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             かけはし2010.4.19号

「米軍駐留違憲」判決を生かす道

伊達判決から51年、安保と基地を考える集会


判決に対する
米国政府の介入

 三月三十日は、安保による米軍の日本駐留を違憲とする画期的な東京地裁「伊達判決」が出されてから五十一年目の記念日。この日、午後一時半から衆院第一議員会館で伊達判決を生かす会が主催して「伊達判決記念・安保と基地を考える3・30集会」が行われた。
 一九五九年三月三十日の伊達判決とは、米軍砂川基地拡張に反対する闘いで、一九五七年七月八日に米軍基地内に入ったとして、刑事特別法違反で起訴された学生・労働者に対して出されたもので被告は全員無罪となった。この判決は、六〇年安保改定に向けて交渉を続けてきた米国と日本の政府に大きな打撃を与えた。
 二〇〇八年四月、国際問題研究者の新原昭治さんは米国国立公文書館で、伊達判決をめぐる重要な電文などを発見した。伊達判決が出た翌日の一九五九年三月三十一日にマッカーサー駐日米大使が藤山外相と会い「伊達判決を正す」よう圧力をかけて高裁を通り越して最高裁に「跳躍上告」するよう示唆したことや、マッカーサー大使が田中耕太郎最高裁長官と裁判の進行状況などについて相談していることが明らかとなったのだ。これは米政府が一つの判決に対して内閣や最高裁に圧力をかけた重大な介入である。
 マッカーサー大使の圧力に従って伊達判決からわずか四日後の一九五九年四月四日に検察側は東京高裁を飛び越えて最高裁に跳躍上告し、最高裁は同年十二月十六日に原判決破棄・差し戻しの判決を行った(1961年3月27日の東京地裁差し戻し審で罰金2千円の有罪判決)。
 この事件の元被告である土屋源太郎さん(元都学連委員長)は、二〇〇九年三月に米国公文書に対応する日本側の公文書の開示を外務省、法務省、内閣府、最高裁に請求したが、回答はいずれも「不存在」だった。土屋さんはこの「不開示」決定に対し異議申し立てを行うとともに、土屋さんたちが結成した「伊達判決を生かす会」の有志はその後も情報公開を請求したが、「不存在」の壁はなかなか突破できていない。

砂川基地反対
闘争の思い出

 この日の集会では、最初に「砂川闘争・伊達判決」を扱ったビデオが上映された後、出席した国会議員からの発言が続いた。斎藤勁(つよし)衆院議員(民主党)は「外務省は家探ししてでも文書を見つけるべきだ。こんなことがあれば日本は独立国であるのか疑わしい」と語った。赤嶺政賢衆院議員(共産党)は砂川闘争と伊達判決に沖縄は大きな励ましを受けたと紹介し、「土地取り上げを拒否するおおもとに伊達判決がある。基地の県内移設に対して基地への土地提供を受け入れてきた地主も二〇一二年の更新期限を前に、もう契約更新をしないと言っている。伊達判決を生かす活動を広げよう」と激励した。さらに阪口直人衆院議員、稲見哲男衆院議員、山花郁夫衆院議員(いずれも民主党)からのあいさつを受けた。後から駆けつけた照屋寛徳衆院議員(社民党)も「伊達判決は多くの沖縄県民の心の中に生きている」と語った。
 元被告の土屋源太郎さんと坂田茂さん(当時、日本鋼管川崎の労働者)は「砂川基地拡張反対闘争を闘って」と題して報告。土屋さんは一九五六年、五七年の砂川強制測量反対闘争に全力でかけつけた全学連の闘いの思い出を語り、「戦時中に土地を奪われ、いままた軍隊のために土地を取り上げられることなど許せない」という農民の言葉や、「基地に入った者を撃ってもいい」という指示を米軍が下していたことなどにふれた。坂田さんは、起訴されて会社から解雇されたが、砂川反対同盟の農民たちが川崎工場まで来て「解雇反対」の宣伝をしてくれたことに感動した、と語った。

