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安全軽視・環境破壊に満ちた航空行政           かけはし2010.1.1号

全国で93カ所の空港が赤字
無駄な税金の投入をやめろ

 鳩山政権は、アジア国際空港競争からの遅れを取り戻すために羽田空港が国内線、成田空港が国際線という「内際分離」政策(一九七八年)を撤廃し、両空港の一体的運用の拡大によるハブ空港化を目指している。前原国交相は、羽田国際空港化とオープンスカイの促進を掲げてきた民主党の航空政策の実現にむけて旧航空政策を継承しつつ、新たな踏み出しを開始した。しかしその実態は、新自由主義に貫かれた超過密航空運航の拡大であり、環境破壊に満ちたものだ。同時に安全軽視に貫かれた事故多発時代への突入である。この危険な航空政策を推進しようとする前原路線を批判し反空港運動の前進をかちとっていこう。

羽田空港のハブ
化構想を宣言

 前原国交相は、十月の「アジア太平洋航空局長会議」で「羽田空港を徐々にハブ化する」と表明した。この路線は、東アジア共同体構想の柱の一つとして御手洗ビジョンと「アジア・ゲートウェイ」構想を合体させた国交省の「戦略的新航空政策ビジョン」(07・6・21)を土台にしている。とりわけ羽田空港再拡張滑走路が一〇年十月に供用開始で発着能力を現在の二十九・六万回/年から四十・七万回/年に増え、成田空港B滑走路が〇九年十月に供用を強行し発着能力が二十二万回以上をめざすことによって羽田と成田空港の増便数を各航空会社に振り分けることによって航空再編を促進させていくというシナリオだった。メインの課題であった「内際分離」政策をめぐっては、運輸族議員・国交相官僚とOB・ゼネコンなど財界が複雑に入り乱れて羽田空港国際化推進派と成田空港拡大推進派による熾烈なバトルが繰り広げられていたが、先送りにしていた。
 だが、鳩山政権成立によって膠着状態だった「内際分離」政策の撤廃について前原路線を押し出すことで羽田空港ハブ化反対派の抵抗を排除しつつ、日本の航空行政と資本の生き残りをかけて安全軽視の過密運航によって突破していくことを選択したのである。
 その要因の一つだったのが日本航空政策が混乱を続けているあいだ韓国・仁川国際空港など次々と新国際空港がアジアで建設され国際空港競争から日本は後退を続けていたことだった。国際空港評議会によると二〇〇九空港ランキングでも一位が仁川国際空港(韓国)、二位が香港国際空港(中国)、三位がチョンギ国際空港(シンガポール)という評価が出ているが成田空港はベスト圏外だった。これ以上の成田空港の地位低下、羽田ハブ空港化の延期を続けていられないという危機感を国交省官僚らは高めていた。前原路線と国交省羽田ハブ化推進派が一致し、航空自由化戦略への本格的着手に入ったのである。
 前原は、矢継ぎ早に突進していった。日米オープンスカイ(航空自由化)合意にむけて「首都圏空港の一体的運用のなかで羽田を二十四時間国際拠点空港化していく」(12・7朝日新聞)とぶち上げ羽田の昼間の発着枠のうち配分が決まっていない約六万回について半分以上を国際便にあてることを明らかにした。この計画には、飛行コース直下の騒音・ジェット機排気ガスによる航空公害、過密運航による事故多発につながることの危険性について「配慮」するレベルさえもみせない。
 この姿勢は、成田空港に対する方針も同様だ。国交省は、成田空港会社による「二本の滑走路から同時・並行に離陸する方式」の申請について承認する方向であることを示した(12・19朝日新聞)。これはB滑走路の発着回数二十二万回から三十万回に増やすことによって安全軽視・空港公害の撒き散らし拡大が必至であるにもかかわらず空港会社の強引な運航方針を追認するということなのだ。
 これまで成田空港は、A・B滑走路からの離陸時間に差をつけてきたが、A滑走路からの離陸が十五度以上開けば同時離陸が可能だという判断をした。これは過密運行を優先した計画だが、必然的に航空機事故の多発化、飛行コース直下・周辺の騒音公害の領域が広がるにもかかわらず成田空港地位挽回の至上命題のもとに強行しようとしている。とりわけ三里塚・東峰地区住民に対する航空機騒音による追い出し攻撃が身体的危険性があるにもかかわらず無視し続けている。
 こういう安全軽視・環境破壊・人権侵害の姿勢は、〇九年三月二十三日のA滑走路フェデックス貨物機「MD11」着陸失敗炎上事故の原因が成田空港で頻発する特有の「ウィンドシア」現象だと見られているが、国交省航空事故調査委員会の正式な報告も明らかになっておらず、原因と対策・具体的措置を確認していないという危険な状態が続いている。二月二十八日には平行滑走路への誘導路上で日航機とニューギニア航空機が鉢合わせするという事故が発生している。
 報告では管制とニューギニア航空機との交信ミスだとしているが、過密運行による必然的な事故であることは明らかだ。滑走路上での鉢合わせ、接触事故のたびに「対策・措置」を確認しているが、このように繰り返しているのは国交省・空港会社による営利主義と安全軽視の体質に根本問題があるのだ。重大問題を棚上げし、追認しているのが前原路線の本質なのである。

