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   かけはし2010.12.6号

APECなんかいらない!生活・環境・権利を破壊する資本攻勢に反撃を

横浜民衆フォーラム分科会から(下)
新自由主義に抗する民衆運動の連携


「『開発』を考える」分科会
国際的視点から今日の「開発」と
「成長戦略」を批判的にとらえる


予算の四四%が
債務返済関連

 十一月十四日、「いらない!APEC」横浜民衆フォーラムの「『開発』を考える」分科会には六十人が集まった。
 最初にパキスタンの「女性労働者ヘルプライン」事務局長ブシュラ・カリクさんがアメリカのアフガニスタン侵略の一環としての「対テロ」戦争、二千万人が被災した空前の洪水災害、そして七百四十億ドルもの累積債務、そして貧困・無権利・宗派主義に覆われたパキスタンの現実について報告した。
 カリクさんはAPEC首脳会議の前に行われたソウルでのG20サミットへの対抗企画にも招請されていたが韓国からのビザが下りず入国を拒否され、さらに日本政府からのビザの発給も遅れて日本に着いたのが前日の夕刻。一日目の行動には出席できなかった。
 カリクさんは、次のように述べた。パキスタンの予算の四四%が債務返済関連にあてられ、残りも多くは軍事予算に費やされ、福祉・教育に回すカネがごく僅か。それも財政の悪化によって年々切り下げられている。民営化が進み、正規労働からインフォーマルセクターへの移行がなされ、今やインフォーマルセクターが労働者の八〇%を占める、そのうち女性は約七割。最低賃金は月七千ルピー(1パキスタンルピーは日本円に換算して1円強)と定められているが、インフォーマルセクターでは月二千ルピー程度で働かざるをえない状況もある。こうして一億八千万人のパキスタン人口のうち約六〇%が貧困線以下の生活を余儀なくされている。
 こうした厳しい現実の中でパキスタン人民党(PPP)などが与党となっている政権の統治能力は崩壊し、米国によるアフガニスタンからの無人機による越境爆撃による住民の虐殺ともあいまって反米感情が高まり、反動的な右派宗教勢力が勢いを増している現実をカリクさんは紹介した。
 カリクさんたちは虐げられている女性たちの権利を守る運動を進めている一方、他のグループとともに債務帳消しの要求を行っている。パキスタンの債務に最大の責任を負っている国が日本である。なお女性労働者ヘルプラインも加わって呼びかけられている洪水被災者への救援運動について本紙でも紹介したが、この日、「かけはし」読者から寄せられたカンパ約五万円を直接カリクさんに手渡した。
戦争支援と国益
主義に沿うODA

 続いてODA改革ネットワークの高橋清貴さんが「日本のODAを検証する」というテーマで報告した。日本はODA大国と言われているがその額は年々減少し、外務省は危機感を深め、民間企業との連携に踏み込んでいる。もともとODAはきわめて政治的なものであり、「外交上のツール」「日本の通商産業政策のテコ」とされている。
 たとえばイラクには二〇〇三年にニーズを検討しないまま五十億ドルのODAが供与されたが、それは米国のイラク戦争支援の一環だった。またパキスタンに対しては核兵器保有を理由に凍結されていたODAを二〇〇二年に再開したが、それも米国のアフガニスタン戦争にパキスタンが協力したためだった。
 現在言われているODAの「官民パートナーシップ」では「資源・エネルギーの日本への安定供給」がうたわれている。それは経産省や財務省の言う「開かれた国益の増進」路線に沿ったものであり、国益主義が前面に出ている。高橋さんはまた「貧困をなくすミレニアム」構想による支援が企業の「経済成長戦略」に沿ったものであることの問題点も指摘した。
 青西靖夫さん(開発と権利のための行動センター)は「ペルーの石油開発・自由貿易協定・先住民族」をテーマに報告。先住民族のテリトリーに存在する石油、森林、鉱物などを開発する交渉が、先住民族の関与なしに推進され、その権利を侵害している実態を批判した。
水ビジネスが
はらむ危険性

