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大きな注目を集めなかった首脳会談            かけはし2009.7.27号

「拡大会合」はG8延命の
ための茶番劇にすぎない

国際的な平和のための新しい
イニシアチブを作り出そう


G8の終焉と「多様化」

 七月八日、イタリアのラクイラでG8首脳会議が開催され、同九日と十日にはG8諸国に中国、インド等の新興諸国や主要国際機関が参加する「拡大会合」が開催された。
 G8首脳会談の声明では、「核兵器のない世界」、北朝鮮の核実験とミサイル発射への非難、二〇五〇年までに世界の温室効果ガス排出量を半減、先進国全体では八〇%削減、経済危機対策のための例外的政策を終結するための出口戦略、WTOドーハ・ラウンドの早期妥結、食糧安全保障と農業投資の促進のほか、「新興五カ国」(中国、インド、ブラジル、メキシコ、南アフリカ)との対話延長が提唱されている。「新興五カ国との対話」は、〇七年サミットにおいて〇八年と〇九年に「拡大会合」として実施することが合意され、今回のサミットでは「拡大会合」をさらに二年間継続することが合意された。「拡大会合」の恒常化によって、G8は実質的に「G13」に移行しつつある。実際、G8声明に盛り込まれたどの目標も、中国、インド、ブラジルの積極的な関与がない限り現実性を持たないことは明らかである。
 「拡大会合」では、同会合を二年間継続すること、WTOドーハ・ラウンドを二〇一〇年中に妥結すること、世界的な不均衡の是正、開放的市場の維持等を唱った共同宣言が採択された。
 「エネルギーと気候に関する主要経済国フォーラム」では、温室効果ガス排出量削減の数値目標に合意できず、気温上昇の抑制(産業革命前との比較で二度以内にする)と排出量削減のための努力の確認にとどまった。
 「アフリカ支援」については、貧困国の農村開発のために三年間で二百億ドルの資金援助を行うことが合意された。
 今回のサミットの最大の特徴は、国際的に大きな注目を集めなかったことである。これは、G8にはいかなる正統性もないことを訴えてきたオルタグローバリゼーション運動の観点からは歓迎すべきことである。多くのメディアはG8の影響力の低下を指摘し、主催国のイタリアはG8からG13への移行を推進することを意図した。
 いまやG8は「拡大会合」に延命を託している。それは中国、ブラジルをはじめとする新興の経済大国を新自由主義的な世界支配体制に組み込むことを意図している。しかし、八カ国が十三カ国、あるいは二十カ国に拡大されたとしても、それらの少数の国家の政府の私的な集まりが国際社会において正統性を持ちうるわけではない。それどころか、G8あるいは拡大会合という枠組みは、気候変動条約締約国会議や、デスコト国連総会議長のイニシアチブの下で進められてきた国際金融システムの改革に向けた検討などのプロセスを妨げるものである。
 「拡大会合」の主役となる中国やブラジルの政府は、従来はG8諸国と一線を画すことによって地域における自立的な経済協力・経済統合を推進し、国際社会における影響力と存在感を高めてきた。これらの政府にとって、「拡大会合」を通じて新自由主義的な世界支配体制の一翼を担うことは、そのような独立性を部分的に犠牲にすることを意味し、それは自らの安定の基盤を掘り崩すことになる。これらの政府にそこまでの用意はない。実際、中国の胡錦濤主席は、新疆ウィグル自治区の暴動への対応のため、サミットへの出席をキャンセルして急遽帰国した。
 G8諸国と新興五カ国の思惑は異なっており、拡大会合がG8に代わる役割を果たすことはありえないだろう。それは単にG8の延命のための茶番である。