日航の経営危機
と年金切り下げ

 第二の要因は、金融危機と世界同時不況を決定打として航空業界の慢性的な経営危機状態を追撃し、日本航空の経営破綻も前原路線を促進させた。日航資本は、長年の運輸族・官僚・地域利権集団らの合作による「一県一空港」などという空港乱開発(どんぶり勘定の空港整備特別会計を資金とした空港整備計画)に伴う採算無視の日航路線運航、官僚の天下り先の寄生場所として温存され続け放漫経営をしてきた結果として最低二千五百億円の巨額な債務超過へと膨らんでしまった。
 あげくのはてに労働者切り捨てを中心とする再建計画、年金使い込みによって約三千億円の積み立て不足に陥っていた。そのツケを企業年金給付の引き下げを日航労働者OBに強要する暴挙に出ている。これは明らかに不当な支払い拒否であり、労働者の財産権を侵害する詐欺行為である。
 前原は、約一万五千人の解雇を獲得目標とした「JAL再生タスクフォース」をデッチ上げたが、貸し倒れを恐れる日本政策投資銀行、みずほコーポレート銀行、三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行などの方針に基づき政府保証が付いた公的資金を支出することができる企業再生支援機構に任務を移行させ、日航労働者の分断・分裂、組合破壊、OBに対する企業年金削減を強行しようとねらっているのだ。
 日航再建の第一ハードルは、日航経営者、官僚たちが貪ってきた利益、資産の全貌を明らかにし没収することが優先的に取り組まなければならない。労働者に一切の責任はない。銀行の意向を代弁し日航再建と称して民衆の税金を投入し、日航労働者の年金使い込みと踏み倒し強行を許すな。同時に、安全運航のための整備システムのコストダウンを行いながら事故多発シフトへの深まりにブレーキをかけさせる必要がある。 
 これまでの航空機事故は、新自由主義的航空規制緩和、整備リストラ、過密空域、運航増大、航空管制官の人員不足と長時間激務などの複合的な要因が重なったものである。日本航空と全日空は、飛行間点検の整備士の半減、定例整備間隔の延長、機材はリース、定期整備の海外整備工場への委託・外注化など立て続けに安全軽視政策を進めてきた。それを国土交通省が認可してきたのである。日本航空は「自社整備」を放棄し、整備部門の全面的な海外委託を強行している。航空法の安全基本原則である「自社運航」を投げ出してしまった。すでにアジア各国では乗務員・整備部門のリストラと安全軽視による徹底したコスト削減によって格安チケットを売り出しているLCC(低運賃)航空会社の間で熾烈な市場競争を繰り返している。全日空はLCC競争に参入するためにアジアの航空会社との合弁会社を設立した。国交省と航空資本が一体となった安全軽視政策を糾弾していかなければならない。

