| 労働者派遣法改正答申 かけはし2010.1.18号 |
労政審のごまかしを許すな
1・27院内集会手始めに闘いを強め抜本改正法案化、成立へ |
抵抗を打ち破り、規
制への転換にとば口
昨年末十二月二十八日、労政審は派遣法改正答申を決定した。マスメディアでは規制強化への転換として報じられている。
確かにそれは、事実の重要な側面だ。八五年の派遣労働解禁以降、規制緩和に次ぐ緩和が続いてきた流れについに待ったをかけ、さらに押し返すための足がかりがひとまず日の目を見ようとしている。
さらに特筆すべきこととして、そのようなところまで事態を押しあげてきたものは、紛れもなく、労働者民衆の、しかも草の根から自律的に積み上げられてきた幅広い共同を支えとした運動だった。非正規労働者自身の立ち上がりを包み込み、いわば手作り的に広がる運動は、新しい形をとった労働者運動再生の紛れもない一部に違いない。そしてこのような運動の広がりを背景に、非正規労働者の個別争議にも次々と勝利的解決が生まれている。本紙でも何度か紹介したパナソニック電工の佐藤昌子さんは、正規雇用労働者としての職場復帰和解を勝ち取り、既に働き始めている(1面参照)。
これらの勝利の積み重ねと、ともかくも規制強化に踏み込むしかなかった今回の答申は一連のものであり、何よりも新しい運動が作り出した重大な成果として、しっかり確認すべきだろう。旧来の労働組合運動、巨大組織の運動が手をこまねき一矢も報いることのできなかった問題に、新しい共同の力が風穴を開けた今回の成果は、今後の労働者運動にも大きな示唆を与えるに違いない。
名ばかり規制へ
の画策なおも
しかしそれでも、今回の答申そのものはひどいものだった。昨年六月通常国会に提出された三党共同改正案から見ても、内容的に大きく後退させられたのだ。 三党連立合意に明記されていた項目、製造業派遣や登録型派遣の原則禁止、みなし雇用規定の導入、マージン率の情報公開、などは確かに答申された。しかしそれらを骨抜きにしかねないさまざまな例外が加えられているのだ。
具体的に挙げると、先ず、一昨年十一月自・公政権が国会提出し一度も審議されないまま廃案となった法案を再度生き返らせ、それへの追加・修正としての法案化などという、信じがたい方式が勧告されている。一昨年の法案と今回の諮問は、目的もそれを必要とした状況もまるで違う。それらはまったく別物であり、しかも問題の法案は、日弁連会長が批判声明を出したほどひどい代物だった。それを継承しろ、という今回の答申は、今回の労政審審議の不真面目さを示して余りある。
しかも、先の法案には、常用型派遣労働者の場合は派遣先による事前面接を認めるという、とんでもない毒が仕込まれているのだ。今回の答申は、この毒も生き返らせようというものだ。雇用責任も負わないものが採用決定権を持つ、こんな虫の良い横暴がまかり通っては、今でも事前面接が横行している違法状態は、もっとやり放題のひどいことになるだろう。
次に、登録型、製造業派遣禁止の例外とされた常用型派遣にも大きな問題がある。厚労省策定の「労働者派遣事業関係業務取扱要領」では、一年の雇用見込みがある場合や、短期の雇用期間が反復継続して過去一年以上雇用されている場合を、常用型派遣と定義している。このような定義の下で常用型派遣が例外とされたのでは、事実上登録型派遣の温存だ。
第三にみなし雇用規定では、派遣元における労働条件と同一の条件とされ、例え直接雇用となっても、期間に定めのない雇用は保障されない。これでは、派遣労働者の権利と生活は何ら守られない。また、派遣先が就労を拒否した場合は、行政による勧告しか提案していない。労働局による勧告が派遣先によって無視される事例が続出している現状を見れば、これではみなし雇用を実効性あるものとはとてもできない。
第四に、三党案に盛り込まれていた団交応諾義務を始めとする派遣先責任強化の諸項目はすべて削り落とされた。いずれにしろ、事実上は大企業が大多数である派遣先を不問にしようというのであり、これでは派遣労働者の実質的な保護などできない。
