| ブルース・ギャグノンさん講演会 かけはし2009.8.3号 |
宇宙の軍事的覇権めざす米国
今こそミサイル防衛にNO! |
七月二十五日、東京・文京シビックセンターで「今こそミサイル防衛にNoを! ブルース・ギャグノンさん講演集会」が開催され、六十人が参加した。主催は同講演集会実行委員会。ブルース・ギャグノンさんは米メーン州で活動する平和運動家。「宇宙への兵器と原子力の配備に反対するグローバル・ネットワーク」が一九九二年に創設された時の中心メンバーで同ネットワークのコーディネーター。この日の集会は愛知、京都、広島、長崎、福岡などで行われるスピーキング・ツアーの第一弾として行われたもの。
実行委員会を代表してブルース・ギャグノンさんが約一時間半にわたり「オバマの戦争と宇宙戦略」と題して講演した。ギャグノンさんは、米国は宇宙司令部を作り、将来の戦争はすべて宇宙からコントロールされたものになると考えて、他国の介入を許さない態勢を築いていると説明し、日本も宇宙の平和利用の原則を放棄して米国に従って宇宙の軍事開発に踏み出していることを批判した。またオバマの軍事戦略も歴代の政権のそれを踏襲したものであって、いかなる幻想も持つことはできないと強調した(要旨別掲)。
なお講演の後の質疑応答では、オバマの「グリーン・ニューデイール」構想について「オバマは『グリーン・ニューディール』に年間百五十億ドルを投資するとしているが、イラク・アフガンの戦費には月百四十億ドルを使っている。これだけでもその欺瞞性は明らかだ」と批判した。(K)
ブルース・ギャグノンさんの講演から
オバマへの幻想は禁物だ
現代の戦争と
「全方位支配」
一九八二年にニューヨークで大規模な反核兵器デモが開催された時、私はTVの番組で軍関係者が「彼らは中距離ミサイル搭載核兵器に反対しているが、そんなことは問題ではない。なぜならわれわれは宇宙に出ていくからだ」と語るのを聞いて、宇宙の軍事利用について知らされた。私は当時フロリダ州に住んでおり、同州のケネディ宇宙センターから打ち上げられる軍事衛星反対のデモに加わった。
一九九二年、「宇宙への兵器と原子力配備に反対するグローバルネットワーク」を立ち上げたすぐ後に、米軍は宇宙司令部を創設した。ペンタゴン(米国防総省)は「現代の戦争はすべて宇宙からコントロールされる」と述べ「われわれは他の国が宇宙を利用することを阻止する」としている。コロラドスプリングズにある宇宙司令部の看板には「宇宙の支配者」と書かれている。
米軍の戦略は、四軍すべてが宇宙を利用し、それらがネットワーク型に統合されるものだ。米国は地球と月、他の惑星に至るルートを管理しようとしている。現在さまざまな国が月の探査計画を持っている。それは月にはヘリウム3という核融合にとって重要な元素が存在するからだ。一九九九年に月の関する国際協定が結ばれ、月の軍事利用を禁止しているが、米国はこの協定を批准していない。米国は一九五二年以来、月を軍事的に管理したいという欲望を抱いている。米国のねらいは「全方位的支配」にあり、陸海空そして宇宙に米国のコントロールを行きわたらせようとしている。
平和利用原則
放棄する日本
「衝撃と畏怖」と名づけられたイラク戦争の最初の作戦で、イラクの軍事目標の七〇%が衛星によって捕捉され、破壊された。アフガニスタン、パキスタンで行われている無人機による攻撃は、アメリカ国内から衛星を通じて操作されている。
一方米国は、自国ができることは他国でもできるのではないかという懸念にとりつかれている。米国は他国が宇宙に進出するのを阻止するために他国の衛星を撃ち落とす計画を立てている。しかしそれは非常に挑発的で高価なプロジェクトであるために、米国単独ではできない。そこで米国は、日本、韓国、オーストラリア、ドイツ、インドなど同盟国に宇宙開発計画への協力を説得している。
日本の宇宙基本計画は、平和利用原則を破棄してアメリカの攻撃的戦略に協力するものであり、二〇一四年までの五年間に二兆五千億円を支出する、としている。日本経団連は二〇〇四年と二〇〇六年に宇宙の平和利用原則をやめろ、と要求している。
米国はミサイル防衛のためにポーランドにPAC3を配備し、チェコにレーダー基地を建設しようとしている。こうした計画に対して大きな反対運動が起きているが「核のない世界」を訴えたオバマは、このプランへの態度を明確にしていない。一方オバマは二〇一〇年度に軍事予算を五%増額することを求めている。米国は今、オーストラリア、ドイツ、イギリス、フランス、グリーンランドなど全世界に新たな軍事拠点を作っている。それは衛星を使った戦争、サイバー戦争、無人攻撃機を使った戦争のためだ。
