| パナソニックプラズマディスプレイ社偽装請負訴訟 かけはし2010.1.1号 |
大企業の利益
を守る最高裁
十二月十八日午後三時、吉岡力さんが雇用の確認を求めていたパナソニックプラズマディスプレイ社偽装請負訴訟で、最高裁第二小法廷(中川了滋裁判長)は大阪高裁が「請負会社が吉岡さんと結んだような契約は公序良俗に違反して無効とし、プラズマ社と吉岡さんの間に『黙示の雇用契約』があり、有効な雇用関係が続いていると判断した」(朝日、12月19日)判決を「プラズマ社が吉岡さんの採用に関与したり、黙示の雇用契約も成立していない」と逆転破棄し、派遣先・プラズマ社との雇用を認めなかった。
しかし、吉岡さんが請負会社ではなく、プラズマ社の指揮命令で作業していたとして「労働者派遣法に違反する」と指摘し、最高裁として初めて「偽装請負」を認定した。そして、二〇〇五年五月に「偽装請負にあたる」と内部告発し、大阪労働局が是正指導した後、期間工として直接雇用されたが五カ月で雇い止めされたことを、内部告発への報復として、その違法性を認めて損害賠償九十万円をプラズマ社に命じた。
今回の最高裁判決は、偽装請負を認めながら派遣先との雇用契約を認めず、派遣先に責任を負わせない矛盾したものであった。昨年来、世界不況のあおりを真っ先に受け、解雇されたのは派遣や請負労働者だった。まさに、雇用の調整弁としていつでも使い捨てにできる「労働者派遣法」の問題点を司法がたださなかったものであり、最高裁が大企業の利益を防衛する役割を果たしていることを満天下に明らかにした不当なものであった。吉岡さんは判決後、今後もこの判決に負けることなく、解雇撤回まで全国の同じ思いの仲間とともに闘うと宣言した。全国の現場での闘いをいっそう強めると同時に、労働者派遣法の抜本改正を必ず実現しよう。
みんなのために
闘った吉岡さん
パナソニックプラズマディスプレイ社偽装請負訴訟最高裁判決日の十二月十八日午後一時半から、最高裁前で「使い捨てはもうゴメン! モノ扱いされる働かされ方、変えよう!パナソニックはすべての争議を解決しろ!」行動が行われた。
吉岡さんを職場にもどす会の田中事務局長が「大企業の違法な労働者供給事業を推奨するかどうかが今日の判決で問われている。大阪高裁判決を確定させよう。三千四百の団体、十五万筆の個人署名が最高裁に届けられた。吉岡さんをパナソニックの職場に戻せという全国的な闘いのうねりできた。どのような判決が出ようと運動の力・実力で職場復帰を勝ち取る」と呼びかけた。
次に全労連井上事務局次長が「吉岡さんを職場に戻せという判決を最高裁は出せと言いたい。今日労政審で公益委員の骨子案が出たが三党案からも後退している。製造業派遣禁止、登録型派遣禁止、常用型を認めてはいるが定義がはっきりしない。見なし規定は勧告することができるにとどめている。派遣先の団交応諾については触れていない。これで企業が責任を果たすのか。派遣法の抜本改正を実現しなければならない。年末、路頭に迷う人が増えている。公益委員すら不況の中で派遣を雇用の調整弁として残そうとしている。企業はセーフティネットがキチンとしていなかったのが問題だと自らの責任を逸らそうとしている」と労政審の動きを報告した。
全労協の遠藤さんは「派遣切りされた労働者が路頭に迷う中で、反貧困運動と労働組合が協力して派遣村運動を行ってきた。また、現場で派遣先企業の責任を追及して闘ってきた。吉岡さんの闘いの結果、派遣先の雇用契約を認める大阪高裁判決を出させ、すりぬけを許さない風穴を開けた。それを受けて全国で六十余に上る派遣先を相手の裁判闘争が起きている。もし最高裁が吉岡さんの言い分を認めないなら、雇用先の雇用責任・見なし規定を法制化しよう。解雇の制限・有期雇用の撤廃に向けて、派遣法の抜本改正から廃止へ。来年は大転換の年にしたい」と訴えた。その後、東京争議団共闘会議、全国ユニオン安部事務局長、鉄建公団訴訟原告団、東京全労協などが激励と連帯のあいさつを行った。
