熱気あふれる全国集会に250人
ストップ!外国人いじめ法案
新たな在留管理制度に抗議する |
五月二十四日、東京の交通ビル(国労会館)で「ストップ!外国人いじめ法案『新たな在留管理制度』導入に抗議する5・24集会」が行われ、外国人労働者と日本人労働者の半分ずつが会場をぎっしりと埋め尽くす二百五十人の結集で熱気溢れる集会を勝ち取った。
この集会は、今年三月、政府が外国籍住民の在留管理を強化するため、外国人登録を廃止し、新たな在留管理制度と外国人住民票制度に再編する入管法・入管特例法・住民基本台帳法の改定案を通常国会に上程したことに対し外国人労働者と労働組合、NGOや市民団体が、廃案をもとめ、抗議するための全国集会として勝ち取られた。
始めに主催者あいさつがあり、続いて「移住労働者と連帯する全国ネットワーク」の坂谷さんから入管法改定案についての説明があった。
どのように変え
られるのか?
「今回の入管法改定で変わることは、新しい在留管理制度ができるということ。外国人登録証がなくなってITチップ付の在留カードが発行されます。外国人登録証を取りにいくとき、市町村の役場に
取りにいってると思うんですけど、在留カードは入国管理局に取りにいかなければなりません。入国管理局から外国籍の人に発行されるというわけです。だから非常に遠い所にいかなければなりません」。
「もう一つ住民基本台帳制度というのがあります。これは日本人を自治体が管理するために作られた制度ですが、これからは、在住期間が三カ月を超える人たちをも住民基本台帳制度に含まれます。今まで外国人登録制度一つだったのですが、それが在留管理制度と住民基本台帳制度の二つに含まれるようになるわけです。その住民基本台帳制度を元にいろんな行政サービスが行われるということになります」。
中長期在留者に
資格制度の攻撃
「中長期在留者というのは在留資格があり、その在留期間が三カ月を超える人のことをいいます。定住者も永住者も日本人の配偶者がいる人もこれに含まれます。研修生も三カ月を超えるとここに含まれます。まず、この人たちは住居地の届け出が義務化されるということです。その届出は市区町村にしなければならないのですが、例えば引越しなどした場合、役場に十四日以内に届けなければなりません。もし、これをせず、九十日間経ってしまった場合、在留資格が取り消されることがあります」。
あきらめずに
反対の訴えを
「配偶者と離婚または死別した場合、十四日以内に入管に届出なければなりません。別居など、配偶者としての活動を三カ月以上していない場合、在留資格が取り消されることがあります。専門的活動の在留資格者の場合は所属する会社や学校の名前、住所などの入管への届出が義務化されます。また『人文知識・国際業務』『技術』『技能』などは契約を結んだこと、終わったことを十四日以内に入管に届出ることが義務化され、在留資格に応じた活動を三カ月以上していない場合、在留資格が取り消されることがあります」。「非正規滞在者や難民申請者の場合はどうなるか、これまでは外国人登録はできていましたが、今回は在留カードが発行されなくなります。身分を証明するカードが持てなくなるのです。住民基本台帳制度にもほとんどの『非正規滞在者』『難民申請者』は入らないのです。だからこの人たちはいろんな制度から排除されるわけです」。
「こういう問題のある法案だが、今、国会で話し合われているのであって、まだ決まったわけではありません。わたしたちはあきらめません。法案が通らない可能性もあります。もし通ったとしても変わるのは三年後です。よく言われるのは『いくら反対してもだめなんじゃないか』という声ですが、たしかに法律が通ってしまうことがあるかもしれないけど反対の声を上げるということは入管の力を弱めます。入管は、みんなが声を上げなかったら、どんどんひどいことをやっていきます。しかし反対の声が大きくなれば無理なことはしません。だから反対の声を上げるのは本当に重要だと思います」。
さまざまな立場の
外国籍住民が発言
続いて外国籍住民からのアピールにうつりそれぞれの立場からアピール発言をした。