 佐久間智子さん(アジア太平洋資料センター理事)は、日本の国際的水ビジネスへの本格的参入とその問題点について報告。「二十一世紀における日本の復活に向けた国家戦略プロジェクト」としてパッケージ型インフラ建設の海外展開が構想され、「インフラ大国」としての地位確立がもくろまれていることを紹介した。そこでは二〇三〇年までに四十一兆ドルの投資が見込まれ、うち水道が二十二兆六千百億ドル、電力が九兆ドルとされている。
 水ビジネス市場はフランスが伝統的に最も優位を占め、イギリスも一九八九年にイングランドとウェールズで水道サービスが民営化されることで後を追っている。日本では自治体水道の運営能力と民間技術のパッケージで展開されているが、これまでの日本の水道職員による技術指導が一定の成果を収めているものの「非効率」という批判もなされていることを紹介した。そして現在の「官民パートナーシップ」によるインフラ整備という主張が企業進出のためのものであり、開かれたやり方での再検討が必要だと語った。佐久間さんの立場は原発輸出などにはきっぱりと反対すべきだが、水道インフラについてはもう少し丁寧に見ておくべき、という意見である。
 次に「マニラの水問題」についてジュビリー・サウスと「債務からの解放連合(FDC)」の活動家であり、水問題に取り組んでいる(PATTK[一滴の水])の活動家であるフィリピンのテオドリコ・ナベアさんが報告に立った。ナベアさんも成田の入管で六時間にわたり不当な審査を受けたという。
 ナベアさんはフィリピンへの水への融資の三分の二が日本からのものであることを指摘した。そして民営化を見直し、今後の貸し付けを監視すること、巨大ダムなどの新しい水源開発ではなく、漏水率を下げ、貧しい人々でも支払える低料金での安全な水の確保が必要であると強調した。
 最後に坂東喜久恵さん(たんぽぽ舎)が、民主党政権下で加速されている原発輸出を批判。ベトナム、中国などに「クリーンでグリーン」を看板に、「官民一体」のセールスが行われている現実を糾弾した。
 短い時間での盛りだくさんな報告のために、十分に論議の時間もとれなかったが、今日の「開発」と「成長戦略」への批判を国際的な視点で共有していく上で、意義深い分科会だった。 (K)



沖縄知事選
伊波候補一歩及ばず、日米合意撤回へ運動再組織化を

 十一月十四日、「女性の視点からのAPEC」分科会(かながわ県民センター)は、日本婦人団体連合会、すぺーすアライズ、男女平等をすすめる教育全国ネットワークが主催団体。協力団体としてピープルヘルスムーブメント日本支部、新しい公共をつくる市民キャビネット男女平等部会、アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」(wam)が参加。
 この分科会は、「…考えてみよう、話してみよう 『自由貿易』、『成長戦略』、『軍隊・基地と経済』、『公正な社会のあり方』について」を切り口にAPECを批判し、今後の方向性について次の四人のパネリストから報告が行われた。

世界女性行進
について紹介

 ジーン・エンリケスさん(フィリピン:世界女性行進国際委員、CATW―AP〈女性の人身売買反対連合・アジア太平洋〉事務局長)。
 ジーンさんは、「新自由主義への抵抗と対案:調整者・改革者としてのG20で十分なのだろうか?」というテーマで報告。
 冒頭、「私も含めてG20で韓国に九人のフィリピン人が入国を拒否された。その一人は、私の夫(進歩的労働組合のリーダー)で十一月六日に入国を拒否され、不当な勾留を受け、送り返された」ことを糾弾した。抗議声明では、「このような入国拒否をしなければならないのがG20の弱さ」であることを強調した。
 次に世界女性行進について紹介し、「資本主義と家父長制に反対する国際的にひろがる連帯のなかで、新自由主義に対する国際的な抵抗に貢献している。貧困の根本的な原因の解決や女性に対する暴力に取り組んでいる草の根のグループや団体を結びつけながら、世界の五地域、五千の女性団体を組織し、自由貿易、軍事主義、女性に対する暴力に反対の声をあげながら百六十カ国でいっせいに行進している」取り組みを通してグローバリゼーションと軍事主義が性奴隷制、人身売買や買売春などの女性に対する暴力のへの条件をつくりだしていることが明らかになっている、と提起した。
 その具体例として、「フィリピンからアメリカの軍事基地を撤去させてから十年がたっているが、訪問軍隊協定によって国内の二十二の港にアメリカの軍艦が停泊するようになったことセットで以前より多くの地域で売買春の被害を受けた女性を支援している」ことを報告し、スクラムを強化していこうと訴えた。