米国の対中・
対ロ軍事戦略
米国は二〇一六年に中国との戦争が起きるというシナリオを作った。オバマの安全保障顧問に就任した元NATO司令官は、二〇〇六年の記者会見でカスピ海、東欧、アフリカに至る広大な地域の安全の確保という構想を打ち出した。アフリカで米国の敵になりうるのはどこか。中国だけだ。
韓国には三十発の迎撃ミサイルが配備されている。メディアは北朝鮮の脅威に対処するものとしているが、それによって世論を操作し軍事予算を増やすためで真の敵は中国ではないかということに人びとは気づきはじめている。米国自身、北朝鮮やイランのミサイル発射能力の開発が二〇〇二年に予測したよりも十分の一程度しか進んでいないことを認めている。一方米国はさる六月二十九日にカリフォルニアのバンデンバーグからマーシャル諸島に向けたミサイル発射実験を行った。八月二十三日にもマーシャル諸島・クエゼリン環礁に向けてミサイル実験を行う。北朝鮮やイラクの邪悪さが宣伝される一方で、米国はこうした行動を続けているのだ。
ストックホルム国際平和研究所によれば米国の軍事予算は六千七十億ドルで全世界の軍事予算の四二%を占めている。中国は第二位で八百五十億ドル、ロシアは第五位で五百九十億ドル、日本は第七位で四百七十億ドルだ。トップ10のうち、七カ国が米国の同盟国だ。なぜ世界の他の国も追随しているのか。そこには「ピークオイル」に象徴される化石燃料の枯渇傾向が大きな要因となっている。中国は石油輸入の八〇%をマラッカ海峡経由で手に入れている。この中でエネルギー資源獲得競争をめぐって真の敵は中国という考え方が浮上している。
二〇〇七年に中国は自国の衛星の破壊実験を行った。クリントン大統領時代に外交分野で大きな影響力を持ち、オバマの選挙キャンペーンの顧問でもあったブレジンスキーは、ユーラシア大陸への抑えとしてアジア・太平洋への米軍の配備強化を訴えていた。彼は消極的な米国の世論も「新たな真珠湾攻撃」があればアジア・太平洋への米軍の強化を認める、としていた。「9・11」の前のことだ。
バイデン米副大統領はグルジアを訪問し、さらにルーマニア、ブルガリアに米軍基地を建設し、近くアルバニアにも基地を建設すると語っている。NATOの東方拡大が進んでいる。なぜ米国はロシアを包囲するのか。ロシアが天然ガスの最大の供給国だからだ。オバマはロシアとの関係をリセットし、核軍縮交渉も進めるとしている。ロシアは核軍縮の誘いに乗るだろうか。
ゴルバチョフは国際関係の非軍事化を目指していた。当時の米国のベーカー国務長官もNATOを一ミリたりとも東方に拡大しないと約束した。しかしクリントンはNATOの東方拡大に踏み切った。オバマはロシアへの交渉を持ちかけ、米国の政権担当者は「ロシア人は必要ない。ロシアを安心させたり、取引をするつもりはない」とまで言っている。そんなことを言いながら「核軍縮」や「関係のリセット」などありうるのか。アメリカは物事に真剣に取り組んでいない。
産業構造の平和
的転換めざそう
ブッシュは悪いカウボーイだったが、オバマもカウボーイであることに変わりはない。ブッシュもオバマも「帝国」として振る舞っている。彼らを動かしているのは軍需産業でありカネの力だ。米国の経済の急速な悪化の中で頼りになるのは軍事だけ、ということになっている。
われわれはオバマに幻想を持てない。では何ができるのか。一般的な軍縮だけではなく全般的な非軍事化が必要であり、民生用の原子炉もなくしていくことを訴える必要がある。核廃絶と環境保護、人間の安全保障を結び付けていく必要がある。戦争マシーンを平和的産業に転換しなければならない。米国の最大輸出品は自動車ではなく兵器だ。輸出品の第一位が兵器なら、そのマーケティング戦略は戦争になる。
米国の産業構造を平和産業に転換すること、とりわけ気候変動の危機の中で軍需産業に投入されていたカネを気候変動への対策に充てることが必要となる。
二〇一〇年にはNPT(核不拡散条約)再検討会議が開催される。その時、単なる核兵器の問題ではなく、人権、環境、社会的公正の問題と結び付けて戦争マシーンを止める必要がある。核廃絶だけではなく先制攻撃戦略としてのミサイル防衛との関係性を見る必要がある。
そのためにも形骸化している民主主義を獲得していくという意識が重要になるだろう。