在日中国人の徐翠珍(じょ・すいちん)さんは「私は在日外国人の中でもオールドカマーというか古い歴史をもった在日外国人なんです。私たちに課せられたいろんな法律な制約とかありますが、私たちが一生懸命に変えて人間としての権利を獲得していくことが、これから日本に来られる、いわゆるニューカマーの人たちの在留の問題とつながっていくのだと確信しています。オールドカマーというのは在日中国人、在日朝鮮人がほとんどです。中でも在日中国人には百五十年の歴史があります」。「理解してほしいのは、私たちは今、永住権を持っています。しかし百五十年前は本当に一部の者にしか人権は認められなかった。一九八〇年代にわたしたちは外登法を変えるために大きな運動を起こしました。万を超える在日朝鮮人、中国人が闘い、指紋押捺をしなくてもよいようにしてきたのです。長崎や神戸、横浜では中国人は隣人であり友人あるといわれています。しかし日本政府にとってはいつまでたっても管理の対象でしかない。わたしはこの法案をなんとしても廃案にしていきたい」と決意を述べた。
全国一般に結集した外国人労働者の組合員は「出入国管理法の改定は法務省に大きな力を与えることになるでしょうが外国人労働者になにか力を与えることになるでしょうか? 新しい入管法のもとではビザを更新する際、外国人労働者は社会保険に加入していないという理由で国外退去されることがあります。政府は従業員を社会保険に加入させることを拒否する雇用主を国外退去させるでしょうか?新しい入管法では住所や雇用場所の変更があった場合、報告が遅れれば処罰が厳しくなります」。「政府は従業員の就業時間を不正に報告し残業代を払わない雇用主を厳重にとりしまるのでしょうか?新しい入管法はおそらく五年ごとにビザを更新させます。では政府は一年間の雇用期間を不法とし外国人労働者が日本国内にいる間、雇用を保証してくれるでしょうか?答えはNOです。われわれは闘わなくてはなりません。新しい入管法の元では政府は外国人を厳しくとり締まります。こんなことを許しておけますか?答えはNOです」と発言した。
続いて全国一般東京南部のキャサリン・キャンベルさん、神奈川シティユニオンの仲程モニカさんが発言し、NPO法人ABCJapanの橋本さんが発言を行った。
連帯アピールを平和フォーラムが行い、民主党の細川律夫衆議院議員、社民党の保坂展人衆議院議員から送られた激励のアピールが読み上げられた。
最後に行動提起とデモ指示の説明をうけ、大きくNOと書かれたプラカードと各組合旗さらにブラジルの国旗もなびかせて元気よくデモに出発した。日本人労働者と外国人労働者の共同デモは、その独特の明るさとコールで多くの人たちから注目を集め、最後まで元気よく貫徹し廃案へ向けて結束を固めた。 (青木)
読書案内
山森亮 著 光文社新書 840円+税
『ベーシック・インカム入門』
無条件給付の基本所得を考える
「福祉国家」理念
への代案として
最近「ベーシック・インカム」という言葉を目にしたり聞いたりすることが多くなった。『インパクション』168号には著者の山森も参加した二十八頁分もの座談会「ベーシック・インカムとジェンダー」が掲載されており、「週刊朝日」の緊急増刊としてこの四月に単発的に復刊された「朝日ジャーナル」でも山森は「ベーシック・インカムの手前で……」という一文を寄せている。大手メディアの書評欄でも本書は好意的に取り上げられている。
「ベーシック・インカム」とは、すべての人間が生きていくために必要な金額を定期的に個人単位で公的に保証するシステムのことである。それが各種の年金・保険給付やそこから外れた人への「生活保護」などの旧来の社会保障と異なるのは、給付の無条件性にある。給付にあたっては、何の「審査」も必要ではない。
日本の「生活保護」が「セーフティーネット」として機能していない現実は、すでに明らかになっている。そして「派遣村」が衝撃的に示したことは、ひとたび職を奪われた人びとがそのまま食も住も喪失し、寒風の中に放り出される無慈悲な実態だった。「貧困・格差社会」は、人間の生存権を根本的に否定する社会であることが鮮明になった。それは以前から、母子家庭に日常そのものとして最も厳しく降りかかってきたあり方である。
新自由主義的グローバル化は、そうした社会の構造を急速に押し広げたが、著者は「働かざるもの食うべからず」という理念とセットになった「完全雇用」や、「働けない者」への補完的な「生活保障」をそこに組み込んだ福祉国家の考え方にも問題があったと指摘する。「賃金労働に従事して生活できる者たちを標準として、高齢者、障害者など労働できないとされる人々や、賃金労働はしているが、それだけでは生活できない人々を、それより一段劣るものとして、そして労働可能と看做されながら賃金労働に従事していない人々を最も劣るものとして序列化していく、そうした仕掛けを福祉国家は内在化しているのである」と。
