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 ベネズエラ                     かけはし2010.10.11号

新しい社会と経済の創造へ
下から上へ、国境を超えて

現地からの声(下)

新しい論理とやり方での生産

――このプロセスでの地域のコムナス(地域自治共同体)の役割は何ですか?

GG(ゴンサロ・ゴメス):ベネズエラの労働者の約五〇%はインフォーマル経済で雇用されています。こうした人びとの多くは、公式経済や農村地域で働く選択肢が信じがたいほど制限され経済危機に陥った新自由主義の時代に、インフォーマル経済に追いやられたのです。しかし私たちも、インフォーマル経済にたずさわっている人びとの中には、みずからの小ビジネスを所有しているプチブルジョワジーがいることを考慮すべきです。
 コムーナ(地域自治体)の重要性は、民衆が新しい論理の下で新しいやり方で生産することによって、社会を変革する方法について考えはじめている、ということにあります。たとえば、カトラ(カラカスの貧困者居住地区)では、中小規模のビジネスによって組織される靴製造の長期にわたる伝統があります。現在、この靴製造はコミュニティーが統制する社会的生産の論理で再出発しています。
 この「共同経営」のプロセスは依然として初歩的段階にありますが、それはインフォーマル経済の諸問題、すなわち不安定、劣悪な労働条件、社会給付の欠落や、想像もできない行為が発生する児童労働、非合法の交易、麻薬取引、民間軍事組織といったインフォーマル経済の暗い部分と関係する問題を克服する道を示すものです。

LP(ルイス・プリモ):コムナスの根本的役割は、組織された労働者階級と他の民衆的諸階級を、この革命プロセスを深化させるために結集するところにあります。私たちは、バリオス(都市の居住区)と農民部門との同盟を、エセケイル・サモラ農民戦線のように築き上げようとしています。
 社会主義には二つの要素があります。経済的なものと政治的なものです。社会主義は民主主義です。社会主義は参加なしには存在しません。私たちにとって国民議会はブルジョア議会です。行政と立法の分離など、憲法は依然としてブルジョア的要素を持っています。すべてこうした機能を採用している国家が作った評議会――労働者評議会、地域評議会、学生評議会――について私たちが論じているのはそのためです。それは私たちが活動を行っている過渡的国家です。私たちは、パリコミューンのように市のサイズでのコミューンについて語っているのではありませんから、それが困難であることを知っています。
 私たちはまた、生産手段を社会化する必要があります。労働者が生産手段を管理する時、社会は権力の手段、すなわち司法権力、全国議会を支配するでしょう。現在、司法官が四万ボリバール・フエルテスを稼いでいるのに対して、労働者の所得は二千ないし三千ボリバール・フエルテスです。これは資本家が支配する不平等な権力構造を作り出しています。私たちは、下から上へ新しい社会と経済を創造する必要があります。

最重要問題は独占資本支配打破

――このプロセスの最もラディカルな部分を明確にする、あるいは不明確にする上で、PSUV(ベネズエラ統一社会党)の役割は何でしょうか。党はどのように凝集力を作り出しているのでしょうか。内部構造はどれほど民主主義的なのでしょうか。私たちはPSUVを革命政党と考えるべきなのでしょうか。

GG:一つの政党ができたことは重要な成果です。私たちは統一の重要性を理解しています。問題は、こうしたタイプの党が公務員、市長や知事といった国家に雇われているために国家に従属的な人びとに支配される、ある種の機構として構成されていることです。民衆的セクターや農民といった革命の主体は、党内ではきわめて小さな比重しかありません。
 私たちはこの状況を「管理された戦闘性」と呼んでいます。しかし私たちが本当に必要としているのは、労働者階級が指導する政党なのです。そうした党は公務員の比重を削減することになるでしょう。もちろん事態は一夜で変わるわけではありません。これは闘争です。私たちは、内部民主主義を持ち、その綱領と規約の中で戦闘的部分の参加を保障する党のために闘わなければなりません。
 同時に私たちは、民衆的セクターの党からの独立を防衛しなければなりません。党は、民衆的セクターを支え、方向性を示すことができますが、その考え方を押し付けるべきではありません。それはこの革命プロセスの完全な官僚主義化を阻止するためです。民衆運動は党建設の中で提案すべき多くのことを持っています。党内の人びとは、自分たちの第一の役割が民衆的セクターに方向性を提示することだと考えていますが、実際には社会運動が党を建設すべき勢力です。

