保健政策の人種差別主義
なぜ必要以上の誇大なあおり立てが行われるのか |
新型インフルエンザの危険性はメディアを通じて、人びとの間にパニックを引き起こすほどにあおり立てられた。「不安」のキャンペーンを通じて人びとは支配階級の「安全」保障にすがりつくようになる。しかし、その中で他の治るべき病気によって死んでいく貧しい幾百万人もの人びとのことは忘れ去られる。この「不安」の宣伝は、容易に排外主義的差別意識とも結びつけられる。われわれが見なければならないのは、パンデミックや医療問題の背後にあるグローバル資本主義の支配構造なのである。(本紙編集部)
突然変異と
パンデミック
新聞に取り上げられる回数で伝染病のリスクを測るとすれば、いわゆる豚インフルエンザは、現在、世界の住民の健康に対する最大の脅威であるという結論になるかもしれない。しかし、この結論は明らかにとんでもないものだ。
インフルエンザのエピデミック(広範囲の流行)やパンデミック(世界的流行)は、これまでにも周期的に発生している。インフルエンザはウイルス性の病気で、高い伝染性を持っており、したがってエピデミックやパンデミックを発生させる傾向がある。一般に、流行は多かれ少なかれ免疫性を残す。しかし、インフルエンザ・ウイルスは非常に容易に突然変異するという不都合な特性を持っている。つまり、遺伝子的特性が変わるのである。たとえば、去年のインフルエンザ・ウイルスに対する免疫性は今年のウイルスに対しては機能せず、したがってワクチンも機能しない。なぜなら、ワクチンは、普通、既存のウイルス・タイプに基づいてしか作れないからである。特に、A型インフルエンザは高い突然変異能力を持っている(インフルエンザにはA型、B型、C型がある)。
ウイルスの大きな突然変異があると、世界的な大流行であるパンデミックが発生する可能性がある。世界的大流行は、一八八九年、一九一八年(いわゆるスペイン風邪)、一九五七年(いわゆるアジア風邪)、一九六八年(いわゆる香港風邪)、および一九七七年(いわゆるソ連風邪)に発生した。しかし、インフルエンザは特に悪性の病気というわけではない。
免疫力が特に低くない人々は、一般にひどくならずに回復する。最大のパンデミックとして知られる一九一八〜一九一九年の大流行でさえ、一方では五千万人という信じられないような数の死者を出したが、このパンデミックが襲ったのは第一次世界戦争終了時であり、戦争の結果人々の免疫力が著しく低下していたことを考慮する必要がある。
現在あおり立てられている異様な興奮状況に目を向けるとき、次のような問いを提起しなければならない。誤解を招くような「豚インフルエンザ」という名で呼ばれているが、A型インフルエンザの変異型に過ぎないものに対して、このような誇大なあおり立てが行われているのはなぜか。
大量飼育とイ
ンフルエンザ
この新しいタイプのウイルスは、四つの異なる起源を持つ遺伝子で構成されている。このタイプの組合せは今まで知られていなかった。すなわち、北米型豚インフルエンザ・ウイルス、北米型鳥インフルエンザ・ウイルス、ヒトのインフルエンザ・ウイルス、そしてユーラシア型豚インフルエンザ・ウイルスである。ユーラシア型豚インフルエンザは、今日まで米国では見つかっていなかった。誤解を招く「豚インフルエンザ」というレッテルに反して、新しいウイルスの遺伝子は、第一に普通のヒト・インフルエンザ・タイプの変種であり、今までヒトからヒトにしか感染しなかったが、この間、一度だけヒトから豚への感染例がカナダで報告された。疫学者は恐怖を感じた。なぜなら、この変種は鳥インフルエンザを引き起こすタイプであり、鳥インフルエンザは、これまで知られている中では最も悪性で、人間の致死率が五〇%を超えるからである。しかし、今日まで、ヒトからヒトへの鳥インフルエンザ感染は起こっていない。今回の新しいウイルスは鳥インフルエンザ・ウイルスとは異なるようである。
われわれが知る限り、新しい変種の症状と致死率は、毎年流行する「普通の」インフルエンザとあまり変わらない。
このようなケースではいつものことであるが、ウイルスの起源に関するとんでもない理論がいくつか現れた。たとえば、実験室で意図的につくり出された、などというものである。しかし、これらはすべて何の根拠もない。