いま旧来の「福祉国家」の理念が新自由主義のイデオロギーに沿って全面的な攻撃を受けている。それは「福祉」への税負担を切り捨て、労働者の「雇用可能性」を高める(つまり企業にとっての雇用の規制緩和)ことで「就労支援」し、「福祉の重荷」を軽減しようという「ワークフェア」論である。著者はこの「ベーシック・インカム」を、新自由主義や旧来の「福祉国家」に代わるオルタナティブとして磨き上げていくことを提起している。それは国家と社会の仕組みそのものの根本的な作り替えだと主張する。
運動の源流を
さぐる中から
「ベーシック・インカム」の考え方は決して新奇なものではない。著者は一九六〇年代からのアメリカの福祉権運動、イタリアのフェミニスト運動と「アウトノミア」運動、イギリスの要求者組合運動の歩みの中に今日の「ベーシック・インカム」運動の源流を見ている。それはフェミニスト運動が提起した「性別役割分業」への批判や、「労働概念」の根本的見直しの主張ともからみあっており、戦後の「福祉国家」のあり方への鋭角的な問題提起であった。それだけではない。著者は、一八世紀末からの経済学思想の中から「ベーシック・インカム」につながる主張を見出している。著者はミルの『経済学原理』、ギルド社会主義、ケインズ、さらにはガルブレイスやフリードマンの中にも「ベーシック・インカム」論との関連を見出しているのである。
今日的な「ベーシック・インカム」論は、さらに新自由主義的グローバリゼーションへのアンチテーゼとして、ジェンダー、エコロジーなどのテーマとも密接な関連をもって取りあげられようとしている。
この個人への無条件給付の基本所得という考え方については、「労働へのインセンティブがなくなり、人は働かなくなるのではないか」「そのための財政措置・税負担をどうするのか」という疑問が当然出てくるだろう。もちろんそうした懐疑的見解について著者は簡潔・明快に答えている。著者の回答の基本思想は「衣食足りて礼節を知る」であるが、本書の末尾に記された「ベーシック・インカムに関するQ&A」でも大概のところは了解できる。
正規雇用要求は
間違いなのか?
一九九〇年代の初め、エコロジー運動などとも結びつけて「失業なきゼロ成長社会をめざす」という主張について論議されたことがある。これに対する反論として「なぜ失業なき社会なのか。失業になってもいいのではないか」という意見が出されたことがあった。当時の私は、むしろ「ゼロ成長」論に対して批判的な立場だったので、思いもつかないところから反論が出たという印象だった。考えてみれば「失業」イコール「食」も「住」も奪われるという既成観念自体に異議を唱えたこの意見は、「労働」と「所得」を不可分のものとする主張への根底的な批判だったのだろう。
私たちは、今、「底辺への競争」を強いる市場主義の極致としての新自由主義の社会編成に抗し、「反貧困」と生存権の保障をどのように貫くのかをめぐるオルタナティブな戦略を実践的に論議していく段階に否が応でも入っている。「ベーシック・インカム」の構想は、その一つの重要な素材となりうる。
一つだけ疑問を提起しよう。最初に紹介した『インパクション』168号の座談会で、著者・山森は派遣法に反対する労働運動の主張を批判して次のように述べている。
「今、規制緩和に反対していて、派遣の問題に反対していて、対案は何かといったら、みんな正社員になることだと。人々の生活を保障するのは企業責任だという議論ですね。完全雇用に戻れと。……それは、要は男性が働き手で女性は家にいるというジェンダー規範とセットだったわけですから、それに戻れという労働派の言説と、いわゆるジェンダー・バッシングをしているような人の言説というのは実は政策提言的には同じことを言っていると僕は思っている。むしろ僕らが働きかけるのは、完全雇用をと言っている人たちにどういうふうに働きかけて……別のことを考えましょうよという議論に引き込めるか、そのほうが僕にとっては大事です」。
かつてフランスの極右派であるルペン率いる国民戦線(FN)の選挙綱領に「主婦の家事労働に賃金を支給して女性を職場から家庭に戻し、男性の雇用を保障する」というスローガンがあった。イタリアのフェミニスト、ダラ=コスタの主張を歪曲的・擬似的に盗用してジェンダー・バックラッシュを推進した国民戦線のスローガンと、「派遣労働の正規雇用化」を訴える主張は同じなのか?
この問題は、雇用の不安定化・非正規化を推進する資本の新自由主義的戦略との闘いの上で重大な分岐点とならざるをえないだろう。 (国富建治)
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