| 派遣法抜本改正をめざす共同行動 かけはし2010.11.8号 |
インチキな東大
社研アンケート
十月二十五日、「労働者派遣法の抜本改正をめざす共同行動」(以下共同行動)呼びかけによる国会要請行動・国会前集会が、午前十一時から行われた。国会議事堂を挟んだ歩道には、久方ぶりに、連合、全労連、全労協傘下のさまざまな労組、また社会団体の旗が林立、主催者発表で百六十人の労働者の熱気が通りに充満した。
共同行動はチラシも用意、そのチラシは集会中も通行者に手渡された。ただ以前と変わった点は、チラシ受け取りを堅く拒む国会関係者らしき人も少なくなかったこと。民主党が大敗した参院選を経て、日本経団連、派遣業界挙げた必死の逆襲が一定程度功を奏している様が読み取れる。
実際十月十三日から十四日にかけ、「派遣労働者の五五・三%が現在提案されている派遣法改正案に反対」との東大社研アンケート結果なるものが、各紙でいっせいに報じられた。一カ月間で派遣労働者・有期雇用労働者四千人調査(朝日新聞、10月13日)という信じがたい高率のこのアンケートは、そもそも、派遣業者団体に依頼して集めたという、最低限の中立性も怪しいもの。このアンケートについては、さらに設問の仕方もインチキだとして、国会前集会でも、また同日の院内集会でも、多くの発言者が指弾した。そのような問題点については一言も触れずに、いかにも権威の高いものであるかのように「東大社研」を冠して報じたいやらしさは、現行派遣法存続派の人を見下した本性を問わず語りに明かしていると言える。当然そのようなインチキ調査に手を染めた東大社研も責任を免れない。しかしいずれにしろこの事実は、支配的エリートがなおも全力で巻き返しにかかっていることをはっきり示して余りある。
そして臨時国会は、十月一日の開会からすでに一カ月近く経過しながら、また厚生労働委員会所管の継続法案が派遣法改正案一本のみという条件にありながらも、改正案審議の目途がまったく立っていないという状況にある。
派遣法をめぐる綱引きは、まさにぎりぎりした力比べに入り、最後の胸突き八丁にある。そうであればこそこの日の行動は共同行動として呼びかけられ、そして多くの労働者が、待ち望んでいたものとしてかけつけた。それは、準備時間が短かったにもかかわらず実現した幅広い労組・社会団体の結集に自ずから表れていた。結集した実数も、丁寧に数えた仲間によれば二百人近かったという。なおこの日は合わせたように、連合も、派遣法改正をめざす院内集会を三百人結集で開催している。
労働者派遣法
こそ失業の温床
集会はこの緊張の中で、東部労組の須田書記長司会の下に始まった。派遣ユニオン関根秀一郎書記長が冒頭発言に立ち、今も続く派遣切りを怒りを込めて報告し、現行派遣法がワーキングプアの温床でもあることを指摘しつつ一刻も早い改正を訴えた。そして、派遣規制は失業を生む、などと今も倦むことなく繰り返される暴言を厳しく弾劾し、労働者を景気の調整弁として使うことを許す派遣法こそ失業の温床であり、それはまさにリーマンショックで明確に証明されていると、真実を明快にえぐった。
労働弁護団の佐久間事務局長は、闘いが作り出した規制強化への流れの転換を止めてはならないと訴えた。発言の中で特に憲法一三条に触れ、この条項に込められた個人の尊厳を最高の価値とする観点は労働者保護の法をつくることを求めている、と強調した。
国会議員からは、日本共産党の高橋千鶴子衆院議員、社民党の福島みずほ党首、同吉田忠智参院議員が、共に闘うとする立場で発言した。
司法修習生の給費問題で今果敢に闘っているビギナーズネットの若者も、自身の問題を訴えつつ共に闘いたいと連帯を明らかにした。
労働組合からも、全労協、全労連、共同行動・大阪、全国ユニオン、神奈川シティーユニオン、JMIU、全日建連帯関東支部、首都圏青年ユニオンと次々と発言が続き、おのおの、早く審議に入り、当事者の声に向き合う真摯な議論の上で何としても今国会で改正案を通せ、と痛切に訴えた。
この場には外国人労働者、韓国の労働者も駆けつけていた。神奈川シティーユニオンの外国人労働者はベンセレモスやインターナショナルなど三曲を、全国金属労組慶尚南道支部旧韓国シチズン精密分会の労働者も自分たちの闘いの歌を高らかに歌い上げ、連帯を訴えると共に全体を鼓舞した。
こうしてこの日の集会は、派遣労働の規制を何としても実現するため今こそ共同の力を奮い起こそう、との思いが溢れる集会となった。その思いを直後に控えた労働弁護団主催の院内集会に合流させるべく、この場は最後に、国会に向けた全体の力強いシュプレヒコールでひとまず締めくくられた。 (神谷)
日本労働弁護団が院内集会
現場の状況はますます深刻
改正案を通し次の攻勢へ!