もう少し真剣な仮説の一つは、メキシコのPRTが新しいタイプのウイルスの起源に関する声明の中で指摘していることであるが(本紙5月25日号参照)、メキシコにおける豚の大量集団飼育と繁殖に関係がある、ということである。豚は一般に、新しいタイプを含むあらゆる形態のウイルスの媒体であり、したがって、豚の呼吸器官の中で遺伝子の交換が起こる可能性があることは明らかである。この仮説を裏付けているのは、メキシコの最初の発生地域に、米国多国籍企業が経営する世界最大の豚繁殖工場の一つが存在するという事実である。また、あまり知られていないが、この同じ地域には巨大な養鶏場も存在する。今回の大流行の前に鳥インフルエンザに関するうわさも出たが、これは秘密にされた。
家畜の大量飼育にはこの種の病原体拡散の問題があることは、否定しがたい。大量飼育は、病原体発生の起源となる可能性が非常に高く、発生したらその新しい種類の病原体を確実に拡散させる役割を果たすであろう。
しかし、二〇〇八年末における保健当局のデータによれば、メキシコの該当地域(ベラクルス州)では、住民の六〇%が上部呼吸器官の非定型感染症にかかっているという事実があった。
なぜ「警告」
を出すのか
今回のインフルエンザに関する現在の数字、特に死者数に関する数字を見れば、公衆衛生の観点からは、今の異常な興奮状況には正当な理由がないと言うべきである。米国では、毎年三万六千人が「普通」のインフルエンザで死亡している。今日までに「豚インフルエンザ」で死亡した人はこれより少ない。WHOはなぜ警告を出すのだろうか。
現在のインフルエンザをめぐるあおり立ての意味は一つではない。最も重要なのは、以下のようなことである。
b「最悪のケース」では、新しいウイルスが「普通」のインフルエンザの高い感染力と鳥インフルエンザの悪性を結合する可能性があり、そうなると、これまでのタイプより致死率が遥かに高くなる。
bワクチン業界はこのような場合には公衆衛生当局と直接協力するが、パンデミックはワクチン業界にとって巨大な機会となる。「脅威」だけでもワクチンの売り上げを伸ばすには十分であることは疑いない(ワクチンの開発は現在急ピッチで進められている)。ワクチン業界はヒステリーをあおることに関心がある。すでに前回成功を収めている。
一九七六年にニュージャージー州のフォートディクソン基地の兵士の間にインフルエンザ・ウイルスの新しい変種の地域的流行が発生した。米国保健当局はワクチン生産計画と世論キャンペーンを開始し、一九七六年十二月中旬までに、四千万人の米国市民がワクチンの接種を受けた。これは歴史上最大のワクチン接種キャンペーンであった。後になって分かったことは、ワクチン接種を受けた人の一部に、いわゆるギラン・バレー症候群が発生したことである。
この病気の原因は今日まで完全には分かっていないが、抗体が自己の末梢神経を攻撃することを特徴とする自己免疫症で、深刻な症状をもたらす場合がある。他の原因のほかに、ワクチンも原因である可能性がある。一九五〇年代には、この理由で販売が中止されたワクチンも存在する。
bオセルタミビル(商品名タミフル)などの抗ウイルス薬のメーカーにとっては、パンデミックは、実際に起こっても起こらなくても、やはり巨大な機会である。実際には、これらの薬の適用は、非常に慎重でなければならない。
一方では、耐性の拡大の危険が非常に高い。米国の科学者は、二〇〇八年〜二〇〇九年のインフルエンザ・シーズンのデータから、分離されたウイルス・サンプルの約九八%がオセルタミビルに対して耐性があったと報告している。二〇〇九年三月のWHOのデータも、二〇〇八年〜二〇〇九年のインフルエンザ・シーズンに採取された千三百六十二のサンプル中の千二百九十一について、抗インフルエンザ薬に対する高い耐性を確認している。
他方では、これらのいわゆるウイルス増殖抑制剤は、まったく安全な薬というわけではない。たとえば、オセルタミビルは、子どもに意識障がいや妄想を引き起こす可能性がある。米国の医療専門家は、異常行動を引き起こした百以上のケース(そのうち三件は死亡事故に至った)を調査した後、該当する薬に情報を添付すること、およびタミフルの投薬を受けた患者を恒久的に監督することを勧告した。
