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シンポ「崩壊する人権・文化・教育そして経済」      かけはし2009.4.20号

橋下大阪府政-- 高支持率の裏側で何が進行しているのか



 【大阪】三月十五日。「『橋下府政・高支持率の裏側で、今』崩壊する人権・文化・教育そして経済」集会が実行委員会主催で開かれ、五百六十人が参加した。司会の津村明子さん(ジャーナリスト)は、橋下知事が大阪をどのようにしたいと思っているのか、皆さんといっしょに考えようと企画したと述べた。
 第一部の講演会は、藤本義一さん(作家)が「壊すな!大阪の文化を!」と題して特別講演を、また本山美彦さん(京都大名誉教授、岩波新書「金融権力」著者)が「橋下知事の経済政策」と題して講演をした。以下は講演要旨。  (T・T)


文化とは何か
藤本義一さん

 自分にとっての橋下知事の問題点は、最近のことでいうと大阪府立大学(藤本さんの出身校)の解消、「ワッハ上方」の移転の主張を突きつけたこと。これに対しては反論というより憤りを感じている。人間は伝統・歴史・文化をもっていなければ、人間としての存在価値はないが、それを橋下知事は認めていない。自分の思いつきでやっている。タレントならそれでいいが知事としては許されない。
 制度やシステムに対して人がいいというか、他人がこうだから自分もそれでいいという考えを日本人は持ちすぎている。橋下知事に日本人独特の上滑りの、底の浅い性格を見る。伝統・歴史・文化というのは、作られていく中に身を置いていると、自分の生き方の軸になっていくものだが、日本人にはそれが足りない。知事が移転を言ったとき、とことん反対しなっかった。文化の敗北だ。
 伝統・歴史・文化とは何か。藤本流の解釈をすると、「化」は生きてる人間と死んだ人間をいっしょにしてできている、つまり伝統をつくってきた人と受け継いだ人を表している。草かんむりをつけると花(うるおい)、革をつけると靴(実用品)になる。下に貝をつけると貨幣の貨(お金)。頁をつけると傾く(かぶく、華やかさ)。文化にはこの四つがそろっていないとダメだ。千日前(大阪南の地名)はこの四つがそろっていた。ここに「ワッハ上方」があった。
 家に帰ったら今日の話を自分の言葉で伝える、これが文化だ。今日どうでした? 何が? 行って来たんと違うの? うん。どうでした? あんなもんや。このあいまいさで文化を語っていてもどうしようもない。「おくりびと」をアカデミー賞を取る前日にみたが、がらんとしたところにひとりだった。翌日は行列ができていた。これは文化ではない。藤本の言っている文化とはこんなものだということを自分の言葉で伝えてもらえればうれしい。
 大阪府立大学は大阪工業専門学校、浪速大学、そして府立大学になって五十数年。この歴史を知事は全く知らない。一九五七年、第一次学生運動の頃、大阪市大、大阪外大、関西学院大のオルグたちが角材をもって乗り込んできた。府立大学は冷静に時代を考える学生たちが四国・中国地方・愛知などから集まっていた。彼らオルグがヒステリックな集団にしか思えなかった。報道は機動隊の後ろにいた。機動隊に力で勝つというよりは論理で勝つのが学生ではないかと言った。角材で額を割られた。
 社会科の先生になろうと思っていたが、卒論のテーマに日本の雇用問題を選んだ。調べてみると、日本人は騙されていることがわかった。定年、昔は停年と書いた。戦前も明治時代も五十五歳だった。明治三十四年(1901年)に就業規定年齢法で決まって、いまだに生きている。この年の平均寿命は四十二・六歳。今は七十九歳の平均寿命で定年が六十歳。日本人は一度決まるとそういうものだと思ってしまう。同じことを橋下知事に感じる。WTCの移転を思いつく。新聞にのると自分が偉くなったように思う。大阪のことを何も考えていない。就職しても仕方がないと思い懸賞に応募して作家の道に進んだ。
 自分は議論はするが感情的になったことはない。橋下知事の場合だけは、感情的にならざるを得ない。
自分の核になるものをしっかりつかんで生きていったらいい。自分を自分で確かめるために生きてきたのに、雰囲気に流されたらダメだ。

