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サムスン・グループ無労組特別教育実施案入手       かけはし2010.5.17号

「皆さん、労組を作ればどうなるか分かるでしょう」


 去る3月下旬のある日、京畿道水原市のサムスン電子中央門バス乗降場から朝8時20分に出発したバスが30分余り走って京畿道の、あるリゾートに到着した。「クリエイター・リーダーシップ・コース」と命名された代理・社員級の教育現場だった。集まった人は100人程度。「教育の趣旨および2020年の電子ビジョン」という講演で始まった教育は夜9時まで続けられた。ここまでは、今日までの教育と変わったところはなかった。いつも行っている組織文化・保安教育だった。
 「ビジョン2020達成のための全社員教育」という当初の案内とは違って、現場で受け取ったパンフレットには「社員特別教育」だと書かれている点が違った程度だった。ところが1泊した後の最初の講義である「超一流企業文化の実践」の時間に、サムスン電子「支援グループ」から出てきた人事担当幹部(部長級)が、ただちに労組の話を切り出した。「賃金体系が変わったのは分かってますね。(賃金が上がったのは)労組を作るな、ということです」。「無労組教育」だった。

ホテル級の施設で1泊2日

 この日の講演はb労組が設立されれば消費者がサムスンに害をもたらす可能性が高まるb労組発展基金など、とんでもない要求事項が発生するb勤労条件とは関係のない政治ストを事とするだろうb経営陣と消耗な気力争いをするだろうb結局、組織文化は崩壊するだろう、などがその中心をなした。
 特に労組が生じれば会社よりも労組の利益を押し立てて、自ら暴力を正当化しつつサムスンの組織が崩壊させられるだろうという点が強調された。スト中には労組が代表理事の地位を享受するほどに、なすところを知らない権力を振り回すという点もまた労組を不可とする論理として提示された。
 講演を行った幹部は、失敗した労使関係として現代自動車を例に挙げるとともに、フェデックス、テル、マイクロソフトなどの非労組企業がグローバル競争力を持っている、との内容も付け加えた。幹部は講演の最後に誇らしく「この特別教育はサムスン電子8万5千人全員を対象として実施されている」のであり「大々的な非労組教育」であることを強調した。他の教育時間とは違って、討論や質問の時間は与えられなかった。
 この日の教育に参加したある職員は「参加幹部が、私の後にも多数、待機していると語った。数えてみると百回ほどだった」「労組を阻むためにゴルフ場や遊園地付きのホテル級コンドミニアムで2人1室、5万人(社員・代理級)を対象として百回以上も教育をすると考えると、ぞっとした」と語った。
 グローバル超一流企業サムスン。イ・ゴンヒ会長のサムスン電子への復帰によって、かつての戦略企画室体制もまた事実上、復活した。時あたかもサムスン電子は今年の第1四半期に4兆3千億ウォンという史上最大の営業利益を記録し、歴代最大規模の役員人事が断行された。けれども下位職員のための「祝宴」は始まらなかった。むしろ危機や変化をくどくどと語り、大々的な「内部の取り締まり」に乗り出した。「わが目の黒いうちは労組はダメだ」という先代会長の遺志が奉じられている現場だった。
 〈ハンギョレ21〉はうわさでばかり出回っていたサムスン電子の「無労組特別教育」の内幕を確認した。サムスン電子の「ビジョン2020達成のための役職員特別教育実施(案)」(以下、特別施案)を単独入手し、この文献に示された通り、8万余人の全社員を対象として無労組特別教育が実施されている事実を確認した。
 〈ハンギョレ21〉が入手した特別試案の文献は、複数労組の実施の有無がひとしきり論難をかもしていた昨年11月24日、「サムスン・リーダーシップセンター」名義で作成された。特別試案は冒頭で「2010年の複数労組施行に備えて、非労組の経営哲学を信念化し、創立40周年の新ビジョン達成のための役職員たちの意志と熱情を極大化するために、全役職員の特別教育を実施しようとするもの」だと明らかにしている。

