審議をすぐ行え、現実に向き合え
派遣法改正案成立求め共同で国会前座り込み |
抜本改正への
強い思い次々
十一月十日十二時から午後二時まで、労働者派遣法の抜本改正をめざす共同行動の呼びかけによる、国会前座り込み行動が衆議院第二会館前で行われた。派遣法改正案がまったく審議されていない状況を前に、即刻審議に入ることを、そして派遣労働者の切実な声に基づいた充実した審議の上で改正を実現することを、強く求める行動だ。現場には、この呼びかけに応えて、さまざまな立場や意見の違いを残しつつも、ナショナルセンターの垣根を越え多くの労働組合、労働者、当事者がかけつけた。
二時間の座り込みは、ほとんど途切れることなく実に多くの当事者、労働組合がマイクを手に思いを訴える場でもあった。派遣労働者の深刻な生活不安、それに比してあまりに不十分な今回の改正案、そしてそれらに応えようとしていない国会、これらに対する怒りと抜本改正への強い思いがが率直に訴えられた。今回の改正案はむしろ改悪案ではないか、という意見も表明された。途中、日比谷年越し派遣村村長であった湯浅誠さんもマイクを握り、国会内力関係という冷徹な現実を見すえて運動を立て直す必要があり、そのためにもばらけずに運動を進めようと訴えた。
規制反対派を
自由にするな
上程されている改正案は問題だらけだ。派遣労働者には、生活の安定、生きることと尊厳の保障が待ったなしに必要とされている。今の改正案のままでは、派遣労働者のこの悲痛な願いに応えるにはほど遠い。実効的規制にもっと踏み込んだ改正案が提案されていればどれほどいいか、かけつけた労働者の思いは共通だ。しかし現実の力関係の中ではそれが思い通りにならない。それでも闘いを止めず一歩でも先に進もう、この日の訴えはほぼこの一点に集約された。そして先に進む上での具体的な突破口として、改正案成立の追求が多くの仲間から訴えられた。
実際、先のような不十分な改正案に対してさえ、自、公やみんなの党、そして派遣業界や日本経団連は、白を黒と言いつのるデマ宣伝まで繰り出し、成立阻止に躍起となっている。メディア内部や民主党内にすら、そのような抵抗に隠然と内通する無視できない動きがある。彼ら抵抗派にとっては、今の改正案すら明らかにじゃまものなのだ。
それはなぜか。それは何よりも、当事者の要求が社会運動として姿を現し社会に支えられたこと、そしてその圧力が今回の改正案には否定しがたく刻み込まれているからだ。彼らはこの社会的圧力を改正案もろとも消し去ろうと画策している。
今のまま派遣労働、非正規労働を制約されることなくに自由に使いたいなどという、労働者の生活も人権も鼻にもかけないこのような振る舞いに痛打を浴びせ、そのような者たちを引き下がらせなければならない。彼らを社会の圧力から自由にしてはならない。そうでない限り、派遣や非正規の労働者の状況改善も、派遣法の抜本改正も絵に描いた餅にとどまることは明らかだ。その点で、今回の改正案を審議させること、そして成立に至らせることは、彼らの期待に明確に打撃を与え、社会的圧力を彼らに加え続けることにつながる。これは勝ち抜かなければならない闘いだ。
社会的憤りとの
共鳴改めて表に
臨時国会日程を理由に、メディアは早くも今国会での改正案成立困難を報じ始めている。確かにそれを即座に否定できない現実はある。しかしわれわれにはあきらめるぜいたくなどはない。この四年で作り上げた共同の闘いを崩さず、その共同を社会的大義として、派遣法の抜本改正への一里塚として、派遣法改正案の成立を徹底的に追求しよう。そしてそのように闘ってこそ、社会の圧力を保持し続けることができるだろう。そして次への道がつながるだろう。
この日国会周辺は大いに賑わっていた。TPP反対に立ち上がった全国の農民が大挙して国会に押し寄せていた。高齢者医療制度廃止を求める大規模な座り込みが展開されていた。そして請願行動を終え歩道を戻る農民からは、共同行動の労働者たちに大きな激励の声が次々とかけられた。派遣労働の非道さに対する社会の底にある憤りは衰えていない。そしてそれは確かに、人びとの期待から後ずさりする政権に対する憤りと共鳴する関係として示された。そうである以上、派遣法の抜本改正への道は開かれている。 (神谷)
日弁連院内集会
野放し有期雇用を許すな
非正規労働全体
の規制が必要だ
