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「マザーアースの権利に関する世界宣言」         かけはし2010.3.1号

地球と生物多様性を絶滅から守るために新宣言の採択を


 以下は「ハフィントンポスト」に掲載されたボリビアのパブロ・ソロン国連大使と環境問題の弁護士であるコルマック・クリナンの〇九年十二月二十九日付の投稿である。

先進国の非民主
主義的な対応

 ボリビアにとって、(〇九年)十二月は気候変動対策に向けた重要で歴史的なステップとなった。もちろん、「ブロークンハーゲン」(コペンハーゲンの失敗)のことではない。そこでわれわれが見たものは、世界で最も大量の二酸化炭素を排出している諸国の最悪の非妥協的で、非民主主義的で、冷ややかな駆け引きだった。重要な出来事というのは、全く報道されなかったが、十二月二十二日にニューヨークで開かれた国連総会で、「マザーアース(母なる大地)の権利」の問題を国連のアジェンダ(議題)の一つとするという決議が採択されたことである。
 これは理解するのが難しいかも知れない。コペンハーゲンで、金持ち国が野心的で拘束力を持つ具体的目標を設定できなかったことによって会議がぶざまな結果に終わったことを考えればなおさらである。すでに空前の干ばつ、氷河の消失、水不足に直面しているボリビアにとって、気温上昇を二度に抑えるのか一度に抑えるのかは多くの人々の生死に関わる問題である。しかし、われわれはまた、たとえわれわれがこれらの重要な問題について合意に到達できたとしても、合意には欠陥が残されるだろうと考える。
 これは、国連の気候変動枠組条約が気候変動の根本原因や、より広範な環境の収奪の問題を取り上げていないためである。気候変動は病気の兆候となる熱のようなものであり、熱を下げるためには病気を治療しなければならない。根本原因は、人間が自然とは別の存在であり、自然よりも優位にあるという信仰や、多ければ多いほどよいという信仰である。このような信仰は、工業化された消費社会における、地球を収奪し破壊することによって人間の持続的な福利を実現しようとする誤った、破滅的な試みを促進してきた。
 したがって、マザーアースの権利というボリビアの提案は、このような根本的な原因となっている問題に取り組むことを意味する。先住民の共同体は、何世紀にもわたって、もし人間が地球の共同体の一部でありつづけたいのなら、その謙虚な一員としてふるまわなければならないと警告してきた。われわれはわれわれの地球をパチャママ(マザーアース)と呼んでいる。なぜなら、われわれは地球がなければ生きられないからである。この考え方は古来の精神的な伝統によって支持されているだけではなく、現代の科学によっても支持されており、科学は生命の地球への複雑な依存関係を解明しつづけている。このような考え方を体系化したものが「地球法理学」と呼ばれている。

自然と調和が
できる生活

 人間が広い範囲で生活できるようなレベルで気候を安定化させるために、人間社会は自分たちの生存を支えているエコロジー共同体の健康を劣化させるのではなく増進するような方法で自分たちのニーズを満たさなければならない。そのためには、人間の権利と、われわれの地球の他のすべての構成員の権利とのバランスを維持することが求められる。
 この明言された立場は、単に大気中に温室効果ガスを増やさないということだけではない。ボリビア、エクアドル、および他のラテンアメリカの諸国はすでにそのような発展の方向を定義するための努力を始めている。われわれは、他の人たちや自然を犠牲にして「よりより生活」を求めるのでなく、すべての人々や自然との調和の中で生活することを求める生活の方法を「よい生き方をする」等の言い方で表現してきた。ラテンアメリカの先住民の闘争や社会運動は、この考え方がボリビアとエクアドルの憲法に明記されることを可能にしてきた。
 二〇〇九年四月二十二日にボリビアのエボ・モラレス大統領は国連総会において、「マザーアースの権利に関する世界宣言」を起草することを提案した。彼の提案はALBA(米州のためのボリバール・オルタナティブ)の九カ国の支持を得た。十二月の国連総会で採択された決議はすべての国および国連事務総長が「自然との調和」の実現に向けて経験と構想を発表することを求めている。ボリビアでは、二〇一〇年四月二十二日の「マザーアース・デー」に開催する気候変動に関する人民議会でこの提案を前進させたいと考えている。

