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気候変動とわれわれの任務決議草案(下)         かけはし2010.3.8号

地球温暖化と気候変動に対し新たなオルタナティブが必要

われわれの課題

5・3 緑の新マルサス主義と闘争し、貧困層および女性の権利を擁護するためのイデオロギー闘争を進める。

 地球温暖化の問題は、グローバルな問題であるという性質と、それが引き起こす可能性がある問題の重大性のために、ラディカル・エコロジーの装いの下で、マルサス主義の理論を復活させ、それを宗教色の強い黙示録的議論と結合しようとする一連のイデオロギー潮流の形成に有利に作用する。このような潮流は、もっとも高いレベルでは、支配階級の一部に支持者を見出している。これらの層にとっては数億人の死滅を想像する方が、資本主義の死滅を想像するよりもたやすいのである。そのため、彼らは潜在的には貧困層、特に女性にとって重大な脅威である。これらの潮流との闘争は重要な課題であり、われわれの組織は女性の運動と協力してそれに取り組まなければならない。人口のレベルが気候変動の一つの副次的要素であることは明らかだが、われわれは人口の増加が気候変動の原因であるという誤った主張に対しては断固として闘争しなければならない。人口動態の変化は多くの「発展途上国」において進行しており、予想されていたよりも速く進んでいる。それが継続することは望ましいことであるが、それは社会的な進歩、社会保障システムの発展、女性が利用できる情報、女性が自分の生殖能力を管理する権利(適切な条件の下での堕胎の権利を含む)の結果としての変化であるだろう。これはもちろん長期的な政策である。いかなる人口抑制政策も(強制的手段を別にすれば)、気候問題の緊急性への対応を可能にすることはない。

5・4 気候の問題を社会運動の綱領および闘争に組み込む。

 現存する運動に根を張った広範な動員という展望の中で、われわれは気候の保全が社会運動の重要な関心事になり、そのことがすべての領域における要求の綱領の中で具体的に表現されることを目指す。たとえば、次のようにである。
――平和のための闘いにおいて:武器の製造と使用は気候変動との関係で許容できない逸脱行為であり、それ自体が紛争の付加的な原因となる。
――貧困に反対し、発展と社会的保護の権利を求める闘いにおいて:気候変動への適応能力は資源と発展のレベルに正比例する。社会的不平等は脆弱性を拡大し、エネルギー転換に不利な条件をもたらす。
――女性の闘いにおいて:気候変動への適応のための必要条件は、特に、女性の固有の要求、すなわち平等の権利、育児に関する社会の責任、二重の労働からの解放、中絶と避妊の権利の重要性と緊急性を一層明確にしている。
――雇用のための闘いにおいて:都市および農村計画においてエネルギー消費を大幅に削減すること、生物多様性を保護すること、公共交通を発展させること、化石燃料エネルギーを持続可能なエネルギー源によって代替することは、巨大な雇用機会を提供する。
――土地、水、自然資源へのアクセスや有機の農民的農業のための闘いにおいて:労働集約型の有機農業を実践している農村コミュニティーは、炭素吸収源の能力を高め、農業セクターにおける温室効果ガスの排出を削減するもっとも優れた能力を持っている。
――グローバリセーションと農産物市場自由化に対する闘いにおいて:農産物市場自由化は農民の破滅、飢餓、農村からの人々の流出と生態系の略奪の原因であるだけでなく、直接および間接の重要な温室効果ガス排出源となっている(輸出用農産物の輸送など)。
――避難民の権利のための闘いにおいて:環境難民、とりわけ気候難民の数が増大している中で、移動の自由は不可欠であり、人間性の名に値する唯一の回答である。
――先住民の自らの権利のための闘いにおいて:先住民の共同体は生態系、とくに森林におけるそれに関する知識とその利用方法によって、炭素吸収源を保護し、発展させるもっとも優れた能力を持っている。
――労働のフレキシブル化と不安定化に反対し、労働時間延長に反対する闘いにおいて:変則的でフレキシブルな労働時間と、労働の機動性を重視する資本家のキャンペーンは、労働者たちに自動車を使用するよう強制している。「カンバン方式」の生産は、輸送セクターにおける温室効果ガス排出の大きな要因である。労働時間短縮は、代替的な消費とレジャー活動のモデルの大規模な出現のための前提条件である。
――民営化に反対し、交通、エネルギー、水の分野における良質の公共サービスを要求する闘いにおいて:無償の良質の公共交通セクターだけが、すべての人々の移動の権利と温室効果ガス排出削減を両立させることができる。電力生産の自由化は再生可能なエネルギー源の電力ネットワークへの組み込みを複雑にする。営利を目的としない国有企業のみが、二十〜三十年内に住宅セクターにおける排出をゼロにするという課題に挑戦できる。水およびエネルギーについては、重要な社会的ニーズに従って決定され、交換できない無償の個人別割り当て量と、割り当て超過分に対する超累進料金、および消費量の絶対的上限の設定を組み合わせるべきである。
生産様式の土台
そのものを問題に