第五に、製造業派遣原則禁止の施行が最大三年、登録型派遣の原則禁止の施行が最大五年据え置かれる規定。後者などは土壇場で突然出てきた。派遣切りは今ただ中の問題だ。その時にこんな悠長な規定を持ち出す神経には怒り以外ない。ただ派遣労働から利を得ているものを助けるだけの提案であり、それこそ何のための改正かが問われる問題だ。
何としても名に
値する法案化を
見てきたように、極めて問題の多い答申が出された。しかも手口が汚い。三党連立合意に明記されている部分ははっきり書き込み、例えば例外規定などの合意に書かれていない細目で抜け穴を入れている。特に民主党の了承を狙ったものであることは明らかだ。しかしこれでも、使用者側は依然つぶすことを画策し、自民党を通じて廃案を追求しているという。
このような答申のままの法案化など許してはならない。今苦しんでいる派遣労働者に役に立つ、抜本改正の名に値する改正を実現するために、派遣先の横暴に対する闘いを強めると共に、手をゆるめることなく国会に向けた闘いを広げよう。とりわけ政治主導を標榜する民主党には、ここでこそ政治の責任を果たすことを迫らなければならない。
なお、労働者派遣法の抜本改正をめざす共同行動は、このような後ろ向き答申が決定されようとしていた年末、十二月二十二、二五、二十八日と、厚労省前行動を連続的に呼びかけ、結集した労働者と共に労政審に最後まで公正審議を要求し、怒りの声をたたきつけた。最終日の二十八日には報道陣も多数詰めかけ、労政審終了後、厚労省前での緊急記者会見も行われた。そこでは、棗一郎弁護士を中心に、配付資料を基に答申の問題点が解説されると共に、関根秀一郎派遣ユニオン書記長や鴨桃代全国ユニオン会長などから、政治主導によるまともな抜本改正法案化をあくまで追求するとの決意が語られた。そして年明け第一弾の行動として、一月二十七日の院内集会(午前十一時三十分から午後一時三十分・一面集会案内参照)が呼びかけられた。 (神谷)
全労協2010春闘討論集会
生活破壊との民衆的闘いで
社会を変えてゆく10春闘を
賃上げ、雇い止めに
対決、雇用も賃上げも
十二月十九日、交通ビルにおいて全労協10春闘討論集会が開催された。
主催者挨拶で藤崎議長は、「貧困格差社会が世界中に拡がっている。昨年の金融危機は新自由主義グローバリゼーションの破綻を明らかにした。構造改革の名の下の労働法制の規制緩和がこの格差社会を作り出した。政権交代は、企業優先から生活優先、中央から地方へという転換を求めた民意の結果であり、これは日本ならず世界的な転換期を示している。労働者大衆のための歴史的転換ができるのか、それを止めようとする勢力との攻防も始まっている。労働運動が主役に登場しなければならない。連合は賃上げ自粛、定昇維持を決めた。デフレのなか、賃下げ、雇い止めの攻撃が準備されている。これに対して、全労協は雇用も賃上げもしっかり主張し、労働者派遣抜本改正、移住労働者との連帯した闘いを通して社会を変えていく10春闘を闘おう」と訴えた。
均等待遇・派遣労働
脇田龍谷大教授講演
続いて、「非正規労働者の均等待遇と労働者派遣制度の問題点」を表題とした脇田龍谷大学法学部教授による講演が持たれた。
脇田氏は、製造業派遣解禁から非正規雇用の急増、女性だけではなく男性も非正規労働者が増えていることを示し、日本的雇用については、正社員の長期雇用を軸に高度経済成長時に企業内で維持されたが、労働者派遣法を転機に家計補助的型非正規雇用(パートタイム)からフルタイム型非正規雇用(派遣・請負・有期雇用)へと「政策的拡大」が進み、格差、貧困、雇用破壊が拡大したと指摘した。
均等待遇については、「同じ仕事であれば、性、雇用形態、所属企業にかかわらず、同じ待遇を保障する」(同一労働同一待遇)が原則であり、EU諸国は企業横断的労働条件(仕事・職種別賃金+社会保障)であるが日本は企業別労働条件(年功賃金=年齢別+家族賃金)であり、派遣労働者との同一待遇は、不安定な派遣労働者の待遇を正社員より上にしてやっとバランスが取れること、派遣労働(dispatch work)について、一時的労働(temporary