弁護団の中平弁護士は「二百人を超す弁護団を組むことができ心強く思っている。吉岡さんは自分だけのためではなく皆のためにとがんばってきた。今の派遣法でも松下PDPは違法なことを平気でやってきた。企業の責任を認めないでどうして法治国家なのか」と語った。
原告の吉岡さんが「やれることはやってきた。過去から続く仲間の闘いがあったからこそ、ずっとやれてきた。会社側も必死になってやっている。労働者が団結したら絶対に負けない。パナソニックの中村会長は『あってはならないことだが、品質問題や不祥事が発生した場合の、適切、俊敏、そして何より誠実な対応がある。加えて、社会的存在である企業は、より良き社会づくりに向けて、企業市民としての責務、使命を積極的に果たしていかねばならない』と発言している。中村会長は有言実行しろ。なんとしても勝利判決をとりたい。仮に勝訴してもパナソニックは従わないだろう。必死になって闘う。非正規千七百万人労働者の雇用の安定につながる判決を出せ」と訴えた。
職場復帰まで
がんばる決意
この後、二百人余が四十七席の傍聴券の抽選に並び三時からの判決を待った。判決が出されてもいつものように判決内容を伝える伝令がなかなか出てこない。傍聴者がばらばらと帰ってきたが、どうも判決内容が分からない。「裁判費用の六分の一を原告負担にすると言ったから一部勝ったようだ」と語る人もいた。原告と弁護団で判決内容を精査しているので待ってくれとのこと。ようやく、「損害賠償は認める 不等判決」の横断幕が掲げられた。
村田弁護士が判決内容を報告した。「原告の六つの上告理由の@からBを破棄した。@地位の確認A賃金のバックペイB元の職場に戻せ。その他、不法行為について認めて損害賠償を命じた。それまでの作業を外され、一人での作業に変えられた。この違法性については一審も認め、二審では直接雇用して二〇〇六年一月三十一日までの雇い止め、この過程を全体として不法行為と認定した。今井裁判官が補足意見で『偽装請負を告発し、労働局に申告した後直接雇用されたが雇い止めされた。会社に報復的意図があったと認める』と述べた。今回の判決は雇用責任を認めない不当判決だ。しかし雇い止めという不利益な扱いをしたことを違法と認めた矛盾した判決だ。告発企業の責任を認めた点を次の職場復帰につなげたい」。
判決を受けて、吉岡さんは「非常識な判断を下した判決だった。後に続いて裁判を闘っている人たちのモチベーション(やる気)が下がらないか心配だ。この闘いは絶対に負けられない。不法行為は認めている。今後も闘い抜く」と強い決意を語った。この後、パナソニック東京本社への抗議行動を引き続き行った。(M)
共同行動、連合が厚労省前行動
公益委員の後退的案許すな派遣法抜本改正へ攻勢を
大詰めを迎えた
労政審の審議
十二月十八日午前十一時から、派遣法改正諮問を審議する労政審労働力需給制度部会の五回目の審議が厚労省で行われた。この日は、年内答申を目標とした部会報告に向け、公益委員骨子案が提出された。十二月中には、さらにあと三回の審議日程が設定され、審議は大詰めを迎えた。
前記骨子案は基本項目だけは諮問に沿っているとは言え、内容的には三党合意から大きく後退したもの。審議会における使用者委員、公益委員のひどい姿勢は本紙でも伝えてきた。それだけに、同骨子案の内容は半ば予想されていた。抜本改正に向け、一段の闘争強化がいよいよ決定的な意味をもつことになった。
