| 衆参両院議員定数削減問題学習会 かけはし2010.10.18号 |
選挙制度の改変にとどまらず
根本には国民主権の問題がある |
【大阪】エルおおさかで九月三十日、9条の会おおさか事務局の中北龍太郎弁護士と梅田章二弁護士の呼びかけで、議員定数削減問題の学習会が開かれた。中北弁護士がはじめのあいさつをし、三人の学者から問題提起があり、その後質疑応答をした。
社民・共産党も
党存亡の危機
議員定数削減問題は、ムダを省くためには、まず議員自らがムダを省かねばならないと菅首相が言い出し、民主党代表選後の国会で法案を提出すると公言して、一気に現実味を帯びてきている。今年の参議院選挙では民主党(自民党も)が敗北を喫したが、共産党・社民党は今回に限らず長期低落傾向に歯止めがかかっていない。このような中で議員定数が菅首相がいうように大幅に削減されるならば、社民党・共産党は党の存在そのものが危うくなり、消滅に追い込まれかねない。
そのような危機感も手伝っての学習会の呼びかけであったが、学習会そのものは、党の存亡の危機そのものについてというより、憲法の理念に照らしてこの議員定数削減はどのような意味を持っているか、憲法の理念を実現するためにはどうあるべきかという、理論的な面の学習会であった。
政権交代が可能
なシステム?
議員定数削減問題は、二〇〇九年の衆議院選挙に向けた民主党のマニュフェストの中に記載されている。そこでは、政権交代が実現しやすい選挙制度にするとして、具体策として衆議院の比例定数を八十削減し、参議院については、選挙制度の抜本的改革の中で、衆議院に準じて削減するとしている。菅政権になって、さらに具体的に参議院比例定数四十の削減を打ち出したわけだ。
国政選挙では、都市と地方で一票の重さが五倍もあるといういびつな格差の実態があり、それ自体は実質的には憲法違反の状態で放置は出来ないはずだ。さらにまた、政府の主導で市町村合併が強行され、来春の統一地方選に向けて、地方議会の議員定数の絞り込みが加速している。
香川でも、次の選挙で四市六町が計二十二の定数削減を計画しており、これが実現すれば、県内五市三十八町の議員定数は、法定定数の六三・九%にまで落ち込むという。削減率日本一の町があれば、町より議員が少ない市も生まれるということだ。行財政改革などが表向きの理由だが、背後には「議員などいらない」という住民の深刻な政治不信が存在する。
学習会では、沢野義一さん(大阪経法大)、吉田栄司さん(関西大学)、木戸衛一さん(大阪大学)の順に問題提起をした。
菅政権の本当
のねらい何か
沢野さん:民主主義は今日ではプラスの概念と考えられているが、元々は危険な思想だと思われていた。この民主主義をできる限り無力化し、特定政党を排除するために小選挙区制度が導入された。民主党のマニュフェストにも、民主主義の課題という言葉が出ているが、それは指導者の民主主義だ。地方自治体などでは、首長が大統領的な存在になり、議会を通さずに直接市民とつながるような傾向も出てきている。
菅首相は、ねじれ国会を解決するためには議員定数削減が必要といい、削減の理由として、@ムダの削減 A政権交代可能な選挙制度の実現をあげている。しかし、ムダを省くのなら三百二十億円の政党助成金を削減するとか、二千億円超の思いやり予算を削る方がより効果的だ。議員定数の削減では五十六億円ぐらいしか削減できない。
一九九四年、中選挙区制度を廃止し小選挙区制度に換えたときの理由として、金のかからない選挙にするため、政権交代可能な制度にするためといわれた。しかし、政権交代はその後十数年実現せず、同質的な二大政党ができただけで、無党派層が増大し、投票率が低下し、社会的人権が喪失した。英国のように比例代表制でも二大政党はできる。民主党は死票がでないようにといっているが、議会軽視の姿勢がはっきりしている。
保守二大政党状況
を期待する財界
