三党連立政権合意書と労働者市民の課題
辺野古・高江に新基地を作るな!「米軍再編」破棄へ一歩踏み出そう |
沖縄選出国会
議員の強い意思
九月九日、民主党、国民新党、社民党の三党首会談で「連立政権合意書」が取り交わされ、社民党の福島みずほ党首、国民新党の亀井静香代表の入閣が決まった。
三党連立政権合意で最大の焦点となったのは合意書九項の「自立した外交で、世界に貢献」にある沖縄に関する記述である。社民党が辺野古新基地建設反対や日米地位協定見直しの明記を強く求めたのに対し、民主党は米国からの強力な圧力に配慮してあいまいな態度を取っていた。しかし、最終的には民主党のマニフェストに書かれた「日米地位協定の改定を提起し、米軍再編や在日米軍基地のあり方についても見直しの方向で臨む」という文章をそのまま生かし、頭に「沖縄県民の負担軽減の観点から」という一句を付けくわえて合意に達したのである。
その背景には、沖縄県民と沖縄選出議員の強い意思があった。今回の総選挙では、沖縄一区から四区までのすべての選挙区で自公候補が敗退した。
沖縄県選出・出身の民主、社民、国民新各党と無所属の国会議員七人(喜納昌吉、玉城デニー、瑞慶覧長敏、照屋寛徳、山内徳信、下地幹郎、糸数慶子)で作る「うるの会」が九月七日に那覇市で行った会合で「普天間基地の辺野古移設反対、米軍再編見直し」を決議し、さらに日米地位協定の抜本的改正に向けて日米両政府が交渉に入ることや防衛省が進める辺野古新基地の環境影響評価(アセスメント)などの移設関連予算を執行停止することも確認された。「うるの会」会長の喜納昌吉民主党参院議員は「自公政権が土壇場で条約(グアム移転協定)で沖縄を縛ったことで、鳩山政権は十字架を背負わされている。この難しい問題をどのように解決していくかが会に求められている」と強調した(琉球新報、9月8日)。
逃げ口上だらけ
の政権合意書
確かに「政権合意」の文言はきわめてあいまいなものであり、「改定を提起し」や「方向で臨む」という字句は、政権の強い意思を示すものではない。普天間、辺野古などの固有名詞も出ていない。民主党のマニフェスト自体、地位協定については、「改定を早急に実現」とした二〇〇八年の党方針から大きく後退したものだ。政策合意の他の項目に散見される断言的文面(「進める」「全力を挙げる」「積極的に取り組む」など)と比べても、きわだって腰が引けている。
この連立政権政策合意で、鳩山政権が「対等な日米関係」に踏み出すとか、基地の整理・縮小、「米軍再編」の見直し・凍結に一歩を進めるなどと考える人はいないだろう。問題の「沖縄県民の負担軽減の観点から」の直前に書かれている言葉は、「日米協力の推進によって未来志向の関係を築くことで、より強固な相互の信頼を醸成しつつ」である。つまり日米地位協定の「見直し提起」や「基地見直し」の前提は「日米協力」と「強固な相互の信頼」なのであるから、なおさらそうである。
しかしわれわれは、この連立政権「政策合意」のあいまいさや、欺瞞性を指摘することだけにとどまってはならない。普天間飛行場の即時返還、辺野古、高江の新基地建設阻止を切り口に、米軍再編予算の凍結・撤回、地位協定の抜本的改正、「思いやり予算」廃止、在沖米軍基地の縮小・撤去にむけた世論と運動を、「本土」労働者・市民自身の闘いとして形成し、民主党政権への要求を強め、「政策合意」の限界を突破していくことが何よりも重要なのである。
テレビなどのメディアでは、衆院で圧倒的多数派を獲得した民主党が、なぜ社民党や国民新党などの極小政党のご機嫌をとって連立政権に組み込まねばならないのか、といった批判が渦巻いている。われわれは逆の立場から、社民党の入閣が、同党の民主党への溶解をさらに加速するだろうと考えている。だからこそ大衆運動においても民主・社民・国民新党連立政権への支持から独立した左派の、共同した政治的「極」の形成のための意識的な努力が必要なのだ。
米国の牽制と
強まる圧力
米国は、沖縄の米軍基地に関する鳩山新政権の動きを警戒の念を持って牽制している。九月二日、米国防総省のグレッグソン次官補は「われわれは飛行場移設計画の現行の合意に非常に満足している」と述べ、計画を見直す考えはないとした。同日、キャンベル国務次官補とメア日本部長も、辺野古新基地建設計画について「見直しに応じない」ことを明らかにした(朝日、9月3日夕刊)。