規制緩和の流れ
を逆転させよう
十月二十五日午後一時から、衆議院第一議員会館多目的ホールを会場に、派遣法改正をめざす院内集会が開催された。主催者は日本労働弁護団。労働弁護団が主催する院内集会としては初めてのことだという。派遣法改正にかける主催者の意気込みが伝わる。
新装議員会館の多目的ホールは筆者にとっては初めての会場。これまでの旧議員会館会議室とは雲泥の差の広さと豪華さに驚かされる。机の席だけで約二百というこの会場も、しかし、開会時刻にはすでに詰めかけた労働者で埋まっていた。急遽椅子が後ろに運び込まれたが、その椅子席もすぐに埋まってゆく。参加人数は集会終了時に二百人と発表された。しかし受付があったわけでもなく、会場を見る限りそれをはるかに超える参加だったことは確実だ。派遣法改正への強い思いが改めて浮き彫りにされた。
集会は定刻通り、棗一郎弁護士司会の下に始まった。開会発言は、主催者を代表して徳住日本労働弁護団副会長。まずズバリ、改正案をどうしても通したいと切り出し、今回の改正案が不十分なものであることは共通に確認されているとした上で、さらなる規制を運動の力で進めようと訴えた。そして、派遣法が強引に押し込まれた八五年以降、「使用はするが雇用責任は負わない」という無責任かつ理不尽な間接雇用が止めどなく広げられ、労働者の生活と権利が一方的に切り縮められてきた歴史を振り返った上で、その規制緩和を逆に強化へと、ここで一歩進めることの重要性を力説した。
次いで民主党の石毛えい子衆院議員が登壇。同議員は民主党の厚労部門会議の座長であると共に今回の会場確保でも労をとったという。彼女は、派遣労働が労働者にとって厳しいものへと一方的に流れてきた現実をはっきり認め、さらにこの現実を変える上で法案の不十分性は承知しているとしつつ、細川厚労相を含めた政府案成立への意欲を強調、法を道具として使い切って欲しいと訴えた。しかし審議再開に至っていない国会状況への苦渋がにじむものだったことは否めない。発言は、成立に向けて国会を押してくれという、ある意味で正直な訴えで締めくくられた。
政党からはこの他に、日本共産党の高橋千鶴子衆院議員、社民党の福島みずほ党首が発言に立ち、共に闘う決意を表明した。その中で高橋議員は、共産党の修正案について、記者発表はしたが鳩山前首相の辞任騒ぎにより正式提出には至っていないと、共産党の今後の動きに波及する可能性を含んだ注目すべき発言を行った。ただこの場の発言は、何よりも労働現場の実情に向き合った徹底審議の必要に強調点がおかれた。
なお司会からは、多数の議員秘書も参加していることが、各議員の紹介と合わせて報告された。
一歩前進に向け
共同が必要だ
基調発言は水口労働弁護団幹事長が行った。そこでは、改正案が昨年廃案となった旧三党案から後退していることを確認した上で、それでも何点か活用の武器にできることが配付された資料に沿って具体的に解説され、またそのためにも、審議を通じた改正内容の明確化が重要だと訴えられた。その上で、〇三年には二兆円だった売り上げが現在では八兆円にも膨張した派遣業界が私欲むき出しのなりふり構わない画策に全力を挙げているなど、参院選後の逆流に注意が喚起された。そこでは、今各方面で持ち出されている東大社研アンケートが、事実上、失業か派遣かという二者択一を迫る著しく偏った設問だったことも厳しく批判された。そして結論として、いろいろな意見を持つ労組と共に、一歩前進に向け一致団結した闘いを進めたいとの呼びかけが行われた。
これらの発言を受け、労働組合、当事者が次々と、現状を抜本的に変えたいとの強い思いを訴え、闘いへの決意を明らかにした。
全国ユニオンの鴨会長は、前段の連合集会では街頭行動の取り組みも打ち出されたと紹介しつつ、現に進んでいる派遣賃金の低落、七日から一カ月雇用という契約条件劣悪化を、改正実現で打ち返そうと訴えた。
全労連の小田川事務局長は、早期徹底審議を求めると共に、日本経団連が四項目にわたってまたも派遣労働の規制緩和を要求し始めたと怒りを込めて指摘した。同時に特にはっきりさせたいと断りつつ、共同を強め今臨時国会で何としても改正実現を、と決意を述べた。
全労協の中岡事務局長も、労働規制への転換に向け共同した闘いを呼びかけた。
こうしてこの日の集会は、今国会での改正実現に向け、三ナショナルセンターが歩調をそろえたことを明快に示す場ともなった。
足踏みしている
時ではない!