吉田さん:憲法が想定する国会の役割とあるべき選挙制度とは。日米財界は日本を保守二大政党状況にしたいと考えてきた。主権は国民にあるというが、国民とはどの範囲の者なのか。国民主権原理から国民代表制をどう導くか。現行憲法四三条は、両議院は全国民を代表する選挙された議員で構成されると謳っている。私は、全国民に近似する有権者団の構成、代議員の構成が要請されると考える。つまり比例代表の選挙制度が望ましい。ドイツ衆議院(連邦議会)の小選挙区比例代表併用制(半数小選挙区、半数全国比例代表)がいい。〇九年衆議院選挙結果を、ドイツの選挙制度で議席数を計算すると、民主党二百二十一、自民党百三十九、公明党六十、共産党三十七、社民党二十三、みんな〇となる。
小選挙区制度が導入されるときの論議でも、小選挙区と比例代表で二百五十対二百五十ずつという話しがあったが、それが三百対二百になり、さらに三百二十対百八十になった。それを今回また三百二十対百にするという。民意が消されつつある。比例代表十一ブロックも問題だ。
国民代表制を議院内閣制とどう接合するか。議院内閣制に対し、国民内閣制論がある。これは、結局のところ議会の軽視につながる。私は、内閣の統治に対し国会の統制を対応させたい。憲法の四章は多党制を予定し五章も国会議員が内閣の責任追及者であると規定している。
ドイツの政治と
選挙制度の比較
木戸さん:ドイツの政治と選挙制度について述べる。欧州では(アングロサクソンを除き)二大政党間での政権交代ではなく、多党制で政党指導者間の交渉に基づく連合形成がほとんどだ。ドイツ基本法(憲法)はたびたび改正されているが、その根本原理(憲法の根本理念)に抵触する改正は許されない。この点で、日本の自民党や民主党の改憲案のようなものはドイツではあり得ない。
ドイツの連邦議会は国民の直接選挙(議員598人)、連邦参議院は州政府の合議体(議員69人)、人口は日本の三分の二だ。選挙制度は比例代表制に重点を置いた小選挙区比例代表併用制。ドイツでは政党法があり、政党は自由で民主的な基本秩序の憲法上不可欠な構成要素と位置づけられ、政党助成金があるが、金額は日本の三分の一ぐらいだ。小選挙区での当選者が比例代表での当選者を上回った場合、小選挙区での当選者数が優先し、超過議席が割り当てられるという、大政党に有利な制度もある。
ワイマール共和国の選挙制度をナチが悪用したとの教訓から、比例配分の対象になるのは全国で五%以上得票したか、三つ以上の小選挙区で当選者を出した政党に限られるという五%条項がある。自由で民主的な基本秩序を破壊する目的の政党には、政治的自由が認められていない。不信任しても成算の見込みがない場合は不信任できない。日本と比べると優れた選挙制度だが、それでも、ドイツにおけるポスト・デモクラシーの状況を見ると、格差社会で、福祉は空洞化し、市場原理への回帰が見られ、企業の利益代表と政府の相互交渉で政治が形成され、法を習得している少数のエリートが大衆の要求の管理・操作をしている。選挙は見せ物的なゲームになっている。アフガンへの派兵、二〇一〇年二月には派兵の上限を引き上げることが連邦議会で決まった。
マスコミによる
世論操作に警鐘
この後質疑応答。
Q1、民主主義とは、憲法を守るということではないのか。
A:議会制民主主義は多数決原理ともいう。また少数者を保護するという意味もある。また国民主権という意味もある。国民ならファシズムでもいいのか。こう考えると答えが出ない。結局、民主主義とは立憲民主主義だと考えている。少数党の議員も全国民を代表している。人権擁護とは一人ひとりの人権の擁護だ。そして権力の発動をチェックする。
Q2、中選挙区制の復活が必要だ。
A:一種の比例制と見ることができるから、いいと思う。今よりもましだ。だだ、完全比例制では、政党に属さない人の自由を奪うという論議もある。
Q3、比例制がいいといっても、十一ブロックなら問題だ。四国なんかは、割り当てられる議員だ二、三人にしかならない(11ブロック選挙ではいけない。全国区でないと)。
