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通すな!「海賊」派兵新法 守れ!雇用と福祉       かけはし2009.5.18号

戦争国家づくりと失業・貧困に
たちむかい各地で改憲反対集会

日比谷集会に4200人
落合恵子さんと益川敏英さんが憲法への思い語る


強まる改憲勢力
の巻きかえし

 五月三日の憲法記念日、小泉政権の登場に合わせて共産党と社民党の両党首がそろって発言する「日比谷憲法集会」が開催されるようになってから九年目となる。今年の5・3憲法集会は「終わらせようアフガン戦争」「いらない!ソマリア『海賊』新法と派兵恒久法」「始動NO!憲法審査会」「守れ!雇用と福祉」をサブスローガンにして日比谷公会堂で開催され、集会終了後に東京駅まで「銀座パレード」を行った。集会には四千二百人が参加し、例年のように会場に入りきらなかった人は、公会堂前に設置されたオーロラビジョンで集会の模様に見入った。
 今年の憲法集会は、戦後最悪の資本主義の危機の中で労働者・市民の生存権そのものが根本的に破壊されている現実を明らかにした。「派遣切り」された労働者がただちに食も屋根も奪われて寒風の中に追い出されるという「年越し派遣村」がクローズアップした現実は、歴代の政権が戦後憲法をいかに踏みにじってきたかを示す例証であった。新自由主義が推し進めた「規制緩和」「自己責任」の帰結である「底辺への競争」の無慈悲な論理がそこにある。
 他方、麻生自公政権はアフガン戦争支援のためのインド洋での海自給油作戦を継続すると共に、現行法の網をかいくぐって「海賊」対策を名目に護衛艦とP3C哨戒機をソマリア沖に派兵し、さらに恒久法としての「海賊」対処新法を国会に上程し、スピード審議で成立をもくろんでいる。この法案は派兵恒久法の先取りであるとともに「九条明文改憲」の基盤を整えるものである。こうした流れは「グアム移転協定」に体現される「米軍再編」という米軍のグローバル戦争戦略に自衛隊を実戦部隊として組み込む流れと不可分である。この戦略の中で沖縄の辺野古、高江をはじめとした新基地建設が強行的に推し進められているのだ。
 そしてその仕上げとしての「明文改憲」のために麻生政権と自民党は、「憲法審査会」の始動、総務省による「改憲国民投票法」施行リーフの配布という攻勢を強めているのだ。資本主義の危機と「格差・貧困」による社会統合の危機を、政府・支配階級は改憲へのテコとして利用しようとしている。
危険な状況に
直面する憲法

 主催者あいさつに立った憲法会議の柴田真佐子さんは「九条を守る闘いと生活権を守る闘いは一つのもの」と呼びかけた。続いて作家の落合恵子さんのスピーチ。
 落合さんは「自己責任」という言葉をキーワードに語りかけた。「医療予算が減らされる中で最低限の健康と文化的生活を守れない私たちが、どうしてお年寄りの健康を守ることができるのでしょうか」。これはある高齢者養護施設に勤め、長時間・低賃金の厳しい労働で心身ともにヘトヘトになっている介護労働者から落合さんに送られたメールに書かれていた訴えだったという。
 落合さんは「棄民」とされた人びとに「自己責任」の言葉を投げつける風潮に怒りをぶつけ、「責任」が問われるのはこの国の為政者だと強調した。落合さんはさらに「娘・妻・母」として父・夫・息子を戦場に送りだした「従順な、受け身で耐える」女性をテーマにしたオーストラリアの歌を紹介しながら、「新しい身分社会」や等級づけを拒否するフェミニストとしての立場について語った。
 次にノーベル物理学賞を受賞した益川敏英さんのスピーチ。益川さんは「九条改憲には国民の多くが反対していることに私は確信を持っているが、改悪が間近に迫ってからでは遅い。解釈改憲でソマリアにも自衛隊を送るような状況で、改憲勢力があくまで求めているのは交戦権だろう。政府の側は最後の決戦を構えているのかもしれない。これに今から備える必要がある。その意味で平和憲法は大変危険な状況にある」と警鐘を鳴らした。
 同時に益川さんは、「人類の歴史は進歩の歴史であり、そのことは一九五〇年代には非常に差別的な社会だったアメリカに黒人の大統領が生まれたことに示されている」と歴史への楽観的確信をも披歴した。

