かけはし重要記事

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                           かけはし2002.9.9号より

長野知事選の結果と左派の課題

小泉改革と戦争国家体制形成に対決し「自治と民主主義」に根ざす闘いを全国で作り出そう!

 田中康夫前知事・八二万二八九七票、長谷川敬子候補・四〇万六五五九票。
 全国的に注目されていた九月一日投票の長野県知事選挙は、政党としては共産党のみが「勝手連」的に支援していた田中康夫前知事が、自民党、公明党、民主党、社民党が構成する県議会の各会派、長野県下の自治体首長の多く、県経営者団体や連合が支援する長谷川敬子候補をダブルスコア以上の大差で退けて圧勝した。
 前回知事選の六九・五七%を四%強上回る七三・七八%という高投票率だった今回の知事選での田中候補の得票率は六四%を超え、二〇〇〇年の初当選時の四九%から大きく増加した。長野県民は、県議会に象徴される利益誘導・配分政治を拒否し、田中康夫前知事の「草の根民主主義」的姿勢に期待を託したのである。
 七月五日の長野県議会による田中知事不信任案の可決は、「脱ダム宣言」に示される田中前知事の「新しい手法」に対する、旧来の開発・利権政治に固執する立場からの抵抗を意味していた。しかし、県政会など田中知事を不信任した長野県議会の各会派は「脱ダム」が県民の大多数の支持を得ていることに動揺し、自らが負うべき五輪誘致に代表される開発投資の破綻が作りだした一兆六千億円を超える赤字財政の責任を田中前知事に押しつけ、「このままでは長野県は倒産する」と騒ぎたてた。しかしさすがにそれでは説得力に欠けると思い至った県議会多数派は、田中康夫の「独裁的・独善的」県政運営を批判し、「対話と協調」を前面に押し出すにいたった。
 こうして県知事選に向けて、共産党を除く県議会各会派は、長谷川敬子弁護士を引っ張りだして「無党派・市民派」の体裁をとりつくろい、「脱ダムの理念は正しいが」と心にもないことを語りつつ、もっぱら「田中の政治手法」に焦点を据えた選挙キャンペーンを展開するようになったのである。しかし政策的争点を意識的にあいまいにした保守派の選挙戦術にもかかわらず、長野県民の大多数にとって真の争点は明らかだった。
 須坂市の長谷川陣営の集会で、自民党の小坂憲次衆院議員は「脱ダムで国の補助金を返せば、どうせその分は他の知事さんが使ってしまう。長野県が別のことに使っていいよということにはならない。国に陳情して、他の県との説明合戦でせっかく取ったお金なのに」と演説した、という。今回の知事選はまさに自らの推す知事と組んで長野県政を牛耳り、補助金配分や「公共投資」にまつわる利権に寄生して甘い汁を吸ってきた旧来の地域ボス政治の延命を認めるのか否か、という対立だったのであり、この点で県議会の圧倒的多数派は重大な敗北を喫したのである。
 この選挙結果に対してマスコミ各紙の主張はおおむね田中氏に「県議会との歩み寄り」「とことん対話」を求めるといったものである。毎日新聞は「理念より対話の重視」が県民の声だと訴え、県議会との協調を田中知事に強く要請している。それは「利益誘導政治」との現実主義的妥協へ第二期田中県政を引っ張ろうとするシグナルである。
 朝日新聞9月2日付1面の「刷新の民意、長野は示した」と題する早野透の解説は、「長野の選挙結果はあきらかに時代精神の現れである」と述べた上で「小泉純一郎首相と抵抗勢力の確執は、田中氏と県議会のそれと相似形である。……『変わり者』リーダーと普通の人々が、メルマガや車座集会で直接つながって、政官財労の旧体制の怪しさを挟撃している構図である」と語る。田中知事の勝利にかこつけて、それを「小泉改革」の支持へと意識的に結びつけていこうとするきわめて悪質な方法だと言わなければならない。
 二年前の田中知事の初当選にあたって、われわれは次のように述べた。
 「長野県知事となった田中康夫氏は、『官僚主導行政との対決』という姿勢や同じ作家出身という点で石原東京都知事と並べて評価されることが多い。しかし思想的背景において、田中氏は意識的な右翼国家主義者である石原都知事とは大いに異なるし、彼と同様の政治手法を取ることはないだろう。もちろん客観的に見るならば、田中康夫新知事の置かれている立場はきわめて困難であるし、彼自身、時に自称することのあるような『左翼』としてこうした困難に立ち向かう構えを持ち合わせているとは言えない」。
 「左翼の側はこうした厳しい条件の上で独自の立場から、田中氏の勝利による保守・官僚県政の打破への最初の突破口を、地域における住民自身の運動に根ざした自治と民主主義の方向に飛躍させることを目指さなければならない。それは硬直した官僚県政に対する住民の批判を、西武資本に代表される環境破壊の乱開発や財政危機を口実とした福祉切り捨てとの闘いにまで押し広げていくことから開始されるだろう」(本紙00年11月6日号「長野県知事選・衆院東京21区補選の結果と左派の課題」)。
 県議会の包囲を打ち破った田中再選によって、「自治と民主主義」をめざす長野県民の挑戦は第二段階に入った。ことは長野県だけの問題ではない。田中知事の勝利を、マスコミの言う「妥協と協調」や「小泉改革支持」に結びつけようとする圧力と闘い、小泉政権の新自由主義的改革や「戦争国家体制づくり」を拒否する労働者・市民の「自治と民主主義」に根ざした闘いを全国で作りだすことが必要なのである。 (9月2日)(純)

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