各地からかけつけた労働組合もここに続いた。長野地区労組会議の代表は、大学職員募集までもが短期雇い止めのため派遣を手段としている実情を告発し、次の一歩のため改正実現が急務だと訴えた。
共同行動・大阪に結集して闘っているなにわユニオンの代表は、抜本改正をめざし大阪で取り組まれている多彩な行動を紹介した上で、改正運動は労働者の権利確立の運動だと強調し、その観点を込めて改正実現を果たそうと呼びかけた。
連合福岡ユニオンの代表は、労働相談の実例を紹介し、現行法では違法があっても雇用の継続につながらないと実際の困難を具体的に指摘、一刻も早い改正が必要だと力説した。合わせて全国コミュニティーユニオンが実施した有期雇用アンケートの結果が紹介された。その中で、年収平均が二百万円に届かない実状、五三%が今の賃金では必要な生計費に月々六万円以上不足と回答したこと、また有期雇用に積極的だった回答はわずか三%でしかなかったこと、などが明らかにされた。かの東大社研アンケートのインチキぶりが、まさに現場からあぶり出された。
グッドウィルユニオンの当事者は、問題の表面化から三年、四年と経ちながらなおも派遣法が放置されている現状を怒りを込めて糾弾した。そしてその間自身の賃金も一日七千五百円から五千五百ないし五千九百円に低下しネットカフェにも泊まれなくなっていると明かし、一日も早い改正を、と痛切な思いを訴えた。
JMIUの当事者は、日産に対する厳しい闘いの現状を報告、その現実が国会の中に反映されないことのやりきれなさを訴えた。その上で、成立を願っているとしつつも、労働者のためになる改正が必要だと、心情を率直に語った。
この間、非正規問題キャンペーンの先頭に立ってきた毎日新聞の東海林記者は、この日は新聞労連委員長として発言した。そして、現在の足踏み状態で笑っているヤツは誰だ、と問題を直截に提起、またも緩和要求を出してきた日本経団連を痛烈に糾弾し、共同の闘いによる改正実現の重要性を強調した。
発言の締めくくりには派遣ユニオンの関根書記長が立った。まず直前に行われた派遣ホットラインについて、再び派遣切りが増加している実情に危機感を持っていると報告した。そして最後に、第一歩として、今国会での改正を何としても実現しようと力を込めて呼びかけた。
さまざまな思いのつまった集会は予定の時間を超えた。しかしその中で、今国会での改正をという一線での団結の確認、さらに共同を広げようとの思いの集中は明確に高まっていったように思われる。
垣根を越える共同の闘いは再度火蓋が切られた。この日の一連の行動を基礎に共同行動は早速、十一月十日十二時から十四時三十分、国会前座り込みを呼びかけている。十一月十日全力で駆けつけこの行動を成功させよう。文字通り民衆の力で派遣法改正に追い込み、荒廃しか生まない構造改革への逆コースを狙う支配的エリートに逆襲しよう。 (神谷)
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