| 沖縄県知事選―仲井真知事に「県外」の公約をまもらせようかけはし2010.12.13号 |
| 普天間撤去・辺野古新基地建設阻止へ本番はこれからだ |
【沖縄】仲井真三十三万五千七百八票、伊波二十九万七千八十二票。投票率六〇・八八%。その差三万八千六百二十六票。「意外に差がついたネ」一夜明けた十一月二十九日、仲間うちでの率直な感想だった。
私も含めて、いつもは選挙に熱くなれない様々な小グループが、今回の知事選を辺野古新基地建設の息の根を止める大きなチャンスと考え、市民選対に結集して、慣れない選挙運動に積極参加していった。地元マスコミでも、投票日直前までは接戦の評価だったが、開票当日は、午後十一時を待たずに、これまで四年間自民・公明の支持で辺野古への基地建設を容認してきた現職の仲井真候補にあっさり当確が出てしまった。
民主党への反発
取り込む仲井真
一昨年県議選での与野党逆転と昨年八月の政権交替。一月名護市長選での辺野古新基地建設に反対する稲嶺進市長の誕生。九月名護市議選での下馬評を覆す稲嶺与党の逆転勝利という流れを受けて、私たちは、これまで普天間基地の地元宜野湾市の市長として一貫して県内移設に反対し、普天間基地の閉鎖を求めてきた伊波洋一さんを当選させ辺野古への基地押し付けに決着をつけることが出来るとの思いで今回の知事選に取り組んだ。
一方仲井真側は、選対本部を組織するにあたって、自民党県連の翁長雄志那覇市長の説得で従来の県内移設容認から県外移設へと公約を転換し、基地問題での劣勢を挽回する戦略を採った。鳩山騒動で民主党が、辺野古への押し付けに回帰して、県民の怒りを買い、候補を立てられない中で、あえて自民党の推薦は受けず、公明党と自民党県連の推薦候補として、七割を超す「県内移設反対」の県民世論に配慮し、民主党政府への反発を取り込む流れを作った。
「国土の〇・六%に七四%の米軍基地が集中する沖縄に、これ以上の負担はゴメンだ。日本全体で、日本の安全保障を考えてもらう」。翁長選対本部長は街頭演説で、基地負担の「沖縄差別」を訴えていた。加えて、民主党政府の相次ぐ公約放棄と不祥事により、政権交替への期待が急速に低下し、「誰がやっても何も変わらない」との気分が蔓延する中、投票率は過去二番目の低さとなった。おそらく、昨年の衆議院選で民主党を押し上げた票の中から棄権が増えたものと思われる。また、投票した人でも基地問題に両者が「県内反対」となる中で、民主党支持者のうち四割が仲井真に投票し、政党支持なしの四割が仲井真に投票している。
ところで、伊波市長の知事選出馬によって、同日行われた宜野湾市長選挙では、伊波市政の継承を掲げた安里猛さんが、仲井真とセットで出た自民党の安次富修候補を破って当選し、一矢報いた。名護・那覇を含めて県内十一市のうち、伊波さんが仲井真候補に勝ったのは宜野湾市だけだった。伊波さんの、反基地を土台とした町作りの姿勢を、普天間基地の当事者である宜野湾市民は知っていたが、他の地域の人たちには、私たちが思うほどの知名度はなかったのかもしれない。
特に、基地については、表面的には両者とも「県内反対」で、違いがわかりにくくなったため、「経済振興」への関心が、これまでの振興策の背景にある構造的な差別を議論の対象とせず、振興策のメニュー較べに終わっている中では、全国的な不況のあおりを受け「経済の仲井真」のキャッチフレーズが、漠然と浸透していった。沖縄尚学高校での模擬投票を始め若年層の仲井真支持が意外に多かった。
加えて、この時期に本土メディアが中国・北朝鮮の軍事的脅威を連日取り上げる中で、「尖閣問題があるから、やはり沖縄に米軍がいた方がいい」という根拠のないムードが漂ったことも安保条約体制の見直しを明確に主張している伊波さんに不利になったのかもしれない。
民主党への反発
取り込む仲井真
こうして、仲井真知事の再選が決まった。この結果に米国政府は安堵し、菅政権は密かに期待していると報道されているが、少なくとも辺野古に関する限り「県外移設」の民意は、今回も確実に表明されたのだ。この県民世論を尊重して、方針転換したからこそ仲井真知事は当選できた。日米両政府は、民主主義を標榜するなら、この民意を受け容れなければならない。二十九日夜のNHK「クローズアップ現代」を始め、マスコミも含めた本土側の権力が総掛かりで、米国の意向に従うべく、今後も沖縄の民意を無視して、県内移設を説得しようとするなら、この一年程急速に意識されつつある現代の「琉球処分」とも言われる沖縄のヤマトに対する被差別感が更に強まっていくだろう。
折しも三日から始まった、日米共同統合演習のため、基地を守るためのパトリオットミサイル(PAC3)が公道を移動し、那覇空港では自衛隊のF15戦闘機のために一時滑走路が閉鎖された。知事選前後にもかかわらず、嘉手納基地のメンテナンスのために航空機材が頻繁に普天間に移動するため、爆音被害が、那覇・南部地域まで拡大している。「負担軽減」の口ぐせとは裏腹のこうした米軍の無神経な対応は、日本政府の基地問題に対する思考停止を見透かしているからだ。
辺野古・高江の
座り込みは続く
昨年の政権交替を通して高まった「何かが変えられる」という政治への期待は、鳩山・菅内閣の相次ぐ裏切りで、大きな不信に変わってしまった。「誰がやっても何も変わらない」というムードから政治への無関心が膨らんでいくことが何よりも恐ろしい。選挙が終わってインタビューに答えた辺野古のオバーは「選挙は選挙。誰が知事になっても、辺野古に基地は絶対造らさない」と言っていた。稲嶺名護市長は、「伊波さんは負けたが仲井真知事に県外を公約させたのは一歩前進だ。仲井真知事は県外と言って当選した以上、私と安里宜野湾市長の先頭に立って日本政府に掛け合ってほしい」とコメントした。
そうだ! 負けてチルダイしているヒマはない。辺野古新基地阻止の本番は現地にある。闘いはこれからだ。「県外移設」を始め、仲井真知事の公約に無関心を決め込んではならない。菅内閣ではいつ解散総選挙になって自・公が政権に復帰するかもしれないのだ。良くも悪くも、民主党政権の下で辺野古・高江に対する関心は全国レベル・国際レベルに高まった。何度も示された沖縄の民意をねじ曲げてでも、権力が辺野古に踏み込んでくるなら、私たちは全国の仲間とともに現地に駆けつけ、世界の人々を傷付ける戦争のための基地建設を阻止しなければならない。今日も辺野古・高江では座り込みが続けられている。 (長井)
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