日本版「オープ
ンスカイ」協定

 十二月十一日、日本と米政府は、オープンスカイ(航空自由化)協定を結ぶことで合意した。協定は「二〇一〇年十月以降、羽田空港と米国間で一日四往復まで旅客便を運航」、「十年三月の成田空港発着枠拡大時に、米国航空会社の発着枠シェアを二八%から二五%程度に低下。その後もシェアの低下を目指す」ことなどを確認している。
 これまで国交省は、米と航空自由化を結ぶことについて「米主導で競争が進み、日本の会社に不利になる」などと吐露しながら「内際分離」政策を楯にして政官財の癒着・利権構造を防衛するために抵抗してきた。その一方で@羽田の深夜・早朝枠を使って欧米のチャーター便の開設A成田・羽田空港を除いてアジアの主要国と乗り入れ地点や便数の制限撤廃などの日本版「オープンスカイ」を進めてきた。しかし、航空業界の経営悪化、アジア国際空港の後退などを根拠として前原路線に軌道修正せざるをえなかったのである。また、米とのオープンスカイ協定合意とセットで国交省は、日航の経営破綻に対して米航空資本との資本・業務提携によって延命させていくことも選択した。
 米航空資本も日本とのオープンスカイ協定をバネにしながら羽田空港を拠点にしてアジア航空路線シェアの拡充をめざしている。世界首位の米デルタ航空は、日航が世界二位のアメリカン航空が主導する国際航空連合「ワンワールド」の加盟からデルタが主導する国際航空連合「スカイチーム」への移籍費用も含めて約九百十八億円の資金援助を提示するほどだ。デルタは、「スカイチーム」に日本の航空会社が存在していないため日航を移籍させることによってアジアシェアを強化していくことをねらっている。アメリカン航空は、米投資会社TPGと共同で約九百九十億円の出資を提示し、日航の経営権の影響力の拡大を見据えながら応戦している。デルタ航空とアメリカン航空は、日本の航空自由化戦略に介入し、延命をかけて激しい日航争奪戦を繰り広げている。
 朝日新聞(12・19)は「日航、デルタ提携有力」と報道した。すでに前原は日航経営破綻のドタバタの真っ最中からアジアで拠点を縮小傾向にあるアメリカンからデルタへの移籍が有利と判断し「日本航空が決めることだが、政府が支援する以上、全く委ねるわけには行かない。話を聞くことになる」などとアプローチを開始していた。前原路線に基づいて国交省官僚は、現状維持の日航西松社長派への圧力をかけていた。日航のデルタ航空の「スカイチーム」に移籍が確定したわけではないが、わざわざ報道にリークするほど水面下での綱引きが活発に展開していることは確かだ。
 このように航空資本のグローバル化、羽田・成田空港一体運用によるハブ空港化は、金儲け主義を優先し、大量生産・大量消費・大量廃棄型の過剰航空運航政策の強化である。前原路線の本質と野望を暴露し、民衆に敵対する航空政策ではなく、厳格な規制強化・管理・統制を強めていくことが求められているのだ。そして、航空機によるCO2排出量の無限化の放置を許さない闘いも必要だ。鳩山政権は、温室効果ガス削減について「主要国が温暖化対策に参画する」を前提にして一九九〇年比で二〇二〇年までに二五%削減を方針化しているが、前原路線は、まったく逆行した政策だ。CO2削減政策における航空政策の「聖域」状態にメスを入れていかなければならない。