APECは経済と
軍事強化がセット

 高里鈴代さん(沖縄:基地・軍隊を許さない行動する女たちの会)は、「一九九五年の米兵による十二歳の少女の性被害を契機にして行動する会の発足、米国でのピースキャラバンの取り組みを通して、米軍基地による女性への暴力、人権、環境破壊の実態を米の民衆に伝えてきた。沖縄サミットの時は、『国際女性サミット』として各国の仲間たちともに対抗アクションを取り組んできた」ことを報告。女性たちに沈黙を強要する社会を批判しながら国際的なネットワーク作りは現在も続いていることを強調した。
 さらに辺野古新基地をめぐる問題、グアムのチャモロ先住民との交流を通した反基地運動を紹介し、「APECを通して経済のことを話すといっているが、軍事的な強化とセットだ。オバマ大統領と菅首相の会談で再度、日米共同声明を確認し、辺野古問題は知事選が終わったら新知事を説得することまで約束している。この結果が女性、子ども、アジアの弱い地域に支配者の力を及ぼそうとすることになる」と指摘。
 「十一月二十八日に沖縄知事選の投票日です。伊波知事が誕生するか。軍事優先になっている国家安全保障ではないものにしていく大きな転換をしていくためにし、ぜひ実現したい」と訴えた。

新自由主義政策か
らの転換が重要

 高橋マス子さん(農民運動全国連合会前女性部副部長)は、菅政権が掲げる「新成長戦略」とTPP、FTAAPを批判し、「農民連も加盟する世界的な農民組織『ビア・カンペシーナ』〈農民の道〉が提唱した『食糧主権』の考え方がWTOへの対案としてもうひとつの流れを作っている。新自由主義的な政策を転換し、内需型経済と地球温暖化対策の強化を実現するためにともに連帯していこう」と呼びかけた。
 川田忠明さん(日本平和委員会常任理事)は、「日本とアジアの平和をどう創るか―APECとアジアの平和共同体を」というテーマから報告した。
 川田さんは、APECの一環として日米政府主催で「女性起業家サミット」、財界による「APEC女性リーダーズネットワーク会合」の開催について「いずれもいかに金儲けするのかの話だ」と厳しく批判。
 平和運動を前進させるために国連安保理事会決議1325号「女性・平和・安全」、国連総会決議案「女性、軍縮、軍備管理、不拡散」を取り上げ、「紛争における女性の被害を重視し、紛争解決と平和構築に女性の役割、意思決定機関への参加」の重要性を問題提起した。
 パネリストの報告後、質義務応答、討論を集約し、最後に永井好子さん(男女平等をすすめる教育全国ネットワーク)から閉会の挨拶が行われた。  (Y)
 



横浜民衆フォーラム労働分科会
海外ゲストも含め、企業のための
世界を許さない連帯をさぐる



 標記の分科会は、十一月十四日午前九時半から午後四時の時間枠で準備された。会場は他の分科会と同じくかながわ県民センター。
 途中休憩を挟むとはいえかなりの長丁場だ。しかし途中の出入りがありながらもここには、常時数十人の労働者市民が詰めかけ、後に紹介する中身の濃い報告を中心に、まさに今後求められる国際的広がりを明確に意識した闘いのあり方を探った。
 実際われわれの前には容易ならざる情勢がある。世界の「繁栄」を約束するとして八〇年代初頭以来全世界を巻き込んで推進されてきた新自由主義的グローバリゼーションは、〇八年の世界恐慌に行き着くことで、極度の不毛性と破壊性というその真実の姿をさらけ出した。しかし世界の支配階級は、それに代わる方向を見出せず、あるいはその意思をもたず、今再び新自由主義的グローバリゼーションへの回帰、そのさらなる残忍な強行へと歩をそろえつつある。
 「成長」というぼろぼろになった看板がまたもや持ち出され、そのためには新自由主義的グローバリゼーション以外には道がないとして、図々しくも今度は、彼らが招いた危機が脅しに使われている。しかしそこには、他の一切を犠牲にしつつ、多国籍大資本とそこに連なる一握りに利益を得させ続ける、という意味しかない。しかもそれはもはや益々隠しきれないものとなっている。
 「成長」を大義名分として域内における多国籍大資本の自由な展開に道を開くことをめざした今回のAPEC横浜会議は、まさにその彼らの意志を体現したものでもあった。しかしそれは、彼らの追い詰められた姿を示すものでもある。そうであればわれわれは、多国籍資本を包囲し規制を加え彼らの力をそぎ落とす闘いに向け、社会各層のまた国際的な民衆の結束を、自らの力で意識的に作り出すことが求められる。
 今回の横浜民衆フォーラムはまさにそのような努力の一つであり、標記分科会もまたそれを明確に意識したものだった。それは、実行委員の日野正美さん(電通労組)が『労働情報』(802号)に発表し、フォーラム資料として配付された基調的問題提起にはっきり示されていた。
 こうして用意された報告は次の四本。

