かけはし重要記事

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ブラジル、勝利の可能性のなかで進む右傾化      かけはし2002.9.30号より

党の歴史上最も厳しいテストに直面するPT(労働者党)

ダニエル・ベンサイド


 ブラジル大統領選(十月六日投票)を前に、勝利の可能性が高いPT(労働者党)ルラ指導部の右傾化が強まっている。これに対して第四インターナショナル派を中心とする左派は厳しく批判しつつ選挙戦を闘いぬいている。



 ブラジルの労働者党(PT)はこの二十年間、階級的独立の政治を発展させつつ、社会的諸闘争や地方政府――とりわけ「参加民主主義」を通じて――の中で多くの経験を蓄積してきた。こうした創設の諸原則は、大統領選挙への前哨戦の中で無視されつつある。
 PTは、ブラジルにおける一九七九―八〇年の大工業ストライキの波の中から誕生した。それは一九七〇年代の大規模な工業化の諸結果と結びついていた。この工業化は、世界で最も集中したものの一つである工業労働者階級(とりわけサンパウロの郊外で)と、独裁体制(とりわけ、ムッソリーニ時代のイタリアに示唆を受けた労働法規を通じて労働組合運動を支配しようとする独裁体制の目論見)に対する民主主義的抵抗を作りだした。PTの創設は、教会、軍部、ポピュリズムに強く支配されたこの国の政治的伝統との文化的・歴史的決別を画するものであった。
 一九八〇年代初めにはじめて選挙に挑戦した時、PTは全国平均で三%を獲得したにすぎなかったが、サンパウロ州では一〇%というピークを確保した。それはこの地域における女性運動の特別の強さと、「ルラ」として知られているその指導者、ルイス・イグナシオ・ダ・シルヴァの影響力と結びついたものだった。しかしそれは、長きにわたって軍部と教会のみが真の集中した勢力であった大陸ほどの広さのあるこの国における、全国的規模での階級的独立の経験の出発点だった。
 都市と農村の大衆運動の急激な成長から生まれたPTは、一九八〇年代を通じて自己を確立して成長し、一九八九年の大統領選挙で勝利しようというところまでに至った。この前進は、民衆闘争への精力的な関与に基礎を置いたものだった。
 綱領の規定や明確な戦略的構想を持たないPT創設時の政綱は、近年の闘争の経験を反映するものだった。それは強力な階級的感情(「労働者は労働者に投票を!」)と、国益の名の下に資本と労働を結びつけるあらゆるポピュリスト的妥協に反対する階級の政治的独立への強固な執着を表現していた。
 他方、この大衆的で複数主義的な政党は、国際的経験(キューバ革命の影響で)と、PTの創設に参加したさまざまなラディカル左翼潮流(毛沢東主義者、トロツキスト、カストロ主義者)の経験が知らせた社会主義の概念についての開かれた討論を特徴としていた。今にいたるまで諸潮流の存在、党大会での対立的な動議や決議の提出、指導機関における少数派の代表権が認められ、緊張や対立という代償にもかかわらず、党の統一の維持、労働組合指導者の歴史的中核が、党が細分化するのを避ける支えとなってきた。
 PTはこの二十年間の存在の中で、社会的闘争、制度的諸機関や自治体の指導部といった経験を蓄積してきた。PTは最大の都市(サンパウロ)の選挙で二度勝利し、リオグランデドスル州の州都ポルトアレグレを四期にわたって統治してきた。社会的不平等が激しいこの国で、PTは情実や腐敗といった現象から免れることはなかった(そのためサンパウロ市政を第一期目の後に失うことになった)。したがって、改良主義潮流が与えるイメージとは異なり、党が最も左翼的でラディカルであり、したがってその正統性が最も強固なのはポルトアレグレであるという事実に言及することは興味深いものがある。
 「参加型予算」の経験は、直接民主主義の形態や、法的諸制度と市民の間の権力の一種の二重性を発展させることを求めている。また、最初の二回の世界社会フォーラム(二〇〇一年と二〇〇二年)を組織する中で、ポルトアレグレは資本主義的グローバリゼーションに対する抵抗の首都となろうとしている。
 PTは今秋の選挙で、おそらくその歴史上最も厳しいテストに近づいている。政治的エリートの腐食、ラテンアメリカを揺り動かす危機、メルコスル(1)とウルグアイの関係の再組織化、米州自由貿易地帯(FTAA)の構想は、激動の時期を開いている。選挙の数カ月前の世論調査で、ルラは約四〇%の支持で一位となっており、右派の候補者は金銭スキャンダルに巻き込まれている。勝利の可能性に幻惑されたPT指導部は、すでに自由党との連合を通じてブルジョアジーを安心させ、債務問題でのIMFへの再保証や、国際社会民主主義との連携(2)を強化して、経営者に保障を与えている。党の創設原則とは逆のこのコースが、すでに見られるように深刻な不満と内部的分極化をもたらすことは間違いない。

