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ギリシャ                       かけはし2010.5.31号

債務の80%はドイツとフランスの銀行が債権者

金融・経済危機は明日 EU全域に波及する
労働者への犠牲強要を許すな
企業に対する優遇政策の撤廃を


 国家財政の破綻に直面しているギリシャ政府は、支援を決定したEUの意向を受けて大量解雇、賃下げ、年金の削減などの攻撃を開始した。てギリシャの労働者は大規模なゼネストで反撃している。さらにEU内部で労働者の闘いに連帯する動きも広がっている。この文章は四月三日にに書かれたものだが、その背景を分かりやすく解明している。ATTAC・ジャパン(首都圏)のブログより転載。(編集部)

 この間、ギリシャの危機について多くのことが言われてきた。その大部分は不快で、混乱を招くものだ(注1)。そのような議論は、他のすべての「先進国」にも向けられている。メディアが集中的に流布しているメッセージは、次の五つの章で構成されている。
1 ギリシャは不正を行って、「持続不能」な公的債務を隠蔽してきた。
2 ギリシャは、他のいくつかのユーロ圏の諸国と同様に、債務不履行の寸前である。
3 EUは緊縮政策の採用を支持するだけでなく、それを積極的に提案し、地中海諸国を信託統治下に置くしかない。
4 ギリシャは財政赤字を削減するために緊縮政策を採用しなければならない。
5 「先進国」の危機は、同様の緊縮政策が広範に採用されなければならないことを意味している。
 したがって、私たちはここで意図されているイデオロギー的なメッセージを読み解く必要がある。それは実際には「北」のすべての諸国の人々に向けられたものである。

1 「ギリシャは不正を行って、『持続不能』な公的債務を隠蔽してきた」

 それは明らかだ。そのことは、この国が腐敗と仲間内での裏取引に冒されていることを明らかにしている。ゴールドマンサックスが複雑な取引の仕組み(スワップ)やクレジット・デリバティブを使ってギリシャ政府による公的債務の隠蔽を助けたことは、現在では明らかになっているようだ。ギリシャ政府は借入を見えなくすることによって、帳簿上の債務額を二十億ユーロ以上ごまかした(注2)。このやり方によってギリシャはユーロ圏への参加を承認された。その後、歴代の政府がこの問題で別の方法を利用することを決定したという証拠もある。
 しかし、ユーロ圏の中でそのようなことをしている国はギリシャだけではない。この問題について、偽善がまかり通っている
 一九九六年にイタリアはJPモルガンとの間でのスワップ取引によって人為的に赤字を減らした。その後、ベルルスコーニはある企業に、国立美術館の入場料(を徴収する権利)を百億ユーロで売却した。その企業は十年間に毎年十五億ユーロの収入を得た。フランスは二〇〇〇年に、金利が十四年の期限の終わりの時点で支払われる国債を発行した。二〇〇四年にゴールドマンサックスとドイツ銀行は、「Aries資産管理」と称する金融パッケージに合意した。それによってドイツは市場金利よりもかなり高い金利で借り入れを行った。債務が財政帳簿に表れるのを避けるためである(注3)。

ギリシャの「底知れぬ泥沼」の背景

 ギリシャの財政赤字は前政権が発表していたGDPの六%という水準ではなく、実際には一二・七%であり、公的債務はGDPの一一五%である。しかし、他の国と比較してみれば、パニックを起こすほどのものではない。債務返済のコストは一九九三年にGDPの一四%であったものが現在では六%である! ギリシャ国家の財政状態は確かに均衡からはほど遠いが、他の「北」の諸国と比較すれば、それほどひどくはない。

欧州委員会も、ユーロスタット(欧州委員会統計局)も、格付け会社もギリシャに警告しなかった!

