かけはし重要記事

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韓国は、いま                    かけはし2002.8.12号より

「移住労働者合法化」に反対する中小企業協同組合中央会

現代版奴隷制=研修制度の維持・拡大ねらう


合法化はまたして
も水泡に帰した

 政府は最近、外国人産業研修生の受け入れ枠を七万九千人から十二万九千人に増やす「外国人材制度改善方案」を発表した。国内の労働・人権団体が絶えず要求し、労働部(省)もが乗り出して推進してきた雇用許可制の導入は再び挫折してしまった。むしろ産業研修生制度が大きく拡大した。
 今回の対策が出るやいなや、わが世の春到来とばかりに、双手を挙げて出てきたのは、これまで必死になって雇用許可制の導入をなきものにしようとしてきた中小企業協同組合中央会(以下、中企協)だ。雇用許可制は「教育生」である産業研修生とは違って、移住労働者を合法的な「労働者」の身分で働けるように許可する制度だ。産業研修生制度を廃止し、雇用許可制を導入せよ、という要求は中企協の激しい反発に遭い、いつも水泡に帰してしまった。

研修生を人質に
大金を手にする

 研修生の人材を中小企業に供給する仕事を専担しているのが中企協だ。国内の研修各企業が研修生を申請すると、中企協が海外の送り出し機関(四十四企業)を通じて研修生を連れてきた後、研修生を寄越せと「喚き立てている」中小企業別に配分して引き渡す。
 ところで興味深い、いや逆説的な事実は、現場の中小企業では雇用許可制に好意を持っているという点だ。韓国労働研究院が中小製造業種六百八十四社を対象に調査した結果、五四・二%が雇用許可制に賛成したことが明らかになった。労働研究院ユ・ギルサン博士は「人材難のために不法に外国人材を使わざるをえない中小企業としては取り締まりを恐れるので、いっそ合法的に、やましいことなく使うことを望んでいる」と語った。
 それなのに中企協は雇用許可制に決死反対をしつつ、逆に産業研修生制度を拡大せよ、と要求している。加盟社の半分以上が雇用許可制に賛成しているのに中企協は反対するのか? 中企協は加盟社である中小企業の声を代弁する所ではないのか。何でこんなことが展開され得るのか?
 民主労総イ・サンハク政策局長は「中小企業の中でも研修生が配分される企業はカネがあり縁故もある少数企業であって、大部分の零細企業は合法的な労働者を雇用することを望んでいる。中企協が雇用許可制の導入を拒否しているのは自分らの莫大な利権がかかっているから」だと語った。
 利権とは、そもそも何のことか。もちろん「カネ」だ。中企協は研修生を送ってやる対価として、研修企業から一人当たり二十八万六千ウォンを受け取ってきた。「研修管理費」という名目だ。今年になって研修期間が二年から一年に短縮されたため、四月からは一人当たり十九万六千ウォンを徴収する。研修生導入の初期には、一人当たり三十五万ウォンを受け取ったりもした。
 もちろん研修生の導入規模が大きくなればなるほど、処理できる研修管理費もそれだけ大きくなる。いわゆる「人間商売」だからだ。中企協が研修生導入の枠を増やしてくれ、と絶えず政府に要求してきたのも、このためだ。名分としては、いつも「中小企業ごとに人材不足で苦労している」と主張してきた。研修生の定員は七万九千人と縛られている。この枠組みの中で帰国する研修生が生じれば、その数だけ新たに入ってき、そのたびに研修管理費を再び徴収する。昨年、中企協が手にした研修管理費の収入は三十六億ウォンに達する。
 中企協が取りまとめているもっと大きなカネづるは別のところにある。ほかならぬ「帰属収入」だ。中企協は研修生を連れてくるとき、海外の送り出し機関から履行保証金という、一種の供託金として一人当たり三百ドルを受け取る。研修生が事業場を離脱すれば保証金は、そっくり中企協のカネとなる。逃亡する研修生が多ければ多いほど中企協の収入は増える、というわけだ。
 離脱者が直ちに収入源となる構造を勘案すれば、離脱ならびに不法滞留者の問題を解決するための雇用許可制導入に中企協が必死になって抵抗している理由が、たちまちハッキリする。離脱ばかりではなく、さまざまな事情で研修が終わる前に研修生が故国に戻るときも、保証金は中企協が手にする。
 中企協は、このような帰属収入を会計上「固有目的事業準備金」という名目で積み立てる。準備金は昨年四十二億七千万ウォン、二〇〇〇年には三十九億八千万ウォンが入ってきた。帰属収入は中企協が産業研修生を人質にして大金を手にする構造を、そのまま見せつけている。
外国人研修生協
力団の実態とは

