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「多文化共生社会」を言葉だけのものにするな!      かけはし2009.12.7号

あらゆる排外主義的妨害をはねのけ
外国籍住民の地方参政権法案成立へ


1995年の最高裁判決

 「多文化共生社会」プロセスの重要な一歩である永住外国人への地方参政権付与法案の国会提出をめぐって新たな動きが浮上している。永住外国人は九十一万人(特別永住者の在日韓国・朝鮮人が42万人)に上り、参政権の獲得は、グローバルな人権、民主主義を実現していくために欠かせない手段である。
 一九九五年、最高裁判所は、永住外国人の参政権について「憲法第九十三条2項の『住民』は地方公共団体の区域内に住所を有する日本国民と解するのが相当である」という立場を採用したが、「地方自治の重要性の趣旨から立法で選挙権を付与することは憲法が許容する」と判断した。つまり、地方公共団体の長、その議会の議員等に対する選挙権を付与することは憲法上認められたのであり、立法措置によって参政権が獲得できることになったのである。 この判決を契機にして永住外国人参政権実現運動は新たなステージに入ったが、差別・排外主義政策を推進する自民党極右派、天皇主義右翼、外国人排斥主義者などの反対勢力は、法案制定に対して繰り返し敵対、妨害を行ってきた。しかし、鳩山連合政権の成立によって膠着を突破する状況が発生している。民衆の協働作業で新たな局面を最大限に利用し、永住外国人参政権法制定を実現していこう。

マニフェストでは消えた

 この間の法案をめぐる諸動向を整理しておく。
 民主党は、一九九八年の結党の「基本政策」の中で「定住外国人の地方参政権などを早期に実現する」と掲げ、一九九八年十月に法案制定推進派の公明党と共同で「永住外国人に対する地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権等の付与に関する法律案」を国会提出し、二〇〇〇年六月には民主党単独で法案を再提出したが廃案に追い込まれた。
 さらに〇九衆院選マニフェストの原案となる「政策集INDEX2009」でも「『定住外国人への地方参政権早期実現』方針は今後とも引き続き維持していく」と打ち出していたが、党内の「永住外国人の地方参政権を慎重に考える勉強会」(08・1・30設立)などの反対派の圧力が強まり、執行部は衆院選前の分裂状況を回避するためにマニフェストでは消去し先送りにした。
 この勉強会は、松原仁、渡辺周、笠浩史、長島昭久、渡部恒三衆議院議員、西岡武夫参議院議員など二十五人でスタートしている。防衛政務官の長島は、「参政権を行使したいのであれば、国籍を取得していただくほかない。『特別永住者』という特殊な集団を固定化するような参政権付与には慎重であるべきだ」などとブログで発言している。松原(衆院予算委員会筆頭理事)は、危機感まるだしで法案推進派の取り組みにブレーキをかける要望書を党に提出している。なお松原は、「米議会のいわゆる従軍慰安婦での対日非難決議に反論し、民間有志によるワシントンポストへの意見広告」に賛同するなど日本軍性奴隷制告発・糾弾運動に敵対している。反対派は、法案の「対案」として国籍取得要件を緩和する法案を準備しているという。
 法案推進派の「在日韓国人をはじめとする永住外国人住民の 法的地位向上推進議員連盟」(顧問・鳩山由紀夫、会長・岡田克也、08・1・30に設立。小沢一郎、菅直人、前原誠司、仙石由人ら39人が参加)は、衆院選での民主党圧勝と連合政権成立後、活動を活性化させ、法案を二〇一〇年の通常国会に提出する姿勢を明らかにした。小沢幹事長は、「日韓関係をしっかりさせるためにも永住外国人の扱いは重要だ。 通常国会までに(立法措置の)取り扱いを考えよう。どういう方向で党内をまとめるか、それを含めてやっていこう」と党内反対派を牽制した。
 鳩山首相は、十月九日の青瓦台での韓日首脳会談で永住外国人地方参政権付与問題について「前向きに結論を出したい」と国際公約し(10・9)たことを受けて、民主党国対の山岡と小沢との会談で通常国会で法案提出を確認(10・28)し、党内反対派を意識して議員立法ではなく政府提案を指示した。また、十月三十日の参院本会議での鳩山所信表明演説に対する各党代表質問の答弁でも、だめ押し的に「積極的な思いを持っている」と述べた。
 法案に関して鳩山政権は、統一しているわけではない。
 社民党はマニフェストで永住外国人参政権付与に賛成の立場であり、福島みずほ社民党党首(内閣府特命担当大臣)は「九五年に、定住外国人への地方参政権の付与は憲法上許容されているとの最高裁判決が出ている。法案の提出、成立に賛成」と発言している。
 だが、国民新党は反対だ。亀井静香金融・郵政改革担当相(国民新党代表)は、「地域によって在日外国人比率が高い地域がある。日本人が少数民族で、自分たちの意志が地方政治に反映されないという心配、不満が出てきても困る」と差別・排外主義に満ちた発言を行い、法案反対の姿勢を明らかにした(9・20)。