SPB(スターリン・ペレス・ボルヘス):党は依然として、主要には選挙に勝つための機構だったキンタ・レプブリカ運動(MVR)の多くの特徴を身にまとっています。そこには自己批判がほとんどありません。労働者と地域自治体評議会は、党によって支配されるべきではありません。最近の大会では労働者パトロール(職場のPSUV組織)が代議員選出を支援するために設立されましたが、彼らの参加はたんに象徴的なものにすぎませんでした。
 九月に国会選挙があります(訳注:9月26日に行われた国会選挙でPSUVは過半数を制したものの、重要法案の単独採決に必要な3分の2には達しなかった)。この党がヘゲモニー勢力だとされながら、真に労働者の参加に基礎を置いていないのは恥ずべきことです。ほんの少数の労働者代表が、候補者あるいは議員として活動していますが、党活動家は労働者運動ともっと密接な関係を持って活動する必要があります。私たちは、MVRと古い諸政党の旧構造と組織を除去するために党内の革命を必要としています。

LP:この党は上から作られたものです。この習慣は根本的なものである、と私は思います。党はUNT(全国労働者連合)と同様に官僚主義的です。こうしたプロセスは、実践的には基層からのあらゆる運動を殺してしまいます。私たちは大衆とともに始めなければなりません。諸集会の中で大衆は反抗します。しかし今や、学生運動、労働運動、コミュニティー運動は分断されています。したがってPSUVには存在意義があり、革命の実践にコミットする理由があり、私たちは労働者パトロールを建設しています。しかしそれはいまだきわめて小さなものです。私はこうしたパトロールの建設に加わっています。
 問題は構造的です。「こいつは腐敗している」「こいつは偽装したチャベス支持者だ」などと言うのは生産的ではありません。私たちは綱領を作り上げなければなりません。私たちがここにプランがある、人びとを代表するオルタナティブがあると示すとき、人びとを党に引き付けることになる綱領です。前回の選挙で、私たちは人びととの一体感を獲得して代表になろうとつとめました。私たちは少しばかりのことを達成しましたが、個々の人間が自分だけで動き、その結果、官僚機構が勝利しました。これは驚くべきことではありませんでした。私たちは自らを組織し、私たちの個人主義を克服しなければなりません。

最重要問題は独占資本支配打破

――ブルジョアジーの経済的権力を取り除き、より根本的には資本主義の社会的で財産上の諸関係、かつ階級的な諸関係を転覆するのに必要な過渡的な動きとは、どういうものでしょうか。

SPB:ミランダ国際センターが発行したビクトル・アルバレスの最近の研究によれば、経済の大部分は私有のままです。たとえば銀行は相当額の利益を上げてきました。不幸なことにこれは公式の統計によるものです。状況はきわめて悩ましいものです。
 私たちは、労働者管理を深め、民間企業が生み出した利潤額を統制しなければなりません。労働者評議会はそのために重要なのです。スキャンダルに満ちた利潤率を阻止するためです。利潤率が六〇%から七〇%に達するドル化した並行経済に対するいっそうの国家管理を行使することも必要です。こうした状況への統制がなければ、民間企業は経済の他の部分を犠牲にして利益を上げ続けるでしょう。
 UNTは、集団的利益が個別的利益を支配することを確実なものにするために、この闘いの先頭に立っています。この点で国家が役割を果たすことが必要なのです。

GG:PSUV内部では、社会主義の伝統にたどりついてしまうようなリズムと方法に関する激しい討論が行われています。私たちはしばしば、前進するのではなく後退しています。私たちは食品企業の独占的支配を打ち破るために前進しなければなりません。
 私たちは幾つかの企業において国有化と労働者管理を実施するという前進をなしとげました。しかし食品部門は、ポラールグループのような民間部門の企業によって支配され続けています。ポラールグループは食用油、穀物、シリアル、アルコールの生産を支配しています。この企業は社会化され、労働者管理の下に置く必要があります。
 今現在、銀行部門の国有化に関する討論も行われています。連邦銀行、ベネズエラ銀行など一部の銀行は国有化されましたが、これらの銀行は危機克服のために国有化されたのです。政府は依然として金融部門を統制していません。この部門では、多くの腐敗や経営破たんが見られます。一部の連中は刑務所に入れられました。私たちは、社会運動やこの部門の労働者の役割について考慮に入れなければなりません。
 もう一つの問題は民衆権力がバラバラになっていることです。私たちは全国レベルでは民衆権力を持っていないのです。私たちは、現存する社会的勢力をもってこのプロセスの構築に乗り出さなければなりません。農民、先住民族コミュニティー、自治体評議会は、国家の政策を論議するために全国評議会を建設する必要があります。全国レベルでの政策決定に参加するためです。私たちは、民衆が意気喪失した時に起きる動員解除を食い止めるために、組織化を継続することが必要です。
 私たちは、とりわけ官僚から多くの非難を受けてきました。しかし依然として楽観的でありうる理由が存在しているのです。私たちは資本から権力を奪い、隠れた形で新しい資本家に変質している官僚にこの権力を引き渡さないために、社会的諸勢力を結び付けなければなりません。