三空港が乱立し
経営破綻の関西

 前原路線の旧来の航空政策との違いは、日航経営破綻を契機に「予算があるからと不採算空港をつくり、政治家や役所が日航に飛ばせと押し付けてきた。それが結果的に経営を悪化させた面があり、悪循環を断ち切らねばならない」(9・26)と指摘したが、空港整備特別会計の見直しに踏み込んだことだ。
 空港整備特別会計は、空港建設と維持・管理につぎ込む資金をどんぶり勘定の性格を覆い隠し、運輸族議員・国交省官僚・ゼネコンが貪り、食い逃げを温存・助長させてきたシステムであり、自民党の利益誘導型政治の柱の一つでもあった。だから空港特会の見直しは、政官財利権構造の自民党政治基盤を解体し民主党政治基盤に獲得する性格を持ったものだ。
 行政刷新会議は、国家財政の破綻状況に対して財務省シナリオに基づきながら二〇一〇年度予算の概算要求の「事業仕分け」を行った。この中で関西国際空港会社支援のための補給金百六十億円の凍結、空港整備事業と空港周辺整備事業の予算縮減へと踏み込んだ。この事態に驚いた空港特会見直し抵抗派の巻き返しがあったもようで前原は、記者会見(12月17日)で「見直し案はあるが財務省との話が詰まっていない」という理由で年内見直しを先送りにすることを明らかにした。しかし、空港特会見直しの流れを止めることはできない。すでに全国の九十七カ所の空港の多くは赤字状態だ(黒字空港は、伊丹、鹿児島、熊本、新千歳のみ)。空港特会による赤字補填支出の垂れ流しで延命することは、国家財政破綻によって限界点を越えてしまっているのである。
 その典型的な破綻を体現しているのが関西空港だ。過大需要予測によって二本目の滑走路まで建設したが、発着回数は十二万回でしかない。結果として関空には八千六百三十六億円を投入したが、一兆千億円もの有利子負債へと膨らんでいる。関西資本、自民党・公明党政権の利権対象として伊丹空港、関西空港、神戸空港を乱立させたが、空港経営は慢性的赤字。なんら展望もなく関西資本、行政は、関西三空港を「一元管理」すると言い出した。
 橋下大阪府知事は、二〇三五年に伊丹空港を廃港し跡地を活用し、それまで国際線も飛ばし収益を関空にまわすなどと言っている。伊丹空港を廃港は当然だが、いったい何を根拠にして収益があがるというのだ。いずれもインチキ統計による過剰需要予測を前提にして放言をしているにすぎない。これ以上の負債をいったい誰が抱えるというのだ。無駄な税金をこれ以上投入する必要はない。無駄な空港は廃港にするしかないのだ。

成田の発着便数
の拡大をねらう

 反対同盟(柳川秀夫世話人)、成田プロジェクト、三里塚・暫定滑走路に反対する会は、鳩山政権に対して〇九年十月二十二日B滑走路供用について東峰地区住民の身体に関わる緊急事態として飛行を凍結せよと要求してきた。しかし、供用を強行し、国交省は「今後羽田と成田を今以上に活用し、羽田・成田の両空港については一体的にとらえていく」ことを表明した。前原は、「平行滑走路二千五百m供用開始記念式典」で「年間発着回数三十万回が一日も早く地元の合意を得られるよう期待する」「成田が国際拠点のお兄さんとして先導的な役割を果たし、羽田空港の活用も含めて航空需要に対応することが国策として必要」と強調した。つまり、安全軽視、環境破壊に満ちた航空政策について自公政権時以上に押し進めていくことなのだ。前原路線をバネにして成田空港会社の平山専務は「三十万回を達成した後も機能拡張を考えなければならない。平行滑走路をA滑走路と同じ四千mにし、同じように運用できるのが理想だ」などと言い出している。成田空港の地位低下に対して危機感まるだしで必死だが、あげくのはてに「深夜、早朝の発着便数を増やす方向」であることを明らかにしている(12・15)。騒音・環境・人権破壊の極限的状況に突入させる居直り宣言であり、「犯行予告」でもある。鳩山政権の応援のもとに空港会社の暴力的性格がますます強まっている。攻撃の加速化と連動して三里塚闘争破壊も強めている。一坪共有地・団結小屋強奪裁判提訴は、その一端である。裁判闘争勝利に向けた取り組みの中で前原路線の犯罪を暴露していこう。1・17反対同盟旗開きで二〇一〇三里塚闘争の意志一致をかちとろう。前原路線を粉砕し、反空港全国運動を強化していこう。   (遠山裕樹)
■二〇一〇年三里塚反対同盟旗開き(1月17日〈日〉正午/横堀農業研修センター)


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