十一月九日、「非正規労働者保護法を展望する〜労働者派遣法の今国会での抜本改正を〜」との標題の下に、日本弁護士連合会主催の院内集会が参議院会議室で開かれた。集会には、契約期間満了を口実とした雇い止め――体のよい使い捨て、あるいは権利要求への報復――に引き下がることなく闘っている当事者をはじめ、多くの労働者、弁護士、国会関係者などが参加、非正規労働者の権利確立のため、またその一里塚として、派遣法抜本改正の実現のため、一層力を尽くすことを確認しあった。派遣法の抜本改正をめざす共同行動・大阪からは賛同のメッセージが届けられた。
国会議員からは、民主党の辻泰弘参院議員、日本共産党の山下芳生参院議員が発言した。辻議員は、派遣労働を新自由主義に位置づく制度であり抜本見直しが必要とした上で、今国会の苦しい状況はあるが法改正を約束すると述べた。山下議員は、ダイキンの二百人雇い止めを例に挙げ、偽装派遣が摘発されたとしても有期雇用、期限切れの雇い止めという形で、結局派遣切りを容認する実態になっていることを指摘した。そして今上程されている改正案のみなし規定ではそれを防げないとして、今必要なことはともかく当事者の声を聞くことだ、と訴えた。
さてこの日の中心の一つは、「韓国に学ぶ―非正規労働者保護法制度への課題と展望」と題した、脇田滋龍谷大学教授による講演。脇田さんは、韓国で二〇〇六年十一月に制定された非正規職保護法について、豊富な図表も交えながら非常に分かり易く解説した。たとえば、非正規職概念の特定に立った網羅的な規制、差別の明確な禁止と是正規定の具体性などが高く評価された。この保護法を下敷きに、韓国の最高裁もいわゆる黙示の雇用契約に関し、画期的な判決を連発しているという。そして日本の派遣法が世界最悪の部類にあることが、この韓国やヨーロッパとの比較で明確に指摘され、全体を代表する労働者・市民の連帯による、非正規労働規制へと運動を進める必要が強調された。
機械的雇い止
めへの反撃を
次いで理不尽な雇い止めにあいつつも闘いに立ち上がった三人の有期雇用労働者が発言に立った。
一人目は事務機器操作名目で大手生保に派遣されていた女性労働者。厚労省の偽装請負調査を契機に直接雇用を要求したところ、六ヶ月有期契約に移され、次の更新時には雇い止め付き更新を強要された。結局一年後何の説明もなしに雇い止めとなったという。直接雇用を要求したことへの見せしめだったと彼女は考えている。。そして、こんなやり方が堂々とまかり通る限り労働者は怖くて声を上げられない、と訴えた。
二人目も女性で、大手ジーセル会社で契約社員として働いてきた。五年で十四回も契約更新を繰り返し、三ヶ月に一回の更新の度に不安で胸を締め付けられたという。しかし要員不足の中広範な業務をこなしながら、長く雇うと正社員にしなければならなくなるとの恐れだけで雇い止めになってしまった。有期雇用の労働者を守る法がない、有期契約は企業のためだけの契約だ、無期雇用と均等待遇を、彼女の強い訴えだった。
三人目は、東京ユニオン明石書店支部副支部長の佐川さん。佐川さんからは、この間の明石書店支部の闘いが、佐川さん自身の分も含め四回連続で、雇い止めに対する組合全面勝訴判決を勝ち取ったことが報告された。佐川さんの場合は、この間の紛争経過の中やむなく雇い止め予告付き更新を受け入れ、結果一年後機械的に雇い止めされた事案。東京地裁はこの件について、「不更新条項を付したことが権利濫用の適用に当たる」、雇い止めは「客観的合理性を欠き、社会通念上相当であると認める余地はないから、無効である」として、佐川さんの地位保全仮処分を下した。佐川さんは、この勝訴が特に、「不更新条項を付したことが権利濫用」という決定が有期雇用労働者全体の生存権、労働権確立に向け重要な一歩になると強調し、機械的雇い止めを許さない闘いを呼びかけた。
また会場からは、キャノン非正規労働者組合の阿久津さんが発言を求め、上程中の改正案のみなし雇用規定は、何の役にも立たないどころか非正規労働者の闘いを抑圧するもの、規制強化に値しない、どういう改正が必要かよく議論してほしいと訴えた。
この日の集会は、有期雇用制度が労働者の使い捨てと権利抑圧の格好の道具とされている実態を浮き彫りにした。そして今回の派遣法改正案がその点で大きな問題を残していることも改めてはっきりした。集会は、この点も含め非正規労働の抜本的な規制に向け一層の運動の強化を訴える主催者発言で締めくくられた。(神谷)
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