共産党・社民党
党首のスピーチ

 レラの会によるアイヌ民族音楽と舞踊の後、福島みずほさん(社民党党首)と志位和夫さん(日本共産党委員長)がスピーチ。
 福島さんは「国益を脅かす海賊」への行動を名目としたソマリア派兵を批判し、「対処新法」に反対すると共に、武器輸出三原則緩和の動きに警戒しようと語った。そして国政面では議員の世襲禁止、企業献金禁止、官僚の天下り禁止を掲げて政権交代を実現すると決意を述べた。
 志位さんはオバマ米大統領のプラハでの「核廃絶」演説を評価して次のように述べた。
 「オバマ演説は@米国が核兵器のない世界を国家目標とすると述べたことAヒロシマ・ナガサキへの人類的・道義的責任を感じるとしたことB核廃絶のために諸国民に協力を呼び掛けていることを心から歓迎する。核廃絶のための具体的措置をさらにオバマ大統領に呼びかけたい。もちろんオバマ演説は、自分の生きているうちはこの目標は実現しないだろうとしているのは大きな限界だ。また日米関係についてはオバマ大統領は大きな変化を作り出そうとしてはおらず、日本の麻生政権は米国の核戦略に依存し続ける姿勢だ。こうした状態を変え、核廃絶と憲法改悪反対を結びつけて闘おう」と語った。
 集会後のパレードでは随所で右翼の挑発が繰りかえされたが、元気よく「憲法改悪反対、ソマリア派兵反対、憲法を暮らしに生かそう、雇用と福祉を守ろう」と道行く人びとに訴えた。(K)




大阪憲法集会に1200人
世界不況と憲法を考える強者の論理を拒否しよう


 【大阪】五月三日、九条の会おおさかの主催する憲法集会がエルシアターホールで開かれ、千二百人の市民が参加した。
 集会は清史彦さん(九条の会おおさか呼びかけ人、真宗大谷派瑞興寺住職)の司会で進行し、開会のあいさつを津村明子さん(九条の会おおさか呼びかけ人、生活協同組合大阪府連合会会長)が行い、「来年五月には国民投票法が発効する。改憲派は何を画策しているのか、注意しなければいけない。今日のお二人の話を聞いて今後の活動の参考にしよう」と呼びかけた。

正義の戦争は
存在しえない

 ゲストが憲法について考えを述べる恒例により、今回は宇野徹さん(桃山学院長)がゲストスピーチをした。宇野さんは、「日本国憲は押しつけられたものだから変えるべきだという人がいるが、彼らは改憲して米国といっしょに戦争ができる国にしようとしている。戦争は人殺しであり、知恵のない行為だ。正義の戦争などというものはない。イラク戦争は戦争の問題点を明らかにしている。イラク戦争はフセイン大統領が米国の思い通りにならないことが理由であったと思う。戦争は権力者によって引き起こされ、弱いものが犠牲になる」と述べ、旧約聖書の「週末の平和」(剣を鋤に、槍を鎌に)と「平和の王」(仔牛は若獅子と共に育ち等しく干し草を食む)を引用しながら、「軍事力に依存するものは他者を抑圧する。軍事力ではなく外交が必要だ。外交は相手を理解することから始まる。英語では理解はアンダースタンドという。つまり、相手の下に立つということだ」と主張した。
 つづいてセンチュリー交響楽団の演奏が披露された。同交響楽団は橋下府政によって補助金を昨年の四分の一に減額され、苦しい運営を迫られている。楽団員から府民によるフアンクラブやサポートネットワークへの参加が訴えられた。
 そして集会のメインである二人の経済学者の講演と対談に移った。浜矩子さん(エコノミスト・同志社大教授)は金融について講演した。要旨は以下の通りである。

「愛国金融」に
警戒が必要だ

 グローバル恐慌で経済が牙をむき平和を脅かしている。金融の世界では恐ろしいことが、つまり強者の論理がまかり通っている。金融の世界から人が消えた。本来金融とは人と人との信用で成り立つもの。返済能力のない低所得者にどんどん金を貸し自動車や住宅を買わせる。そのようにして膨張していった生産はあっという間にしぼむのは当たり前だ。政府の対応の中に気がかりな面がある。金を貸さない金融機関に資本注入し、日本の企業や日本人に金を貸すように言う。こんなことが各国で起きている。これを称して愛国金融という。その他愛国雇用、愛国消費なども。その背後には国家による統制経済の傾向がみえる。このような傾向はあっという間に広がる。超要警戒だ。肝に銘じておくことが三つある。
 @まさかと思っていることは必ず起こる。Aオオカミは必ずやってくる。B王様はいつも裸だ。危機的な時期に政府がファンダメンタルズは大丈夫というときは、今までの例から見てもいつも大丈夫ではなく、株が大暴落をした。このようなときの流行病がある。それは、「自分さえよければいい」と思うこと。一刻も早くここから脱出しなければいけない。そのためには、「あなたさえよければ」と考えるべき。例えば、日本は中国に「中国さえよければ」という。中国は日本に「日本さえよければ」と言うことが必要だ。