6月国連サミットをめぐって

 今日、G8あるいはG20に対する強力なオルタナティブが、デスコト国連総会議長のイニシアチブの下で提起されている。六月二十四〜三十日には「世界金融経済危機とその発展への影響」について国連サミットが開催された(開催の経緯については本紙4月20号を参照されたい)。
 スティグリッツを委員長とする国際通貨・金融システム改革専門家委員会は、IMF・世界銀行の民主的改革、対外債務を扱う国際破産裁判所、新しい国際準備通貨、世界経済理事会の設立などのラディカルな改革案を盛り込んだ報告書を起草した。G77(「南」の諸国のグループで、実際には国連加盟国の半数を超える130カ国が参加している)も同様の改革案を採択している。
 米国、EU諸国、日本の政府はこの国連サミットの開催に反対し、ハイレベルの代表を派遣することを拒否し、提案されている改革案を宣言から削除させるために尽力した。メディアもこの国連サミットを無視した。
 結果的に、国連サミットの宣言は四月のG20サミットの合意内容の追認以上のものではなかったが、提案されている改革案について継続的に検討するために国連総会の下に作業グループが設置され、また、経済社会理事会に専門家会議の設置等の作業を付託した(7月9日に国連総会で承認)。
 G8や国連以外にも、世界経済および政治における新たなイニシアチブを目指す動きが進んでいる。BRICs諸国(中国、ブラジル、ロシア、インド)は、六月十六日にロシア中部エカテリンブルクで初の首脳会議を開き、国際通貨システムの多様化の必要性などを訴える共同声明を発表した。なお、同日に、上海協力機構(中国、ロシア、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタン)の第九回首脳会合も開かれている。
 七月十五〜十六日には第十五非同盟諸国首脳会議がエジプトのシャルムエルシェイクで開催された。これらの諸国の動向は、多極化をいっそう具体的な形にするだろう。 
 四月二日にロンドンで開催されたG20金融サミットについて、われわれは次のように総括した。「……各国の思惑の対立を含みながら、基本的にはWTO交渉の促進やIMFの役割の強化という新自由主義グローバリゼーションの枠組が再確認された。米国一極支配から多極化への移行という歴史的趨勢にも関わらず、それに対応するイニシアチブがいまだに成熟していないという状況を反映している」(本紙4月20号)。
 今回のG8サミットと、その前後に開催された一連の首脳会談は、このような「イニシアチブ不在の多極化」が当面継続することを示唆している。

オバマへの期待と幻滅

 「イニシアチブ不在の多極化」は、二つのことを反映している。一つは、米国一極支配が終焉しつつあるとはいえ、EUも、BRICs諸国も、他の諸国(中南米の一部の諸国を除く)も、米国との協調の下で発言力を強化することを目指しており、米国に代わって新しい世界の秩序を確立する力も意図もないことである。もう一つは、依然として世界の秩序に決定的な影響力を持っている米国の軍事・外交政策が、一定の修正を含む調整の途上であり、多くの不安定要因を含んでいることである。
 オバマ政権の軍事外交政策は基本的にブッシュ政権を継承しており、軍・軍需産業やイスラエル・ロビーのコントロール下にある。しかし、軍事費の負担や中東政策の行き詰まり等によって、一定の修正が必要となっている。オバマ大統領は、核軍縮、中東和平、中南米政策において、基本的に米国支配階級の階級的利害に忠実でありながらも、「核兵器を使った国としての責任」、「パレスチナ人の苦難」について語り、イスラエルの入植地拡大を非難し、ホンジュラスのクーデターを非難するなど、歴代の政権とは明らかに異なる姿勢を示してきた。その一方で、アフガンへの増派やパキスタンへの軍事作戦の拡大など、ブッシュ政権と同じ破滅的な政策を続けている。
 このことから、オバマ政権の軍事・外交政策に対して期待と幻滅の両方が広がっている。
 われわれは、オバマ政権の政策が軍・軍需産業やイスラエル・ロビーのコントロール下にあり、米国の利害を最優先していることについて、一切の幻想を排して認識しなければならないが、その一方で、変化の兆候、その背景にある米国の軍事・外交政策の矛盾に注目する必要がある。それは多くの人々に新しい希望をもたらす可能性があり、それがオバマ政権の思惑を超えたダイナミズムを引き起こす可能性をあらかじめ否定することは、左翼の取るべき態度ではない。
 われわれに求められているのは、オバマの進歩的発言を口先だけの美辞麗句に終わらせないための大きな大衆運動を全世界で展開することである。
 オバマが核廃絶を真に望むなら、広島・長崎を訪問するべきであり、パレスチナの人々の苦難に言及するなら、ガザ封鎖の解除をイスラエルに迫るべきであリ、ホンジュラスのクーデターを非難するならセラヤ政権の回復のために効果的な措置を講じるべきである。そして何よりも、イスラムとの対話について語るなら、まっ先にイラク、アフガニスタンから撤退するべきである。
 「政権交代」を前にして、民主党は日米安保体制(日米同盟)の強化、自衛隊海外派兵の容認、そして改憲へと明確に進路を定めた。われわれは米国一極支配の終焉と多極化の中で、核兵器の廃絶と東北アジアにおける平和の実現のために、自民党・民主党の不毛な選択を超えて、新しい国際的な平和のためのイニシアチブを目指していく。G8の終焉は、そのような新しいイニシアチブの必要性を現実的な課題として提起している。   (小林秀史)

【訂正】前号(7月20日号)2面「非正規・ユニオンシンポジウム」の写真説明「外国人学校の講師」を「外国語学校講師」に、前々号(7月13日号)6面読書案内『イラン・パペ、
パレスチナを語る』の1段3〜6行目「『ナクバ』……の年」を「『ナクバ』……六十年の年」に訂正します。


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