 ところで莫大な研修管理費や固有目的事業準備金はどこに、どのように使われるのだろうか。研修生制度をめぐる中企協の利権が一層鮮明になるのか、まさにこの部分だ。中企協内で産業研修生制度を担当しているのは、独立事業部として運営されている外国人研修生協力団(以下、研修協力団)だ。研修協力団の支出費用をのぞいてみよう。
 昨年、産業研修事業として支出された費用は総額七十二億八千万ウォンで、このうち事業日三十七億八千万ウォン、管理費三十五億ウォンが執行された。事業費の項目は教育運営費、研修支援費、制度計画費、電算運営費、事業支援費、協力団支会(全国各市・道十一カ所)の運営費などによって編成されている。
 目を引くのは教育運営費、制度計画費、事業支援費、研修支援費だ。教育運営費(十億ウォン)は研修生の健康検診や教育につぎ込まれるカネだ。産業研修生は入国後、京畿道安養・ヨンインにある研修院で二泊三日間、わが国の文化や産業保健についての教育を受ける。
 ところで現地の送り出し機関でも全く同様の研修生教育を十日以上、させる。現地ですでに行った教育を、なぜ再び行うのだろうか。研修協力団は「現地の送り出し機関がキチンと教育をしたのか正確には分からないからだ」と語った。だがこれは研修管理費を受け取るための意図が、かいま見えるというものだ。
 名称を見ただけではいささかあいまいな制度計画費(三億七千万ウォン)は研修生制度についての研究および各種の活動につぎ込まれるカネだ。研修協力団は外国産業研修生制度についての研究を進めているが、その目的は雇用許可制導入を阻止する論理を開発することにある。研修協力団は「研修事業を行いつつ、そこで生じる剰余財源は『制度改善費』として適切に活用している」と語った。研修生制度の維持ばかりでなく、研修生の枠を増やすための活動費としても使う、という話だ。
 これは論議を呼んでいる中企協の政治団体化と無関係ではない。中企協は歴代中企協会長のうちパク・サンギュ議員(民主党)を中企協名誉会長に、パクサンヒ議員(民主党)とファン・スンミン議員(ハンナラ党)は顧問として委嘱している。したがって中企協は彼らをバックにして雇用許可制の導入をつぶしているとの疑惑が絶えない。

腹よりへその方が
大きい人件費支出

 事業支援費(十二億円)は、その大部分が研修協力団所属の契約職員の人件費として使われる。研修協力団の職員は百一人で一般職四十五人、契約職五十六人だ。このような人件費をはじめとする研修協力団の人材問題は、研修支援費(九億六千万ウォン)と再びかみ合う。
 紛争調整費などで組まれた研修支援費は、教育運営費と同様に重複との非難を呼んでいる項目だ。紛争調整は中企協が指定している国内の研修生委託管理企業(二十社)がすでに行っていることだ。委託管理会社は研修生の権益保護の名分で研修生から一人当たり毎月二万四千ウォンを受け取り、事業場で起きる紛争を調整する。ある委託管理企業は「事業場で労災などが勃発すると、われわれが関わって和解させるなど、苦しい事情を訴えるところのない研修生を保護するのが役割」だと語った。中企協は仕事を他に委託しておきながら依然として同じことをしているのか? 自らの人材問題を解決する良い方法として中企協が研修生の事業を運営している、との指摘をまぬかれがたいところだ。
 人材問題は管理費の支出内訳において一層くっきりと浮かびあがる。研修協力団の職員のうち相対的に幹部クラスの一般職(四十五人)の人件費として昨年使ったカネは十九億ウォン。一般職は契約職と違って中企協の正職員で、研修生制度が廃止されれば中企協に復帰することになる。人事権は中企協が行使し、人件費は研修生事業から充当する形だ。人件費という口実を通して研修生事業の収入が中企協に流出していっているわけだ。
 中小企業庁の側は「産業研修生の業務を担当した職員の人件費は研修協力団が支払うのが正しい」と説明した。だが産業研修生制度が、中企協の剰余人材を吸収し、人件費の負担も減らしてやる口実を作っているのは明らかだ。昨年の産業研修生事業費のうち、研修生のための「直接的」と見なすことのできる教育運営費や研修支援費は総額十九億六千万ウォンにすぎないのに反して、研修協力団職員の人件費には三十一億ウォンが投入された。腹よりもへそのほがより大きい、という形だ。
 だとするならば産業研修生事業の会計はどう処理されているのだろうか。中企協は研修協力団の性格を「別個に分離した一種の事業本部として、会計も中企協とは独立的に処理している」と説明した。産業研修生の運営に関する指針(八条三項)も「業務、会計および財産は中企協の他の業務と区分し、管理しなければならない」と規定している。だが現在、産業研修生関連の会計は中企協会計部がいっしょに処理している。ここには「われわれ(中企協)が担当したとしても会計は別に処理すればよい」という極めて貧弱な説明が付け加わる。