敵対を深める自民党

 さらに野党も賛成、反対派が存在している。
 自民党は、法案に対しては従来から反対・慎重姿勢を継続し、「外国人に選挙権を与えることは、憲法の国民主権主義を侵すもので許されない」「権利を得たいならば帰化すべき」だと敵対してきた。その延長で〇九衆院選挙期間中、敗北必至の中で極右・差別・排外主義宣伝を展開し、投票日当日には各紙に「日本を壊すな」の全面広告を行った。
 谷垣自民党総裁は「外国人参政権は憲法違反との認識に立ち、その法案には反対する」と表明している。稲田朋美衆院議員が「外国人から支援された首長や地方議員が誕生すれば、地元の国会議員も影響を受ける。日本の国益の制約になる」などと具体的根拠を提示することもなく、空想漫画的にでっち上げ、差別・排外・外国人排斥主義に満ちた主張を繰り返しているが、自民党、民主党反対派はこのような主張が多数を占めている。
 平沼赳夫衆院議員は自らグループを発足させ、自民党反対派、真・保守政策研究会と連なり、天皇・靖国を賛美する日本会議国会議員懇談会会長として外国人参政権反対キャンペーンを展開中だ。
 公明党は、当初、法案を 十月の臨時国会に提出する方針だったが、与野党対立局面を反映して棚上げ状態に入っている。 すでに公明党は一九九八年以降、六回も永住外国人への地方参政権付与法案を国会提出してきたが、連立を 組んでいた自民党内反対派の存在によって廃案に追い込まれている。井上義久幹事長は、「実現が大事なので、民主党の動きを見ながら、この国会で公明党独自の法案提出も含め、最良の判断をしたい」というスタンスを取っていくことを明らかにしている。
 日本共産党は、市田忠義書記局長が「合意が得られれば、できるだけ早く永住外国人への地方参政権付与法が成立することを望む」と表明し(11・9)、一九九八年に選挙権(二十歳以上)と被選挙権(議会議員と市区町村長は二十五歳以上、知事は三十歳以上)を付与する法案を提案してきたことを強調した。
 以上のように法案に関する各政党の立場の状況を見てきたが、法案賛成派勢力の取り組み次第では成立する可能性がある。参政権実現運動を粘り強く取り組んでいる在日本大韓民国民団は、第45回衆議院選挙後の調査(8・31)によれば永住外国人への地方参政権付与に賛成する議員は二百五十人以上に達し過半数を超え、反対派が百三十三人だったと発表している。

世論調査は賛成が過半数

 法案制定の現実性が高まる中で朝日新聞(11・23)は、社説で「外国人選挙権―まちづくりを共に担う外国人参政権」というタイトルで「鳩山政権は『多文化共生社会』をめざすという。実現へ踏み出すときではないか」と積極的に支持している。毎日新聞は、十一月二十一、二十二日に「永住外国人地方参政権」問題の世論調査を行ったが、賛成59%、反対31%という結果が出ている。
 法案反対キャンペーンの最先頭にたつ「産経新聞」は、十一月二十一、二十二日、FNN(フジニュースネットワーク)と合同で世論調査を行った。その中の「【問】次の政策は実現すべきだと思うか」の六番目で「永住外国人への地方参政権付与」の問いに対して「思う53・9% 思わない34・4% わからないなど11・7%」という結果で、半数以上が賛成していることが明らかになった。産経は、この現実について一切コメントをしていない。日頃、永住外国人地方参政権付与にしつこく反対し、関連情報を記事化させ、「国政選挙であろうと地方選挙で あろうと、参政権は国民にのみ与えられた権利なのである」などと差別・排外主義宣伝をしてきたにもかかわらず沈黙だ。かなりの打撃を受けたと判断するしかない。
 野党時代の民主党は法案賛成の立場にある公明党を巻き込みながら与党分断の戦略の一つとして組立てていた。だが鳩山政権成立後は民主党内反対派との緊張、国民新党の反対の立場、自民党や右翼勢力の反対動向などが複雑に入り乱れつつ一〇年通常国会の重要法案の一つとして重大な政治判断に踏み込まざるをえない。
 〇九年六月三十日、広島県議会は「永住外国人の地方参政権の確立に関する意見書」を採択した。都道府県では三十九番目だ。決議文は「永年、地域社会の構成員として納税の義務を果たし、地域社会の発展に貢献している住民である。国会は永住外国人の実態に照らし、住民の権利として地方参政権を一日も早く付与することを強く求める」ことを確認し、「このたびの衆議院総選挙を前に、地方参政権付与に賛同する候補者を最大限に支援することを確認し、地方参政権の早期獲得のため全力を尽くして闘うことを強く決意する」と訴えている。
 一九九三年九月、大阪府岸和田市議会が「定住外国人への地方参政権付与を日本政府に求める意見書」を採択して以来、賛同する全国自治体(約3千3百)のうち千四百を超える議会で意見書が採択され、四七%以上採択率に達している。
 すでに外国人参政権付与は、国際的流れとして広がっている。スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、フィンランド、オランダなどが、一定期間の定住を前提に、外国人に地方参政権を保障している。フランス、ドイツ、イタリアなどは、EU(欧州連合)加盟国の市民に地方参政権を付与している。イギリスは、EU市民に地方参政権を認めるほか、英連邦市民・アイルランド市民に国政・地方の選挙権・被選挙権を条件付きで付与している。また、カナダは、一部の州でイギリス人などに州議会選挙等の選挙権・被選挙権を付与している。
 鳩山も主張する「多文化共生社会」は、時代の流れであり、ナショナリズム潮流の圧力に屈し、政治的先送りによって政権保身にひた走ることは許されない。言行一致が求められているのだ。法案制定を実現せよ。

