前のめりの「対テロ」戦争動員
ソマリア「家族対策」派兵反対 |
「海上警備行動」
というまやかし
麻生内閣は、一月五日召集の通常国会で、お膝元の自民党からの相次ぐ離反・離党に示される政権運営能力の完全な崩壊に直面しながら、この三月にもソマリア沖「海賊」対策を口実にした自衛隊派兵という、新たな海外派兵のエスカレートに踏み出そうとしている。
昨年十二月十二日、アフガン戦争支援のために海上自衛隊のインド洋での洋上給油作戦を継続する新テロ特措法の延長が可決・成立したが、今回のソマリア沖派兵の動きもまたこのインド洋派兵の延長線上にある。たとえば〇七年十一月に当時の「テロ特措法」の期限切れによって帰国した海自派兵部隊の「協力支援活動等実施報告」では「(インド洋から)撤収することになれば(これまでの)成果および積年の功は完全に消滅する」とし、「外国海軍担当者」から、「何もしないというのは国際的に理解されないことから、海賊対処のための派遣にしてはどうか」と提案されたことを明らかにしている(「赤旗」1月13日記事)。この「外国海軍担当者」とは、米軍だろうと推測できる。つまり「海賊」対策とは、「対テロ」戦争への自衛隊の参戦の一環であることがここからも読み取れる。
一月九日には、「ソマリア沖海賊対策」による自衛隊派兵のための与党プロジェクトチーム(PT)の初会合が行われた。十日の内閣記者会インタビューで麻生首相は「不測の事態に対応できる法律もきちんと作って出すのが正しい思うが、早めに出したほうがいい」と語った。つまり、今国会中に「海賊対策派遣法」を出すにしてもそれでは時間がかかるので、当面「海上警備行動」を適用して自衛隊を送り出すべきだというのだ。
しかし「海上警備行動」はもともと日本近海において適用することを想定したものであり、また武器使用基準は「正当防衛」などに限定され、かつ保護対象は日本の艦船や関係船だけである。「海上警備行動」による自衛隊の出動は、これまで二例あるが(1999年能登半島沖不審船事件と2004年の沖縄・先島諸島周辺海域での中国原潜「領海侵犯」事件)、いずれも「領海侵犯」にかかわる事例である。これを、ソマリア沖という日本から一万キロ離れた海域での「外国船」保護に適用するには無理があるのは当然だ。したがって防衛庁は、この麻生政権の動きに慎重な態度を取っていると報じられている。
自民・民主両党
の連携プレー
しかし一月十三日に与党「海賊対策」PTが了承した政府案では、旧来の解釈を拡大し、「日本の貨物を積む外国船舶」も保護対象に加えている。これで「保護対象」は飛躍的に拡大する。かつ昨年十一月に起こった「英海軍が海賊船と銃撃戦になった際に海賊とみられる二人を射殺したケース」と「インド海軍が海賊に乗っ取られたタイのトロール船を、停船要求を無視したとして撃沈したケース」を取り上げ、それと同様の武器使用は自衛隊にも認められる、とした。そして「海賊」を自衛隊が拘束した場合は、同乗させた海上保安官が取り調べや送検という警察活動にあたる。つまり軍事作戦と警察活動の一体化である(「朝日新聞」1月14日)。海上自衛隊の護衛艦などだけではなく、P3C対潜哨戒機も派遣を検討していると報じられている。しかもこの「海上警備活動」の実施については、基本計画を閣議決定した上で国会に報告すればよいことになっており、国会の事前承認などは必要とされていない。
こうした「海上警備行動」の拡大解釈を既成事実とした上で、「海賊対策法」を新たに作り、さらにそれを「派兵恒久法」にまで仕上げていくのが政府・与党の狙いなのだ。
一方民主党は、一月十四日の外交防衛部門会議役員会で「現行法での対応には限界があり、新法に関して議論を進めることを決めた」という。もともと「ソマリア沖海賊」対策に関しては、昨年十月の衆院「テロ対策特別委員会」で民主党の「防衛族」である長島昭久が、「海上交通路の脅威」となっているソマリア沖海賊に対して日本も「国益」の観点から自衛艦を派遣すべきではないかと質問し、麻生首相が「前向きに取り組む」と答弁するなど、公明党をバイパスして事実上自民・民主の「共闘」が作り上げられようとしている。
民主党の中では、ソマリア沖に限らず世界各地へ派遣できる「海賊対策一般法」を作るべきという意見もあり、浅尾慶一郎・民主党「次の内閣」防衛相は「政府は早急に新法を検討すべきだ。われわれも現行法の不備を検討する」と述べているほどだ(「朝日」1月17日夕刊)。
集団的自衛権
行使の実質化
昨年、国連安保理では「ソマリア沖海賊対策」で公海上での活動だけではなく、拠点となっているソマリア本土への攻撃をも許容する決議が上がった。この決議に基づき欧州・アジア諸国も艦船を派遣している。さらに米中央軍は一月八日に、海賊対策を専門とする多国籍部隊CTF151を設置し、同盟国の参加を呼びかけている。
当面する政府・与党案は他国との相互協力はしない、としているが、それも拡大解釈される可能性がきわめて高い。「集団的自衛権」行使の実質化である。ここで安倍内閣の下での「安保法制懇」(安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会、座長:柳井俊二・元駐米大使)で議論されたものの、その後安倍内閣の自滅によって「お蔵入り」になった「集団的自衛権」行使推進の提言があらためて日の目を見ることになりそうである。
昨年六月二十四日付の同懇談会報告書は「@公海における米艦の防護A米国に向かうかもしれない弾道ミサイルの迎撃B国際的な平和活動における武器使用C同じ国連PKOに参加している他国の活動に対する後方支援」のいわゆる「4類型」に分けて検討し、次のように述べている。
