もどる

「食糧主権」・地域社会を解体する資本攻勢        かけはし2010.11.8号

大企業のためのTPP参加許すな

11・13〜14「いらない!APEC」横浜民衆フォーラムへ


TPP参加を
あせる菅政権

 十一月十三日と十四日、横浜で開催されるAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議を前にして、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)への日本の参加への動きが急速に進んでいる。菅首相は今臨時国会冒頭、十月一日の所信表明演説で「環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉等への参加を検討し、アジア太平洋自由貿易圏の構築を目指します」とTPPへの積極的姿勢を打ち出していた。しかし菅内閣の足並みはそろっていない。
 例えば民主党内では小沢支持グループの山田正彦前農相ら国会議員百十人が十月二十一日に「TPPを慎重に考える会」を結成した。財界の意向を受けてTPP推進の旗を振っていた大畠経産相も「TPPまずありきというわけではない」と語った(10月26日)。
 これに対してTPP推進派の前原外相や仙谷官房長官はいらだちの色を露わにしている。
 十月二十六日に前原外相は記者会見で「TPPの扉は閉まりかけている。日本が問題を先送りして、後で入るという結論を出しても、協議に入れてもらえない状況が早晩出てくるだろう」と語り、農家への打撃的影響を危惧する意見に対しては「日本の農政は完全に行き詰まっている。これまで農業・土木におカネを使ってきたが、競争力につながっていない。農政の抜本的転換をはからなければならない」と農業を切り捨てて資本のための「自由貿易」を推進する立場を強調した。前原は「農業生産のGDPに占める比率は一・五%に過ぎない・一・五%のために九八・五%が犠牲になってもいいのか」とまで言い放ったのである。
 仙谷官房長官も同じ十月二十六日の会見で「国を開く」という菅首相の所信表明演説を引用しつつ「『第三の開国』にあたって政治家の危機感が弱いのではないか。このままではグローバリゼ―ションの中でドロップアウトしてしまうのではないかという危機感を強く持っている」と語っている。
 こうして菅首相、前原外相、仙谷官房長官らはAPEC首脳会談を前にして、「新経済戦略」の柱としてTPPへの参加促進に向けて大きく舵を切ったのである。

米国主導で
中国を牽制

 TPP(環太平洋パートナーシップ協定)とは何か。そこにはどのような思惑が秘められているのか。TPPは二〇〇六年にシンガポール、ブルネイ、ニュージーランド、チリの四カ国で始まった。TPPは環太平洋諸国(すなわちAPECを構成する諸国)が、輸入・投資にかかわる関税を完全にゼロにして、カネ・モノの移動を例外なく自由化する構想である。
 昨年十一月のAPECシンガポール会議を前にして東京でアジア政策について演説したオバマ米国大統領は、「米国は環太平洋パートナーシップ諸国とも二十一世紀の貿易協定にふさわしい、高い水準を備えた地域的合意をつくるという目的で関与していく」と宣言し、TPPはアメリカのイニシアティブによる連合へと転換した。現在TPPには当初の四カ国以外に、米国をはじめベトナム、マレーシア、オーストラリア、ペルーの五カ国が参加表明しており、来年十一月には九カ国に拡大する予定である。
 APEC首脳会議直前の十一月九日には、九カ国の事務レベル会合も開催されることになっており、まだ正式の参加表明をしていない日本、カナダ、フィリピン、中国の四カ国も招いて個別に意向を打診するとされている。
 APECビジネス諮問委員会議長を務める三井物産副社長・相原元八郎はTPPへの参加を強く求めて「日本の経済界の立場から見れば、ASEAN(東南アジア諸国連合)中心の枠組みでは、日本が中国に対抗することは難しい。強い経済力を有する米国が加わるTPPの方が日本にとってメリットが大きい。その意味で日本は早期にTPPへの参加を正式に表明すべきだ」と語った(毎日新聞10月27日)。
 TPPへの加入には、中国のASEANに対する圧倒的影響力を米国のイニシアティブに依拠することで相殺しようという日本の支配階級の政治的意図も込められていることがここから見てとれる。

自立した地域
社会の形成へ

 TPPは二国間のFTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)を超えた包括的な関税撤廃協定であり、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドといった農産物輸出大国が積極的に参加することにより、日本農業に壊滅的打撃を与えることは必然である。
 十月二十七日に農水省はTPPに参加した場合の農業に対する影響の試算を発表した。それによれば、農業生産は四兆千億円減、食料自給率は現在の四〇%から一四%へと三分の一近くに低下、実質GDPは七・九兆円減、雇用の減少は三百四十万人に上るとされる。
 個別的に見れば、コメは国産米のほとんどが外国米に置き換わり、生産量の約一割に過ぎない有名ブランド米だけが残ることになる。砂糖は国産糖のすべてが外国産に置き換わり、国産甘味資源作物は引き取られなくなる。バター・脱脂粉乳・チーズなどの乳製品は国産のほぼ全量が外国産に置き換わり、牛肉は、肉質三等級(生産量の75%)が外国産牛肉に置き換わるのだという。
 まさに日本農業の完全な崩壊である。そしてそれは「食糧主権」という「ビア・カンペシーナ」などの農民ならびにすべての労働者民衆の国際的な要求の完全な否定である。それは資本にとっての「効率性」の名において、先進資本主義国のアグリビジネス支配による世界市場向けの輸出に特化した大規模生産を普遍化し、農民による地域・風土に根ざした品種や生産方法の自主的決定権を奪い、遺伝子組み換え作物による「食の安全」への危険を増大させ、ひいては生態系の破壊、地域社会の解体と貧困化をもたらすことになる。
 「食糧主権」とは決して「食料自給率」に還元されるものではない。それは何よりも大資本による農業支配と闘い、小規模生産農民による農業を基軸にした地域循環型の社会・経済を作り出し、都市と農村住民の有機的な結合を創出する運動なのである。
 APEC首脳会議を舞台として進められるTPP加盟促進の流れに、明確な反対の意思を表明しよう。

東アジア民衆の
草の根的連携を

 昨年十一月に開催されたシンガポールAPECは、二〇一〇年にアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)構想を実現するためのありうべき道筋を探求することに合意した。日本の支配階級は、中国の高成長の持続と輸出・投資における圧倒的な影響力の拡大、さらに韓国が米国との間でのFTA合意に続くEUとのFTA署名、さらに中国とのFTA交渉開始の動きに焦りをつのらせている。
 菅政権の「新成長戦略」にとって「アジア太平洋自由貿易圏」の形成は、絶対的条件となっているのだ。菅の言う「東アジア共同体」とは、鳩山が語っていた「友愛」理念をも取り去って、アジア太平洋地域全体を貿易・投資を完全自由化し、関税をゼロとする「単一の市場」に再編する構想である。それは東アジアの労働者民衆を資本の利潤のための「底辺への競争」に駆り立てるものに他ならない。
 われわれはそうした「成長戦略」を拒否する。われわれは「世界の成長センター」としてのアジア太平洋地域において、民主主義と人権、環境保全と食料主権の擁護、進出企業・移住労働における賃金・労働条件の公正な水準の確立、そして米軍基地の撤去と核兵器廃絶・大幅な軍縮などを平和の枠組みを築き上げるために、民衆自身の草の根からの抵抗を相互に連携させる運動を作り出そう。それは新自由主義に反対し、戦争と植民地主義・排外主義に反対する労働者・民衆の「東アジア共同体」をめざす挑戦なのである。
 十一月十三日、十四日、アジアの人びととともに「いらない!APEC」横浜民衆フォーラムへ!(10月31日 河村恵)


もどる

Back