かけはし重要記事

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韓国は、いま                    かけはし2002.9.16号より

進歩陣営単一候補選出は可能か

民労党クォン代表選出めぐり強まる確執

 「1人ボス体制中心の既存の政党体制をあれほど非難していた民労党が、まさに大選(大統領選挙)の過程で示している昨今の諸状況は既存の政党と、さして変わらない。なぜ政策中心になるべきだと言いながら、あれほどまでにクォン・ヨンギル氏に執着するのか」(イ・ヤンジェ)。
 「汎進歩陣営と言う、多くの性格の異なる諸集団と結合しようとする民労党が少なからず心配だ。民労党は独自候補を出して、一般市民を相手に広報すべきだ」(ハン・ジェヨン)。

提起される「クォン・ヨンギル限界論」

 クォン・ヨンギル代表が9月8日に開かれる民主労働党の大選候補選出大会に出馬した後、民労党のホームページには、このような相反する批判が相次いで登場している。民労党が独自候補選出大会を強行することに対する怒り、候補選出後、再び汎進歩陣営の単一候補の競選を行うというクォン代表の方針に対する賛否の論争など、実に激しくとびかっている。怒りと批判の頂点はクォン・ヨンギル代表だ。進歩陣営が来る12月の大選をどう取り組むのか苦悩している、その中心部に彼が立っているからだ。
 97年の大選直前に発足した国民勝利21の成果を継承した民労党は現在、進歩陣営内で最大の持ち分を確保している。全国94カ所の地区党、月々に党費を払っている党費だけでも3万人。60万の組合員を擁する民主労総は組織的に支援に乗り出し、一部の貧民団体も加勢している。進歩政党時機早尚論を力説した全国連合の下部組織なども最近、合流した。
 悩みは急成長した民労党大選候補の競争力だ。民労党や進歩陣営の一部で、いわゆる「クォン・ヨンギル限界論」が提起され続けてきた。97年に国民勝利21の候補として大選に出馬したものの得票力はパッとせず、さまざまな懸案についても印象的な姿を示せなかった、というのだ。さし迫った12月の大選は、このような苦悩を一層、深めた。クォン代表が、理念や路線において微妙な違いのある進歩陣営を一つにまとめ、有権者の幅広い支持を確保できる唯一の対案なのか、との疑問にまで広がったのだ。
 民労党内ではすでに昨年夏から米国式の予備競選制など、いくつかの補完策が提案された。進歩陣営はもちろん、国民の多数が参加する自由競選を通じて指導力やカリスマ性のある候補を押し立てよう、というものだった。民主党が興行した国民競選制は、それよりも早く、すでに論議されていたわけだ。だが民労党のアイデンティティーがあいまいになることを恐れる反論が提起され、結論のないまま漂流した。
 だが大選が近づくにつれ、論争は再び火がつき、汎進歩陣営単一候補選出論が代案として提示された。民労党が労働者、農民、庶民の政党を掲げているだけに、韓国労総、全国農民会など、理念や路線が少しずつ異なる進歩陣営にも門戸を開くべきだというものだ。社会党、緑色平和党など他の政党が参同し、参与連帯や経実連など市民団体の支持まで確保すれば、民労党候補の競争力は一層強化されると判断した。

汎推競選前の民労党競選は正しいか

 実は結んだようだった。7月16日、民労党、民主労総、韓国労総、全国連合、全国農民会、教授労組など14団体の代表者らが原則に合意したのだ。8月末までに「2002年大選勝利と進歩陣営の単一候補選出のための汎国民推進機構」(汎推)を作った後、競選を通じて単一候補を選出することで事実上、意見をまとめた。まさにこの時、クォン代表を中心とした民労党指導部が、民労党の独自候補競選を経た後、汎進歩陣営の呼び競選に参加する方向へと方向を変えた。
 クォン代表は「ハンギョレ21」とのインタビューで「創党以後、今日まで毎月党費を払い、困難なときに党を守ってきた党員たちが『汎推の競選で投票でもしようというのか』と反発し、党員の大切な声を盛りこむために折衝した」と語った。進歩政党の生命であるアイデンティティー論争へと広がるのを抑止しつつ、進歩陣営の統合という大義名分も生かす妙策だというのだ。
 はたして、それは妙策か。進歩陣営の一部では「民労党覇権主義」、「クォン・ヨンギル擁立論」との批判が起きている。党指導部の単独競選の動きが看知された7月20日、オ・ジョンニョル全国連合議長らは、クォン・ヨンギル推戴式を中止せよとして抗議声明まで出した。極めて強力な民労党が候補を確定した後に行う汎進歩陣営の競選は、形ばかりの要式行為だというのだ。だが民労党は、ためらわなかった。8月26日から党員総投票形式の内部競選を開始し、9月8日に大選候補を確定することにした。
 後遺症も少なくない。全国連合と全国農民会指導部は8月9日、候補競選への参加を宣言しようとしていた計画を白紙化した。汎推の実務者会議も事実上、中断した。民労党ソウル地域のある地区党委員長は「進歩陣営の各グループが候補を出し、多様な主張を展開しつつ、数十万人が参加する競選を通じて進歩陣営の大選候補の競争力を高める絶好の機会を事実上、放棄した。あまりにも急ぐものだから民労党内部の競選さえ不可能になっていった」と批判した。同委員長は「マスコミが保守政党の候補にのみ関心を集中すると、焦りを感じた党指導部が民労党候補の早期具体化へと論議をかり立てていった」との主張まで付け加えた。
 実際、民労党は党内競選の趣旨を生かせなかった。党内では6・13地方選挙で高い得票力を示したキム・ソクチュン釜山市長候補や女性で党大会副議長を務めたシム・サンジョン氏が競選にうって出るべきだとの主張が提起された。けれども彼らはクォン代表との対決を放棄した。事実上、クォン代表の候補推戴式として決定づけられるとともに、党員らの関心も冷めた。クォン代表自ら「党員らの間に『みえみえではないか』との思いが広がっている。投票率を高めることが何よりの急務なのだが……。率直に言って容易ではない」と現実を認めた。