「四つの類型こそは、日米同盟の有効性を今後とも維持するとともに、国際的な平和活動に我が国が積極的な関与をしていくに当たっての具体的問題を示している。……本懇談会は、この四つの類型に関して、我が国が適切な行動をとれないとすれば、それは我が国の安全を著しく脅かす可能性があるものであると判断し、しかも、憲法解釈を変更することによって、この4類型に適切な対処をすることが十分可能であると判断した」。
すなわち「集団的自衛権」の行使は憲法上認められないとする旧来の政府見解の変更を促している。4類型のBとCがソマリア沖「海賊」派兵における自衛隊の作戦行動と武器使用において準用されるという方法が取られるのではないだろうか。
一月九日に初会合が開かれた「防衛計画大綱」見直しに向けた首相の私的諮問機関である「安全保障と防衛力に関する懇談会」(座長:勝俣恒久・東京電力会長)の九人の構成メンバーのうち、北岡伸一(東大大学院教授)、佐藤謙(元防衛事務次官)、田中明彦(東大大学院教授)、中西寛(京大大学院教授)の四人が「安保法制懇」のメンバーでもあったという事実は、麻生が固執するソマリア沖派兵において「集団的自衛権」の行使を禁じた政府見解の変更が事実において実現される可能性を想定するに十分である。そして駐日米国大使だったシェーファーが退任にあたっての記者会見で「集団的自衛権」行使についての政府見解の変更を促している事実も、それを裏付けている。
ソマリアの惨状
もたらした責任
「海賊事件多発」の根拠になっているソマリアの「無政府」状況は大国の介入がもたらしたものであり、それを再び軍事的介入で解決することなどできない。
一九九一年に始まったソマリア内戦の中で、ソマリアは国際的に承認された全国政府がない状態となった。その結果、ソマリア沖の漁場ではアジアや欧州諸国の漁船がエビ、サメなどを乱獲し、かつてソマリアの漁民たちの命の糧だった漁業資源は枯渇した。国連環境計画(UNEP)報告によればソマリア北部プントランドにおけるエビ、サメなどの漁獲高は十年前の五分の一以下に激減した。漁民が漁業で食えなくなり、「海賊」とならざるをえなかったのにはそうした背景がある。
さらに内戦による混乱の中で、イタリアやスイスの企業が大量の核廃棄物や産業廃棄物をソマリア沖に不法に投棄し海洋資源や住民の環境が汚染された。二〇〇四年十二月のスマトラ沖大地震による津波でソマリア沿岸に打ち上げられたこれら核廃棄物や産業廃棄物により、住民たちに突然死や皮膚疾患などが多発したことをUNEP報告書が明らかにしている。またこの一月、ソマリアPKOの一員として派遣され、劣化ウラン兵器によってガンになったイタリア人兵士に対して、イタリアの裁判所が約六千万円の国家賠償を命じたことが報道された。これは劣化ウラン弾の被害がソマリアの住民の間に隠された形で広がっていることを示唆するものである(1月14日、「毎日」)。
米国は、内戦によるソマリア国内の「人道的被害」を口実にして「国連安保理決議」を背景に一九九二年十二月に「人道的介入」を名目とした軍事介入を行った。これは「アフリカの角」を構成し、紅海・アデン湾・インド洋に面する地政学的に重要な戦略地点に位置するソマリアへの支配力を固めるという「対テロ」軍事戦略上のねらいがあった。しかしアメリカを中心とした国連のソマリア軍事介入は失敗した。
国連による「人道的介入」を否定するわけではない最上敏樹・国際基督教大教授でさえ、このソマリアの例について「もし国連による人道的介入が認められるとするなら、その本旨はあくまで不条理な苦しみのもとにある人々を救うことであって、介入する側の勢力を誇示することではない」と述べ、ソマリアの失敗の本質が「過剰」介入にあるとしている(最上敏樹『人道的介入――正義の武力行使はあるか――』岩波新書)。
公正な和平と
生活再建支援
米国のイニシアティブによりケニアで設立された「ソマリア暫定連邦政府」は、ソマリアで急速に影響力を延ばしてきた「イスラム主義」勢力に対抗するために諸軍閥勢力を結集し、ソマリア中部の内陸にあるパイドアに拠点を置いた。他方、首都モガディシュをはじめとしたソマリア南部は二〇〇六年半ばにイスラム主義勢力である「イスラム法廷最高評議会」が掌握するところとなった。しかし二〇〇六年十二月に米国に支援されたエチオピア軍がソマリアに侵攻し、モガディシュはエチオピアの軍事占領に置かれることになった。
だが「暫定連邦政府」は内紛にあけくれ、腐敗した独裁者であるユースフ暫定大統領は、南部を軍事占領していたエチオピア軍が昨年末に撤退を開始することにより支えを失って、ついに辞任することになった。ソマリア南部では再び、イスラム主義勢力の影響力が強まっている。
こうした米国など諸外国の軍事的介入に翻弄されたソマリアの情勢を無視し、「対テロ」戦争の大破産を直視することなく、もっぱら「航海の安全」=「海賊」対策を看板にした自衛隊の派兵・軍事介入にきっぱりと反対の意思を表明していかなければならない。「海賊退治」のキャンペーンはソマリアにおける公正な和平と生活再建を支援する努力を妨げるだけなのである。(ソマリアをめぐる状況についての記述は、稲葉雅紀さんのブログ「鼠の歯による批判」
(http://blog.livedoor.jp/pinktri/)所載の「立ち止まって見直してみよう、ソマリアの海賊問題=これだけある、『考えなければならないこと』=」を参考にした)。
(1月18日 平井純一)
イスラエルのガザ侵攻糾弾デモ
今こそ封鎖を解除せよ!
