| 道州制導入、防衛力・防衛産業の強化、グローバル化の促進、そして憲法改悪 |
七月二十一日、日本経団連は、「特に、社会保障制度改革や道州制の導入などは、国をあげて取り組むべき課題である。実現方策を含め、可能な限り具体的な政策を示すべきである」とする「衆議院解散に関する御手洗会長コメント」を発表した。ここでは道州制導入を「構造改革」の核心として強く打ち出している。さらに、財界が今度の選挙でトータルに何を望んでいるのが明らかにしているのが、経団連が「次期総選挙における各党政権公約に期待する」(7月6日)として発表した以下のものだ。
「公約に盛りこむ
べき優先事項」
各政党には、それぞれの政権公約に以下の政策を盛り込み、活力ある経済社会の構築に向けた決意を示すことを強く期待する。その際、政策項目ごとに実行主体、取組方法、工程表等を明記するとともに、可能な限り定量的な目標を提示し、有権者の審判を仰ぐべきである。
各党政権公約に盛り込むべき優先事項
1、当面の危機克服への責任ある対応と民主導の成長力強化策の推進
2、安心で持続可能な社会保障制度の確立と抜本的な少子化対策の推進、消費税を含む税制抜本改革・財政健全化
3、民間活力の発揮を促す規制改革・民間開放、電子行政の実現と経済法制等の整備
4、産業の国際競争力強化に向けたイノベーション(注:新製品の開発、新生産方式の導入、新市場の開拓、新原料・新資源の開発、新組織の形成などによって、経済発展や景気循環がもたらされるとする概念)の推進
5、環境と経済、エネルギー安全保障のバランスの取れた責任ある環境・エネルギー政策の推進
6、公徳心をもち心豊かで個性ある人材を育成する教育改革の推進
7、雇用のセーフティネットの強化と雇用・就労の多様化の促進
8、道州制の導入に向けた「道州制推進基本法」(仮称)の制定と農業、観光振興等を通じた魅力ある経済圏の確立
9、グローバル競争の激化に即応した通商・投資・経済協力政策の推進と国際通商ネットワークの構築
10、戦略的な外交・安全保障の推進と憲法改正に向けた合意形成
規制緩和・民営化
をいっそう推進
1の「民主導の成長力強化策の推進」は、大もうけしている大企業の内部留保金には一切手をつけず、四十万人以上の首切りを強行している大資本の責任を一切明らかにすることなく、さらに、こうした雇用破壊を続けていくことの宣言にすぎない。
2の「消費税を含む税制抜本改革・財政健全化」は法人税を四〇%から三〇%に下げ、替わりに「二〇一五年度までの第一段階と最終目標年次二〇二五年度までの第二段階に分けた上で、第一段階を『緊急課題への対応と社会保障制度の基盤整備』とし、消費税率換算で五%程度が、また第二段階を『安心で信頼できる社会保障制度の完成』と位置付け、消費税率換算で一二%程度が、現状に比してそれぞれ追加的に必要であるとした」(2月17日発表)と消費税大幅アップの大増税を打ち出し、弱者にしわ寄せを押しつけるものだ。
3は、国鉄や電電公社そして郵政民営化を推し進めてきた民営化をさらに、自治体や国の事業に広げて、公共サービスを破壊し、正規労働者を首切り、年収二百万円以下の非正規労働者・ワーキングプアをさらに拡大するものだ。
7の「雇用・就労の多様化の促進」は、「特に労働時間法制の弾力化を中心に労働法制を見直すべきである」(2009年度日本経団連規制改革要望、6月6日)として、日本版エグゼンプションの導入をあきらめていないことを示している。
8の道州制導入は道州間や地方との格差の拡大と公務員の大合理化につながるものだ。
9を裏打ちするように、「日米EPA(経済連携協定)に関する経団連アメリカ委員会・在日米国商工会議所(ACCJ)の共同声明」(7月21日)が出された。内容は次のようなものだ。
グローバリゼーシ
ョンと自由貿易
両国政府は、両国間の貿易投資を阻害し、両国の競争力を制限しているビジネス環境上の当面の課題に解決をもたらす幾つかの重要なイニシアティブに焦点を当てて、取組むべきである。
*特許システムのハーモナイゼーション(協調)の促進
*政府調達のさらなる自由化推進
