| NTT 65歳までの雇用確保は高年法の義務だ かけはし2009.10.5号 |
高年齢者には
高いハードル
一九九〇年に「六十五歳までの継続雇用の努力義務」が法施行され、昨年四月一日から「高年齢者雇用安定法」が本格施行し、「高年齢者雇用確保措置の実施義務」として「定年の引き上げ」「定年の定めの廃止」「継続雇用制度の導入」のいずれかの措置を講ずることになった。しかし、八五%の企業が導入し「希望者全員を対象」とした「継続雇用制度」を巡って、希望しても「再雇用」が「拒否」されるという事態が相次いでいる。
その背景には、継続雇用制度は「現に雇用している高年齢者が希望する時は、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度」であり、『勤務延長制度』(定年年齢が設定されたまま、その定年年齢に到達したものを退職させることなく引き続き雇用する制度)や『再雇用制度』(定年年齢に到達したものを一旦退職させた後、再び雇用する制度)としながらも、「労使協定」などで対象者を選別する「基準」を認めているということがある。「@働く意思・意欲A勤務態度B健康 C能力・経験D技能伝承などその他」を例示しながら、厚生労働省がそれらを「指針として示しているのではありません」とことわり、「労使で十分協議し、各企業の実情に応じた基準」を策定することが必要だというわけだ。
この間の「拒否」に至った「選別基準」は、「希望者全員」の継続雇用とは裏腹に、企業の意思を反映しやすい仕組みになっている。定年前数年間の「成果業績評価」の「結果」をもとにした「再雇用拒否」や、恣意的な「人事評価」、これまで従事していた業務に直接必要性のない「資格」取得(パソコン・英検)の義務付け、クリアできない数多くの選別項目など、「会社ニーズ」を前提にしたものだ。厚生労働省は「高年齢者が希望すれば、六十五歳まで安定した仕組みであれば継続雇用制度を導入していると解釈される」としている。しかし、希望した高年齢労働者を待ち受けるのは高いハードルの「選別基準」であり、働きたくても失職に追い込まれていく現実がある。
二〇〇一年以降、「NTT構造改革」という攻撃が行なわれてきた。五十歳時点で「辞職願」を提出すれば、賃金の三十%切り下げにより子会社に「再雇用」という名の「就職斡旋」を行い、六十歳以降は「希望」すれば、さらに賃金を約六〇%削減して一年単位の契約社員に採用するというものである。企業は退職再雇用制度の導入によって「人件費削減額は最大四百九十億円」と算盤を弾き、五十歳から五十九歳の労働者に対する退職再雇用攻撃を強力に推し進めた。「退職」すれば年金支給年齢まで継続雇用する、そうでなければこれまでの仕事を奪って広域配転させ六十歳定年退職させるという仕組みは、高年齢者の再就職の困難さを逆手に取ったものである。実際、ハローワークで職探しをしてもほとんど見つからない状況にある。
六十歳定年以降の継続雇用を希望するなら、五十歳時点でNTTを退職する以外にない。本来は六十歳以降の雇用確保を前提に「継続雇用の意思確認」は退職年齢直前に行われるべき(厚労省の聴取時期もその線に沿っている)ものであるが、五十歳選択とするNTTの制度については容認し「問題なし」としている。こうして人件費削減の道具として「継続雇用制度」が使われているわけだ。
年金財政の悪化を理由に行なわれた年金制度改悪によって、六十歳からの年金支給開始年齢が〇一年度から段階的に引き上げられ、老齢基礎年金(定額部分)は一三年度から六十五歳からの支給、老齢厚生年金(比例報酬部分)は一三年度から段階的に引き上げ、二五年度からすべての年金受給開始年齢が六十五歳になる。一九六一年四月二日以降に生まれた人は、年金支給までの五年間は何ら収入のない「空白期間」が生み出されることになる。
高年法は六十五歳までの雇用確保を義務化した。しかし厚労省は「六十五歳までの雇用が確保される仕組みがあれば継続雇用制度」として、企業にとって使い勝手の良い制度設計を行った。企業における選択基準の設定容認、子会社・グループ会社への転籍(労働条件の切り下げ)など、法的趣旨を逸脱する内容も容認した。
「退職・再雇用」を拒否した高年齢労働者たちが、六十歳定年を前に、NTTに対して高年法に基づく「継続雇用の申し入れ」を行った。だが全く無視され「失職」を余儀なくされている。このような状況の中で、「NTTは六十歳以降の雇用継続についての措置義務不履行」であるとし、多くの高年齢労働者が「労働契約上の債務不履行、不法行為による損害賠償責任」「労働契約上の地位確認」の請求の裁判を闘っている。また、継続雇用を希望したにもかかわらず失職したのは「会社都合による解雇」であるとし、各地で労働保険の審査請求が行なわれている。
再就職できぬ
きびしい現実
先日、ある高年齢者の集まりに参加して、「再就職」の様々な実体験を聞く機会があった。民間の運送業で働いていた六十一歳の労働者は、「辞めてから六十以上の履歴書を送ったが全部門前払いだ」と語った。次々と発言が続いた。「ハローワークに行ってもこのような時勢だからと言われる」「面接相談まで二時間待って、面接は十分。最後に頑張って下さいと言われそれで終わり」「せめて年金がもらえるまでは働かないと」。こどもの学費や家のローン、介護の問題など、どれもこれも切ない話しだった。
「働くこと」「生活すること」「生きていくこと」の根本がおかしくなっている。一九八六年「中高年齢者の雇用の促進に関する特別措置法」が改正され、同年六月には「労働者派遣法」が施行された。以降、労働市場の破壊が急速に進行し、労働者は年代を問わず不安定な状況に置かれている。「年越し派遣村」は社会の矛盾を余すことなく明らかにした。「労働」「社会保障」「福祉」の脆弱性とそれが生み出す貧困。「変革」を求める大きな声が自公政権を倒した。社会を変革する運動はこれから本番だ。NTTに雇用継続を求める闘いもその一環である。
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