| 労働者派遣法 12・1 もうひとつの労政審 かけはし2009.12.14号 |
十二月労政審の
大衆的包囲へ
十二月一日午後、「もう一つの労政審」と銘打った、労働者派遣法抜本改正実現を期す院内集会が、衆議院議員会館で開催され、百二十人以上が詰めかけごった返した。主催は、「労働者派遣法の抜本改正をめざす共同行動」(以下共同行動)。
本紙でも繰り返し伝えているが、大資本を中心とする抜本改正抵抗派は、厚労省労政審を最後のよりどころに、何でもありとばかりの見苦しい抵抗に躍起となってきた。その中で労政審そのものは、十一月二十六日の労働力需給制度部会で、公益委員が論点整理案を提示、年内結論を確認した。提示案は三党合意に基づく諮問に正面から抵抗するものではない。しかし、登録型禁止や製造業派遣禁止にいくつもの例外を加えたりみなし雇用規定の骨抜きなど、いわば裏口からの抜け穴づくりを策す卑劣なもの。労働者委員はこのような案にもちろん反論したが、使用者委員は、例外での「逃げ」すら拒否、禁止そのものへの抵抗に固執した。かつての時代の余裕は姿を消し、焦りが透けて見える。政府が彼らの政府とは言えないものとなったことによって、抜け道の効用を確保する密室談合を通じた保障に確信がもてなくなっているようだ。
十二月労政審を、大詰めに向けたより厳しい闘いの場としなければならない。改正抵抗派の無責任で身勝手な姿を満天下に暴き出し、民衆の怒りで彼らを包囲し、民衆の要求からこそこそ逃げ回る退路を断たなければならない。十二月をそのような闘いの場とし、次期通常国会で必ず抜本改正実現を、当日の院内集会はこのような意気込みの下に設定された。
人を見くびるな
冒頭発言は民主党の工藤仁美衆院議員。直後に控える民主党議員団会議に遅れないための窮余の議事進行だった。短時間だったが彼女は、自身のユニオン活動経験に触れつつ、労働者保護確立につながる法実現への決意を表明した。
次いで棗一郎弁護士が共同行動を代表して今回の趣旨を提起。三年前からの経過を整理した上で現局面の意義を明らかにし、「労働者が築いてきた改正法案が実現一歩手前まで来た。労政審のとんでもない議論を吹き飛ばさなければならない。これからの闘いが重大」と檄を飛ばした。
内容がぎっしりと詰め込まれた今回は、議員発言は各党一人。
社民党の近藤正道参院議員は先ず、労政審のとんでもない審議をにらみつつ臨時国会でも多くの議院が質問に立ち、年内答申、次期国会提出を長妻厚労相に確認させていると紹介。そして、一つの後退も許さない、抜本改正の先に有期雇用規制、均等処遇確立へと進めたい、と発言した。
日本共産党の小池晃参院議員は、ワンストップサービスデイに向けたハローワーク新宿の告知チラシの中に、生活保護の申請は一切受け付けないなどとの記述が赤字で書込まれた事実の紹介から切り出し、労働者民衆が監視を怠らないことの重要性を先ず訴えた。その上で、雇用破壊に反省を示さない大企業に雇用責任を果たさせ、抜本改正の抜け穴づくりを許さない、と述べた。
次いで今集会前段のハイライトとして、現場から二人の派遣労働者が発言した。派遣法をめぐって重ねられてきた集会では、集会の度に次々と新しい労働者が発言に立ち、現行派遣法が作り出している非道な実態をさまざまな側面から具体的に明らかにしてきた。それは草の根から労働者が自らの手でこじ開けてきたこの闘いの地に着いた姿を示すものだったが、同時にそこには、闘いの着実な広がりがくっきりと映し出されていた。そして今回も、発言者は初めて発言に立つ労働者だった。
最初は日野自動車ユニオンに結集する労働者。初めてのことでどう発言していいか分からないと言いつつ、会社名がころころ変わりながらも同一職場(電子機器関係)の派遣労働を続けてきたこと、派遣元の不祥事が原因で派遣会社毎契約を打ち切られ日野自動車での派遣に移ったこと、しかしそこでもついに派遣切りにあったと、何の安定もないこれまでの経験を語った。そして応援に入った棗弁護士の質問に答える形で、「時給千円、半年毎の契約更新のままでは、生活するだけで精一杯。次の仕事を見つける時間もなく、正社員という夢すらもてなかった。こんなことを最初から選んだわけではない。今を生きるためにはそれしかなかった。派遣労働者は部品としか考えられていない」と続け、「正社員で安定した生活が欲しい。いいかげんで考え直せ」と発言を結んだ。