 二〇〇一年以降、欧州委員会がギリシャ政府によって報告される財政状態の信憑性のなさを知らなかったことはあり得ない。ギリシャ政府の報告を見るだけでギリシャ国家の永続的な財政赤字の規模を計算することができるし、兵器購入の費用の増大や二〇〇四年オリンピックの費用を歳入や中央銀行が保有している準備金と比較すれば、公的債務(ユーロ圏に参加する上での基準となる)が発表されているような水準でないことはすぐにわかる。彼らはそれを知っていたが、いかなる警告も行わなかったのである。
 ギリシャのユーロ圏への参加は欧州委員会にとって、政治的および地政学/戦略上の理由から必要だったのである。二〇〇一年にギリシャのユーロ圏参加を最も強く支持したのはフランスとドイツである。フランスはギリシャに対する二番目の武器輸出国である。また、現在ギリシャの債務の八〇%はドイツとフランスの銀行が債権者である。 ユーロスタットも警告しなかった
 「ブルームバーグ」によると、ユーロスタットはこのような操作についてすべて知っていた。ユーロスタットは、さまざまな銀行救済計画の一環として行われた銀行への数十億ユーロの無償供与(2009年6月のSECの決定に基づく)の後に、適切な会計原則が守られているから公的債務残高は大した問題ではないと言っていた。・・・それでも納税者(富裕層への減税の恩恵に与っていない)は、何らかの方法でこのような金額を返済しなければならないのである。
 格付け会社は信頼できるのか? 彼らの信頼性はかなり疑わしい。彼らはリーマンブラザーズが倒産するわずか三日前に、同社が発行するサブプライム証券にトリプルAの格付けを与えていた。 この同じ「洞察力のある」格付け会社が、金融市場において非常に強力な影響力を持ち、好き勝手にふるまっている。店頭デリバティブ取引(OTC)と呼ばれる野放しの市場や、債務不履行のリスクに対する保険を売買するクレジットデフォルトスワップ(CDS)という危険性の高い市場を含めてである。彼らはゴールドマンサックスやシティバンクなどの英米系の銀行と銀行と密接な関係がある。格付け会社は水晶玉を使っているわけではなく、債権の発行元から提供される膨大な量のデータや金融商品市場によって提供される情報を利用している。ギリシャについては、これらの格付け会社はギリシャ政府自身が新しいデータを提供した際の市場関係者の大多数の感情の変化をうけて国債の格付けを下げた。

2 「ギリシャは、他のいくつかのユーロ圏の諸国と同様に、債務不履行の寸前である」

 このメッセージの第一の目的は金利(リスク・プレミアム)を引き上げ、貸し手(ゴールドマンサックスやヘッジファンドを含む)の利益を高めることである。ギリシャが発行する国債は、金利六・四〇%で売買される。これはこの市場で通常期待される金利の二倍である。この額面五〇億ユーロの国債が、当初の売り出し価格の三倍になっていることに注目する必要がある(注4)。「債務不履行寸前」とみなされている国についての金融市場の評価は見事なほど矛盾している。
 国家の財政の状態を家計や会社の経営状態と比較する議論がよく聞かれるが、これは全く意味を成さない。国家は家計や会社と違って、いつでも税を通じて収入を増やすことができる。この事実と、国家は存続する期間が比較的長いことを考えれば、この比較は成り立たない。米国は二百二十一年にわたって存続しており、一八三七年以来、つまり百七十三年連続で負債を増やしてきている(注5)。
 この強迫的な議論の二番目の目的は、社会的サービスの後退や緊縮政策を受け入れるように世論を導くことである。ギリシャ政府は、脱税や富裕層に対する優遇措置をなくすために税制の抜本的な改革を実施することもできるはずだ。資本所得や賃貸収入に課税することもできる。要するに、財政赤字をなくすために税収を増やす権限を持っている。これは政治的選択の問題であり、社会党(PASOK)はそれを選択しなかったのだ。それはこの党が新自由主義の基本的な前提、「ギリシャ世界は新自由主義的経済市場であり、そうであり続けなければならない」という前提を支持しているからである。数十年にわたって、歴代の政権の公共政策によって財政赤字と公的債務の累積額が増大してきた。二〇〇一年のEUへの加盟はこの現象を増幅してきただけである。

3 「EUは緊縮政策の採用を支持するだけでなく、それを積極的に提案し、地中海諸国を信託統治下に置くしかない」

 欧州中央銀行(ECB)は国家に融資する権限を付与されていない!
 欧州中央銀行は二〇〇八〜九年に銀行に対して、倒産から救うために巨額の融資を行った。しかし、加盟国の政府機関との関係で同じことをすることは許容されていない。これは恥ずべきことだ。
 リスボン条約の第百二十三条は、欧州中央銀行と加盟国の中央銀行が債券を(加盟国の政府機関や公営企業から)直接に取得することを禁じている。
 だから国債を直接に引き受けることはできない(国家を支援してはいけない)。しかし、銀行に対して国債を買う(ギリシャの国債を含む)ための優先的融資が提供される。これはリスボン条約によって許容されている美しい偽善だ。
 欧州投資銀行―その反道徳性について、「発展途上国」ではよく知られている―は財政赤字を抱えるギリシャに投資できないのではないのか?(注6)形式的にはその通りである。しかし、実際には、この銀行はギリシャの赤字を増やし公的債務を増やすような多くのいかがわしい投資プロジェクトに出資している。たとえば二〇〇四年のアテネ・オリンピックである。アテネ・オリンピックの総経費はいまだに明らかにされていない(200―300億ユーロと推定される)。