情報開示実現し
真相を解明する

 島田清作さん(元立川市議)は、一九六〇年代の土地収用委員会審理反対闘争、米軍基地拡張計画の断念、米軍立川基地返還から今日までの経過を報告。当時の都学連・全学連指導部だった塩川喜信さんは、「伊達判決・最高裁の破棄判決」について説明。
 「駐留米軍には日本の指揮権が及ばないから日本国憲法の適用対象とはならず違憲ではない」という検察の主張に対し伊達判決は「日米安保条約によって日本への外部からの武力攻撃に対して日本の安全に寄与するために米軍が使用されることは、日本政府からの要請とアメリカの承諾によってなされるもので、米軍の駐留は日本政府からの行為によると言える。また米軍の日本駐留は日本政府からの要請と施設、区域の提供、費用の分担その他の協力があってはじめて可能となるもので、米軍の駐留を許容していることは日本に指揮権がなくても、日本国憲法9条2項前段によって禁止されている陸海空軍その他の戦力の保持に該当する。したがって日本に駐留する米軍は憲法上許されるものではない」と断じた。
 そして「日本に駐留する米軍は一般法の保護を受けるのは当然だが、刑事特別法のような特別の保護及び民事上の特別の保護を受ける理由はない」とし、同法で起訴された被告人は訴因として罪にならないので「無罪」となったのである、これに対し、田中耕太郎最高裁長官は「かりに米軍駐留が違憲だったとしても刑特法はそれに関わらず有効」というむちゃくちゃな主張を述べたとのことである。
 布川玲子さん(山梨学院大学教授)が「発見されたアメリカの公文書」について報告し、再び土屋源太郎さんが関係公文書開示請求運動の今後について報告した後、集会アピールを採択し、院内集会としては異例の三時間半にわたる長い集会を終えた。
 「密約」問題と沖縄基地をめぐる闘いが大きくクローズアップされている今、伊達判決を生かす取り組みは大きな意義を持っている。       (K)

追記:「伊達判決」への米政府による圧力に関する日本側の記録を開示せよという元被告と「伊達判決を生かす会」の請求に対し、外務省は「記録なし」という従来の姿勢を改め、当時のマッカーサー駐日米大使と藤山外相との会談の事実を認め、大使と外相とのやりとりの速記録を開示した(東京新聞、4月3日)。安保改定から五十年、現在まで続く米国の居丈高な圧力と日本政府の屈従の実態を、今こそ明るみに出すべきである。



反安保実連続学習会第2回
米軍犯罪の実像と日米地位
協定の問題点をえぐり出す

賠償金を肩がわ
りする日本政府

 四月三日、新しい反安保行動をつくる実行委員会は連続学習会「60年安保から50年 もうやめよう! 日米安保条約」の第二回「米軍被害の実情から――地位協定の問題点」を行った。報告は「米軍人・家族による事件被害者を支える会・関東」事務局長の芦澤礼子さん。
 芦澤さんは「米軍人・家族による事件被害者の会」{以下:被害者の会}の結成の経過と、米軍人・軍属による事件事故の発生数、日米地位協定とその問題点について報告した。
 「被害者の会」は一九九六年一月十七日に金城ロシータさんと二人の幼い娘が沖縄県北谷町で米海兵隊所属の上等兵が運転する乗用車にはねられ即死した事件、つづいて同年二月二十二日に海老原鉄平さんが沖縄県中城村でバイク乗車中に米海軍所属上等兵の運転する乗用車と衝突して死亡する、という事件を契機に出発した。いずれも公務外の米兵に一方的な責任のある事故だった。
 金城ロシータさんの家族と海老原鉄平さんの父・大祐さんが対面し、ともに加害米兵を那覇地裁に提訴し、「被害者の会」を発足させた。その後、母親が米兵運転の車にはねられ死亡した喜屋武さん、妹が飲酒運転の米兵に追突された儀保さんが「被害者の会」として提訴した。
 この四件の裁判はいずれも勝訴している。しかし損害賠償金の確定判決額に対して米国側が「見舞金」として支払ったのは一部であり、差額は日本側が支払っているのである(たとえば海老原さんの場合、賠償金判決額3633万円に対して米側の「見舞金」は556万円。差額の3107万円は日本側が支払っているのだ)。