LP:私たちは銀行を国有化し、食糧システムへの独占を打ち破ることが必要です。現状では銀行や、食糧の生産、分配、商業化のシステムを所有している私的独占が存在しています。資金の七二・五%は、依然、民族ブルジョアジーと国際ブルジョアジーが所有しています。銀行制度を統制していないのなら、国有産業を発展させることは不可能です。他の誰が、こうしたプロジェクトに信用を提供しようとするでしょうか。
 私たちはすべての企業を国有化せよなどと述べているのではありません。独占的な基本企業についてだけです。こうした国有化は、国民経済を建設し、基礎的資源を輸出する経済から生産的経済へ移行することをも支えるものになるでしょう。他の側面は、民主主義の新しい考え方を創造することです。労働者評議会、自治体評議会、そしてコムナスは、私たちが新しい社会を建設する手段です。今現在、ブルジョアジーは国家を支配しています。

政府不安定化策動が攻撃の軸

――ラテンアメリカ全体を通じて、左翼に対する帝国と右翼の反転攻勢が強まっているように思います。例えばコロンビアでの新米軍基地、ホンジュラスのクーデター、ボリビア、エクアドルへの不安定化工作、メキシコ、コロンビア、ペルー、チリの選挙での右派体制の確立などがその例です。オバマ政権の下でのベネズエラへの帝国主義の脅威をどのように特徴づけますか。それはブッシュ政権による脅威とどの点で同じであり、どの点で違っているのでしょうか。

SPB:ボリバール革命の破壊が、帝国主義諸国の執念であることに変わりはありません。彼らは革命プロセスを政治的に破壊するために、可能なあらゆることを行っています。彼らは、ウリベ(コロンビアの前大統領)やメキシコとペルーの右翼勢力といった選挙に出馬した勢力を支持しています。別のケースでは、彼らは、ブラジルのルラのように政府が穏健な改革路線を追求するよう圧力をかけています。

GG:直接的な軍事的脅威もあり得るのですが、彼らはメディア戦争にその努力を集中してきました。たとえばスペインでは、巨大メディア産業であるプリサグループが、ベネズエラについて、人びとが暴力によって毎日のように死ぬ危険な国と描き出しています。犯罪と暴力というこの問題は決して新しい話ではありません。こうしたことは何十年も存在してきたのであり、それは資本主義による不平等の産物なのです。
 政府が弾圧ではなく、社会的アプローチを使って問題に取り組もうとつとめているのは初めてのことです。そうしたことは、ベネズエラを「無法な社会」として描き出すのがお好きなメディアによっては認められていません。しかし彼らは、社会的指導者や市民がつねに暗殺されてきたコロンビアの残虐で暴力的な状況に関しては決して言及しません。
 彼らはベネズエラへの軍事攻撃を開始できるようにするため、コロンビアの国境地帯に基地を建設しています。
 今彼らは野党を持っていますが、野党もまた革命プロセスへのもう一つの大きな脅威となっている官僚部門に影響力があります。帝国主義は政府を不安定化させるために、攻撃的キャンペーンを始めました。彼らはいまだ私たちを侵略する選択をしていませんが、彼らがそれを決めたのならば、しなければならないでしょうし、するでしょう。これまでは、内部からの不安定化に焦点を絞ってきました。

SPG:右翼は九月の選挙に勝利するという予想に大きな確信を持っています。彼らは、国内での基盤を維持し、世界規模のキャンペーンを持続させるために、連邦銀行、PDVBAL、ポラールグループとグロボビジョンに対する政府の威嚇を攻撃するいかなるキャンペーンからも利益を得ようと試みるでしょう。
 私たちは革命を深化させ、戦略的産業を収用し、独占を解体しなければなりません。それは政府が、食糧、衣服、薬品の適正な価格での供給を保障できる唯一の道です。現在私たちは民間企業、超国籍企業、輸入業者にこうした製品の供給を依存しています。
 私たちは、革命が前進できるか、それとも後退するかの決定的な瞬間を迎えています。政府は、労働者管理を支持するシグナルを送り積極的な一歩を踏み出しましたが、十分ではありません。やるべきことがたくさん残っています。ビクトル・アルバレスが示しているように、民間部門が経済に対して行い続けている締め付けは、きわめて厄介です。

