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GE、東電、規制当局一体の原子力スキャンダルだ   かけはし2002.9.16号より

「東電はすべての原発を止めよ」

9・4 東電本社内で市民運動が8時間30分の交渉


 九月四日、「東京電力と共に脱原発をめざす会」の要請で東京電力の説明会が開催された。また、午後一時半開始の説明会を前に、経済産業省および東電本社への抗議行動も行われた。
 今回の説明会は、不正発覚とは全く別個に開催が計画されていた。「めざす会」は、八九年一月の福島第二原発三号炉再循環ポンプ破損事故をきっかけとして、「はいろプロ」や「ふくろうの会(福島老朽原発を考える会)」、株主運動などと東京電力との`話し合いaを毎月のペースで行ってきた。近年の参加者は十人前後であったが、今回は話し合い会場として勝手知った本社ビル内の大会議室を要請したが、結果としては従来使用の別館会議室と隣接会議室の間のパーテーションを取り払っての開催となった。当初の参加者は約六十人。説明開始の前に、「刈羽村女性の会」「東電株主運動」「めざす会」「たんぽぽ舎」の申入書と「プルトニウムアクション・ヒロシマ」からのメッセージが読み上げられた。一度だけの休憩をはさみ、夜十時まで続けられた。
 東電側の説明は、本社の原子力広報部門である「原子力センター」が行った。センターの渡辺所長は「GEからの指摘はかなりの部分が事実であると社長が判断、社長はじめ五名の辞任は失った信頼をゼロからスタートするという姿勢から」「安全性の評価は国からも保たれているが、順次止めて調査している」「プルサーマルについては自ら信頼を損ねたので断念した」などと概括的な説明を行った。
 この説明に対し市民サイドからは、「渡辺さんはかかわったと言われている五十から百人の中に入っていないのか」「いつこの不正を知ったのか」「地元でトラブルはないとして大量に配布したウソビラの責任はどうなんだ」「五人の退職金は下りるのか」「ゼロからのスタートであれば東電の十七基の原発をすべて止めろ」「安全性はいつ評価したのか」などの質問が相次いだ。
 東電側の回答は、「私自身、記者会見当日の朝、記者発表をするというのではじめて聞いた」(渡辺)、「退職慰労金は株主総会で決める」「保安院への報告書は発表の前日の夜に届けた」などというものであった。
 その後のやりとりで明らかにされた時系列は以下のようになる。
 二〇〇〇年七月に蒸気乾燥器について、十二月にレンチの置き忘れについての内部告発が保安院にあり、東電に口頭で照会があったが「事実関係が認められなかった」。今年になり、三月のGEと東電の定例トップ会談の席で「他にもある」と伝えられ窓口を開設、二件以外にも二十数件の疑惑があることが判明し、勝又副社長を委員長とする「調査委員会」を設置、保安院とのやり取りをしながら、先日の発表となった。
 また、交渉のなかで以下のような東電社内「調査委員会」のメンバーがはじめて明らかにされた。正規委員は勝又副社長以下取締役四名と総務を統括する業務管理部長の五人、加えて技術オブザーバーとして榎本副社長など社内三人と外部から弁護士が一人、計九人の構成であり、総務部門の十人程度が実行部隊として実調査をしていること。
 本紙前号で指摘されていたように、榎本副社長は疑惑の渦中の人物であり、後に柏崎刈羽原発所長時代の関与を認めている。また、保安院の原発点検のあり方に関する専門委員会の特別委員も務めている。いまだどちらの委員を解任されたとも辞任したとも伝えられていないばかりか、不正の謝罪と称して、青森県知事と六ヶ所村長に直々、「プルサーマル計画と再処理については従来どおり」と説明に行く始末である。一方、「調査委員会」オブザーバー委員の弁護士は、もんじゅ裁判や核燃訴訟で国側の代理人を務める岩渕正則弁護士であった。
 今回の事件は単に雪印・日本ハムに続く「不祥事」ではない。GEという原発メーカーと電力会社、そして規制当局による原子力スキャンダルである。二十九件といわれる不正を、二件の内部告発と他の二十数件がGE本体から伝えられたことを分けて考えるとなおわかりやすい。
 GEはブッシュ政権になり、原子力政策の`推進a政策で息を吹き返した。また、原子力産業界にもグローバル化の波が押し寄せ、アメリカはヨーロッパの脱原発の流れに対して日本・韓国・台湾、あるいは中国などの東アジアでの原発推進で対抗しようとしている。原発技術のパテントの多くを米企業が保有しており、その機器の点検・補修についても国際基準化しようとしている。
 原発推進の朝日新聞は、GEは「機器を売り込もうと損傷の兆候を多数報告する傾向」にあり、東電側は「百億円ほどかかるシュラウド交換時期が早まったり、補修に時間がかかったりする恐れがあり、兆候を無視したらしい」と報じている。
 前述した榎本副社長が特別委員を務める保安院の専門委員会では、「アメリカでは点検をこうしている」という形で、手抜き点検を広げる論議に多くの時間を割いてきた。当初、この委員会は再来年四月に「手抜き点検合法化」のための法改悪を計画していたが、今回の事件をきっかけにして「小さな事故で騒ぎすぎるのが問題だ」とばかり、次期国会で法改悪を強行する方針を決めた。
 経済省は急拠、そのための特別委員会を九月十二日にも発足させることにしている。また自民党は九月十日の政調審議会で、東電の事故隠しに関連し小さな損傷の場合に運転継続を認める「維持基準」を導入するための電気事業法改悪案を臨時国会へ提出することを了承した。
 説明会で市民側は訴えた。「点検は下請け労働者に被ばくさせず、退任する南社長らが行え」「刈羽住民はいつ原発に殺されても不思議ではない、との思いで日常を送っていることを知れ」と。また、市民側の要求内容にある「総点検」に対し、「被ばく労働を前提とする要求は間違い、今回止めたらそのまま廃炉に」という意見が印象深い。
 福島・新潟には「プルサーマル断念」と伝えつつ、青森では「従来と変わらない」という地元を愚ろうする悪らつな方法を許してはならない。
 東京電力は十七基すべての原発を停止し、すべてのデータを公表せよ。国・保安院は東電以外すべての原発を調べ、データ改ざんの有無を調査せよ。
 国・保安院は「手抜き点検」を制度化しようとする目論みを断念せよ。関連する委員会を即座に解散せよ。これら委員会などにかかわった者が一人も加わらない第三者機関をたちあげよ。(9月10日 K・S)

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