地位協定改定を
ためらう鳩山政権

 米軍人・軍属による事件・事故は旧安保条約が発効した一九五二年から現在までで約二十万件、防衛省が整理した一九九九年〜二〇〇八年の十年間をとれば年間事故発生率は千六百三十六件に達する。ただしこの数字は防衛省が把握した数のみで、被害者が申し出ていない事故は含まれない。事件・事故の五六%は沖縄県で発生している(2位は神奈川県)。
 一九六〇年に現行の安保条約とともに締結された日米地位協定は、全く不平等な規定に満ちたものだが発効以来一度も改定されていない。韓米地位協定はすでに二回改定されており、韓国では米軍が基地の返還に際して環境浄化義務を負うことになっているのだが、それと比べても、日米地位協定の不平等ぶりは際立っている。
 たとえば犯罪を起こした米軍人・軍属の身柄は、起訴されるまでは米軍の拘束の下に置かれ、日本側には引き渡されない(1995年9月の少女レイプ事件後の同年10月の日米合同委員会による合意で「合衆国は、殺人又は強姦という凶悪な犯罪の特定の場合は日本国が行うことのある被疑者の起訴前の拘禁の移転についてのいかなる要請に対しても好意的な考慮を払う」となったが、それはあくまで「好意的な考慮」である)。
 さらに事件・事故の被害補償について、当該事件が「公務中」の米兵による場合は基本的には日本政府が米国の肩代わりをして補償額を支払う。「公務外」の場合には、基本的には米軍も日本政府も一切法的責任は取らず、「当事者同士の示談交渉」ということになっている。
 しかし米兵は日本国内に資産を有していないので加害者に個人責任での補償を求めることは困難となる。地位協定では被害者から請求があれば米側が「見舞金」を支払うことになっているが、金額は米側が決め、極めて低額である(1996年のSACO合意で、裁判による確定判決額について米側の支払う慰謝料との差額を日本政府側が支払うよう努力する、などが取り決められたが、現在までの適用例6件のうち4件は「被害者の会」による)。
 民主党は「日米地位協定の改定を提起」とうたったが、現在のところ米側との交渉においてそれを提起していない。鳩山政権は、この点においても完全に腰が引けてしまっている。(K)




資料
声明
中国での死刑執行に抗議する
アムネスティ・インターナショナル日本


 中国政府は本日、中国で麻薬密輸罪により死刑が確定していた赤野光信さんに対する死刑を執行したことを発表した。
 アムネスティ・インターナショナル日本は、今回の執行を含め、中国政府が行ってきたすべての死刑の執行に対し、強く抗議する。中国政府に対し、8日に予定されているという武田輝夫さん、鵜飼博徳さん、森勝男さんに対する死刑の執行を停止すること、そしてすべての死刑の執行を直ちに停止するよう求める。
 アムネスティは、中国の死刑制度について、秘密主義による透明性の欠如、政府の厳格な対応を誇示するための恣意的な死刑執行、死刑適用犯罪が広範囲に渡ること、国際基準に沿った公正な裁判がまったく行われていないことなど、多くの深刻な問題があると考えている。
 こうした状況は、自由権規約や中国が批准している拷問等禁止条約などの国際人権基準に明確に違反している。さらに、2007年および2008年に、国連で100カ国以上の圧倒的多数で採択された、全世界的な死刑の執行停止を求める総会決議にも反している。
 アムネスティは、中国政府に対し、全世界的な死刑の執行停止を求める国連総会決議に基づき、すべての死刑の執行を直ちに停止するよう求める。そして、死刑廃止に向けた一歩として、国際人権基準にそった刑事司法制度の改革に取り組むよう要請する。
 またアムネスティは、日本政府に対し、国際人権諸条約の遵守を誓約している国連人権理事会の理事国として、中国政府に対して、今回の執行に対する抗議と死刑問題に関する懸念を明確に表明すること、および8日に予定されている死刑執行の停止を求めて、あらゆる外交的努力を尽くすよう、強く要請する。

 2010年4月6日
社団法人アムネスティ・インターナショナル日本

 背景
 アムネスティは、あらゆる死刑に例外なく反対する。死刑は、生きる権利の侵害であり、究極的な意味において残虐で非人道的かつ品位を傷つける刑罰である。
 アムネスティは、日本政府に対しても、死刑の執行を公式に停止し、死刑廃止を視野に入れた公的な議論を開始するよう求めている。
 2010年現在、世界の約7割の国ぐにが、死刑という刑罰を拒否し、法律上あるいは事実上の死刑廃止に踏み切っている。アジア地域においても、フィリピンやカンボジア、韓国など27カ国が死刑を法律上、または事実上廃止している。インドや台湾でもここ数年間、死刑の執行が行われていない。モンゴルでは今年1月、エルベグドリ大統領が死刑の執行停止を正式に宣言している。


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