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「放送倫理・番組向上機構」(BPO)放送倫理検証委員会 かけはし2009.5.25号

NHKの「女性国際戦犯法廷についての番組改編」を批判




 四月二十八日、NHKと民放で作る第三者機関の「放送倫理・番組向上機構」(BPO)の放送倫理検証委員会は、二〇〇一年一月に放送された二〇〇〇年十二月の女性国際戦犯法廷についての番組「戦争をどう裁くか――問われる戦時性暴力」が、安倍晋三や中川昭一ら自民党の極右政治家の圧力によって大幅に改変された問題について要旨、以下のような意見書を発表した。
 「日常的に政治家と接している部門の職員が、政治家が関心を抱いているテーマの番組制作に関与すべきでない。取材や出演依頼のためでもないのに政治家に会いに行き、意見を聞いたりすることがあってはならない。自ら政治介入を招き、その隙をつくるようなものだ」。
 「シリーズの他の三本に比べて、女性国際戦犯法廷についての番組は不自然な編集が目につく。安全を考え、元兵士らの証言を全面的に削除してしまった。幹部管理職らが番組の質を追求するのではなく、安全を優先し企画趣旨から逸脱した結果だ。放送人の倫理として、当然目指すべき質の追求という番組制作の大前提をないがしろにするものだった」。
 「国会担当局長が何の躊躇や障壁もなく放送・制作部門に出入りし、改編過程に直接関与し、放送・制作側が安易に受け入れている様子にも危うさを感じる。NHKがこれまでに公開した文書やコメントには閉じた態度が見受けられる。旧来の閉じた態度から一歩踏み出し、自ら検証し、獲得した教訓を視聴者に丁寧に明らかにするよう希望する」。
 VAWW│NETジャパンが提訴したNHK番組改編についての損賠訴訟への二〇〇八年六月・最高裁判決は、原告実質勝訴の東京高裁判決(2007年1月)を覆す不当なものだった。しかし今回のBPO放送倫理検証委員会の意見書は、極右排外主義勢力の意を受けた安倍、中川らの政治介入に屈服し、放送直前に番組内容を抜本的に改変したNHKの責任を厳しく問うている。だがNHK側は広報部の談話で「政治的圧力で改変されたり、国会議員の意図を忖度した事実はありません。今回の評価は残念。放送倫理の観点から番組の質を論じることに強い違和感を覚えます」と述べ、居直り・無視の態度に終始している。BPO委員会の意見書についてNHKは放送で全くふれようともしなかった。
 VAWW│NETジャパンの声明を掲載する。NHKがあらためて番組改変の全経過を明らかにし、検証し、視聴者に謝罪することを求めると共に、安倍・中川らの極右政治家の責任を追及し、議員辞任を求めよう。        (K)


BPOの決定についてのVAWW―NETジャパン声明

―VAWW―NETジャパンはBPOの決定を大いに歓迎し、NHKがこの決定を受け入れるよう、強く要望します!―

 NHK番組改変事件をめぐり、私たちが7年にわたり裁判を闘ってきたのは、「慰安婦」問題をなきものにしようとする歴史修正主義を許さない、暴力による言論弾圧や権力に迎合する報道機関の自主規制を許さない、不正義に沈黙しないという思い、そして、NHKが市民ではなく、時の権力に顔を向けているこの状況を何とかしなければという思いからでした。そのため、裁判を通して市民社会で保障されるべき「知る権利」や「表現の自由」「言論の自由」「報道の自由」をいかにして守ることができるのかを明らかにしたいと切望しました。

 しかし、昨年6月に言い渡された最高裁判決は、東京高裁が認定した放送番組への政治介入という問題の核心を回避し、NHKら被告の不法行為を認めて「信頼利益の侵害」「説明義務違反」を「特段の事情」の下に認めた原審(高裁判決)を覆し、NHKら被告の敗訴を破棄し、バウネットの附帯上告を棄却しました。

 それどころか横尾和子裁判長は、取材対象者の期待・信頼を保護することは「取材活動の委縮を招くことは避けられず、ひいては報道の自由の制約にもつながる」「(取材対象者の)放送番組編集への介入を許容する恐れがある」という、ひどい見解を示しました。

 この事件で報道の自由を制約・侵害したのは誰なのか、放送番組編集に介入したのは誰なのか。私たちは政治介入問題を蚊帳の外におき、取材対象者に「報道・編集の自由の侵害」の矛先を向けたこの判決に、絶望の淵に叩き込まれたような憤りと情けなさに愕然としました。

 最高裁判決の「勝訴」を喜ぶNHKの姿に、これでNHKは何事もなかったかのようにこの問題を終わりにしてしまうのかという不安を抱きましたが、そんな中、多くの市民がBPO放送倫理検証委員会に番組改変をめぐる真相究明を求める要請を提出し、本日、BPO放送倫理検証委員会がNHKの改変指示に至る一連の行為は、「公共放送NHKにとって、最も重要な自主・自立を危うくし、NHKに期待と信頼を寄せる視聴者に重大な疑念を抱かせる行為であった」との決定を発表しました。

 VAWW―NETジャパンはBPO存在趣旨に立って行われたこの決定を大いに歓迎し、要請に立ち上がられた皆様の勇気と正義を諦めない闘いに、心から感謝の気持と連帯の意を表明いたします。  

 NHKはBPOの決定を真摯に受け止め、番組改変事件の真相究明を誠実に行い、政府高官らとの距離を保ち、「目指すべき質の追求という番組制作」に全力を尽くし、今後、番組の制作・放送を巡って二度といかなる政治的権力にも影響されることなく、放送の自律・表現の自由を自ら守っていく姿勢を貫くことを心から願います。

 NHKは、BPOの決定に取り組むことが、改変された番組により深い傷を負った「慰安婦」被害者と女性国際戦犯法廷の主催者の被害回復、この問題を巡って失った視聴者・市民の信頼の回復に繋がるとともに、NHK内部の番組制作における表現の自由・放送の自律を取り戻すよい機会と受け止め、その実現に努力してほしいと思います。

 VAWW―NETジャパンは現在、高裁判決・最高裁判決を英文に翻訳し、国連人権理事会や「慰安婦」問題の解決に向けて勧告を出した国際社会に向けて、この事件と事件の不当な「決着」を訴えていくべく、準備を進めています。その過程で、NHKが真実と表現の自由の回復に自ら動き出すことを、心から願います。

   2009年4月28日
「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク(VAWW―NETジャパン)


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