国際社会の加担にNOを
【大阪】一月二十二日、大阪・扇町公園で「許すな!イスラエルのガザ侵攻1・22緊急行動」集会が開かれた。
イスラエルが「一方的停戦」を宣言し、戦闘が停止していることが報じられているが、ガザへの封鎖は続いており、ガザに平和が訪れたわけではない。イスラエルが米国のオバマ大統領就任前に「停戦」を発表することは予想されていたことで、その場合でも二十二日の行動は行うことを実行委員会では確認していた。とはいえ、前日からの雨と寒さで結集が心配だったが、集会が始まるころには三百人近くの仲間が結集し、デモ出発の時点では約五百人に増えていた。連帯労組、全港湾、全労協などの労働組合の組織的参加が頼もしい。京都、滋賀、兵庫からも多くの仲間が参加した。
各国政府の沈黙
と容認に抗議を
あいにくの天候のため、ガザの映像を映写するという企画は実現できなかったが、全参加者はガザで殺された人たちや今なお爆音におびえ、食糧・医薬品の欠乏に苦しむ人々に思いを寄せ、イスラエルの戦争犯罪と日本を含む「国際社会」の加担への憤りをみなぎらせて、それぞれの発言に共感を表した。
集会の冒頭に、パレスチナの平和を考える会の役重善洋さんが、ガザ侵攻をめぐる情勢について報告した。一カ月足らずの間に千三百人以上の人が殺されたという虐殺の規模はこれまでにもなかったものだが、同時に指摘しておかなければならないことは、いわゆる国際社会の完全な沈黙、容認である。これが米国、ヨーロッパ、日本、国連などの政府レベルの対応だった。一方、市民の側の抗議行動は全世界で非常に大きな規模で行われてきた。イスラエルの停戦発表にも関わらず、ガザの封鎖の解除、パレスチナの占領地からの撤退、帰還権の実現まで、イスラエル・ボイコットを含む国際的な圧力を強化していこう。
次に、実行委員会に参加した約三十の団体の中から、「しないさせない!戦争協力」関西ネットワーク、パレスチナの平和のための連絡会、アジア共同行動、日本カトリック正義と平和協議会等の代表がそれぞれの取り組みについて報告し、共に頑張ろうと訴えた。
最後に、この間連日にわたってガザからの必死の訴えを翻訳し、インターネット上で配信してきた岡真理さんが、超多忙の中、駆けつけて発言した。「これまではとにかく虐殺を止めることだけを訴えてきたが、停戦になった今、なぜこんなことが起こったのかを見ていかなければならない。ガザの人々がこの六十年間、イスラエルによる占領からの四十年間、あるいは現在の経済封鎖の下で置かれている状態をそのままにして平和は実現しない」と訴えた。
イスラエル製品
のボイコットへ
デモに移る前の行動提起の中で連帯労組の川村賢市さんは「今日からイスラエル製品をボイコットしよう」と力強く宣言した。
デモは米国領事館前を通って大阪市役所前まで、パレスチナの旗を先頭に、多くの参加者が傘とロウソクを手に、パレスチナの人々に熱い想いを寄せながらスローガンを叫んだ。
大阪では昨年十二月末から、緊急に呼びかけられた実行委員会の下で、この日を含めて五回にわたってデモや米国領事館前行動が行われてきた。京都、神戸でもさまざまな行動が行われている。パレスチナの真の平和に向けた継続的な運動を、イスラエルのボイコット・資本撤退・経済制裁(BDS)キャンペーンを軸にして拡大していくことが重要である。 (KH)
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