LP:私たちはいつでも攻撃されるでしょう。帝国主義は眠りません。今や彼らは待ちのゲームをしています。人びとがあきらめるのを待っているのです。帝国の権力は二つの戦争に縛られて、デリケートな情勢にあります。もちろんそのことは、直接的軍事侵攻がありえないことを意味するわけではありませんが、なさそうだとは言えるでしょう。さらにラテンアメリカ内部の相互勢力関係は変化しました。同様に、危機のために欧州との興味深い相互勢力関係も作られています。
 私たちが、社会主義が一国で可能だとは考えていないのは明らかです。私たちはボリビア、エクアドルでの社会主義を必要としています。トロツキーが述べたように、経済的諸力の不均等複合的発展は、ある国が他国よりも経済的に発展しても、こうした「後進的」諸国の一部における革命的プロセスは可能だ、ということを意味しています。私たちは連帯を築き上げなければなりません。革命的プロセスを守るための物質的連帯も必要です。

諸国の革命の発展こそ防衛の要

GG:また帝国主義諸国は、現在協働している南米諸国を分裂させようとしています。たとえばベネズエラ、ボリビア、エクアドル、さらにアルゼンチンを切り離そうというのです。アルゼンチンは、ブルジョア政府がベネズエラ政府との関係を樹立した一つのケースです。
 一定の部分は、帝国主義の攻勢への対抗力として第五インターナショナルの創設を提案しました。この提案には、余りにも官僚主義的な組織を作るという危険があります。私たちは、こうした基盤の上に革命的政府を作ることはできません。最善の防衛とは、他の諸国で革命を発展させることです。その上で、私たちはたとえばコロンビアの非道な行為に対決する国際的キャンペーンを開始することが可能になるのです。
 ベネズエラには四百万人のコロンビア人がいます。彼らの一部は、以前は受け取れなかった社会的給付を受け取っているために革命プロセスを共にしていますが、多くは依然としてウリベ(コロンビア右派の前大統領)の影響下にあります。政治的変革は長期のプロセスであり、民衆が既知の観念を捨て去るのには時間がかかります。
 もし他に質問がないのであれば、私が最後に言いたいのは報道についてです。今、連邦銀行と結びついたグロボビジョンは、政府は自分たちをつぶそうとしており、自分たちは言論の自由を守っている、というキャンペーンを世界に発しています。
 私は、アポレア(ラディカル派のウェブサイト)を代表してグロボビジョンに反対するボリバール主義弁護士戦線に参加しています。同組織は、人権を守る憲法条項の少なくとも二十五カ所を侵害したかどで、グロボビジョンに対する公開の法的手続きを求める最高裁に請願しています。裁判所は二〇〇四年に請願を認めましたが、聴聞会はいまだに開かれていません。政府がグロボビジョンに脅しをかけられているからです。
 グロボビジョンは二〇〇二年のクーデターの前線に立っていました。それは資本主義の文化的・イデオロギー的ヘゲモニーを促進するだけの、たんなるテレビ局ではありません。CNNなどのメディアと密接に結びついた、帝国主義の利害の導水管なのです。しかし
ベネズエラ政府は、グロボビジョンにきわめてソフトに対応しており、特赦さえ申し出ています。
 他の国なら、こうした連中は投獄されるか殺されるでしょう。もしこんなことが米国で起きたら、こうした連中は自分たちのやってきたことを完全に知っているために、許されなかったでしょう。彼らの行為は計画的なものだったのです。
▼インタビューアーのジェフリー・R・ウエバーはレジナ大学の政治学教員。彼は二〇〇二年以来、ラテンアメリカの政治を追っている。著書に『赤い十月:現代ボリビアの左翼・先住民の闘争』、『ボリビアにおける改革のための反乱:階級闘争、先住民族解放、エボ・モラレスの政治』。
 スーザン・スプランクはオタワ大学国際開発・グローバルスタディーズ校教員。彼女は自治体サービスプロジェクトの研究員で、ボリビアの階級構成と水資源にかかわる政治について幾つかの論文を発表している。
(米「アゲンスト・ザ・カレント[流れに抗して]」10年9・10月号初出。「IV」10年9月号再録)


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