work)と訳すべきところを意図的に派遣労働と誤訳していると指摘、恒常的業務で常用雇用(permanent work)が求められていることを訴えた。
また、派遣法抜本改正については、派遣労働者の保護等に関する法律にすること、派遣労働者保護や対人サービス、技術継承が必要な業務など派遣禁止業務を製造業以外にも拡大すること、二十六専門業務以外は常用雇用のみとすること、みなし規定について、「あなたが私の雇用主です」と「通告できる」ことにすべきだと指摘。常用雇用が原則であり、有期雇用規制(入口規制)、均等待遇(中での規制)、解雇規制(出口規制)が必要と訴えた。
最後に十二月十八日最高裁が下した松下PDP不当判決については、「PDPが直接面談していない」と偽装請負の実態を直視せず、エンドユーザ企業の雇用責任を否定した形式論であり、間接雇用禁止の原則を無視したもの。「派遣元=雇用主」という「虚構」を明らかにした判決だと批判。立法的解決が必要なことを訴えた。
連帯の力で闘う
春闘の拡大を
講演を受け、中岡事務局長から二〇一〇年春闘方針が提案された。生活できる大幅賃上げの獲得(月給労者17400円、時給労働者100円/時)、ディーセント・ワークの実現、不況を理由とした雇い止め、解雇、リストラ攻撃を許さない、すべての労働者に仕事を、最賃の引き上げ、公契約条例の制定。貧困・格差社会反対・セーフネットの拡充、非正規労働者の権利確立と均等待遇実現、国鉄闘争勝利、労働者派遣法抜本改正、憲法を守り、沖縄から基地をなくせ、派遣、移住労働者など非正規労働者との連帯し、闘う春闘の拡大、という闘争方針が提案され採択された。
集会の最後に、官公労、国労、全統一、全国一般全国協・パナソニック電工裁判原告佐藤昌子さん、電通労組など参加した労働組合、地方からの闘いの報告と決意表明があり、10春闘を闘う決意を確認した。(HM)
東京都「公設派遣村」
行政の不十分な対応に
派遣村有志自主的活動
ちょうど一年前に東京日比谷公園に出現した派遣村が、今回は国の要請を受けた都道府県を通じて、各自治体が「公設派遣村」を開催した(公表136自治体)。しかし行政側の情報発信不足や体制の不備から、セーフティーネットが十分に機能しないことが指摘されていた。
そこで前回の派遣村ボランティアスタッフを中心に「年越し派遣村が必要ないワンストップ・サービスをつくる会」(代表:宇都宮健児弁護士)が結成され、生活困窮者への広報強化・収容者の要件緩和と収容枠の拡大、生活保護救済原則の徹底化などを行政に対して要請した。
同時に会としてもボランティアを募り、東京都内では主要ターミナルでの情宣、炊き出し場やネットカフェなどへのチラシ配りにより「公設派遣村」を紹介し、新宿区ハローワーク裏の大久保公園にテントを設営しての生活相談を行った。
また年明けから収容先の国立オリンピック記念青少年総合センターへも、ワンストップの会と支援者が大型バスで乗りつけた。ニュースでも報道されたように、行政の相談がおざなりで生活保護申請を拒むような対応が行われていたという。
そこで会は、車中でも相談を行うなどの精力的活動を行った。東京都は当初五百人の収容を予定し、宿泊は一月四日朝までという期限をつけたが、ワンストップの会の粘り強い交渉によって、結果として八百三十三人を受け入れることとり、大半の人が五日から「なぎさ寮(大田区)」へ移動し、十八日まで宿泊し、生活保護の相談を行うことができることになった。
しかし派遣村へ訪れた人たちの年齢層をみると、前回と比べて三十、四十歳台の人が多いという。生活保護などのセーフティーネットの充実が緊急な課題であるが、この生活困窮の根本に現行労働者派遣法があることを忘れてはならない。昨年十二月二十八日に派遣法改正の労政審が、三党合意から大きく後退する案を提出している。われわれは登録型派遣の禁止、マージン率の上限規制、派遣先の責任強化などの労働者派遣法抜本改正実現に向けて、さらに闘いを強めなければならない。 (TB)
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