もどる

新自由主義への回帰と深まる軍事化          かけはし2010.12.20号

混迷・自壊する管政権の行方

有権者から見放
された民主党

 十月一日に始まった臨時国会は、十二月三日に会期を終えた。秋の臨時国会は、菅民主党政権のダッチロール現象によって特徴づけられる。今や菅政権は、来年一月の通常国会を待たずに、明日をも知れぬ歯止めなき解体状況に直面している。昨年八月の「政権交代」にかけた有権者の期待は一年で完全に喪失してしまった。もはや菅政権のみならず民主党自体が存亡の危機に直面しているといって過言ではない。有権者はいらだちをつのらせ民主党を見はなしてしまった。内閣支持率は不支持率を大きく下回り、政党支持率でも一部の調査では自民党が第一党に復帰する状況になっている。
 七月参院選での民主党の大敗による衆参ねじれ現象の再来、菅・小沢の間で党を二分した九月の民主党代表選を経て出発した改造内閣と民主党執行部体制は当初から統治能力を欠いた脆弱なものだった。二〇〇七年参院選以後の自公政権の衆参ねじれの際は、まだ衆院での「与党三分の二」体制がかろうじて維持されており、参院で否決された法案の「再可決」が可能であったのと比較しても、今回の臨時国会を前にした菅政権の体制はいっそう不安定だった。野党の一部を取り込むことなしには、あらゆる法案の成立強行もなしえなかったからである。

いったい何を
やりたいのか

 したがって菅政権は臨時国会冒頭から「熟議の国会」を掲げて、野党との政策協調をめざす低姿勢ぶりを前面に出さざるをえなかった。すなわち鳩山政権が提示した「人間のための経済」、「対等な日米関係」「東アジア共同体」といった「脱自公政権」的な理念を放棄し、鳩山政権の崩壊につながった「普天間基地移設」問題については辺野古に回帰した五月「日米合意」を忠実に履行する姿勢をことさらに示すことになった。
 経済政策の面では、「新成長戦略」による「強い経済」を何よりも第一義的な課題とし、そのために法人税減税を軸にした財界主導の新自由主義コースを明確化した。ソウルG20や横浜APECを目前にした十月には、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)への参加を打ち出し、日本農業の壊滅をもたらす関税の完全撤廃への道に踏み込んだ。「政治主導」という民主党のキャッチフレーズも色あせ、二〇〇九年「マニフェスト」は「官僚主導」政治に道を譲った。
 こうして菅政権は臨時国会冒頭から、「何をやりたい政権なのか」が有権者へのメッセージとしても、民主党内をまとめるイニシアティブとしても、また「政権を投げ出さない」と自らに言い聞かせた首相本人にとってもよくわからない無残な姿をさらけ出すことになってしまった。こうした中で、鳩山政権以来の懸案になっていた派遣法抜本改正や民営化を見直す郵政改革法案は、まったく審議が行われないまま棚上げされてしまったのである。

深まるアジア
の軍事的緊張

 それだけではない。九月七日の「尖閣諸島」沖での中国人漁船と海保巡視船の衝突・中国人漁船長逮捕事件、十一月一日のメドベージェフ・ロシア大統領のクナシリ島訪問によって意識的に駆り立てられた「領土問題」をめぐる排外主義的ナショナリズムの気運は、菅政権の「弱腰外交」という自民党やメディアからの批判をエスカレートさせることになった。菅政権、とりわけ前原外相(「尖閣事件」の時は国交相)の「尖閣」をめぐって「領土問題は存在しない」という強硬な立場こそが問題を深刻化させた根本原因であったにもかかわらずで、ある。さらに「尖閣列島」問題とならんで十一月二十三日に起きた朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)による延坪島(ヨンピョンド)砲撃は、東北アジアにおける軍事的緊張を一挙に高める結果となり、日米同盟の臨戦態勢的強化を進める口実としてフルに利用されている。
 「中国の軍事的脅威」を口実にした「日米同盟」強化路線=米国のグローバル戦争との一体化は、新防衛大綱における「基盤的防衛力」整備から「動的防衛力」構想への転換、武器の「国際的共同開発」、「南西諸島」への自衛隊配備といった軍事化路線に、自公政権時代以上に鮮明なかたちで踏み込む圧力を菅政権にかけているのである。
 「尖閣」問題で逮捕した中国人漁船員の釈放、海保ビデオ流出をめぐる菅政権の対応への批判は、中国をターゲットとした極右排外主義の気分をさらに拡大し、それがまた菅民主党政権の右傾化を促進するというサイクルをもたらしている。共産党も含めた「尖閣=日本固有の領土」論での「挙国一致」の政治・イデオロギー状況が、こうした流れを促進している。