5・5 気候に関する要求を労働組合を基盤とする左翼の基軸にし、反資本主義的闘争が富の再分配のための闘争を超えて進むことを展望する。

 大きな国際労働組合連合のリーダーたちは、資本家の気候変動政策に追随し、その代償として自分たちのいくつかの要求について交渉する可能性を確保するという方針を採用している。この方針は「グリーン・ニューディール」という提案として具体化されている。それはグリーンな技術が失業を吸収することを可能にし、新しい繁栄と資本主義的拡大の長期波動の推進力を提供するという幻想をベースとしている。労働組合官僚は資本主義の生産性と収益の向上の要求に同化し、気候変動政策の主要な手段、すなわち「グリーンな企業」への政府補助、「エコロジー課税」、クリーン開発メカニズム、排出量取引を支持し、さらには原子力エネルギーやバイオ燃料さえ支持している。このような方針は、労働組合運動を破局の共同責任者にするだろう。それは国際レベルにおける労働者の間の分裂と、各国におけるセクター間の分裂の種をまくだけだろう。気候問題およびエネルギー問題の重要性に踏まえて、労働組合を基盤とする左翼にとって、これらの課題を取り上げて、それを労働者の組織の路線転換のための闘いの一つの中心的な要素にしていくことが決定的に重要である。この闘争は、「経済の再生」ではなく、エネルギー消費の削減と無益あるいは有害な製品の規制、それらのセクターに雇用されている労働者の仕事の転換に関わっているため困難である。そのことは大きな障害となる。なぜなら、労働者は資本主義的生産様式の鎖に繋がれていて、日々の生存のためにそれに依存しなければならないからである。この課題に取り組むためには、労働組合を基盤とする左翼は自らを、富の再分配を中心に据える狭い観点から解放し、富そのものの概念、そして富が生産される方法、言いかえれば生産様式の土台そのものを問題にしなければならない。このアプローチにおいては、労働時間の削減(および労働の強度の緩和、賃金の低下を伴わないこと、労働時間削減分に比例する新規採用)や労働者管理(労働のリズム、生産工程、エネルギー消費等に対する)などの要求がますます重要になる。

5・6 クリーン技術の旧植民地諸国への大規模な移転、およびこれらの諸国における気候変動の影響に対する適応のための資金調達は、世界規模での資源と知識の共有を必要とし、したがって資本家の利益への重課税を不可欠とする。