無労組実行計画書作成

 特別試案には垂直構造に従ってb役員・補職幹部(パート長など組織の長)b担当幹部(課長級以上の非補職幹部)b代理・社員などに対する職級別無労組教育方案が詳細に盛り込まれた。管理者級に行けば行くほど実行計画書と解決案の導出など、労組結成に備えた実施中心の教育を、下位職に行けば行くほど無労組の経営哲学など理論中心の価値観教育を行うことが特徴だ。
 細部の施行計画を探ってみると、役員・補職幹部の場合、2度にわたって861人を対象に教育が実施され、「非労組経営の実践のための組織管理力強化」を目的とする。教育内容は労組活動の病弊について挙げた後、「事例別の対応指針の共有」「部署内の潜在リスク」「解決方案の導出」などに関する具体的な実行計画書を作成する実務型教育だ。ただ作成時期が、組織改編が予想された時点であるからか「組織改編後に実施」というただし書きが付いている。目につくのは事例中心の教育という点だ。「事例で学ぶ組織管理」の項目ではキーリュン電子の事例を例として挙げており、「労組活動の病弊:企業と従業員に及ぼした影響、組織内の疎通と葛藤およびリスク管理の重要性」などに言及している。ある役員級幹部は〈ハンギョレ21〉との通話で、教育自体を否認しはしないながらも「労組問題は事業場または部門別に定期的に教育するもの」であり、「水原事業場は日常的なローテーション教育の過程で労組問題を扱う」と語った。けれどもサムスン電子本社に勤務しているある幹部は「日常的な労組関連の教育があるのは事実だが、このように全社員を対象に特別教育を実施するのは初めて」だと語った。
 担当幹部級の場合、労働組合の結成当事者と現場で直接わたり合うぐらいの「非労組の信念化」(理論)と「実践力量を高めること」(実務)を同時に目的としている。1万2365人を対象に65回に分けて教育することとなっている。教育内容は「非労組経営哲学の信念化および幹部としての役割認識」に重点をおく。午前中は「複数労組と企業経営の変化・労使紛糾の事例と示唆点、非労組経営哲学」などを、午後には「創造的組織文化定着のための現況共有と問題解決方案の導出、結果の共有」などを主として扱う。サムスン電子本社で勤務しているある担当幹部は「教育はまだ実施させていない」「実施予定という話は聞いた」と語った。
 代理・社員級は1泊2日で教育が行われるが、2日目の午前中に無労組関連の教育が配置されている。文献には昨年12月初めから今年3月まで165回にわたって2万1082人を対象として3カ所で教育が進められるものと記載されている。けれども施行段階で規模はさらに増大したものと見られる。教育を受けてきたKさんは「2万人ではなく5万7千人が対象だと聞いた」「教育場所も4カ所だった」と語った。
 実際の教育実行過程に立ち入ってみると研究職やソウル本社職員に対しては講演時間を計画よりも減らし、現場の製造職群の職員が多い地域では本来の計画通りに緊迫感をもって進められた。ある地域教育に参加した職員は「討論を中心に進められる他の講演の時とは違って、質問さえ受け付けなかった」とその雰囲気を伝えた。
 また別の参加者は「非労組経営が必要だという話をしつつ、言葉はあっちに飛び、こっちに飛びした。例えば、労組を設立すればどんな処置を取る、という話よりは『どうなるか、皆さん、お分かりのはずだ』という具合いだった」「その『どうなるのか』については講演している人も我々も全部分かっている式に話すのは脅迫それものではないのか」と声を荒らげた。