(講演要旨、文責編集部)
IOCへの要望書
五輪招致に伴う石原都知事の差別発言は許されない
2009年7月10日
国際オリンピック委員会御中
私たちは、東京で女性の人権を守るために活動している「石原都知事の女性差別発言を許さず、公人の性差別をなくす会」という団体です。2016年夏のオリンピック開催地候補のひとつである東京についてお知らせしたいことがあります。
2009年4月、IOC評価委員会委員長であるナワル・エル・ムータワキルさんと委員のみなさんが、オリンピック開催地としての東京の資質を評価するために来日されました。6月5日、石原慎太郎東京都知事は、都庁定例記者会見の公式発言で、オリンピック招致のための東京都の広報誌デザインについて激しく非難しました。彼は、ムータワキルさんのクローズアップ写真を載せることは、彼女が`若くなく、美人ではなくなったためaに効果的ではないと言っています。
この発言は、ムータワキルさんを侮辱し、彼女の名誉を傷つけるものです。彼は、ムータワキルさんが果たしている任務や社会的業績で彼女を評価するのではなく、年齢や容姿で評価しています。
オリンピックは世界の人々が、性別や人種、民族、宗教などの違いを超えて、平和と平等、友愛の精神のもとで共生をめざすスポーツの祭典です。石原都知事の発言はオリンピックの精神に反しています。
首長が公然と女性を差別し、名誉を傷つけるような発言をする都市・東京は、オリンピック開催地としてふさわしくありません。貴委員会が、オリンピック開催地を決定するにあたり、東京都知事の差別主義を考慮されるよう、強く要望します。
石原都知事の女性差別発言を許さず、公人の女性差別をなくす会 野崎 光枝
コラム
西日の風景
窓を開けると、つぎはぎだらけの広大なトタン屋根の彼方に、夕暮れの空が広がっていた。都会育ちの私には、七〇年代の高度成長を象徴する、化学工場の煙突群。むせるような異臭。巻き上がる砂塵。くねくねと続く殺風景なコンクリート塀。濃紺に澱んだ隅田川の水面。それらとともに、実家に放置されている自室からの眺めが、「ふるさと」の姿でもあった。
「電車の線路を造っている」と信じ込んでいた、M社という鉄鋼工場が、つい最近まで実家の真裏で操業していた。四十年前。兄弟を抱えた両親は、路地一角の物件中、最低価格のわが家を選んだ。「とにかくカネがなかった。一円でも安いほうがよかった」と母は先日打ち明けた。いま思えば、差額を負担してでも、工場と薄板一枚隔てただけのこの地を選ぶべきではなかったとの反論を、私はぐっと飲み込んだ。おかげで家族は、激しい騒音と振動に、ほぼ半世紀にわたって悩まされることになる。台風の夜などは、暴風雨が外壁を叩いてはめくりあげ、とても眠れる状態ではなかった。
金属労働者たちは、午後四時半になると先を争って敷地内の風呂場に飛び込んだ。威勢のいい声が洗い場に響いていた。男の職場であった。一日の疲れや汚れを、さっぱりと洗い落としてから、帰路に就いた。駅へと放射状に続く道には商店が立ち並び、軒先にはカップ酒が待っていた。食堂の壁には赤旗が掲げられ、会議や宴会も開かれていた。私は窓からそんな歓声を見聞きし、学生時代をノンポリで過ごしてきた。
騒音被害は数年前に、行政の環境課に持ち込んだ。「これはひどい」と調査にきた職員も驚き、会社側は渋々境界の壁を厚く改築した。騒音はだいぶ軽減したが、M社じたいが長くは続かなかった。
ようやく静かな生活が訪れたかに見えた。安堵したのもつかの間、跡地にマンションの建設が決まっていた。うねりをあげて咆哮した怪物は、重機で解体され、基礎工事のための新たな騒音と振動が始まろうとしている。
更地になった工場跡。書棚に並ぶ本を焼いた西日は、数年後に遮られ、無人の部屋は暗く静まり返る。「ひとつの時代の終わり」などと、感傷に浸ってばかりもいられない。ネットで調べると、M社労組は会社側の低額回答の受け入れを拒否したとの記事にたどり着いた。やはり力のある組合だったのだ。
灼熱の重労働を終え、大騒ぎして風呂に入り、きれいな身体で工場の門を出る日常。だが業績不振やコスト削減を理由に、そんな当たり前の権利が、じわじわと侵食されつつある。一方で、長期の既得権とは無縁の新しい闘いも、注目を浴びている。M工場の気勢は、失われつつある労働者の心意気を示す、私の原風景でもあるのだ。 (隆)
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