九月十日、米国防総省のモレル報道官は「米軍再編見直し」にふれて、「選挙ならではの言い回しがあったとは思うが、選挙戦と政権運営とは違う。政権運営の責任を感じれば、同盟の重要さや現行の合意で協力することの重要さも分かるはずだ」と恫喝をかけた。ここには「対等な日米関係」など入り口で拒否しようとする米国の姿勢があらわになっている。
日米同盟の一義的重要性を強調する鳩山新政権は、こうした米国の圧力に抗するすべを持っていない。いやむしろ、この「圧力」を沖縄民衆に対する武器として、基地反対の運動を切り捨てるために積極的に利用しようとするだろう。
だからこそわれわれは、アフガン戦争支援のためのインド洋での海自による給油作戦やソマリア「海賊」対策派兵の中止要求と結び付けて、沖縄の反基地闘争との連帯を再組織していくべきなのである。この闘いは、今日の米国による「対テロ」グローバル戦略への自衛隊の実戦的組み込みにほかならない「日米同盟」の現実そのものを批判し、日米安保の破棄を公然と訴える運動へと進めていくことが求められている。
民主党政権下で、沖縄・「本土」の反基地闘争はまさに岐路に立っている。この重大な局面への理解を共有し、一歩を踏み出そう。 (純)
派遣法抜本改正へ
今こそ新政権に実現を迫る大衆的運動を作り上げよう
今秋、第一段の
法改正を確実に
派遣法の抜本改正を求める闘いは、自・公両勢力の壊滅的敗北という政治の大激変を生み出した今秋、第一段の法改正を具体的に確定させることができるか否かという重大な局面を迎えた。この局面を、改正法の確定という実のある形で何としても決着させなければならない。
この闘いの全経過が示すように、その決め手が労働者民衆の自立した結集にあることは明らかだ。今こそ、派遣法抜本改正実現を旗印とする巨大な民衆的結集を登場させることが必要だ。民衆の垣根を越えた共同を体現する「派遣法抜本改正を求める共同行動」は、派遣法抜本改正を何としても実現させる大衆的決起を今秋実現するために、さまざまな行動を呼びかける作業を始めている。今後行動が次々と呼びかけられるだろう。これらを成功させるために、そして派遣法抜本改正を確実に勝ち取るために、われわれも共に全力でその一翼をになおう。
闘いが抜本改正
を政治課題化
人間としての尊厳を守るため本当にギリギリのところから絞り出された派遣法抜本改正の要求に徹底して立ちふさがってきた自・公両勢力は完膚なく敗北したが、それは、派遣法抜本改正に対する正面の障壁が取り除かれたことを意味する。そして今、前国会で規制強化に明確に踏みこんだ改正案の共同提案者となった民主党が、衆議院の圧倒的多数派となった。改正案そのものも、たとえ不十分さが多々残っているとしても、前国会に提出された三党(民主、社民、国民新)案として既にできあがっている。
加えて、先の共同提案には加わらなかった共産党も、派遣労働の規制強化の方向には協力する、と明言している。派遣労働導入以降、自由化一辺倒で進んできた動きに具体的な形でくさびを打ち込み、明確な規制強化を目指す派遣法改正を法として確定するための条件は、文字通り整った。
この条件は誰が、どのような力が整えたのか。紛れもなく労働者民衆にほかならない。
政治の激変を作り出したものは、何よりも、人々の生活のただ中で切実さが高まる一方の諸要求の実現にかけた人々の思いだ。そしてそのような思いの欠かすことのできない一翼を、派遣法抜本改正を求める闘いは間違いなく占めていた。
非道この上ない「派遣切り」に対する敢然とした反撃、さらに日比谷公園から始まり瞬く間に全国二百カ所以上に広がった派遣村の闘いは、反貧困の闘いと一体化しつつ、自・公政権が推し進めてきた政策の真実が何であったのかを、広範な人々の胸に見間違えようのない形で焼き付けた。それは疑いなく、自・公勢力を権力から取り除かなければならないとする人々の意志に、一つの強力な根拠を与えた。
そして、派遣法抜本改正を政治の一大課題に押し上げた過程こそ、文字通り、労働者民衆が独自に切り開いてきたものに他ならない。前史には、派遣労働の最大の標的となった女性たちの、八〇年代から始まる営々とした闘いがある。パート労働者や外国人労働者を含む非正規労働者が結集した地域ユニオンや合同労組の闘いがある。これらの「小さな闘い」が独自に全国的に合流し、労働の規制緩和に対する垣根を越えて共同した反撃の開始を印したものこそ、二〇〇六年十二月五日、日比谷公園で開催された、「許すな過労死促進法!人らしく生きるための労働時間・契約法制を!12・5全国集会」だった。そしてこの集会は実際にも、ホワイトカラーエグゼンプションを跳ね返す上で一つの重要な役割を果たした。