「前歴」ある社員の個別面談も

 代理・社員級は特別教育だけを受けるわけではなかった。複数労組の施行が有力視されていた昨年末、サムスンは全面的な無労組教育と同時に、労組活動が有力視される職員たちに対する個別面談も進められた。個別面談はサムスンの典型的労務管理のやり方で、今日まで労組設立の試みを無力化した代表的な手段として評価される。
 地方に勤務しているサムスン電子職員Nさんは「ハンギョレ21」との通話で、「昨年末、パート・グループ長に呼ばれて行くと『複数労組施行の事実を知っているか』『施行されたら組合で活動する用意があるのか』などについて面談した」と語った。彼は「労組設立を試みた前歴があったり、社員の間で人望のある古参級職員を対象として個別面談が実施されたものと承知している」「当時、私が労組活動に否定的態度を示すと、安心した様子だった」と伝えた。
 全社員を対象とするサムスンの非労組特別教育について専門家たちは憲法上の権利として保障された基本権を無視するやり方だと指摘する。大韓民国憲法は33条1項で「勤労者は勤労条件の向上のために自主的な団結権、団体交渉権ならびに団体行動権を持っている」と明示している。ただ、例外はある。公務員は法律が定めるところに従い、権利の本質を侵害しない範囲内で規制が可能だ。また主要防衛産業体に従事している勤労者は団体行動権に限って法律が定めるところに従って制限することができる。
 しかしこの憲法上の例外は、それ以外の場合、制限なしに権利を享受できる、という意味でもある。公務員でも防衛産業体の従事者でもない私企業サムスン電子の職員たちにとって、この憲法上の権利は創社以来40年間、無視されているわけだ。キム・ユサン韓国労働社会研究所長は「労働者の団結権を保障するどころか、非労組教育を行うというのは、憲法上の労働3権を尊重しない行為」であって「労組設立の自由は文字通り労働者が選択する基本的な自由権であるのに、これを会社がどうこうしようというのは話にもならない」と語った。

「企業のイメージに泥」

 特に、グローバル企業を自任しているサムスンが、関連の傘下機構であるグローバル・コンパクト(別掲記事参照)や国際労働機構(ILO)規約が保障している労働基本権を無視したまま無労組経営を固守しているのはつじつまが合わない、との指摘も出てくる。チェ・ヨンギ景気開発研究院首席研究委員は「国外でわが国の代表を自認している企業が基本権を黙殺する政策を3代にわたって継承しようとしているのは、それ自体として恥ずかしいこと」であり「グローバル企業であるならば労働者の団結権さえ無視する立ち遅れた認識は今こそ再検討しなければならない」と語った。
 今回の教育をイ・ゴンヒ会長の復帰や事実上の戦略企画室の復活など、かつてのシステムの復元過程中の一つとして見ている見方もある。キム・サンジョ韓神大教授(経済学)は「グローバル・スタンダードという環境の変化を認めることができず、昔日の方法で20万人に達している構成員をすべて管理できるだろうという前近代的思考から出発したもの」であり「環境の変化を受け入れ、それにふさわしい企業慣行を作らなければならない時」だと語った。
 民主労総や韓国労総は今回の特別教育について驚きを隠せなかった。チョン・ホヒ民主労総代弁人は「トヨタが下請け業者たたきを通じて、品質管理が全くできず、ブレーキなしに疾走したのは労組が事実上、御用組合だったから」であり、「これを知らないわけがないサムスンが、このような教育をするということが信じられない」と語った。チョン代弁人は「自ら変化する環境に合わせて労使問題を解決していくのではなく無労組を綿密に準備することが、わが国を代表する企業サムスンがやることなのか問いたい」と語った。
 カン・チュン韓国労総代弁人は「労組を認めないという特別教育はグローバル・サムスンのイメージにまるでプラスにならない。企業の社会的責任を大々的に宣伝しつつ、その責任の根幹である労組設立の自由を認めないというのは矛盾」であり、「いかなる妨害があろうとも我々はサムスンに労組を作るだろう」と語った。

他の系列社にも拡大する兆候

 今回の特別教育についてサムスン電子は自認も否認もしない態度だ。サムスン電子広報チームのハ・ジュホ常務は4月16日、〈ハンギョレ21〉との通話で「我々が行っている非労組教育は労組の必要性をなくすための努力という側面において無労組教育とは異なる」のであり「労組なしに経営している事例を教育し、その主体について討論するぐらいならやってみることもできるのではないか」と語った。彼は「(特別教育に関する)より詳しい状況は(内部的に)調べている」と答えたが、6時間後の通話では「確認がキチンとできない」と語った。
 無労組がサムスンの社是のように受け入れられる状況にあって、サムスン電子の全面的な無労組教育は、ほかの系列社に拡大する兆候まで見えている。サムスン系列社のうち、1990年代から労組設立の試みが最も活発に展開されてきたサムスンSDIでは、すでに幹部級の非労組教育が実施されたことが確認された。
 地方のサムスンSDIに勤務しているTさんは〈ハンギョレ21〉との通話で「次長・部長級幹部が教育に参加したことが分かっている」「教育に通ったある幹部は、労組についての教育内容を伝えたし、以前に労組設立を試みた社員たちと面談もした」と語った。(「ハンギョレ21」第807号、10年4月26日付、ハ・オヨン記者)