世界大戦よりも
深刻な危機に直面

 それでは、自然の権利というのはどういうものなのか? そこに含まれる最も重要な意味の一つは、この考え方によって、人間の権利と地球共同体の他の構成員の権利の間のバランスを維持することを通じて重要な生態系の均衡を維持するための法制度の導入が可能になることである。現在は、人間による環境に有害な多くの活動(気候変動をもたらしている活動を含む)が完全に合法である。大部分の法制度は、人間と法人を除くすべてのものを「財産」として定義している。奴隷法が人間を財産に変え、奴隷と奴隷主の間の搾取関係を固定化したのと全く同様に、われわれの法制度はわれわれと地球の間の搾取的で、当然にも破壊的な関係を固定化してきた。ほとんどの環境法も、環境破壊が進む速度を調整する以上のものではない。
 もし法制度が人間以外の存在するもの(山や川、森、動物など)の権利を認めるようになれば、裁判所や法廷は許容される汚染物や排出物に関する技術的な細部に忙殺されることなく、環境汚染の根本的な問題を取り扱うことができるだろう。たとえば、権利をベースとした考え方を採用するなら、人間が肉牛の飼育のために熱帯雨林を伐採する権利が、熱帯雨林に生存する生物種が生存しつづける権利よりも優先するかどうかを検討することができる。環境破壊を許容し、汚染の権利を売買するための複雑な制度を考案する代わりに、われわれと地球の間の関係の質を維持する最も適切な方法に関心を集中することができる。
 一九四八年に世界人権宣言が宣言されたとき、この宣言は戦後の時代への希望の宣言だった。それは法律的な基盤を持っていたわけではない。六十年を経て、この宣言は多くの国の法律に組み込まれ、国際刑事裁判所の基礎となった。どの世界大戦よりもはるかに深刻な危機に直面して、今こそ人間社会が、われわれの地球と生物多様性を絶滅から守るための新しい宣言を採択する時ではないだろうか?

注記
 「マザーアース(母なる大地)」の訳語について
訳出にあたって"mother earth"には「マザーアース(母なる大地)」の訳語を当て、初出以降は単に「マザーアース」とした。自然物や自然現象を擬人化する際に特定の性別を割り当てることが多い。そのことが固定的な性別役割分業の意識を再生産しているという側面には注意が必要である。私は、中性あるいは両性具有の表現、ないしジェンダー・ニュートラル(性的に中立的)な表現が提唱され、検討されることが望ましいと考えるが、今の時点で適切な表現が思い浮かばない。それを「宿題」として意識しておくべきであるという観点から、敢えて違和感の残る訳語を当てた(訳者)。



4・19〜22コチャバンバで開催
ボリビア政府が「人民の気
候サミット」を呼びかける

 昨年十二月にデンマーク・コペンハーゲンで開催された気候変動枠組条約締約国会議(COP15)において、ボリビア政府代表団は「北」の諸国が気候変動の深刻な影響に脅かされている「南」の諸国に対して歴史的な環境債務、気候債務を負っていると主張し、「北」の諸国の温室効果ガス排出大幅削減と、援助ではなく補償の支払いを要求した。米国オバマ政権とそれに同調するEU諸国および日本政府の策動によってCOP15における排出削減義務を含む合意が失敗するという重大な局面の中で、ボリビア政府は四月にコチャバンバで「人民の気候サミット」を開催することを決定し、各国の政府や社会運動団体に参加を呼びかけている。以下は一月五日付のモラレス大統領による呼びかけである(「ボリビア・ライジング」のウェブより)。
 ボリビアのエボ・モラレス大統領は、近く開催される「人民の気候サミット」の目的を発表し、いわゆる「先進国」が世界のもっとも貧しい諸国を犠牲にしてマザーアース(「母なる大地」)の豊かな恵みを簒奪してきたことを非難した。モラレスは人々の強制的な移住をもたらすような深刻な状況について警告し、気候変動とマザーアースの権利に関する人民の世界会議を二〇一〇年四月十九〜二十二日にボリビアのコチャバンバで開催することを呼びかけた。彼は次のように述べた。
 「自然との調和を取り戻し、マザーアースの権利を確立する必要がある。人類全体の福祉のために活動する人々や、自国民の最高の利益のために活動する用意のある政府の参加を歓迎する。気候変動は人間と生物とマザーアースの生存にとっての深刻な脅威である。危機は島嶼国や海岸地域、ヒマラヤの氷河、アンデス山地、世界の山岳地帯、極地、アフリカなどの高温の地域、水源、自然災害の増加の影響を受けている人々、植物、動物、生態系において特に深刻である。
 気候変動によって最もひどい影響を受けるのは、世界の最も貧しい人々であり、彼ら・彼女らは家や生存の手段が破壊され、移住を余儀なくされ、避難場所を探さなければならなくなる。これまでに排出された温室効果ガスの累計の七五%は、無謀な工業化の道を進んだ北の諸国で排出されたものである。気候変動は資本主義システムの産物である。コペンハーゲンのCOP15の失敗は残念なことだ。いわゆる先進国は自分たちが発展途上国や未来の世代やマザーアースに対して負っている気候債務を認めなかった。コチャバンバ会議の目的は、マザーアースの権利に関する世界宣言について討論し、合意することである。この会議は京都議定書の下の新しい約束と、国連気候変動枠組条約の下における締約国による決定に向けた提案への合意を追求する。広範な人々の参加を歓迎する。ボリビア多民族国家の政府は、世界の人民、社会運動、マザーアースを守ろうとしている人々に呼びかけ、また、市民と共に活動しようとする科学者、学者、弁護士、政府を招待する」。