――気候変動の抑止のためには世界規模での資源と知識の共有が不可欠である。それは以下の課題と結合されなければならない。
――第三世界の債務の帳消しと、南の諸国の独裁者が欧米の銀行に蓄積した財産の国民への返還。
――銀行の機密の廃止、タックスヘイブンの禁止、相続への課税、資本の投機的活動への課税等。
――帝国主義諸国の国家予算における政府開発援助予算の大幅増額。
――上記援助のほかに、発展途上国が気候変動の不可避の影響に適応するため、およびこれらの諸国の公共セクターにクリーン技術を、金銭的条件なしで、移転するための単一の世界基金の設立。
――この基金のための資金源を、気候変動にもっとも大きな責任がある経済セクター(特に、石油、石炭、自動車、発電)の超過利潤への課税に求める。
――世界のすべての人々が基本財にアクセスできるように、医療や、消費財の製造と基本的サービス(交通、軽工業、水、エネルギー、通信)に役立つ技術に関わる特許制度の廃止。
――化石燃料のための資源の採掘を放棄した南の諸国に対する金銭的補償の制度。

5・7 旧植民地諸国における排出は、資本主義的発展モデルを問題にしない限り、(何もしない場合に予想される排出量との比較で)三〇%以上削減することは不可能だろう。

 旧植民地諸国が気候を少なくとももっとも危険性が小さい水準で安定化させるという目標に寄与できるためには、圧倒的多数の国民のニーズに対応した内発的発展、つまり農民的農業を促進する農地改革、および国内市場に向けた生産への転換と結びついた発展が不可欠である。したがって、人間開発の権利と気候変動抑制の両立のためには、発展の権利を口実として化石燃料を燃やすことへの一切の規制を拒否し、自然資源を略奪し、森林を私物化し、炭素クレジットを売るための仲買人となり、バイオ燃料を生産し、農産物・食糧・工業製品を先進工業国の市場へ低価格で輸出するローカル支配階級を規制するための措置を取る必要がある。彼らがこの社会的にも環境的にも有害な発展モデルを強化しようとするのを阻止するために、南の諸国に提供された資金や技術的手段は当該諸国の人々およびその社会運動団体による民主的管理の下に置かれなければならない。
再生可能な
エネルギーを

5・8 危険な新技術の導入に反対し、生態系に関連するすべての主要な課題を、真に持続可能な発展の展望の中に組み込む。

 資本主義の歴史は一連の環境危機によって特徴づけられ、それらの危機は全体的な生態系的な視点なしに、収益性という条件に従属した部分的な技術的解決策―その環境への有害な影響は後になって初めて明らかとなる―によって「解決され」てきた。同じ魔法使いの弟子の処方に従って気候とエネルギーの危機を解決することは、特に、原子力と遺伝子組み換え作物への依存の増大、新たな石炭採掘の波の中での二酸化炭素の地中貯蔵の三つの分野において、一層危険な結果をもたらすだろう。これらの資本主義的解決策に反対することは、左翼にとってもっとも重要な課題の一つである。われわれはそれを資本主義の無制約の成長が常軌を逸していることの象徴として、また、何があろうとも利潤を生み出す資本蓄積を続けるために、自分の頭を飛び越えようとする浅はかな試みとして非難する。より一般的には、気候問題の課題は環境に関連するすべての問題を結びつける。したがって、この問題への回答は、生態系に関連するすべての重要な課題を組み込まなければならない。それには、特に、以下の課題が含まれる。(i) 熱帯雨林の保護と、先住民コミュニティーがその資源(炭素吸収源)の上で生活する権利の尊重、(ii) 生物多様性の保護、(iii) 水資源の合理的な公共的管理、(iv) 石油化学によって生成された約十万種類の分子―自然界には存在せず、したがって、その還元剤によっては分解できない場合がある―による生物圏の汚染に対する闘い、(v) 成層圏のオゾンを破壊するガスの使用禁止と、生態系に危険な影響を及ぼさない化合物による代替、(vi) 大気汚染とその人間の健康への影響(喘息、心血管の疾患)および生態系への影響(酸性化、対流圏オゾン)に対する闘い。