無計画な都市開発の裏
本山美彦さん

 「自治体クライシス」いう本が出た。クライシスは医学の父ヒポクラテスが作った言葉。患者がもう死ぬかなというところまで追い込まれていったときに、患者がもっている自然快復力でこれから元気になるのだという意味の言葉だ。
 阪神淡路大震災後の実験では、長周期振動で超高層ビルの三十階で五秒間共振が続いたら三メートルの横揺れが起こる。部屋の中は破壊されるだろう。ところが二〇〇四年から東京・大阪で超高層ビルが建ち始めた。一九二三年関東大震災の経験から、国は建築に高さ制限を決めた、三十一メートル以上の建物はダメと。しかしその後なし崩し的に破られてきた。
 二〇〇〇年にできた経済戦略会議のもとに都市再生推進懇談会ができ、〇二年に都市再生特別措置法ができた。都市再生は都市の流動化を通じて不良債権問題の解消をはかる、との政策から土地が売られ高層ビルが建てられていった。〇四年紀伊半島で発生したM6・9の地震で長周期振動が起き、東京では相当ゆれた。世界で長周期地震のもっとも起こりやすいところが日本。東京品川とか大阪南港などに建っていく巨大ビル、本当に大丈夫か。

府庁の建て替え
WTCへの移転

 府庁は新しい耐震設計ができていないので、WTCに移る方が安上がりというのが知事の考えだ。もっと怖いのは、WTC自身が耐震構造を持っていないということ。橋下知事はWTCの位置は、関西州の中心だと言って、ここで関西を見渡して物事を考えればすばらしい行政策が出てくるという。
 経済三団体は橋下知事の都市構想に全面的に協力すると表明している。〇五年に関経連の会長は、大阪市役所の土地建物を民間に売却し、市役所をWTCに移し、南港周辺を副都心として開発する、売却益を大阪市の第三セクターに充ててはどうかと提言した。関空に降り立ったら眼前にWTCビルがそびえ立っている。ここが州都だ、などと橋下知事は大阪市に何の相談もせず、勝手に言っている。(WTC移転案は三月二十四日の府議会で大差で否決、大阪市は更正法申請へ)

開発政策の失敗
と第三セクター

 第三セクターとは何か。米国の圧力により一九八七年前川レポートで初めて提唱され、都市開発に資金を注げということになった。その開発の担い手が第三セクター。政府は膨大な自治体債券の発行を認め、金利支払いでも財政負担を増やした。この前川レポート以降全国の自治体の借金は増えた。その後大開発は失敗し、それに追い打ちをかけるように政府が介入した。
 それまで第三セクターや自治体病院は特別会計でおこなわれていて、赤字であっても一般会計に反映させなくてもいいとなっていたのを、〇八年度からそれはダメだとなった。国が会計の基準をつくり地方自治体に強制した。全国の自治体が病院を売却する方向に持っていった。WTCの経営で大阪市は困っている。それを府が買い叩く。でもWTCでは震災時の職員の招集もできないだろう。総合的な地震対策なしにとにかくノッポビルを買い取って、その上から眺めるなどという。その感覚が理解できない。ノッポビルをどんどん建てて、倒産し、第三セクターは行き詰まった。WTCの場合は仕方なく大阪市が入った、という形になっている。
 五億円を超える負債額をもつ第三セクターは、東京が全国の二一%、大阪は一五%を占めている。今後国は援助しないから自治体ごとにやれとなる。しかし財界からの巨大開発の要求は強くなるだろう。小さな自治体では対応できないから、小自治体はつぶれろ、そしてつくった関西州の知事の権限を強化する。これはものすごく怖いことだ。しかも軟弱な地盤の上を関西州の拠点にするとは何事か。地震は起こる。起きたらどうしようもないような街づくりにお金をつぎ込んでいくことは見直すべきだ。

