八月三十日、前日に十三基もの原発の炉心シュラウドやジェットポンプなどの重要機器で発生していた事故を十年にわたって隠し続けていたことが発覚した東京電力本社に対して、緊急抗議行動が行なわれた。
午後四時、東京電力本社前にストップ・ザ・もんじゅ東京、原子力資料情報室、原水禁、ふぇみん婦人民主クラブ、東電とともに脱原発をめざす会などの二十数人が横断幕を広げ、抗議行動を開始した。
経済産業省・原子力安全・保安院の発表によれば、これまでに二十九件もの事故隠しの不正が発覚したのは、福島第一原発の1・2・3・4・5・6号炉、福島第二原発の1・2・3・4号炉と柏崎刈羽原発の1・2・5号炉の十三基で、しかもそのうち八基の原発(福島第一4・6号炉、福島第二2・3・4号炉、柏崎刈羽1・2・5号炉)では、修理さえ行なわずにいまも運転を続けているのだ。
しかも原子力安全・保安院は、東電が点検記録を改ざんして事故隠しを行なっていることを、内部告発で二年前に知りながら、それをこれまで隠し続け、しかもシュラウドに生じたひび割れを放置したまま運転を続けていることに対しても「いますぐ停止する必要はない」としている。このような保安院の態度こそ、東電による事故隠しと点検記録の改ざんという犯罪行為を容認してきたのだ。
「重要機器に生じているひび割れなどは、昨年の浜岡原発の緊急炉心冷却装置(ECCS)配管爆発破断事故のような深刻な事故にいつ発展してもおかしくない。大事故が常に小さな事故の積み重ねの上に発生することは常識だ」。
「今回の事故隠しも、原発とは周辺の住民や自治体に対してウソを言い続け、危険にさらし続けなければ、運転を続けることさえできないことを自ら暴露するものだ。修理もしないまま運転を続けている八基、事故隠しが発覚した十三基を含むすべての原発を直ちに止めて総点検すべきだ」。
「東電には危険な原発を運転する資格はない。さらに危険なプルサーマルはもちろん即時断念すべきだ」。
「柏崎などでカネに飽かせて続けてきた根拠のない『原発は安全です』『プルサーマルは安全です』という無責任な宣伝の責任をとれ」。
「内部告発の事実を知りながら二年間も隠してきた保安院も同罪だ。プルサーマル計画と六ケ所村のMOX工場建設計画を白紙撤回し、プルトニウム政策・核燃料サイクル政策を撤回しろ」。
怒りの発言が続く。参加した団体が持ち寄った抗議文がそれぞれ読み上げられ、門前に出てきた東電社員に手渡された。「今回の事件をどう考えるのか」という問いかけに、「真相究明と皆様の信頼回復のために精一杯努力したいと思います」と消え入るような答えが帰ってくる。
十三基の原発をすべて止めさせ、プルサーマルを完全断念に追い込み、脱原発への大きな一歩を踏み出すために、東電と保安院を徹底的に追及し続けよう。(I)
安全無視・責任の東電と保安院に地元で広がる怒り
脱原発運動が抗議行動を開始
【福島】東京電力の福島第1・第2両原発の原子炉十基すべてと新潟県の刈羽原発で一九八〇年代後半から九〇年代にかけ、自主点検により見つかったひび割れなどの検査結果や修理記録二十九件に虚偽記載があったことが、経済産業省原子力安全・保安院の調査で明らかになった。二十九件の中には、炉心隔壁(シュラウド)のひび割れや炉心に冷却水を供給するジェットポンプの固定用部品のすき間、摩耗など重大事故に発展しかねない部位が含まれており、その多くは現在に至るまで、何の対応もなされていない。
この点についての同院の「原子炉の安全性に直ちに重大な影響を与える可能性はない」とのコメントは実にふざけている。ここには、ことの重大性を低く見せかけよう「大したことではないんですよ」ということですませたい、との政治的意図が見え隠れている。
福島県がこの情報を入手したのは、同院の発表の一時間前に県庁に届いた一枚のファックスだけであり、発表当日はこれ以外の説明は一切なかったという。
福島県の佐藤栄佐久知事は、高速増殖炉「もんじゅ」のナトリウム漏れ事故を受け、九六年に新潟・福井の知事と連名で、いわゆる「三県知事提言」を国に提出して以来、国の原発政策への批判を強めてきていた。
佐藤知事は、プルサーマル計画への対応を審議するため、県エネルギー政策検討会を立ち上げ、原発推進・反対の研究者を招き、二年近く審議を行ってきた。この九月には中間とりまとめを行う予定であったが、その内容は相当踏み込んだものとなるのではとの観測が流れている中での、今回の検査記録隠ぺいの発覚であった。
同院の発表の翌日、報道陣の質問に答えて、知事は「わたしが(経済産業)大臣だったら、情報の信ぴょう性が高いと発表し、危険性があるなら原子炉を止めなければならない。そこに住んでいる人の気持ちを考えたことがあるのか」と、国の姿勢への怒りをあらわにした。
同院の発表当日、送られてきたファックスを見て、佐藤知事は、考えられない不正行為に怒りからしばし絶句したという。これまで原発推進の旗を振ってきた地元首長からも抗議の声が続々とあがっている。
「トラブル隠しが事実であれば、大変遺憾なことで、原発所在地として抗議を含めて厳しくただしていきたい」(第1原発が立地する双葉町の岩本忠夫町長)。
今回の事件の発端は二年前に同院へ寄せられた内部告発であった。しかし保安院は二年間、ほとんどまじめに調査を行ったわけでもなく、「内部告発後、しばらくの間は、問い合わせがあったが、ほったらかしの時期もあった」(東電)とのことだ。
あわよくば事件を隠ぺいし、闇から闇に葬りたいとの姿勢が見え見えだ。この点で同院の責任は極めて重い。不利な情報は隠ぺいしようという体質が相当長期にわたって続いてきたのではないか。隠ぺいのケースは今回発覚したものにとどまらず、他にもあるのではないかと疑わざるを得ない。東電は三十一日、南直哉社長・荒木浩会長が事件の責任をとって退陣することを発表した。しかし、ことは東電トップの首のすげかえだけで収拾できるほど小さくはない。
雪印・日本ハムと続いてきた企業犯罪の脈絡の中に今回の事件はあり、労働者・市民の原発政策全体への批判はかつてなく高まっていくだろう。県内の脱原発グループは、今回の隠ぺい事件への抗議の闘いを開始している。 (赤井岳夫)(9月1日) |