固有目的事業準備
金とは何なのか

 施設賃貸料もまた、研修生事業費が中企協に「便法的に」流れていく通路として活用された一例だ。中企協の建物内に事務所をおいている研修協力団は、年に三億六千万ウォンの事務所賃貸料を中企協にキチンキチンと出している。別個に分離した事業本部であるからだ。もちろん賃貸料の出所は研修生研修管理費と帰属収入だ。中企協が人材の必要にしたがって研修協力団に発令を出し、その職員らが使用する事務室の賃貸料は受け取るという二重のプレーをしつつ、研修協力団をカネ稼ぎの窓口として利用しているのだ。
 帰属収入から発生する莫大な「固有目的事業準備金」とは、はたして何であり、いったいどこに使われているのだろうか。中小企業庁は「帰属収入は事業運営費として執行してはだめで、研修生のための福祉事業に使うように、その用途も固有目的事業に限定した」と語った。
 昨年、産業研修生事業として支出した費用は七十三億ウォン。当初予算で六十三億と策定したが、実際に集まった研修管理費は三十六億ウォンにすぎなかった。それなら三十七億ウォンの赤字となって当たり前だ。だが赤字は発生しなかった。どうしてそれが可能だったのだろうか。秘密は固有目的事業準備金にある。不足分を帰属収入によって穴埋めしたからだ。
 こうしてみると産業研修生の導入以来、赤字を出したのは九九年(マイナス四億四千万ウォン)の一年だけだ。これさえも研修生の入国者が減ったり離脱者が少なくなったからではなく研修協力団の職員らの退職金の中間精算のせいで生じた赤字だ。
 今日まで積み立てられた固有目的事業準備金は七十三億ウォン。だが、最近二年分の固有目的事業準備金だけ合わせても八十二億五千ウォンに達する。研修管理費において不足分が生じるたびに帰属収入から引き出して穴埋めしたからだ。中企協関係者は「研修生の定員の枠が縛られているために研修管理費が予想より少なければ不足分を帰属収入によって埋めざるをえない。損失を国家が補助してくれることもないじゃないか」と語った。
 だが研修協力団は研修生の枠を増やしてくれるだろうと前もって計算して研修管理費を策定した後、「予想通り(?)」後で不足分が発生すると帰属収入によって補填するという方法をしばしば使った。固有目的事業準備金を便法によって動員したのだが、帰属収入が人件費や賃貸料名目で中企協に流出したのだ。法的には非営利団体だが、「利益集団」としての中企協の実像をまざまざと見せつけている。

「雇用許可制に
反対だと答えよ」

 産業研修生を使っている、ある中小企業は「われわれも人権じゅうりんだとの非難は受けたくない。人材難を味わっている中で雇用許可制を導入し、堂々と使いたい。中企協に出している研修管理費を研修生からピンハネしている企業も少なくない」と語った。中企協が受け取る研修管理費が産業研修生の賃金を最低賃金(月四十七万四千六百ウォン)に縛りつけている一つの原因となっているということだ。
 中小企業の現場の雇用許可制賛成の動きも前もって取り締まろうとしたのだろうか。労働研究院ユ・ギルサン博士は「中企協は一昨年、各加盟社に公文を送り、アンケート調査が来たら雇用許可制に反対すると答弁せよとの指針まで書き送った」と語った。
 民主労総イ・サンハク政策局長は「産業研修生事業が使用者団体である中企協の手の中で運営されていることが最大の問題だ。『研修』は名目にすぎず、実際に『労働者』としてこき使いながらも中企協が雇用許可制に対して人件費の負担を云々するのは、ただ利権のため」だと語った。「現代版奴隷制度」と呼ばれる産業研修生制度を維持・拡大しようとする意図が見え見えだということだ。
 産業研修生制度が低賃金の脈絡ではなく、人材不足に対処するためのものだという点からも、中企協が人件費の負担を主張するのは筋の通らない話だ。(「ハンギョレ21」第419号、8月1日、チョ・ゲワン記者)


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