「株主資本主義」
の帰結は何か

 続いて、森岡孝二さん(関西大学経済学部教授)が雇用問題について講演した。要旨は以下の通りである。
 一九九四年に経済界と学会がいっしょになって日本コーポレートガバナンス・フォーラムという組織が発足した。その中でオリックスの宮内義彦氏は、株主資本主義をめざすことを主張している。経営者は株主利益の最大化のために働けということ。人員を削減し人件費削り、高配当を実現するということだ。宮内氏は小泉内閣のときの規制緩和の旗振り役だった。このようにして外国人株主(海外の機関株主)が増え、労働分配率が低下した。二〇〇二年から〇八年の間、日本の景気は拡大したが(もっとも一般市民には実感がなかったが)正規雇用は減少し、非正規が増えた。「就業構造基本調査」の推移を見ても製造業での〇八年の派遣は〇二年の三倍に増え、正規雇用が減少している。グローバル危機の中でこの非正規労働者が全部解雇された。現在、製造業での落ち込みは米国以上だ。企業にとって非正規労働者は人事部の担当ではなく、財務部の担当だ。つまり資材と同じように扱われている。「ワーキングプアー」の翻訳に携わったが、米国でワーキングプアーは黒人やヒスパニック系の人のように思われているが、米国で一番多いのは白人のシングルマザーである。派遣村を取材したメディアの映像を見ると男性が圧倒的に多いように見えるが、実態はそうではない。女性の貧困も同じぐらい増えている。
 以上のような講演のあと、吉田栄司さん(九条の会おおさか事務局長、関西大学法学部教授)コーディネートにより二人の対談となった。

――一九二九年の世界大恐慌から何を学ぶのか。

 森岡さん:ニューディールで多くの政策が実行されたが、雇用問題は三〇年代は改善できず、戦争に突入し、その中で経済が回復した。そして戦後の一九四六年に完全雇用政策としての雇用法が成立し、雇用問題の一応の解決となった。ところが一九八〇年代レーガンの時代に新自由主義政策が登場し、雇用法は放棄された。これは間違いであった。そのことが今日の危機を招いている。
 浜さん:一九四六年の雇用法とともに重要なものとして一九三五年の互恵通商協定法があげられる。これにより米国の政策は百八十度転換し、保護主義から転換し関税が引き下げられた。ニューディールは内需拡大政策だったが、それだけでは米国の労働力を処理できず、不況から立ち直れないということに気が付いた。もっと多くを輸出したい、だから多く輸入したいと思うようになった。まさに、情けは人のためならずだ。このことは危機の時に教訓になる。

――憲法との関係でどのようなことを思うか。

 浜さん:母は戦前何も知らされていなかったことが口惜しいと言っていた。戦後はアムネスティーインターナショナルの活動に参加した。二度と戦前戦中のようにならないために憲法がある。わたしは、そのような環境の中で育った。
 森岡さん:憲法の精神を受け継ぐものとして戦後の労働基本法の中に労働基準法や職業安全法があるが、一九八〇年代の半ば中曽根内閣の時代に労働者派遣法がつくられ憲法の精神が踏みにじられている。現在の法体系を憲法に立ち返り見直すべきだ。

――憲法の人権規定を経済から見ると。

 森岡さん:日本では企業のいいなりの政府になっている。審議会などもそうだ。しかし、二〇〇六年以降若干その流れが変わりつつある。憲法に立ち返り社会をつくり直す必要がある。 
 浜さん:人間の営みとしての経済活動を非人間的な方向から引き戻すべきだ。生存の論理を正しい論理にしなければいけない。ジャングルの中は強いものだけがいるのではない。いろいろな生き物がいて、強弱共存共栄している。強いものだけのジャングルは砂漠になる。生存権はそのように位置づけられる。
 集会の最後、松浦悟郎さん(九条の会おおさか呼びかけ人、日本カトリック正義と平和協議会会長)が、「世界と共に平和になろう」と呼びかけ閉会した。(T・T)


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