単独競選をしなかったなら……

 クォン代表をはじめとする民労党指導部は状況を楽観視している。9月8日に民労党大選候補になった後、汎進歩陣営の競選のために全力を傾ければ、進歩陣営の代表性を確保できる、と信じている。特にオ・ジョンニョル全国連合議長らが予備競選に参加するだろうと確信している。民労党内の左派傾向の強い組織である平等連帯からも独自候補が出るものと期待している。結局、汎進歩陣営の競選の場面が展開され、進歩陣営の力は1つに結集するというのだ。
 これらの人々は目下、悩んでいる最中だ。チュン・ユングワン平等連帯代表(民労党・蘆原乙地区党委員長)は「党指導部は単独競選に固執せず、門戸を開くならば、さまざまな進歩陣営の候補が真剣勝負を繰り広げる祝祭が展開されるだろう。けれども民労党がクォン代表を大選候補に確定した状況において、競選はどんな実益があるのか疑問だ。悩みばかりが募り、ハッキリした結論は出せずにいる」と伝えた。
 クォン・ヨンギル代表の側も多様な状況を想定している。9月末に独自新党の創党を目標にして駆けている韓国労総と合党し、韓国労総の大選候補とクォン代表間の競選も構想している。民労党のある中心的メンバーは「韓国労総は、パク・インサン前委員長を大選候補として押し出す方針を推進している。現実化すれば、われわれと公開競選する問題も韓国労総と合意している」と明らかにした。
 だが韓国労総が創党に成功するのか、民労党といかなる関係を設定するのか、パク・インサン前委員長が現在の民主党全国区の議員職を投げうって競選に乗り出すのか、その障害物は1つや2つではない。クォン代表は「進歩陣営の競選が雲散霧消されるなら、共同選挙対策本部が構成できるように努力する」と語った。最悪の状況が訪れても大選に出馬し、最善を尽くす、という意味だ。だが、一度感情がこじれた進歩陣営内部にあって、キチンと力を集められるかは疑問だ。
 クォン代表は地方選挙で民労党が確認した8・1%の得票力と5%を超えた個人支持率を掲げて、ともかくも進歩陣営内部で大選候補の地位を、まず確保した。だが逆風もまた容易ならざるものがあり、彼の勝負の策は、彼に帰ってくるブーメランともなりかねない。(「ハンギョレ21」第424号、02年9月5日付、シン・スングン記者)




社会主義独自候補めざす社会党

 キム・ヨンギュ社会党代表は最近、あるマスコミ社とのインタビューで民主労働党を批判した。「民労党は『保守第3党』だ」。またキム代表は社会党は民労党クォン・ヨンギル代表と連帯する意思はない、と明確に語った。
 社会党の主張は簡明だ。民労党は進歩陣営に属しているけれども社会主義の陣営ではない、という理由だ。「反資本主義、反北朝鮮労働党」の旗じるしを掲げた社会党から見るとき、民労党はあまりにも保守的だというのだ。特に「民労党はキム・ジョンイル政権に対して、あまりにも友好的だ」と批判する。
 彼らは今年の大選において社会主義の旗を高く掲げることのできる独自候補を立てる方針だ。カン・インソン副代弁人は「進歩の概念があまりにも包括的で、民労党が提起している進歩陣営の単一候補論争は意味がない。われわれはすでに第12次中央党委員会において社会主義左派陣営の統合候補を出すことに決定した。現在、この趣旨に共感する人々とさまざまな形で接触している」と語った。
 まだ決定した候補はいない。ただ、オ・セチョル教授(延世大)、タン・ビョンホ前民主労総委員長、キム・ヨンギュ社会党代表などに圧縮した状態だ。社会党のある中心的メンバーは「かつてペク・キワン民衆候補に積極的に関与したオ・セチョル教授を、わが党の理念を伝える最も適切な人物と考え、現在オ教授と接触している」と明らかにした。また社会党は現在も拘束されているタン・ビョンホ前委員長に面会するなど、具体的な大選候補への第一歩を踏みだした。(「ハンギョレ21」第424号、02年9月5日付)

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