 会議の目的は以下の通りである。
一 気候変動を引き起こした構造的および制度上の原因を分析し、人類全体の福祉と自然との調和を保証するラディカルな方策を提案する。
二 マザーアースの権利に関する世界宣言の計画について討論し、合意する。
三 気候変動に関する交渉とすべての国連の計画の中での、京都議定書の下の新しい約束と、下記の問題に関連する国連気候変動枠組条約の下における締約国による決定に向けた提案に合意する。
b気候債務
b気候変動による移住者、避難民
b排出削減
b気候変動への適応
b技術移転
b資金
b森林と気候変動
b共有するビジョン
b先住民
bそのほかの問題
四 気候変動に関する世界人民投票の組織化について検討する。
五 クライメート・ジャスティス(気候問題における公正)法廷の確立のための行動計画を検討し、発展させる。
六 気候変動から生命を守り、マザーアースの権利を守るための行動と運動の戦略を決定する。




追悼

ウーゴ・ゴンザレス・モスコーソ(1922―2010)

ハンス―ピーター・レンク

 一九二二年四月二十二日に生まれ二〇一〇年一月十日に亡くなったウーゴ・ゴンザレス・モスコーソは、六十九年間にわたってボリビアの革命的労働者党―コンバーテ[闘争](POR―コンバーテ、第四インターナショナル)の闘士であり、彼は同党を数十年間指導した。彼はまた、長年にわたって第四インターナショナル(統一書記局)の指導部に属していた。
 彼はボリビアの首都ラパスで、法学生として、またその後弁護士として鉱山主や大都市所有者の寡頭専制支配と闘い、PORの他の指導部とともに一九五二年四月九日の革命を導いた労働者と学生の連合を準備した。しかしその政府は、民族革命運動(MNR、ポピュリスト的ブルジョア政党)の手に落ちた。
 ウーゴ・ゴンザレス・モスコーソは、ボリビア労働者連合(COB)の創設に参加した後、MNR政権の時代、そしてそれに続く軍事独裁政権(バリエントスからガルシア・メサに至る)時代に、幾度も逮捕されて拷問を受け、亡命(ラテンアメリカの幾つかの国やスウェーデンに)することになった。
 一九六七年、POR―コンバーテはチェ・ゲバラのゲリラ運動を支援した。一九七一年、同党はウーゴ・バンセルの軍事クーデターに対する武装抵抗運動に参加し、それに続く独裁に対する武装抵抗戦線を形成する挑戦にも加わった。
 二〇〇〇年代になって、ウーゴ・ゴンザレスとPOR―コンバーテは、新自由主義政策に反対するさまざまな運動(コチャバンバの「水戦争」や「ガス戦争」)に参加した。その運動の政治プロセスの中で、エボ・モラレスがボリビア大統領になった。
 最後に、ギリエルモ・アルメイラ(メキシコの新聞「ラ・ホルナダ」の編集者)による追悼文を引用しよう。
 「ウーゴ・ゴンザレス・モスコーソはその生涯を通じて、動揺することのない、一貫した誠実な闘士であった。彼はつねに青年時代の反資本主義・反官僚主義・リバータリアン(絶対自由主義)的思想を行動に移そうとしていた」。

▼ハンス―ピーター・レンクはスイスの社会主義組織「ソリダリテS」のメンバーで第四インターナショナルの支持者。
(「インターナショナルビューポイント」10年2月号)


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