b中国人研修生・実習生の実態/中島浩さん(全統一労働組合書記次長)
b日本企業は進出先で何をしているのか:フィリピントヨタのケースから/風呂橋修さん(全造船いすゞ分会委員長・フィリピントヨタ労組を支援する会)
bホンダ自動車のストライキと中国労働運動のはじまり/區龍宇さん(香港グローバリゼーションモニター)
bグローバル化と韓国の労働運動/カン・スンチョルさん(韓国民主労総事務総長)

自動車産業での
過酷な奴隷労働

 まず中島さんは、プロジェクターを使って、豊富な図表を交えながら研修生・実習生制度がどのようなものであるかを丁寧に解説した。そしてこの制度がやめる自由のない奴隷的制度であることを、したがって多文化共生を壊すものでしかない実態を具体的に明らかにした。中で、自動車産業が集中している愛知で研修生・実習生の使用が急増しているという報告は印象的だった。従来の日系南米人が派遣切りされ、その穴埋めだという。いやでもトヨタが外注コスト三割減を打ち出したことが思い起こされる。まさに輸出に頼る「成長」の真の姿がここにある。
 中島さんは同時に、全統一が用意している研修生シェルターが外国人が共に闘う場として機能している事実、そして研修生が労働組合を作ることなく訴えたストライキに対して津地裁がそれを認める判決を下した事例を紹介し、現場の闘争が法の規定を超えて状況を動かす可能性があることを強調した。
 風呂橋さんもプロジェクターを使ってトヨタの組合破壊に対するフィリピントヨタ労組の闘いのこれまでと今を解説した。その上で企業のための世界を人びとのもとに取り返すこと、その上で、多国籍大資本を規制することの決定的な重要性と国際的な労働基準確立の必要性を強調した。この報告に対してはカンさんから、現代自動車もインドで同じことをやっていること、現地の要請に対して全国金属労組が取り組みを始めていること、が紹介された。労働者の国際的結束が具体的な要求を軸としてまさに必要とされている。この点に関してはILO基準の活用も一つの可能性として提起された。
 區龍宇さんは、今年世界の注目を集めた中国における新しいストライキの波について具体的に報告し、アジアにおける労働者の闘いに一つの展望を作り出していることを明らかにした。同時に、中国における経済建設の性格変化についてやや長い射程で触れつつ、この新しい目覚めがこれからまだ長い学習過程、特に同じ問題に直面する労働者として国際主義的な学習を必要とすると強調した。それは特に民族主義の克服という点で決定的に重要なものであるとし、その点で、日本の労働者運動の中に研修生・実習生を支援する運動があることの重要性を指摘した。
 カンさんはまず、韓国が李明博政権の下で今、労働運動に対する最大弾圧の国になっていると切り出し、この間の数々の攻撃を報告した。そして労働者の権利をめぐる熾烈な攻防として現在を総括し、直前に行われたG20に対する民衆的対抗行動を報告しつつ、その攻防を国際労働運動との連帯の中で追求する方向性を明らかにした。報告されたG20に対する対抗行動は、韓国民主労総の一九九九年シアトル以来の活力ある取り組みを反映し、日本のわれわれが学ぶべき厚みを感じさせた。
 いずれも、多国籍資本の活動が、あるいは地域的「経済統合」なるものが現実にいかなる世界をもたらそうとするものなのか、それに対して労働者民衆がどのような水路で対抗を築くべきなのか、それを具体的に考えさせる示唆に富んだ、しかもタイムリーな報告だった。そして報告者同士が各報告にコメントし合うことを通して、それらはさらに刺激的なものとなった。
 長丁場に見えた時間設定も、これらの力のこもった報告と報告者のコメントであっという間に過ぎた。この中で参加者を含めたさらなる議論の余裕はなかった。しかしそれは単に時間だけの問題ではなく、提起された問題提起をある程度整理し討論の土台を整える作業を必要としていたことにもよると思われる。今回の分科会は、それらの作業の必要を含め、労働者民衆の国際的結束への課題を具体的に実感させた。(神谷)


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