党分裂の危機と
新たな政界再編

 臨時国会後の政局は、激しく揺れ動いている。小沢一郎元党首・幹事長の政治資金問題をめぐる検察審査会による「強制起訴」、仙谷官房長官と馬淵澄夫国交相の「尖閣・海保ビデオ」流出問題についての「問責決議」問題などで、小沢の招致や仙谷、馬淵の辞任がないかぎり自民党などが予算国会の審議拒否を明確にしているこためだ。
 小沢招致を衆院政治倫理審査会の議決で実現しようとする岡田幹事長ら民主党「反小沢」派の動きに対し小沢派は激しく反発しており、その方針が強行されたら事実上の分裂に向かう可能性もある。また、菅首相と民主党執行部は社民党の連立復帰を要請するとともに、公明党や舛添の「新党改革」、さらには与謝野や平沼の「たちあがれ日本」などとの協力・連立をも模索している。そのフィクサーとなっているのが福田内閣当時、自民党と小沢民主党との「大連立」に動いた渡辺恒雄・読売新聞会長である。今のところ可能性は少ないとはいえ状況の推移によっては民主党の分裂・自民党との「大連立」も全くないわけではない。
 それは、日本の議会政治の激動する情勢への対応能力のいっそうのマヒと、官僚・財界が主導する新自由主義とセットになった強権主義的管理支配構造へと導くことになるだろう。
 左翼の無力化、労働組合運動をはじめとする大衆的抵抗運動の不在が、こうした強権主義的右傾化の構造を規定している。この状況の中で、持続する沖縄の反基地運動との結合を武器に、労働者・市民の新しい戦略とそのための政治的結集のあり方にむけた討論を、国際的視点にたってねばり強く開始しよう。
 突破口は自らの闘いで切り開かなければならない。 (12月12日 平井純一)



国会議員と市民の院内集会
「武器輸出3原則」見直し反対 新防衛大綱にNO!の声を

「平和外交」の理念
を簡単に変えるな

 十一月二十四日の院内集会、十一月三十日の国会前キャンドル行動に続いて、十二月七日「日本製の武器が世界の子どもたちを殺すの? 新防衛大綱って何? 議員と市民の院内集会」が衆院第一議員会館多目的ホールで十二時から開催され百十人が参加した。
 「武器輸出三原則」を見直し、武器の「国際的共同開発」などをうたった新安保懇報告書がさる八月に提出され、それを受けて民主党の外交安保調査会が「提言」をまとめ、十二月中旬に閣議決定される新防衛改革大綱にこうした「武器輸出解禁・共同開発」などの方針が盛り込まれようとすることに対して、WORLD PEACE NOW、ピースボート、平和フォーラムなどが呼びかけた緊急の取り組みの三度目である。
 この日の集会では、高田健さんが主催者を代表して「国是」とされてきた平和外交の理念をそんなに簡単に変えられるのか、と批判。続いて服部良一衆院議員(社民党)が、「前日の菅首相と福島社民党党首との党首会談で、福島さんが武器輸出三原則見直しと辺野古新基地建設にはっきりとノーを突きつけた。社民党としてもこの日午後五時に首相官邸への申し入れを行う」と述べた。福島みずほ社民党党首も「世界の紛争を生み出し、拡大することにつながる武器輸出三原則見直しは絶対に認められない」と強調した。