Q4、世界的にも参加型民主主義が広がっている。
A:鎌田慧が「教育工場」を書き、熊沢誠が「工場の前では民主主義が立ち止まる」と言った。今の問題提起に取り組むべきだ。プロセスを大事にすることが重要。じっくり民主主義が必要だ。グローバル化は国家主権を形骸化し、米国などのエリートが支配をする。これに対し、民衆の連帯が必要だ。
Q5、国民は正しい存在か。成熟した主権者になれるのか。
A:マスコミに操作されている。情報公開が必要だ。
Q6、比例定数の削減は難しい。全体の定数削減になるのでは。
A:参議院の位置づけも合わせて考えるべきだ。
Q7、特に比例代表で当選した場合、選挙後に政党を変わるのはおかしい。
A:選挙後政党が政策を変えることもあるから、いけないとは言えない。妥協として、争った政党に変わるのはいけない、となっている。
Q8、「ねじれ国会」という用語は、二大政党制をよしとする考えの表れだ。
A:ねじれは憲法が想定していることだ。マスコミの世論操作はこれをマイナスイメージと見なす。言葉がすり込ませたいのは、内の平和と、矛盾の外への転嫁だ。
最後に梅田弁護士が、「議員定数削減問題はある政党の議席が減るなどという問題ではなく、国民主権の問題だ。最近労組の関心が薄くなっているが、継続的に考えていこう」とまとめをした。
(T・T)
憲法を生かそう! 院内集会
比例定数削減反対・沖縄に基地はいらない!9条生かす外交を
十月一日、臨時国会の冒頭にあたり、5・3憲法集会実行委員会は衆院第1議員会館大会議室で午後三時半から「国会の比例定数削減反対」「憲法審査会を始動させるな!」「普天間基地撤去!辺野古新基地建設反対」をスローガンに「憲法を生かそう!10・1院内集会」を開催した。国会召集の日に積み重ねられてきた「5・3憲法集会」実集会には、この日、百人が参加した。
集会冒頭の主催者あいさつを事務局の高田健さんが行い、「国会比例定数削減」の反民主主義的で、改憲につながる危険な本質を批判した後、出席した各党議員のあいさつを受けた。日本共産党を代表した穀田恵二衆院議員・国会対策委員長は、発言の冒頭から、「尖閣列島が日本の領土であることを明確にした対応をしていない」と「国益主義・領土主義」を前面に出して菅政権を批判。その上で漁業者保護・安全確保のための日中両国の話し合いを主張した。また穀田議員は、菅政権が国会比例定数議席削減のため年内に党内の意見を取りまとめる、と所信表明演説でもうたったことに注意を喚起した。
沖縄県知事選の
重要さを訴える
糸数慶子参院議員(無所属)は、在沖縄米軍基地による被害が後を絶たない実情を訴え、十一月二十八日投票の沖縄県知事選で伊波洋一候補必勝のために闘うよう呼びかけた。そして菅政権の所信表明の中で、「普天間移設」問題については三行ほど触れられているものの、それは「主体的外交」―「日米同盟の深化」という文脈においてであって、結局沖縄に負担をさらに押しつけるものだと批判した。
福島みずほ社民党党首・参院議員は、十一月二十八日の沖縄県知事選が「天下分け目の闘い」であると規定して全国からの支援を呼びかけるとともに憲法審査会始動、新防衛大綱、比例定数削減の危険性を指摘した。そして「尖閣問題」については、「尖閣諸島」が「日本の領土」である、としながらも「両国のナショナリズムの沸騰」に危惧を表明し、「軍事力増強で領土を守れ」という自民党などの主張を批判し、「今こそ九条の理念に基づく外交を」と訴えた。
国会議員からはさらに橋本勉衆院議員(民主党)、宮本岳志衆院議員(共産党)、笠井亮衆院議員(共産党)、田村智子参院議員(共産党)が発言した。また実行委員会を構成する各団体からは、憲法を愛する女性ネット、憲法を生かす会、憲法会議、キリスト者平和ネット、平和憲法21世紀の会、女性の憲法年連絡会、許すな!憲法改悪・市民連絡会がアピールした。(K)
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