パネルディスカション
「知事にもの申す」


第二部は「知事にもの申す!」。 樺島正法(弁護士)、本山美彦、藤本義一、浅野健一(同志社大教授)、野田正彰(関西学院大教授)、伊藤雄三(「ワッハ上方」館長)の六氏がパネラーで行われた。各氏は以下のような要旨の発言をした。

樺島さん
 橋下弁護士(現知事)は私のイソ弁(他の弁護士事務所に「居候」している弁護士の意)だった。橋下は光事件の弁護団二十一人の懲戒請求をテレビ番組で呼びかけた。二十一人の一人である中道弁護士は大阪弁護士会所属で私の最初のイソ弁。弟弁が兄弁をやっつける。中道弁護士は刑事事件専門で、儲からないから清貧に甘んじた生活をしている。その中道を橋下は高額の出演料をとって、圧倒的な影響力のあるテレビを使って懲戒請求した。これは許せないと言うところから、私は橋下を懲戒請求するに及んだ。

浅野さん(事件報道、ジャーナリズム論専攻。橋下を懲戒請求する時の呼びかけ人の一人)。
 橋下は二十一人の懲戒請求を他人にやれやれと言っておいて、自分はめんどくさいからといってしていない。橋下に対する懲戒請求は、大阪弁護士会では保留になっているが、広島の弁護士が訴えた裁判では橋下は負けている。それで広島高裁に控訴するとき控訴趣意書を出さなかったため、担当裁判官からまじめにやれと注意されている
 橋下のテレビでの発言があまりにも感情的で不公平だという決定が出ている。しかし、彼はなぜあんなに人気があるのか。それは彼のもっているミニブッシュ性、ミニ石原慎太郎性。本質的には彼はヤスクニ派である。橋下の発言で一番許せないのは、消えていくものは文化でないと言っていることだ。

野田さん
 他の県でも石原的な知事が登場してきている。市民の考える場がなくなっている中で橋下がまた選ばれた。
 彼の中にあるのは上昇意欲と権力欲。状況に応じて発言し、上に評価されて上昇できればいいと思っている。経済不況下の府民の不満が橋下のパフォーマンスによってガス抜きされている。気がついたらとんでもないところに連れて行かれていたということになりかねない。教育とは学力テストの点数が高いことだというレベルでしかものごとを考えていない人物が知事になり、予備校の出前をやっていた企業出身中学校長を大阪に呼んで来て同じことをやっている。

伊藤さん
 藤本先生の指摘のように大阪は文化の敗北に瀕している。大阪文化団体連合会で何とかこの流れを止めようとがんばっているが、主張したいことは二つだ。大阪の文化の担い手は橋下知事ではないということ。高い支持率を背景に、府民を代表するのは自分だというのが知事の論理だが、文化は府民自身が決めること。もうひとつは、民間の叡智を集めれば何とかなる。そのパワーを持っている。自分たちの文化は自分たちで守っていくんだということです。

藤本さん
 橋下府政という言葉を聞くとどうしても不正という言葉しか思い浮かばない。府庁を劇場に例えると、劇場のスタッフの給料が決まっているのに後でやってきた指揮者がスタッフの給料を削るということ。府の仕事を支えてきた人間の事を何も考えずに削っていく。マスコミも、自分がそうされたらどうするかも考えずにおもしろ半分に取り上げている。橋下よお前は転ぶぞ、と言っておきたい。

本山さん
 インド人のノーベル経済学賞の学者で、賃金の高いところが経済成長するという説がある。労働者がおとなしくて賃金が安かったら、経営者は努力せず、賃金の安いところに生産点が移って行くだけで、技術革新の刺激はなくなっていく。資本主義は非常に不安定なもので、いまのようにどこまでも賃金が下がっていくときは底が見えない。なぜなら需要がないからだ。労働組合が諸悪の根源のように言われているが、危機の時誰が守るのか。労働組合にはがんばってもらいたい。むしろ労働組合に抵抗能力がなくなってしまったのが一番の問題だ。


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