サムスン系列社の労組設立略史

bサムスン電子、サムスンSDI 労組設立04年8月、備考、サムスン電子、サムスンSDI労働者6人が金属労組加入(以降、会社側の脅迫と金品提供で全員脱退)
bサムスン電子 設立04年5月、白色家電事業の光州移転および整理解雇に反発して労組設立申告(数日後、設立取り消し)
bサムスンプラザ 設立03年9月 労組設立書類交付(以降、弾圧によって設立自身を取り下げ)
bサムスン一般労組 設立03年2月、設立書類交付(以降、仁川市庁が労組規約上の問題を理由に職権取り消し)
bホテル新羅 設立03年3月、指導部行方不明、幽霊労組を先制登録。
bサムスン・キャピタル 01年8月、会社弾圧によって解散。
bサムスングループ労組 01年8月、超企業単位労組、1カ月後に大邱市が職権解散。
bエスワン 01年4月、労組設立の企図霧散。
bサムスン・コニン 00年10月、アテックエンジニアリング社内企業労組設立失敗。
bエスワン 00年5月、幽霊労組先制登録。
bサムスンSDI 1997〜01年、数回にわたって労組結成を試図、弾圧によって失敗。
bサムスン重工業 1997年、幽霊労組先制登録。



企業の透明性と社会的責任が問われている
関連グローバル・コンパクトとは?
社会的責任の10大原則提示、7700企業が加入



企業にとって選択
ではなく今や必須

 2000年、コピー・アナン国連事務総長の主導によって発足したグローバル・コンパクトは、社会的責任経営(CSR)とかかわるグローバル・スタンダードの核心軸となっている。会員各社は人権、労働、環境、反腐敗など社会的責任と関連するグローバル・コンパクトの10大原則を順守するために努力しなければならない。現在、会員企業・団体は全世界百余国の7700に達する。5300余の企業を含め、国連機構、労働機構、市民団体などさまざまな機構が加入している。コピー・アナンの後を継いだパン・ギムン事務総長もこれを重点的アジェンダ(議題)として推進中だ。
 2008年下半期のグローバル金融危機以降、全世界的に企業の透明性や社会的責任が一層強調されるとともに、会員が急速に増えている。米国の場合、インテル、ジェネラル・エレクトリックなどの代表的企業などが加入するとともに会員社が250社から350社に急増した。グローバル・コンパクトへの加入は社会責任投資(SRI)の広がりによって、企業にとっては今や選択ではなく必須なこととして受けとめられている。

履行報告書を提出
しない韓国企業

 チュ・チョルギ・グローバル・インパクト韓国協会事務総長は、「国連の『責任投資の原則』(PRI)に加入した580個の世界金融機関の運営資金が18兆ドルに達している。これらは投資対象企業にグローバル・コンパクトへの加入を積極的に勧奨している」と語った。国連の責任投資の原則は投資対象企業を選定する時、社会的責任の履行の有無を主要に見極めている。また国連本部はもちろん、傘下の専門機構、平和維持軍も年間700億ドル規模の調達事業を進める時、企業審査の基準にグローバル・コンパクトへの加入の有無を反映する。
 韓国の会員は現在170余個だ。大企業としては現代自動車グループの5社、SKグループの2社、LG電子、ロッテ・ショッピングなど財界上位グループの系列社が参加しているが、財界1位のサムスンは抜けている。会員社は毎年グローバル・コンパクトの10大原則をどう履行しているのかを明らかにする履行報告書を出さなければならない。今年2月、韓国道路公社、ウリ銀行、大宇証券、マイダース工新資産運用などが報告書を期日までに提出できず、除名警告を受けたりした。(「ハンギョレ21」第807号より)


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