防衛省・軍需産業
米国からの圧力

 核とミサイル防衛にNO!キャンペーンの杉原浩司さんは、現在行われている日米合同軍事演習が北朝鮮と中国の「脅威」に対処するという名目で日米安保の必要性を日本国民の意識に刷り込む国内向けの意味が大きいと批判。さらに新防衛大綱の決定以前に防衛省と軍需産業の懇談会が開始され、火砲、宇宙兵器、ロボット兵器、サイバー兵器・無人潜水艦などの「国際共同開発」に参入しようとする動きが始まっていると警告を発した。
 平和フォーラムの藤本事務局長は、宮崎県えびの市で十二年ぶりに行われた日米共同演習に反対し二千三百人が結集した集会を報告するとともに、「日米関係のあり方を変えなければ日本の将来にいいことはない。そのギリギリの攻防が続いている。沖縄県知事選では仲井真候補が勝ったが、自民・公明が推す仲井真でさえ『普天間の県外移設』と言わざるをえない。しかし『県外』といっても受け入れる所はどこにもない。そこに前原外相ら『親米嫌中』派の焦りがある」と訴えた。
 前々日まで「ピースボート」に乗って、自衛隊の基地が作られている東アフリカのジブチなどにも訪れた軍事ジャーナリストの前田哲男さんは、対人地雷禁止条約やクラスター爆弾禁止条約が発効する世界の流れの中で「武器輸出三原則の見直し」などというのは「悪ふざけ」としか言いようがない、と語った。
 集会ではさらに日本山妙法寺、キリスト者平和ネット、許すな!憲法改悪・市民連絡会、日蓮宗僧侶で宗教者九条の輪の小野さん、憲法を生かす会が発言した。
 こうした市民の動きもあって、この日、菅首相は「武器輸出三原則見直しを新防衛大綱に盛り込まない」むねの発言をしている。防衛省や軍需産業、米国などからの巻き返しも予測される。警戒を緩めることなく労働者・市民からの声を発信し続けることが大事だ。       (K)


辺野古実が防衛省行動
当山栄さんの志を継ごう!
自衛隊南西諸島配備許すな

 十二月六日午後六時半から、辺野古への基地建設を許さない実行委が「日米合同軍事演習反対、与那国島への自衛隊派兵を許さない」と防衛省へ申し入れ行動を行った。
 最初に司会者が「辺野古テント村村長の当山栄さんが昨日ガンで亡くなったと連絡が入った。遺体と対面した人によると、静かで安らかであったという。当山さんは基地や戦争を憎み、辺野古への新基地建設を絶対に許さない闘いを先頭になって担ってきた。知事選では、電話で激励してくれた。現在通夜をやっている」と報告し、今回予定していた安次富さんの電話現地報告はできないと明らかにした。そして、「当山さんは東京の行動に何度も電話で激励してくれた。今回の行動は当山さんといっしょの行動としてやり抜こう」とし、一分間の黙祷を行った。
 司会者が「沖縄県知事選は残念ながら、伊波さんが負けた。しかし、仲井真は県外移設を言わざるをえなかった。宜野湾市長選では伊波さんの後を引き継いだ安里猛さんが当選した」と報告し、さらに「緊迫する朝鮮半島情勢を受けて、米韓軍事演習に続けて日米合同演習が始まった。通常、土日は演習を行わないが、今回はおかまいなしで行っている。嘉手納基地は空自のF15がエンジントラブルを起こすなどたいへんなことになっている。沖縄の軍事基地強化に反対していこう」と訴えた。
 その後、参加団体が発言した。ジュゴン保護キャンペーン(SBCC)が名古屋COP10で、ジュゴン保護の四万五千筆の署名を提出したこと、先住民族の方が辺野古・大浦湾への軍事基地反対を集会の中で発言してくれた成果があった」と発言。次に反安保実が、「今後、日米政府との対決の矢面に立つ名護市に支援のためにふるさと納税制度を利用しよう」と訴えた。
 沖縄・一坪反戦地主会関東ブロックは「政府が防衛大綱などによって、沖縄南方へ自衛隊を派兵強化しようとしている」と批判し、「十二月十六日午後六時半から、北澤防衛相への面会・申し入れ行動を行うので参加を」と要請した。新宿ど真ん中デモからは「十二月五日、八メートルの横断幕を作りアピールした。街の反応もよかった。さらに海外ゲストも参加した。これからも続けたい」と報告した。この後、辺野古実が防衛省へ申し入れを行った。来年は一月十日(月)午後六時半から定例防衛省行動を行う予定だ。 (M)


もどる

Back