極右の暴力・襲撃を許すな

 政府、民主党は、法案についてまだ具体的に公表していないが、「産経新聞」(11・10)が民主党の法案概要について報道した。記事は、@「地方選挙権付与の対象は一般永住者と特別永住者A「当分の間」は外交関係のある国(日本政府の承認した国)の国籍を有する者もしくはこれに準ずる地域を出身地とする者とした。
 民主党の法案概要は、「在日韓国人をはじめとする永住外国人住民の 法的地位向上推進議員連盟」の提言を土台としたものだろう。
 提言は以下の通り。@永住外国人には一般永住者(出入国管理法の規定に基づき法務相が永住を許可した者)と特別永住者(サンフランシスコ平和条約の発効により日本国籍を離脱した者とその子孫)とがある。地方参政権付与にあたっては両者を区別することなく、双方を対象とする。
 A地方参政権付与の対象者は当分の間、わが国と外交関係のある国の国籍を有する者もしくはこれに準ずる地域を出身地とする者とする。
 B永住外国人に付与する参政権は、地方公共団体の議会の議員および長の選挙権(投票権)とする。
 Cリコール請求権や条例制定・改廃請求権といった直接請求権、選挙立会人や民生委員といった公職就任資格の付与については当分の間、付与しない。今後必要に応じて検討する。
 D地方選挙権付与の方法は申請主義によるものとし、二十歳以上であって、かつ三か月以上引き続き同一市町村の区域内に住所を有する者とする。
 法案概要、提言いずれも付与の対象を「国交関係のある国」と限定した。つまり、国交がない朝鮮籍の人を除外するということなのだ。申請主義でありながら朝鮮籍の人を除外することは、在日朝鮮人・韓国人の間に差別と分断を持ち込むことになってしまう。朝鮮民主主義人民共和国政府、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)は、永住外国人参政権付与について「同化政策」「差別・排外主義の解消努力ぬきに疑問」などの理由から法案に反対している。「多文化共生社会」を実現していくプロセスとして日本は、植民地支配の反省、戦後補償の取り組み、日本軍性奴隷制被害者などへの真摯な謝罪が必要である。この実践と粘り強い対話、交流を深めていくことが求められている。同時に地方参政権を一つの梃子として諸権利、住民自治権のエリアを拡大していく可能性も生まれる。提言は、諸権利について「今後必要に応じて検討する」などと明記しているが、その実現のための具体的措置を示していない。インチキ約束を許さないためにも参政権は必要なのである。
 さらに「永住外国人住民の 法的地位向上」と主張しているが、民主党は一貫して被選挙権については「今後の国民意識の動向、議論にゆだねる」と繰り返し、被選挙権を認めていない限界性があることも確認しておかなければならない。民団は、被選挙権と選挙権の両取得を提起してきた。鳩山政権と民主党のあいまいな参政権付与法案を厳しく監視していく必要がある。
 日本共産党は被選挙権と諸権利(条例制定などの直接請求権、首長・議員リコールなどの住民投票権)を認める永住外国人地方参政権付与法案を提案しているが、民主党案を共産党法案レベルに引き上げていく課題もあることも確認しておこう。
 最後に、法案制定を実現していくために日本会議、街宣右翼、在日特権を許さない市民の会、主権回復の会などの敵対、妨害を許さない陣形を構築していかなければならない。この連中は、鳩山政権成立によって政治後退の危機に陥り、その逆転を目指して「密集」を開始し出している。「10・17日本解体阻止!!守るぞ日本!国民総決起集会&デモ」は、その典型的な集まりだろう。参加者は、平沼赳夫、下村博文、山谷えり子、稲田朋美、中山成彬、西村眞悟、赤池誠章、馬渡龍治、渡部昇一、日下公人、西尾幹二、百地章、田母神俊雄など札付きの右翼連中だ。草莽全国地方議員の会、外国人地方参政権絶対阻止行動委員会、日本文化チャンネル桜二千人委員会有志の会を行動隊として突出しつつある。
 在日特権を許さない市民の会、主権回復の会は、日本会議系と運動方法などの戦術対立を深めながら外国人排斥攻撃を強めつつ、反天皇制運動、戦後補償、日本軍性奴隷制告発・糾弾運動に対して敵対する暴挙を繰り返している。暴力主義的な挑発、襲撃をはねのけ、一掃していかなければならない。    (遠山裕樹)


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