この状況を予測し準備を重ねてきた「労働者派遣法の抜本改正をめざす共同行動」(以下共同行動)は山場のこの日、午前十時から労政審終了までの厚労省前集会を呼びかけていた。連合もこの日は初めて厚労省前集会を呼びかけた。厚労省前の歩道は、両者の呼びかけに応えかけつけた組合員、市民であふれかえった。共同行動の先の時間設定は、連合との時間調整を経たもの。連合集会は午前十時四十五分開始。その間共同行動集会は一時中断だが、事実上は、連続した合同集会だ。
自信みなぎる
発言がつづく
共同行動集会は、多くの結集を前に抜本改正の意気込みそのまま、開会予定時刻を待たず十分も前に始まった。関根秀一郎派遣ユニオン書記長を皮切りに、藤崎良三全労協議長、井上久全労連事務局次長、「働く女性の全国センター」の伊藤みどりさんなどが次々と挨拶。公益委員の後退骨子案、中でも、派遣先責任強化のほぼ完全な削り落としに強い憤りが向けられた。雇用破壊の元凶である大資本に責任を一切問わないことを意味する案であり、誰もが不安と怒りをもつ現下の深刻な雇用危機に完全に頬被りするに等しい。このような案など認められるわけがない。逆行を許さず闘いの力で政治を強制し派遣法抜本改正へ、闘いはこれから、怒りとともに、労働者の生の声を背にした自信がみなぎる発言が続いた。
審議会の傍聴を続けてきた伊藤さんは、抜本改正への思いを込めた替え歌を仲間と共演で披露すると共に、派遣労働を女が望んでいる、などと事実を歪める使用者、公益委員を糾弾、派遣労働がもつ女性差別の側面に注意を促し、抜本改正の必要を訴えた。同日の最高裁判決を控えた松下PDP訴訟原告の吉岡力さんもかけつけ、パナソニックを相手に全国で闘う仲間のためにも負けるわけにはいかない、判決いかんに関わらず闘いの力で職場に戻る、と決意を語った。
現場の力を基礎
に政治を変える
大型宣伝カーを横付けした連合集会では、南雲弘行事務局長やUIゼンセン同盟などの組合代表と共に、小山、長谷川の労政審労働者委員も発言。それぞれが労働者のための働くルール確立を訴えた。両委員は、規制緩和を元に戻す、規制強化のために最後まで闘うと決意表明した。ただ長谷川委員は、製造業派遣の原則禁止、登録型派遣の原則禁止、みなし雇用の三点を必ず実現する課題として絞る必要を強調、年内答申との兼ね合いで一定の妥協を示唆した。これには注視が必要だと思われる。歩道には連合内の代表的な労働組合の旗が並び、集会自体にはそれなりの結集と集中が見られた。今回の派遣法改正に関しては、連合の態勢も一年前とは相当変化していることは確かなようだ。
骨子案は、とりあえず製造業派遣の原則禁止、登録型派遣の原則禁止、日雇い派遣の原則禁止、直接雇用のみなし規定、法の名称・目的への「派遣労働者保護」明記などで、形は一応諮問に応えている。昨年までの規制緩和一辺倒の流れに一定のくさびは確かに打ち込まれた。この間の闘いが力を及ぼしていることは明らかだ。
しかしくさびはまだ相当に浅い。多くの抜け穴がある。そして前述の派遣先責任の問題、廃案となった自・公政権提出昨年改正案の追加・変更という形式に潜まされた毒や逆行への狙い。
ぎりぎりした綱引きがこれからも続く。まさに闘いはこれからが本番だ。ここ二年をかけて支配勢力を押し込んだ力を一段と強化しなければならない。この秋の諸行動はそれが不可能でないことを示した。それらをてこに抜本改正実現に迫るため、共同行動はさらに十二月中、厚労省前の連続した行動を呼びかけると共に、反貧困の取り組みや派遣切りに対する現場での闘いをさらに強め、通常国会をにらんだ政治を強制できる力の結集をめざす。呼びかけに応え、労働者の共同の力で抜本改正をつかみ取るまでさらに全力を挙げよう。 (神谷)
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