4 「ギリシャは財政赤字を削減するために緊縮政策を採用しなければならない」

 これこそが資本主義経済や金融資本主義の支持者たちが誘導しようとしている結論である! 公的債務は持続不可能な水準であるという理由で、政府は財政の健全化の名の下に前例のないような緊縮政策を人々に押し付けている。景気刺激策の中止、公務員の給与の凍結とボーナスの一〇%カット、超勤手当の三〇%カット、公共支出の一〇%削減(教育、医療関連で一億ユーロを削減)、定年の二年延長(63歳へ)、新規採用の凍結、燃料・タバコ・携帯電話の税率の引き上げ、付加価値税の二%引き上げ等である。
 そしてEUはもっと多くのことを要求している。すべての領域にわたる「構造改革」を要求している。商品の自由化、労働のフレキシブル化、年金・医療制度の総合的「改革」等である。
ドイツ銀行の予想によると、近い将来にギリシャの人々を待っているのは、控え目に言っても十五%の失業とGDPの七・五%低下である。

しかし、別の解決策もある!

 緊縮政策によって実現される削減の規模は五十億ユーロ程度である。しかし、別の選択肢もある! ギリシャはEUの中で軍事支出の対GDP比がもっとも大きい国である。二〇〇六年に軍事支出は九十六億四千二百万ドルに達している。ギリシャはGDPの二・八%を防衛のために使っている。これは全軍事支出を含んでいるわけではない(注7)。国家財政に対するこの大きな負担は、主に米国とヨーロッパの軍事産業に利益をもたらしている。
 ギリシャはまた、世界最大の商船保有国であり、四千隻以上の船舶を保有している。商船に対する税制上の優遇措置によってギリシャ国家は毎年六十億ユーロほどの付加価値税収入を失っている。
 大企業の大部分は資産をキプロスのオフショア会社へ移転している(キプロスの法人税は10%)。ギリシャ正教会は税を免除されている。最大の不動産所有者であるにもかかわらずである。
 ギリシャの銀行は緊急救済措置の中で二百八十億ユーロを無償で受け取った。その彼らが今、何ら罰されることなく公的債務に対して投機を仕掛けているのである。このように、別の道に進むための財源はある!
 このような財源を活用するためには、税制の根本的改革が必要だが、資本家に奉仕するPASOK政権は、それには手を付けないことを決めている。むしろ貧しい人々に支払わせることを選んだのである。それはユーロ圏にとどまることを目的としているが、「自由で公正な競争」の名の下でのユーロ圏に参加していることは、規制緩和を進め主権を失っていくことにつながっている。

5 「`先進国aの危機は、同様の緊縮政策が広範に採用されなければならないことを意味している」

 すべての「先進国」で、政府とメディアは同じメッセージを繰り返している。政府が公共サービスの民営化の広範なプログラムに着手しているポルトガルでも、住宅問題の危機が深刻化し、失業率が約二三%まで上がっているスペインでも、財政赤字がギリシャと同じぐらいの水準にあるアイスランドでも、国家の債務の対GDP比が一二七%というEU内最高記録を保持しているイタリアでも、ついに財政赤字がGDPの一四、五%を超えた英国でも事情は同じである。
 他のヨーロッパ諸国も、緊縮政策の碾き臼にかけられるだろう。「年金改革」の提案や医療・社会保障制度の崩壊はすでにヨーロッパのすべての国で起こっている。
 一つだけ確かなことは、大手の民間銀行が欧州中央銀行から非常に低い金利で手に入れた公的資金が、家計や事業活動には流れないということである。ヨーロッパの全域で二〇〇九年に銀行の融資残高は大幅に減少した。この資金は国債やリスクの多いソブリン債に流れるだろうし、すでにそのような投機に戻ってきている。今日のギリシャは明日のポルトガル、スペイン、イタリア、アイルランドであり、その次はベルギー、フランスへと波及するだろう。ユーロ圏は完全に分裂しており、その真の姿を現している。それは貧困層の犠牲の上に築かれた金持ちのためのシステムである。