派遣労働の不公正きわまりない現実に対して今や全国各地で始まっている公然とした反撃は、先の長い闘いの蓄積と発展を明確に背景としている。派遣労働をめぐる現在の局面はこのように、苦難をおして声を上げ立ち上がった非正規労働者を中心に、派遣法抜本改正という要求の下に多くの労働者が垣根を越えて団結し、共同の力でいわば何もないところから道を開き、世論の支持を広げ、労働者民衆が文字通り自らの力で作り出してきた局面に他ならない。この闘いが今手にしている改正案(後述)そのものにも、運動自身が作り出した法案という性格が刻み込まれている。この法案は、まさにそのようなものとして、「格差是正と派遣法改正を実現する連絡会」主催の下に院内外で回数を重ねたシンポジウムを中心にした運動側からの突き付けと改正要綱の具体的提案を土台とした、野党(当時)の手になる議員作成法案なのだ。
資本の抵抗を
おしつぶそう
そしてこの局面を前に資本側の抵抗が一挙に激化したことは、改正がたとえ先の三党案のレベルで確定されるとしても、それが資本側に重大な打撃となることを、裏を返せば、派遣労働者に確実に利益をもたらすものであることを示してあまりある。
実際資本側は激しい抵抗を始めた。日本経団連を始めとする経営者団体は一斉に、派遣法改正は失業と産業の空洞化を推進するだけ、などという脅しのキャンペーンを再び繰り広げている。
人材派遣業界に至っては、正規雇用の求職が極度に少ない中で職を求めて派遣会社に登録せざるを得ない労働者に対して、派遣法改正反対の署名を業界あげて(日本人材派遣協会並びに日本生産技能労務協会)強要している。職の紹介打ち切りを公然とにおわす署名「要請」メールが、登録労働者に大量に送られているのだ。
そこには、署名する際は所属派遣会社名を書け、との指示まである。公然たる脅迫に個人情報の目的外使用という脱法行為まで加わったこの署名「運動」は、彼らの危機感がどれほどのものかを示しているが、それと同時に、労働者の尊厳など端から意にかけないという、この業界と派遣労働に一体化している本質的性格を問わず語りに示してもいる。したがってまたそれは、人間の尊厳という重大な問題に関わって派遣労働の規制が労働者に計り知れない利益となることを、見事に明らかにしてもいる。
三党案の何が彼らを恐れさせているのか。
この法案は六月二十三日三党で合意されたが、主要な改正ポイントは以下のようになっている。
@法律の題名と目的に「派遣労働者の保護」を明記。
A雇用契約期間二ヶ月以内の派遣を禁止し、日雇い派遣を禁止。
B政令で定める専門業務を除き製造業派遣を原則禁止。
Cいわゆる「登録型派遣」を原則禁止とし、専門業務以外の派遣労働者は、常用雇用とする。
D違法行為を行った派遣先に直接雇用義務を課す「みなし雇用」規定の導入。
E均等待遇を努力義務として規定。
F十一項目の派遣先責任の強化
などだ。
抜本改正という観点からは、確かに不十分な点は多々ある。例えば、「原則禁止」、専門業種、などという規定により、今後の細目確定において、抜け穴が際限なく拡大してゆく可能性は残されている。
しかしこの法案が明確に規制強化を進めるものであること、したがって、派遣労働者の処遇改善を進めるものであることもはっきりしている。みなし雇用規定一つとっても、それは、非道な派遣切りに対して法廷闘争に立ち上がっている派遣労働者たちに決定的な支えを提供するはずだ。資本が恐れを抱くには十分な根拠があると言わなければならない。
この三党案を足場に、できるならさらなる改善を追求し、派遣法を実際に改正させなければならない。そして今、労働者民衆が独自に切り開いてきた闘いが具体的な成果をつかみ取る意味はきわめて重い。先に見たような激しい資本の抵抗をはねのけ、改正を現実のものとすることに成功することには、その他の民衆的諸要求の実現に向けても、また新自由主義の諸政策総体を逆転させる上でも、重要な突破口となる意味があるからだ。
派遣法抜本改正を文字通り現実のものとするために、今こそ力を尽くさなければならないときである。(神谷哲治)
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