*日本のAEO制度(注:輸出入者の認可事業者制度。民間企業と税関のパートナーシップを通じて、国際物流におけるセキュリティ確保と物流効率化を両立させる制度)と米国のC―TPAT(注:サプライチェーン及び国境での安全を強化するための官民共同イニシアティブ)の相互承認を含むサプライチェーン(注:原材料の調達から生産・販売・物流を経て最終需要者に至る、製品・サービス提供のために行われるビジネス諸活動の一連の流れのこと)における安全確保と物流の円滑化・効率化の両立
*ビザ・領事事項の円滑化、簡素化
*環境技術における日米産業協力の強化
*米国における連邦と州の規制、日本における国と地方の規制のハーモナイゼーション促進
*日米政府間のインターネット・エコノミーの推進に関する対話の開始
(略)……我々は、日米経済連携協定(EPA)を「FTAプラス」の協定として、WTOルールに基づき、「実質的に全ての貿易」及び「実質的に全てのサービス分野」を含むものと考える。日米EPAでは、関税に加え、法規制とその透明性、物流、基準・認証、商法、投資ルール、資本・為替市場、農業、アンチ・ダンピングなどの貿易救済措置、競争政策、人的資源とヒトの移動、知的財産権、セキュア・トレードなどを含む非関税措置が対象になる。……益々グローバル化する経済において成功することを支援するための強固なシステムを日米で構築する必要があることを認識している。
昨年の米国発世界金融危機が進んでいるにもかかわらず、その反省はいっさいなく、新自由主義グローバリゼーションを貿易の一層の規制緩和をすべての分野にわたって押しすすめるものだ。これは日本の労働のあり方や農業の解体的危機を促進しようとするものだ。
武器輸出三原則
の見直しを提起
そして、4と10のために、経団連は「わが国の防衛産業政策の確立に向けた提言」(09年7月14日)を以下のように行っている。
わが国の防衛産業は、「産業」と称しているが一般に大企業の一部門が防衛を手がけているケースが多く、防衛事業の比率は高い企業でも10〜20%、中には数%にすぎない企業も多い。……採算が厳しいプログラムも多く、新規企業の参入も少ない。産業基盤としては規模・体制ともに不十分であると言わざるを得ない。
しかも、わが国においては、防衛関係費の減少傾向が続いており、とりわけ主要装備品の新規契約額は漸減し、一九九〇年度のピーク時の六割程度の水準の約七千億円に落ち込んでいる。防衛装備品の調達数量は徐々に減少し、この数年間全く調達がない装備品もある。
……戦闘機は二年間新規契約が途絶えており、このまま細々とした生産を維持するのでは、人員の新規採用も進まず、現在の技術者や現場技能者などの退職に伴い、後継者がいなくなる事態に陥ることは必至である。このような厳しい環境のもと、各社とも人員削減や民生部門へのシフトなどで対応してきたが、これも限界に近づいており、すでに防衛事業から撤退したり、撤退を検討している企業も少なからず出てきている。
と、現状を分析し、最後に次のように提言している。
7.安全保障の確保に向けた防衛産業政策の策定
(略)……政府は、防衛産業が担っている防衛技術・生産基盤の維持・強化を図るため、……具体的には、防衛技術・生産基盤を維持するための適正な規模の予算の確保、重点分野への集中投資、武器輸出三原則等の見直しによる国際共同研究開発の枠組み構築などの施策の実施である。
産軍一体化と
憲法改悪の道
この提言では直接触れられていないが、自衛隊は、次期主力戦闘機をF22(見えないステルス戦闘機)の導入を米国に要望していたが、米国が一機数百億円かかるF22の生産の打ち切りと軍事秘密保持のために、日本への売却を認めない決定を覆さなかったため、導入が不可能になった。こうしたことも背景にあり、「自主防衛」に向けた産軍一体となった取り組みの強化であり、憲法改悪に向けた大きな動きの一歩でもある。これを許してはならない。
以上見てきたように、財界が総選挙に際して望んでいるのは、消費税アップの大増税、道州制導入、日米グローバル経済の推進のためにすべての分野における規制緩和、日本防衛産業・防衛力強化そして憲法改悪だ。各党のマニフェストを判断する時、この経団連の望むような公約が盛り込まれているかが重要だ。資本家による一層の労働者収奪、社会破壊、貧困の押しつけを進める自公の政権党と対決しよう。そして、もう一つのブルジョア政党である民主党のマニフェストに対する見極め、財界の要望につながる政策を厳しく批判しなければならない。(7月24日 滝)
「洋服の青山、名ばかり店長裁判」勝利和解の御礼
2009年7月8日