現段階での結論と六つの提案

 EUは政治的に破綻している。共通通貨はあるが税や社会的政策では加盟国間が競争している。共通市場はあるが資源を豊かな者から貧しい者へ移転するメカニズムがない。新自由主義のドグマが人々を押しつぶしている。大衆のために危機への対応策を提供できない。
 代わりに、大衆は自分たちで危機に対応するために動員し組織化している。ギリシャにおける二度にわたるゼネストと主要都市における大規模なデモ、アイスランドで銀行債務の公的資金による支払いに関する法律が国民投票で九三%の反対で否決されたこと(注8)、ポルトガルにおける大規模なデモ、そしてフランスにおける三回目の社会的抵抗のサイクルの開始を告げる三月二十三日のデモがそのことを示している。
 全ヨーロッパで、危機の犠牲になるのを拒否する労働者や年金生活者や貧困層の声を乗せた風が強くなっている。
 この動きの中で欠けているのは、闘争の孤立を打ち破り、社会的、政治的な闘争の間の連携を確立するための水路である。全ヨーロッパで、社会運動はシステムそのものの危機に対応するためのオルタナティブなプログラムのさまざまな要素を提起し、資本の論理に対抗して集団的権利を擁護、拡大する必要がある。
 「北」の諸国において公的債務をめぐる危機に関連して提起されている中心的な問題は、富の分配の方法に関する問題である。
 われわれはいくつかの課題に同時に取り組まなければならない。
 賃金を引き上げ、配当金への課税等の総合的な税制改革を進めること 。
 賃金の引き上げは家計を債務から解放し、商品・サービスの生産のための機会を開くだろう。
 労働時間の大幅削減と賃金水準の維持。補充のための新規雇用も必要となる。これは失業の問題を解決するだけでなく、社会保障のための財源の問題も解決するだろう(納付者の数が増えるため)。同時に、勤労者に余暇とレクリエーションの時間がないという問題も解決するだろう。
 全ヨーロッパ規模の協調的税制改革は、現在の税の抜け穴を解決するだけでなく、すべての税(所得税と法人税)への累進課税の復活を可能にし、貧困層に特に大きな負担となる間接税(付加価値税、石油消費税など)の引き下げまたは廃止を可能にするだろう。あらゆる改革の試みにおいて、金融取引による所得や債務の債権者の財産への特別の税を導入するべきであり、その他の資本所得への課税も忘れてはならない。
 透明化された財政政策において、企業に対する多くの社会保障拠出金免除措置を廃止し、雇用主の拠出金を増やし、それによってすべての人々のための持続可能な社会保障と、高水準の退職手当・年金を確保することができるだろう。
 金融システムは社会的に悪影響をもたらすことが明らかとなった。われわれは銀行や他の金融機関を接収し、それを公有化し、市民の管理下に置く必要がある。
 また、公的債務の市民による監査によって、その妥当性、適法性(何のために使われたのか)を調べる必要がある。
 このようは提案について議論して、要求のリストを決定しよう。


1 見出しにはレイシスト(民族排外主義)的な言辞があふれている。たとえば二月六日付の「ルモンド」の「悪いギリシャがユーロを圧迫している」というタイトルの記事で、「ピッグズ」(ポルトガル、イタリア、アイスランド、ギリシャ、スペインの頭文字)という蔑称が使われている。この頭文字はリベラル派の雑誌「エコノミスト」が最初に使った。
2 「……ゴールドマンサックスと共謀して、ギリシャはその帳簿上の収支を改善したが、その成果は限られたものだった。二〇〇一年に行われた取引では、ギリシャの債務は二十三億ユーロ減り、同期間のGDPに対する比率が一〇五・三%から一〇三・七%に下がった」
(http://www.irefeurope.org/content/le-masque-grec)
3 http://www.lexpansion.com/
4 AFP、二〇一〇年三月四日付
5 Randall Wray「政府の財政と家計を比べてみよう」(http://contreinfo.info/article.php3?id_article=2976)
6 http://www.amisdelaterre.org/
7 世界の軍事支出
(www.julg7.com)
8 Bonfond Olivier、Jerome Duval、Damien Millet「やったあ! アイスランドは大きな声で`ノーaと言った」
(http://www.cadtm.org/Ouf-les-Islandais-ont-dit

▼パスカル・フランシェは、第三世界債務帳消委員会(CADTM)の副代表。


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