次は、日産本社で事務系派遣労働者として働いてきた女性労働者。今年五月派遣切りされたという。事務機器操作「専門業種」派遣という名目だが、まったくの名ばかり専門、実際はコピーなど一般事務に従事してきた。しかしこの名目の下では、三年という期間制限は適用されないのだ。パナソニックと闘う佐藤昌子さんの場合とまったく同じだ。「四年経った後、派遣労働者に優先枠があると聞かされていた中途採用募集に応募したが、日産にその気のないことを思い知らされた。今年二月の大リストラで不安になり相談ホットラインを介して、直接雇用への助力を期待して労働局に申告した。是正勧告は得たが、日産は自らの直接雇用義務を認めない。派遣元から期限通告がなかった、というのがその言い訳。しかし労働局も、あくまで指導だとしてそれ以上何もしない。我慢できず九月に提訴したが、派遣法が企業にとっていかに都合がよいか骨身にしみて感じている。スキルが上がるわけでもなく、交通費は出ず、更新は三ヶ月毎。その上、ニーズだとか言われる場合、その対象はもっぱら女性だ。女性差別が派遣という形に移し替えられている。そして派遣元は、ほほえみながら優しく嘘八百で人をだます。感じるのは、面の皮の厚さだけだ。本当に人をバカにしている」と、怒りを込めて告発した。
この発言を受け、棗弁護士は、「派遣元、派遣先が共謀して期間通告をしない(したがって`知らなかったa)という形は、派遣先が直接雇用義務を逃れる常套手段だ。抜本改正に当たっては、それを許すような規定を絶対に残してはならない」と、発言を聞いていた小池、近藤両議員に念を押した。
公式労政審など足元
にも及ばない議論
この後集会は「もう一つの労政審」に移った。もちろん内容的に、先の二人の発言もその不可欠の一部だった。それは、現実に背を向け勝手な議論に終始する公式の労政審への意識的な挑戦だ。
この企画は、二人の専門家が各々の専門分野から派遣法について見解を述べ、その後まず棗弁護士との間でいくつかの問題に関する質疑応答、それを受けて当事者も含む会場全体との質疑応答、という形で進められた。会場からは当事者の鋭い指摘も含め五人が質疑に立ち、全体を通して相当に中身の濃いやりとりとなった。紙面の関係上、以下はあくまでその一部。
最初の専門家は、中央大学法学部の毛塚勝利教授で、法政策の基本的考え方から見解を述べた。もう一人の専門家は、元東大社研でフランス労働法研究者の田端博邦氏。田端さんは、ヨーロッパの派遣労働規制を紹介すると共に、それとの対比で日本の派遣法について見解を述べた。
毛塚さんの強調点は、現行派遣法の目的が不明確だという点、その点を最初から考え直す必要があるとした。そして、雇用責任、均等処遇、リスク補償など、規制のあり方をいくつか具体的に問題提起した。
田端さんは、社会問題の解決という法の基本的観点を強調し、現在の労政審にこの観点が欠けていることを批判した。またこの点に関連して、ヨーロッパで製造業派遣の禁止はないなどとの主張を取り上げ、ヨーロッパでそれがないのは当地で社会問題が大きくなっていないからと明快に指摘、その理由として、需給調整弁として派遣労働が大量導入されるなどという状況がないこと、及び均等処遇の確立を付け加えた。そしてそれらの事実には口をぬぐいながら製造業派遣の禁止はないという点だけを声高にわめく主張を、御都合主義としてきっぱりと退けた。さらに、社会問題の解決に向け知恵を生み出すのは運動であり、ヨーロッパの今の背後には長いバトルがある、とも強調した。
会場からは、先に発言した日産の労働者が、「専門二十六業種」の似非さの中で派遣労働が女性に深刻な状況を生み出している点の再確認が必要であること、そして、今も派遣元が破廉恥な言い逃れをぬくぬくと繰り返していることを前提とすれば、あいまいさを残した規制では役に立たないと訴えた。「働く女性の全国センター」の参加者も、「専門二十六業種」を禁止除外してはならないと力説した。他の会場発言も含め、「専門」、あるいは「資格」規定の問題が、しり抜けを許さない重大な論点の一つとして浮き彫りにされた。この他にも、国際競争の問題、セーフティーネットの問題など重要な議論が交わされた。