5・9  資本家の計画と科学者の勧告の隔たりについて非難する。批判的科学者たちとの結合を確立する。知識の所有権や研究の社会的役割の問題を提起する。

 政府が自分たちの資本主義的・自由主義的気候変動対策が「科学的」根拠に基づいていると人々に信じさせようとしていることに対して断固として闘わなければならない。そのために、われわれは政府の目標とIPCCのもっとも控えめな結論との間の大きな開きを非難しなければならない。この非難は、科学的専門知識のエッセンスを取り入れつつ、一方で大多数の専門家によって伝達される支配的なイデオロギーと社会的前提を批判することを暗黙に意味する。左翼は、科学者たちとの関係を確立し、彼ら・彼女らが社会運動に対して自分たちの専門知識を伝えるよう促し、彼ら・彼女ら自身の科学的専門知識をもとにして彼ら・彼女らの全般的な政治的立場を批判し、彼ら・彼女らが地球温暖化抑制のための闘いが要求するグローバルな合理的解決策と科学の極端な細分化―それは資本主義の部分的合理性に奉仕する―との間の矛盾について発言するよう促さなければならない。政策立案において専門的科学者が占めている位置を考えると、社会運動と批判的で人間的な科学者との関係を確立することは非常に重要である。この枠組みの中で、われわれは社会的公正の立場と結びついた気候変動抑制のための闘いにおける科学と研究の役割について、一般的な視点を確立する。われわれは技術による解決を拒絶しないし、発展や進歩という概念を拒絶しない。逆に、われわれは科学および研究は資本の影響から解放されて、その潜在的可能性が大規模かつ迅速に、再生可能なエネルギー源の持続可能な開発、エネルギー効率の向上、資源の合理的管理に活用されるようにするべきであると主張する。われわれは、研究活動への公的な補助金の全面的な組み換え、大学と産業や金融資本を結びつける契約の打ち切り、生態系的に持続可能な、社会的公正にもとづく社会に向けた転換のための優先的な研究課題の民主主義的決定を要求する。

全世界で闘う
ネットワークを

5・10 罪悪感を煽るような試みに反対し、エネルギーに関して、社会的に可能な限り冷静な対応の必要性を主張する。

 政府による罪悪感を煽るような議論、つまり地球温暖化の責任と気候変動抑制を、すべての階級を含むすべての個人の行動に転嫁しようとする議論と対決する。このような議論は社会的不平等と資本主義の責任を隠蔽し、生産様式の根本的な転換の必要性から関心をそらし、炭素税などの不公正な政策への道を掃き清めることを意図している。世界人口の半数以上が慢性的な過少消費の中で生活しているときに、過剰消費を拒否する文化の伝播によって気候変動を防止できると考えるのは幻想である。しかし、過剰消費やそれによってもたらされた個人の行動を問題するのを避けるために、画期的な科学技術上の大発明を期待するのも幻想である。消費の領域における行動に生産の領域における構造的変革を対置するのではなく、前者を人々が後者の必要性を理解するようになるステップとして考えるべきである。生産力主義と消費至上主義に異議を唱えるオルタナティブな社会的活動や民主主義的キャンペーンと大衆動員は、たとえ小規模なものでも、生産の領域における構造的変革が必要であり、そのような変革がより高い生活の質をもたらすという集団的意識を形成する上で積極的かつ重要な役割を果たすことができる。

5・11 大災害が発生した時に大衆的な支援活動を発展させる。

 気候変動は大災害の危険を大幅に高めており、それらは特に労働者や貧困層により大きな被害をもたらす。この脅威を前にして、われわれは二つの面で社会運動を通じた関与のために準備しなければならない。つまり、国家と政府に責任を取らせるための要求を掲げることと、全世界の活動家のネットワークの協力によって、現地の住民および住民組織の指揮の下で直接の、大衆的な、独立的な支援活動を組織することである。自然災害の際の経験が示していることは、このような大衆的支援がより迅速に、より直接に貧困層に届き、より少ない費用で人々の本当のニーズに対応しているということである。しかも、そのような活動はさまざまな社会的関係の発展や既存秩序への異議申し立てを促進する。
(2009年11月)


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