注1 アルゼンチン、ブラジル、パラグアイの関税連合
注2 PTは繊維産業の大資本家で、自由党の指導者であるジョゼ・アレンカルを副大統領候補に選んだ。実際のところこれは、アルゼンチンに発した社会経済的危機がブラジルやウルグアイにまで広がる恐れがある時、支配階級を静めるのには効果がない。しかしそれは経営者や地主からの攻撃に直面している大衆を武装解除しかねないのである。
(「インターナショナルビューポイント」02年9月号)



「敵を自分の塹壕に入れるようなもの」

 右派との連合を批判するPT左派

                           エルネスト・ヘレラ

 ブラジルの労働者党(PT)が、保守派で福音派の自由党(PL)やブラジル民主運動党(PMDB)の一部と連合したことは、深刻な内部論争と党活動家からの強力な抵抗をもたらした。
 二〇〇二年六月二十三日、PL(自由党)大会代議員の圧倒的多数は、PTとの共同候補提案を支持した。十月に行われる全国選挙では、PLの上院議員で繊維企業の経営者であるジョゼ・アレンカルが副大統領候補に、PTのジョゼ・イグナシオ・ルラ・ダ・シルヴァが大統領候補になる。
 ブラジルの経済危機、「金融市場」によって誘発されたサボタージュ、外国投資の欠落の中で、ルラとPT指導部多数派は、大統領選挙候補者名簿におけるアレンカルの存在が、十月にPT政権ができる可能性に対して、大企業、アメリカ、国際信用供与組織がいっしょになって反対するのをやわらげることになるよう期待している。
 PT左派内部では、この選挙戦略に対する批判が高まっている。この新しい戦略――それは、党の中間右派からもたらされたものであるが――は、新自由主義政策との「決別」という、党の存在を現実のものにしたPTの設立綱領に疑問を投げかけるものである。新指導部の政策への批判は、ブラジルの多くの州でPLがPTの最大の敵と同盟し、幾つかの州指導部がPLを「望まれざる同盟者」と見なしているという事実を念頭に置いたものである。
 さらにこの批判は、アレンカルとの同盟が、米州自由貿易協定(アレンカルはこの協定を支持してきた)に対するPTの拒否、農業改革(アレンカルは「土地なき農民の運動」〔MST〕の土地占拠闘争に反対してきた)やブラジルの対外債務支払いに関する党の政策といったPTの諸政策の重要な部分に否定的な綱領的結果をもたらすだろう。
 四月六日、PTのリオグランデドスル州会議は、PLやPMDBの一部との連合という指導部多数派の立場に絶対的に反対することとなった。会議の声明は述べている。
 「経済危機、社会的貧困の深刻化、保守陣営の分裂によって特徴づけられる全国情勢は、PTが大衆の広範な運動を指導し、それを通じて連邦政府ならびに幾つかの州政府の支配権を獲得しうる可能性を提起している。しかし、こうした可能性は、他の諸政党との選挙政策上の相違を、大動員の中で政策の対照性に関する討論へと転化する戦術を条件とするものである。それは、国論を分極化させ、何百万人もの労働者、青年、失業者、そしてこうした社会的闘争に参加するすべての人びとを動かすことになるだろう。われわれの連合政策と選挙戦術は、こうした目標に合致したものでなければならい」。
 要するにこの宣言は、「政治的ヘゲモニーについてのわれわれの討論の妥協の産物である前回の全国大会決議に矛盾する、交渉の中で取られた方針」に対する全国のPTの下部党員による意思表示であり、公然たる拒否なのである。この宣言は以下の要求でしめくくられている。
 「諸階級を連合させる政策反対。われわれの綱領的統一を防衛せよ。PLやPMDBとの連合反対。全国政府・州政府の綱領をめぐる党支持者の間での広範な討論を」。
 ラウル・ポント(前ポルトアレグレ市長で、PT内社会主義的民主主義潮流〔DS、第四インターナショナル派〕のメンバー)は、こうした連合は「時間の無駄」と見なしている(次号掲載予定記事参照)。州議員で左翼社会主義運動潮流の活動家であるルクタナ・ジェネロは、「PLやPMDB異論派をPTに入れることは、敵を自分の塹壕の中に入れるようなものだ」という意見である。州議員で「明瞭な左翼潮流」メンバーであるペドロ・ロケ・グラッジオチンは、「われわれの陣営に属さない人びとを喜ばせることで、全国レベルでわれわれは後退する。われわれの政治的構想の統一こそが根本的である」と述べている。
 この新路線に対する党内での論議と抵抗は、PLやPMDBの一部との選挙連合に限られるものではない。それはまた、現綱領についての討論、そしてPTが政権を構成することになった場合、対外債務の処理などでどのような政策をとるのかという問題を提起する。この状況の中で、PT左派の指導者の多くは、ルラと彼の潮流が提起した政策への批判を表明している。(「インターナショナルビューポイント」02年9月号)


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