これらの議論の最後に毛塚、田端両氏が共通に強調した重要な事実があった。それは、現在の日本の派遣法抜本改正運動に対する国際的注視だ。派遣労働の大量使用を基にした日本大資本の競争力は「強すぎる」のであり、それがヨーロッパの雇用関係を危機にさらしている、それゆえ例えば今ドイツの労働者は、日本における抜本改正の行方を固唾を呑んで見守っているという。日本での派遣法抜本改正への期待は韓国でも同様だ。韓国では本集会にきびすを接して、日本の研究者や運動関係者を数多く招いた派遣労働シンポジウムが開かれると共に、民主労総も同様のシンポジウムを開催、日本の労組活動家もそこに招請された。遅れてかけつけた湯浅誠さんも、日本の運動が国際的意味をもち始めていることに触れた。
この日の集会は、公式の労政審をはるかに凌駕する充実した議論を実現した。それは、社会に真摯に向き合っている者が誰であるのかを明らかにするものでもあった。労政審がもしふざけたとりまとめを強行すれば、それは文字通りたわごとに過ぎず、自ら大恥をさらすことになる。
十二月労政審を、労働者民衆のその確信を高らかに突き付ける場とすべく、集会は最後に、安部誠全国ユニオン事務局長から、十二月九日午前九時三十分からの厚労省前行動、十二月十八日午前十時三十分からの労政審包囲終日行動、十二月二十五日午後一時三十分からの厚労省前行動の行動提起を受け、棗弁護士の、労働法制を労働者の手に取り戻そう、との訴えをもって、熱気の中閉会した。
十二月労政審に立ち向かう闘いに全力を挙げよう。(神谷)
ワンストップサービスデー
一層の改善・充実へ
派遣村有志働きかけ
十一月三十日、政府緊急雇用対策本部による総合相談窓口設置の試みとして、全国七十七カ所のハローワークで、「ワンストップサービスデー」が試行された。派遣村を再現させない、が目的とされている。政府によれば、利用者数は全国で二千三百九十九人。
この試みに対して、既報のようにさまざまな不十分さが予想されたため、派遣村有志を中心とした「年越し派遣村が必要ないワンストップサービスをつくる会」は、年末年始にかけたさらに充実した取り組みを求める活動の一環として、全国十カ所のハローワークで利用者アンケートを実施した。東京では、上野と立川の二カ所。上野ハローワーク前では、全国ユニオン、全労連、全労協の組合員を中心に、終日、利用者へのアンケート協力要請チラシ配布と直接の聞き取り活動が行われたが、その場で実際の相談が始まる例もいくつかあった。
上野での第一印象は、何と言っても行政による周知態勢の弱さ。告知チラシの拡大版が通りに面した掲示ケースに張り出されていたが、それ以外、ワンストップサービス実施中を宣伝するものがない。入り口に設けられた受付も何の受付か、事情を前もって知らなければ分からない。
また、ハローワーク職員による受付にも予想通り難点があった。彼らは、相談者の今現在の生活状況や真の相談内容を確認する訓練を受けていない。そのため、例えば手持ち現金が底をつき、すぐ生活保護の必要な人などを適切な窓口に案内できないのだ。上野でも、すぐ生活保護の必要な相談者が同会の活動で見つかり、隣の台東区役所で手続きにこぎ着けたという事例があった。
これらの活動結果は、同会の十二月四日の記者会見で報告され、百三十八人からのアンケートや利用者から直接受けた相談などを基に、周知の不十分さ、その場では解決につながらない問題(制度のアドバイスにとどまる)、住宅や緊急避難所の確保など、必要な改善点が示された。
政権には、現場で一番苦労している自治体労働者の現状に則した具体的な知見に学び協力を得る努力がもっと求められる。
いずれにしろ、「政治主導」の真価が問われている。政府、関係諸機関に対する運動からの働きかけが引き続き必要とされている。 (谷)
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