえない」とし、「『共和国』(北朝鮮)がルビコン川を渡ったことを過小評価することなく、アジアの平和と経済の発展のために日朝交渉を進めるべきだ」と述べた。
北川さんは、「拉致事件を明らかにしたのは、ただ経済的に追い詰められたからだけではなく、改革開放政策推進の前触れだ。体制内のウミを出して国際社会の一員になろうとする決意の表れだ」と述べた。
そしてピョンヤン宣言について、北朝鮮が日本の要求をほとんど受け入れたという大方の評価を批判して次のように述べた。「植民地支配への謝罪ではなく反省とおわびになっているが、ゼロ回答だった日韓条約とは大違いだ。また、互いに安全を脅かさないことを確認したということは、これまで日本が安全を脅かしたことを認めたということだ。米国主導の安保作りを突き崩すことをめざすという側面もある」。
渡辺さんは、小泉が訪朝を決断した理由について次のように述べた。「東アジアの経済統合が進行していることを抜きには語れない。京義線鉄道が復元されて南北がつながり、朝鮮半島からヨーロッパまで大動脈がつながる時代に、ヨーロッパのほとんどが『共和国』と国交があり、アジアでも主要国では日本だけが国交がない。これが訪朝の底流にある。グローバリゼーションを視野に入れて見る必要がある」。
「二〇〇三年に米朝関係が緊張するという予測があり、『共和国』が戦争と制裁を回避する条件を作るために主動的に出た。それに日本を巻き込もうとしたと見ることもできる」。このように述べた渡辺さんは、「日本はこれまで日韓条約体制を朝鮮半島に押しつけてきたが、それを是正する機会だ」と主張した。
また拉致問題をめぐって以下のように主張した。「私たちはかつて疑惑にすぎないと主張してきたが、主体的に反省したい。『共和国』にも誠意ある対応を求めたい。私は拉致事件被害者家族の叫びは、かつて子どもや夫を強制連行されたハルモニたちの叫びと同じだと思った。一緒の問題としてとらえ直すべきだ。在日に対する嫌がらせや暴力を許さず、日本民衆の主体的責任において過去の問題への謝罪と補償をかちとり、ブッシュ政権の戦争を阻止し、有事立法を阻止する闘いを進めたい」。
「北の人権問題になぜ触れないのか」
三人の発言をめぐって、会場から多数の意見が出された。
「北朝鮮の人権問題とその責任について一言の発言もなかったのは極めて遺憾だ。韓国でも北朝鮮に拉致された多数の犠牲者家族が糾弾の行動に立ち上がっている。女性国際戦犯法廷は、天皇の責任を追及している。拉致事件の指揮者としての金正日の責任をなぜ追及しようとしないのか」。
「もし北朝鮮に誠意があるなら被害者を即刻帰還させるべきだ。この問題について報告者はいったいどう考えているのか」。
「私たちは拉致事件について、北朝鮮に謝罪と賠償と経緯を明らかにすることを要求すべきだ。同時に日本政府に植民地支配への謝罪と補償を求めるべきだ。拉致された少女と従軍慰安婦にされた少女の苦難は一緒だ。植民地支配の責任に対して日本はどのように向かい合ってきたのか。このことを抜きにして拉致問題を語ることはできない」。
このほかにも、ブッシュ政権の戦争政策と小泉訪朝の関係、「拉致事件で私たちも加害者になってしまった」と言う在日の友人たちの苦悩とどのように向き合うかなど、予定時間を超えて討論になり、最後に「在日朝鮮・韓国人への暴力・嫌がらせを許すな!」という緊急アピールが全体の拍手で採択された。 (I)
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