全国一般全国協議会 宮城合同労働組合 ふくしま連帯ユニオン
2008年4月、当時「洋服の青山福島原町店」店長であった小泉和由組合員(現在、宮城県大河原店)が起こした青山商事株式会社に対する未払い賃金請求訴訟の勝利和解を、本日福島地方裁判所でかちとることができました。これまでご支援をいただいた地域の仲間たち、声援を送っていただいた全国の仲間たちに心より感謝申し上げます。
小泉さんは同年2月、マクドナルド高野店長の「名ばかり管理職」裁判が東京地方裁判所で勝訴したテレビ報道をみて、自分たち青山の店長も全く同じ状況だと実感し、ひと月休み無し勤務など過重労働を打開し人権を回復するため宮城合同労組に加入しました。そして、ふくしま連帯ユニオンの支援を得て同年3月に2回、会社側と団体交渉を行ないました。
団体交渉の結果、会社側は「早期に店長を労働基準法の管理監督者扱いを廃止し、過去2年分の時間外・休日労働手当を支払う」と回答しました。ところが会社側のバックペイ計算は、既払いの役職手当の大半を時間外・休日労働手当とみなす等、組合側が労基法に基づいて計算したバックペイ計算を大幅に下回るものでした。そこで隔たりを埋めて妥結を図るため、労使の間で会社側計算と組合側計算の差額を解決金として支払うことを相互に確認しました。
しかし後日、一方的に会社側が解決金の支払いを反故にしたため、こんな不誠実な態度では「管理監督者扱いの廃止」も実行されない恐れがあると判断し、「労基法41条2号の管理監督者に該当しないので労基法計算で未払い賃金を支払え、付加金も支払え」として、同年4月4日提訴に至りました。
この提訴により会社側は、5日後の4月9日、報道機関に「早期に店長・課長の労働基準法の管理監督者扱いを廃止し、退職者も含めて過去2年分の時間外・休日労働手当を支払う」と表明し、同年6月に実行しました。しかしバックペイは、会社側の特殊な計算によるものでした。(この時に小泉さんへ支払われたのは150万円です)
小泉さんと私たちは、団体交渉及び提訴を通して青山商事店長の過重労働を是正させることができましたし、訴訟原告である小泉組合員に限られてしまいますが、先の150万円の外に、被告が450万円の支払いを認める和解を成立させることができました。これは請求1項「労基法に基づく支払い」に加え、請求2項「付加金支払い」の一部認容に相当する金額で実質勝訴です。また、守秘義務は課せられていません。
厚生労働省は、是正指導を行うと言う一方、労基法41条2号の適用範囲を拡大する通達を出しました。労基法の管理監督者として扱われ、無給で過労死寸前の労働を強いられている労働者が全国で何十万人もいます。私たちは、この闘いの勝利が、全体状況を打開する一つの力になるものと確信します。御支援、ありがとうございました。
宮城合同労働組合 組合員
小泉和由さんのお礼状
拝啓 暑さ厳しき折から皆様方におかれましては、お変わりなくお過ごしのことと存じます。
さて、 1 年 3ヶ月にわたる「洋服の青山」未払い賃金の裁判におきまして、お忙しいところ時間を割いて御支援いただき、誠にありがとうございました。裁判中は全国一般はじめ組合員の皆様の心温かいサポートをいただき心より感謝申し上げます。
2008 年 1 月末に宮城合同労組星野委員長に未払い賃金について相談し「闘う気持ちがあるなら全面的に支援します」との心強い言葉をいただき、会社と闘う勇気をもらい私の闘いが始まりました。訴状の準備・弁護士の先生との打ち合わせなどすべてが初めてで貴重な経験ができ私自身も成長出来たと感じています。そして裁判を終えようとしている今思うことは、泣き寝入りせず闘って本当によかったと心から思っています。
百年に一度の不況といわれる中、不当解雇問題など働きたいのに働けない方々の問題に比べると未払い賃金問題は深刻さが低いかもしれませんが、労働者の権利を守るという視点において同じ問題であると思いますのでこの和解が同じ問題で闘っている仲間の後押しになればよいと思います。
末筆ながら、皆様のご健康とご活躍をお祈りして、お礼の言葉とさせていただきます。
敬具
2009 年 7 月 8 日
宮城合同労働組合 組合員 小泉和由
(組合ホームページより)
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