b国際的な食肉生産業界にとっては、パンデミックは彼らのビジネスにとって直接的な脅威である。数年前に鳥インフルエンザを理由にして香港で行われたような大量殺処分は、彼らにとって経済的大惨事となるであろう。また、家畜の大量集団飼育に関するもうひとつの議論も広がり始めている。このような事態を、彼らはなんとしても阻止したいはずである。
bインフルエンザの世界的流行は、北の諸国にも等しく直接影響する出来事であり、健康だけでなく、一時的に労働力の大量喪失をもたらすので経済にも影響を及ぼす。これは南の諸国に限定されない病気である。
bこれらのほかに、現在の政治・経済情勢の中では、政治的階級にとっては、行動する能力がある存在として自分を示し、危機に関する絶望的状態から目をそらさせる問題は非常に好都合である、ということがある。また、科学分野の専門家にとっても、突然流れ出る大量の特別支出は、ありがたいことであろう。
しかしわれわれは、飢餓によって、また単純な、容易に治療可能な病気によって、毎年何百万もの人々が無益に命を失っていることを想起しなければならない。それは通常、帝国主義国の大都会ではなく、周辺地域で起こっている。わずかな発生例の後、インフルエンザの世界的流行の脅威を理由に、何百万ユーロもの資金が支出され、世界的プログラムが開始されていることは、疫学的見地からはもっともらしいかもしれないが、同時にこの種の保健政策の人種差別主義を示している。
結核やマラリアは十分治療可能で治る病気であるが、毎年結核で死んでいく百六十万〜三百万人、マラリアで死んでいく百五十万〜二百七十万人(飢餓で死んでいく八百八十万人については言うに及ばず)の人々のためには、巨大緊急プログラムも存在しなければ、国際的な大宣伝も行われていない。医薬品の備蓄も、ワクチンの無料接種も行われていない。あの巨大支出に匹敵するような研究調査資金もない。
これらの人々は、金にならないのだ。
▲タデウス・パトは、ドイツRSB(革命的社会主義同盟)の指導的メンバーで、第四インターナショナルの国際委員会のメンバーである。
(「インターナショナルビューポイント」09年6月号)
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「民主党への投票」にも反対する
SM
『週刊金曜日』は、進歩的な雑誌だ。『週刊金曜日』には、頑張ってほしい。私は、そう思っている。
だが、私には分からないことがある。何で、『週刊金曜日』は、「民主党への投票」を訴える山口二郎さん(北海道大学教授)の意見を載せるのか、ということだ。民主主義を支持しているから、いろんな意見を掲載するのだ。『週刊金曜日』は、そう主張したいのだろうか。ならば、何故「憲法改悪反対派への投票」を訴える同じ位大きなスペースを使った意見が、『週刊金曜日』には載らないのだろうか。これは、私の誤解だろうか。これでは、「天皇制を支持する大きな意見」は載っても「天皇制に反対する大きな意見」が載らないマスコミと、何処が違うのだろうか。「資本主義を支持する大きな意見」は載っても「資本主義に反対する大きな意見」が載らないマスコミと、何処が違うのだろうか。自公民は、憲法改悪賛成派だ。私は、憲法改悪賛成派に投票することに反対する。憲法改悪に反対している『週刊金曜日』が「憲法改悪賛成派への投票」を訴えるのは、矛盾しているのではないだろうか。
内ゲバやテロに反対する全革新勢力は、統一するべきだ。内ゲバ党派やJR総連などを除く民主的革新勢力は、統一するべきだ。「統一戦線的で民主主義的な新党」を結成するべきだ。「自公民に対抗しうる新党」を結成するべきだ。「革命的民主党」というような新党を結成するべきだ。それが無理なら、せめて共闘組織を作るべきだ。私は、そう考える。
社民党や日本共産党などは、どうして国政選挙で共闘することすら出来ないのだろうか。私には、そのことがどうしても理解出来ない。
(2009年6月7日)
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